イラストレーターの作品と才能を、発注者に向けて発信する「イラストレーターズ通信」。
- Vol.61
- プロフェッショナル・イラストレーター集団 イラストレーターズ通信 森さん
イラストレーターがもっと元気になる
ムーブメントを起こしたい
編集部が最初に森さんを知ったのは、冊子「イラストレーターズ通信」を手にとってだった。「プロフェッショナル・イラストレーターのプロモーション冊子」というサブタイトル、「エージェンシーではございません」という一文、誰が、何のためにこういう冊子を発刊しているのか。
【森さんのお話】
今、テレビ界には、お笑い芸人を起用した番組が数多くあり、ちょっとした「お笑いブーム」が長くつづいています。僕が願うのは、イラストレーターの世界にもああいうムーブメントが起こることです。 №1のビッグタレントだけが活躍するのではなく、大小、硬軟、さまざまにおり混ざった才能の数々が、あちこちに、いろんな形で能力を発揮できる環境。お笑い界に形成されたそんな状況を、私たちの、イラストの世界にもつくりだしたいと思っています。
最終的には、イラストレーターがもっと元気になり、もっと良い作品を生み出し、もっと多くの方の目に触れるようになり、日本はもとより世界中が、もっとイラストレーションを楽しんでくれるようになる。そんな時代がくるのを夢見ています。
発注者に向けて直接情報発信する
プロモーション手段が欲しかった
ではなぜ、それを森さんが――という質問には、「待っていても誰もやってくれませんし、やりたいことをやっているだけです」と笑う森さん。発端は、イラストレーターたちが集まって談笑する、何気ない風景の中にあったという。
【森さんのお話】
僕は営業熱心なタイプなので、いつもそれなりに仕事を抱えていました。でも、頻繁に会い、遊ぶ仲間たちの中には才能があるのに埋もれているイラストレーターが大勢いました。
そこで、みんなに呼びかけてお金を出し合い、作品を収録した冊子1000部を印刷。クライアントに直接発送したのが2000年のことでした。それが、「イラストレーターズ通信Vol.1」でした。一般の方にではなく、発注者に向けて「こんな作品が、こんなイラストレーターがいるよ」と発信する活動が始まりました。
イラストレーターが世に出る機会は
もっともっと多くていい
イラストレーターを紹介する商業誌も、いくつかある。イラストレーターが世に出る機会は、決してゼロではない。
【森さんのお話】 でも、実際に商業誌に紹介されるイラストレーターはごく一部です。機会は少なすぎます。それよりも僕がいいと思った才能をどんどん発注者に紹介する。その方が早くて確実じゃないですか。特に、発注者の目に触れる機会は多いほどいいと思っています。 ちなみにイラストレーターズ通信への掲載がきっかけで、イラストレーター雑誌にとりあげられることになった方も何人もいます。これはとても喜ばしいことと思います。
第1回『イラ通』イラストレーション・コンペも開催された
会員によるWebサイトと、非会員も含めたイラストレーターによる冊子の発行の2つを活動の中心としてきたが、それらとはまた別な企画として、今年、『イラ通』イラストレーション・コンペを公募し、大賞と入選作が選出された。(受賞作は公式HPに公開中)
【森さんのお話】
世の中に情報を発信するアンテナは多い方がいいと思っています。だから、次代を担う新たな才能を発見したくて、コンペを始めました。もう第2回の作品募集は始まっています。会員や冊子の参加者に限らず、広く一般から作品を募集しています。このコンペを通じて、才能あるイラストレーターをどんどん紹介したいと思っています。受賞者の皆さんが、活躍し、イラストレーション界をにぎわすようになれば嬉しいですね。
日本のイラストレーターは世界を目指せ
才能あるイラストレーターのプロモーションに特化した情報発信のルートは、国内では着実に認知され、活動の幅を広げつつある。今後の目標はどこに向かうのか、森さんに聞いてみた。
【森さんのお話】
今後の目標は、「日本のイラストレーターは世界を目指せ!」です。近い将来、イラストレーション界に国境はなくなってゆく気がします。ネットの発達で、世界中のイラストレーターが、いろんな国で仕事をする時代になってゆくでしょう。日本のイラストレーターも積極的に世界に打って出なければ、取り残されてしまうかもしれません。だから、イラストレーターズ通信でも積極的に世界に向けて発信して行きたいと思っています。 公式Webサイトは英語ページを作って、海外でネット広告を出します。冊子は電子書籍化し、世界からダウンロード可能にする予定です。しかし、まずは英語を勉強しなくては。何しろ学生時代は、英語が一番の苦手科目だったので(笑)。