CCライセンスは、新しい作品公開スタイルと新しいスタイルの創作をバックアップする、新しい著作権ルール。

vol.50
NPO法人「クリエイティブ・コモンズ・ジャパン」 事務局長 野口祐子さん
マルCマークは、著作権者の明示。では、マルCCマークとは? ネットなどで、いつものマルCマークと思いきやマルの中にCCが入ったマークを見かけ、「なんだこれは?」と思った経験を持つ人も増えているはず。 それは「CCマーク」、「CCライセンス」と呼ばれるもので、複製や頒布、改変などを前提に公開されている著作権物であることを意味している。ネット時代ならではの作品公開スタイルのひとつとして、デジタル時代のコラボレーションクリエイティブのツールとして、関係者の間で大きな注目集めている概念だ。 アメリカ発祥のCCライセンスを日本に普及させる活動を担っているNPO法人「クリエイティブ・コモンズ・ジャパン」の事務局長/野口祐子さんにお話をうかがった。

【取材対象者】 野口祐子さん NPO法人/クリエイティブ・コモンズ・ジャパン事務局長 弁護士・法学博士(J.S.D) 国立情報学研究所准教授

<クリエイティブ・コモンズ・ジャパンHP> http://creativecommons.jp/

CCライセンスは、 著作権保持と完全な著作権放棄の中間層を埋める概念。

CCライセンスは、創造的な作品に柔軟な著作権を定義するライセンスシステム。日本では、NPO法人であるクリエイティブ・コモンズ・ジャパンが提供している。 発祥はアメリカにあり、普及団体であるクリエイティブ・コモンズが誕生したのは2002年12月。活動は、アメリカの法学者/ローレンス・レッシグ氏の発案に沿ったものだ。

【野口さんのお話】 現在、世界的な著作権法のベースになっているベルヌ条約は締結されてすでに1世紀以上が経っています。つまり、法体系と現状が乖離し始めている。そこに危惧をもったレッシグ氏が参考にしたのが、すでに20年の歴史を持つ、コンピュータのフリーソフトウェアの概念でした。広くコードを公開して、誰もが参加できる開発をする。また、そのルールで開発されたソフトウェアは、同様に公開されるというオープンな環境を、音楽や写真などの創作の著作物にも適用しようというのがCCライセンスの考え方であり、活動です。 日本でのリリースは、2004年。わが国はCCライセンスを、アメリカに次いで世界で2番目にリリースした国です。2009年現在、CCライセンスは世界50カ国でリリースされており、さらに9カ国でのリリースが予定されています。

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「目的/概念」項で図解されているようにCCマークの表示するCCライセンスは、マルCマークの表示する著作権保持と完全な著作権放棄の中間層を埋める概念と考えてよい。 著作権者にその意思があれば、コンテンツに対しての権利を保持しながらも一定の自由を事前に許諾し、より豊かな情報流通と経済、文化、科学技術の発展に寄与できる。 CCマークはそれ単体で「共有」と「リミックス」への許諾を意味し、つくり手のクレジットを適切に表示する「表示」マークとの組み合わせがデフォルト。そこに「非営利」「改変禁止」「継承」が、著作権者の意思に沿って組み合わされていく。

ルールを破ればCCライセンスは自動的に撤回され、 その瞬間から通常の著作権が適用される。

CCライセンスと読者の関わりは、ライセンスを通じて許諾のある作品を利用する側、ライセンスを通じて作品に許諾を与える側双方になるだろう。 まず、利用する側となった場合、ライセンスの精神を理解し、ルールに沿ってC Cマークで明示された許諾の範囲を守らなければならない。 間違ってならないのは、CCライセンスは「著作権放棄」ではないという点。ルールを守ればCCライセンスのもとで自由な利用が可能だが、一旦ルールを破ればCCライセンスは自動的に撤回され、その瞬間から通常の著作権法が適用される。著作権侵害で訴えられる可能性もあると、肝に銘じてほしい。

【野口さんのお話】 引用や流用の許諾を取るために、著作権者の所在を探し、連絡を取る。これまでは、良い作品を素材として利用しようと考えると、そんな手つづきが当たり前でした。あらゆる創作のジャンルにデジタル技術が普及し、機材さえあれば素人にでもリミックスやコラージュが簡単にできる現代の創作環境で、それはあまりにもルールが時代遅れ。 特に、著作権者側に「使ってもらえたら嬉しい」と考える人が増えている点を考えれば、CCライセンスは時代の要請に応じて生まれたと言えるものです。 素敵な作品を見つけ、ルールを守って、さらに素敵な作品をつくりあげる。そんな創作の輪が、循環していく世界をサポートできればと思うのです。

それぞれに得意分野を公開したアーティストが、 直接には一度も会わずにバンド活動に突入した例も。

次に、CCライセンスで許諾を与える側になるケース。基本的には、この仕組みを利用して作品を公開したい者すべてに利用の権利があるし、その目的や動機はどうあっても自由。 ちなみに、野口さんの解説を披露すると――たとえば、アマチュアが作品と自分の存在を知ってもらうことを願って。いろんな人に知ってもらい、利用してもらい、自分の存在が認知されるのは大歓迎。さらなる創作のチャンスを得るために、公開作品がどれくらいダウンロードされたかを実績としてプレゼンテーションするのも効果的なはず。 音楽の世界では、他人にリミックスしてもらい、想像もできないような作品に仕上がることを期待して作曲作品を公開するアーティストもいるという。それぞれに得意分野を公開したアーティストが、直接には一度も会わずにバンド活動に突入した例もある。CCライセンスを通して生まれるコラボレーションのイメージが、よくわかる。 CCライセンスの利用法、公開法については、クリエイティブ・コモンズ・ジャパンHP(http://creativecommons.jp/)を参照のこと。

【野口さんのお話】 CCライセンスの普及は、一重に著作権者の意識にかかっていると考えます。リリース当初は、CCライセンスと「著作権放棄」を同一視する方も多く、理解と認知はその誤解の解消とともに進んでいます。 CCライセンスを利用するにあたっては、「非営利」や「改変禁止」など、著作権者の意思によって利用の制限は自由に設定できます。特に、この仕組みの精神を色濃く表しているのは、「継承」マークと言えるでしょう。これは、「作品を利用して生まれた新たな作品は、同様に公開されなければならない」との意思を表明したもの。ひとりの創作者が作品を公開することで、公開される作品が次々に生まれていくわけですね。 その点は、一足飛びに変わるとも、変えようとも思っていません。徐々に、誤解なく、CCライセンスの精神と素晴らしさが社会に受け入れられる活動をつづけていこうと考えています。

クリエイティブ・コモンズ・ジャパンからの 読者へのメッセージ

●サンプル感覚で試して、実感してみてほしい。 ●利用者は、提供者に感想や謝辞などのフィードバックを心がけてほしい。 ●CCライセンスに賛同する方からの、寄付をお待ちしています。 クリエイティブ・コモンズ・ジャパンHP(http://creativecommons.jp/) 「寄付コーナー!!」より

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