携帯がライフスタイルを提案し始めた。―au携帯電話ブランド「iida」の志―
- Vol.55
- KDDI株式会社 サービス・プロダクト企画本部 プロダクト企画部iidaグループ 砂原哲さん
「au design project」ファンはもとより、これまでの携帯電話のありように疑問を感じていた方、人とはちょっと違った快適生活を望む方も要チェックだ。 この意欲的プロジェクトで、プロダクトデザインを牽引するのは砂原哲さん。「au design project」を立ち上げた張本人であり、「iida」プロジェクトでもなくてはならない存在である砂原さんにおはなしをうかがった。 【iida公式サイト】 http://iida.jp/
「チャレンジするKDDI」の理念が実現させた
「au design project」
2001年にスタートした「au design project」で、私が取り組んだのは「auはこんなケータイをつくっていきたいんだ」という意思の具現化。「チャレンジするKDDI」の理念がなければ、実現しなかったことと思います。 取り組みを始めた2001年時点では製品化の予定はまったくない、コンセプトモデル提案でしかありませんでしたが、市場の反応が大きく、急遽製品化へと向かいました。
携帯電話会社が、本気でデザインで戦う
そこが新しかった
当時、携帯電話のマーケティングのコアは女子高校生でした。ポケベルやPHSのように彼女たちが認め、生活に採り入れ、デコレーションで楽しむスタイルを確立したから爆発的に定着した。でも、その一方で、ティーンエイジャーのカルチャーばかりに疑問を持ち、もっとかっこいい携帯はないものかと感じるユーザーもいた。それがすくい取れていなかった。私が取り組んだのは、そのニーズへの回答でした。
それまで携帯電話のデザインは、携帯電話会社ではなく各端末メーカーのインハウスデザイナーが手がけるのが常識。ならば携帯電話会社がみずからデザイナーを選定し、「デザインで戦う」に乗り出してみてはどうか。端末メーカーは、どうしても「携帯電話会社の気に入る」デザインをしてしまう。「ユーザーの気に入るデザイン」は、携帯電話メーカーが取り組むべき課題ではないか。そう考えたのです。
「au design project」は使命を終え、「iida」に発展
「iida」は携帯電話ではなく、ライフスタイルを主語にする
デザイン携帯という概念も定着しました。コアなファンも付いてくださいました。「au design project」は、一定の使命を終えたように思えます。そんなタイミングで、「iida」のプロジェクト構想が持ち上がりました。それは、「au design project」のデザイン思想を引き継ぎつつ、さらにライフスタイル提案にまでフィールドを広げるものです。
「au design project」の晩期には、それまでの革新的なプロダクトデザインの提案から一歩踏み出したプロトタイプを発表していました。例えば楽器と携帯を合体させた「ガッキ ト ケータイ」がそれです。「au design project」が「iida」へと発展するのは、きわめて自然な流れだったのだと思います。
アートのアプローチ
ライフスタイルプロダクツ開発のための「iida AWARD」
新感覚のユーザー参加型のキャンペーン「iida calling2」
社内体制としては、「iida」は「au design project」とはくらべものにならないくらい大規模な取り組みです。社内のあらゆるセクションを横断的に貫いた組織で、auの将来を担うブランドづくりを推進しています。
「iida」は、携帯電話ではなく、ライフスタイルを主語にしたブランドです。たとえば周辺器機も、これまでは携帯電話がリリースされるとそれに合わせたデザインや機能を持ったものがラインナップされたものですが、「iida」ではACアダプター「MIDORI」に代表される、それ自体がひとつの世界観を持ったものが独自にデザインされ、育っていきます。どれを選び、どんな組み合わせとするかは、文字通りユーザーのライフスタイル次第です。
草間彌生さんを起用したアート携帯電話も、ライフスタイルプロダクツ開発のための「iida AWARD」(大学生、大学院生対象コンペ)も、入力した文字が歌詞になり、音源と組み合わせて、オリジナル楽曲が作成されるユーザー参加型のキャンペーン「iida calling 2」も、ユーザーのライフスタイルを主語に企画され、開発されたラインナップなのです。
プロダクトデザインをさらに進展させるために
デザイナーとのコラボレーションをつづける
そんな「iida」チームで、私は携帯電話端末の商品・デザイン企画を担当しています。深澤直人さんや吉岡徳仁さん、岩崎一郎さんといった、「au design project」時代からお力添えいただいているトップデザイナーの方々とひきつづきコラボレーションしつつ、新たな人材の発掘にも力を入れています。ユーザー層を広げるために機種ラインナップはさらに増やす予定ですので、iidaに相応しいデザイナーの発掘、登用は喫緊の課題と言えますね。 この仕事に必要なのは、素敵なデザイナーさんと出会うこと、デザイナーさんのことをリスペクトしながら仕事を進めることと思います。「au design project」で大事にしてきたそんな価値観は、しっかりと「iida」にも引き継いでいきます。