「オヤノコト.net」が当事者目線で発信する、 シニア世代が健康で楽しくある為のアレコレ
- Vol.95
- 株式会社オヤノコトネット 事業推進部 ITビジネスディレクター
「オヤノコト」を考えるための情報を イベント、フリーペーパー、Webで提供
「オヤノコト」を切り口にする視点は非常に新鮮ですね。とはいえ、誰もが直面する普遍的なテーマです。
気になりつつも、真剣に考えることを避ける、後回しにしてしまうのが「オヤノコト」です。ですが、いざ親が倒れたりすると「なんであの時やっておかなかったのだろう」と後悔する人がとても多いんですよね。親の病気や介護に直面する前に、健康で楽しくあるための情報をイベント、フリーペーパー、Webで提供しています。
「オヤノコト」を切り口に、事業展開したキッカケを教えてください。
「株式会社オヤノコトネット」は車いすユーザー向けの情報提供をしている株式会社イント・コーポレーションからスピンアウトした会社です。イント・コーポレーションが発行しているフリーペーパーは、全国の支援学校に置かれています。フリーペーパーには商品紹介ページがありますが、例えばズボンの紹介でも車いすの方が快適に着られるポイントを紹介したり、独特の視点で情報提供しています。そのつながりで「オヤノコト」視点のまとまった情報がない、というテーマが自然と出てきました。
イベントは25,000人規模に成長 新たな気付きや楽しみが探せる場に
雑誌やWebなど、シニア向けの情報はたくさんあると思いますが、何が違うのでしょう?
シニア向けの情報は、病気や老化で介護が必要なシニア向けの情報か、旅行や習い事を活発にするアクティブシニア向けの情報か、両極端だったのです。その間の層をターゲットした「いつまでも健康で楽しくあるための」まとまった情報が不足していたんですよね。例えば、膝が少し痛くて歩きにくくなってきた場合、歩き回る旅行やダンスサークルの情報はいりませんが、いきなり杖や車いすの情報も必要ない。歩きやすい靴や膝サポーターの情報が必要なのです。こうした情報を集めたイベント「オヤノコト.エキスポ」を東京国際フォーラムで2008年に開催したのが始まりです。集客のためにフリーペーパーやWebも作りました。
今年で6回目となるのですね。どんな方が来場されるのでしょうか?
30代後半から50代の、「オヤノコト」を想う子ども世代の方が単独で情報収集に来られることもありますが、親子連れや三世代で来られる方も多いです。有楽町の国際フォーラムで開催しているのは、イベントの前後に家族で銀座でお食事でもしてほしい、という願いも込めています(笑)。毎年20,000〜25,000人くらいの来場があり、毎年来られるリピーターの方も多いですね。健康や身体に関することはもちろん、家やお金に関することまで、様々な「オヤノコト」視点の情報が集まっていますので、いろいろな気付きや新たな楽しみが探せる場になっていると思います。今年は7月27日(土)・7月28日(日)の開催です。
かなり集客力のあるイベントに育っているんですね!
最も集客につながっているのはフリーペーパーですね。山手線の主要駅で配布しています。
Webでコミュニティを展開予定 商品開発にもつなげたい!
Webはどのような役割を担っているのでしょう?
現在はまだまだ発展途上の状態ですね。情報を単に流しているだけなので、今後はユーザー同士の情報交換、つまりコミュニティ機能を拡充していきたいと考えています。例えば、商品を使ってみた感想を、価格や機能性ではなく「オヤノコト」視点でメリットデメリットを語ってもらう。いろいろなクチコミサイトはありますが、「オヤノコト.net」だからこそのクチコミが集まる場にしていきたいですね。この視点の商品は、まだユーザーと企業のギャップが大きい状態だと思うので、そのギャップを埋めるような声を集めて商品開発につなげていくような動きをしたいと思っています。
メインターゲットは子ども世代の30代後半〜50代とのことですが、Webやフリーペーパーを制作する上で、インターフェースなどクリエイティブ面で工夫していることはありますか?
この年代は、PCを使ってのビジネスやインターネットを活用した情報収集などには慣れている世代です。そのぶん、「オヤノコト」を考えるときに何が重要なのか、こちらからの提案が明確でなければならないと思っています。できるだけ色数を減らし、強弱をつけたコンテンツづくりを心がけて行きたいですね。また、原稿を制作するときには淡々とレビューを書くのではなく、当事者意識を持って書かないと、読み手に響きません。フリーペーパーもWebも記事が長い、と指摘を受けるのですが(笑)、端的にキャッチーな文章を並べるよりは、使う人の気持ちになって丁寧に説明する姿勢が求められます。
マーケット創造会社として 引かれたレールの上を歩くのではなく、 自らレールを敷く人材を求む!
御社はイベント、フリーペーパー、Webとメディアを運営していますが、基本的にすべて広告収入でまかなっているのでしょうか?
メインの収入は広告です。弊社はメディアを運営しているメディア会社という側面もありますが、マーケット創造会社だと自認しています。「オヤノコト」を考えているユーザーに対するリサーチを実施したり、コンテンツプロバイダとして「オヤノコト」視点の記事を提供したり、いろいろな派生ビジネスが発生しています。また、周辺企業から事業提携の話も多々あります。弊社の事業は社会貢献的な側面もあるので、事業提携には慎重にならざるを得ないことも多いのですが、「オヤノコト」視点のビジネスが広がって行く可能性は非常に大きいと感じています。
切り口が普遍的で、かつ非常に斬新なので、まだまだこれから成長の可能性を秘めていますね。今後の成長のために、どのような人材を求めていますか?
人数が多い会社ではないので、一人で多くのミッションを背負うことになります。例えばデザイナーならば、ひたすらデザインをする職人タイプよりも、広く物事を見ることができるプロデューサーやディレクタータイプが向いていますね。また、華やかな商品を取り上げたり、エンターテイメント色の強いコンテンツを制作するわけではありません。ただ間違いなく求めている人がいる商品やコンテンツを扱うことができるので、エキサイティングな環境だと思います。
◆オヤノコト.net http://www.oyanokoto.net/
※本文中の名称や日付、数値は取材時点のものです。 取材/2013年4月30日 取材・文/植松