2009年4月、ジャパン・フィルムコミッションが誕生

vol.47
全国フィルム・コミッション連絡協議会 専務理事 前澤哲爾さん
1月22日、東京新宿/芸能花伝舎において、全国フィルム・コミッション連絡協議会主催の「第4回/全国ロケ地フェア」が開催された。全国からフィルムコミッションがネットワーク参加、単体参加を含めて計41団体集まり、各ブースでの資料配付や映像プレゼンテーション、さらには来場した制作関係者との間で具体的なロケ誘致の打ち合わせなどが活発におこなわれていた。 フィルムコミッションとは映画、テレビドラマ、CMなどのあらゆるジャンルのロケーション撮影を誘致し、実際のロケをスムーズに進めるための非営利公的機関。日本ではかなり立ち後れていた分野だが、この数年日本全国で次々に大小のフィルムコミッションが生まれ、急激に映像制作の環境を変えつつある。 その立役者となったのが、2001年に設立された「フィルム・コミッション設立研究会」であり、その後2002年に「全国フィルム・コミッション連絡協議会」となり、いよいよ2009年4月からNPO法人「ジャパン・フィルムコミッション」(JFC)として本格的に全国のフィルムコミッションの統括組織の活動を開始する。
第4回/全国ロケ地フェア 会場風景

第4回/全国ロケ地フェア 会場風景

「第4回/全国ロケ地フェア」会場で、全国フィルム・コミッション連絡協議会/専務理事である前澤哲爾さんにお話をうかがった。 全国フィルム・コミッション連絡協議会HP http://www.film-com.jp/

 

ジャパン・フィルムコミッションの大きな目的のひとつは、 海外からのロケ誘致。

私たちはフィルムコミッションとロケ・コーディネーターをつい混同してしましがちだが、フィルムコミッションは非営利でロケの誘致に携わる組織を指す言葉。 現在世界には、AFCI(国際フィルムコミッション協会)に加盟しているだけでも、世界41カ国に307の団体がある。それらの多くが国や州・市など自治体等に組織されており、国内ばかりでなく国際的なロケーション誘致・支援活動の窓口として、地域の経済・観光振興、文化振興に大きな効果を上げている。

【前澤さんのお話】 フィルムコミッションとは、本来、海外からのロケを誘致する活動に軸足を置いているもの。有り体に言えば、世界各国、ハリウッドからのロケ隊を誘致したいと考える国や地域が組織して運営しているのです。 そういう意味で、国内各地に、国内の撮影プロジェクトの誘致のためのコミッションが自然発生的に生まれた日本はかなり特殊な歩みをしています。そのきっかけとなったのは、2001年に設立された「フィルム・コミッション設立研究会」で、以降、全国に次々にフィルムコミッションが生まれました。 ジャパン・フィルムコミッションは、まず、それらの統括をする全国フィルム・コミッション連絡協議会の機能をNPO法人に発展させるという意味と、もうひとつ、海外からのロケ誘致の窓口となること目的に設立されます。

世界中の映画人が撮影したがる、東京。 しかし、そこは世界一撮影の困難な街。

海外のフィルムコミッションは、政府や自治体の理解を得て文化活動の一環とみなされ優遇税制が適用されていることがほとんど。しかし、日本にはそのような制度はなく、NPO法人となるジャパン・フィルムコミッション(以下、JFC)には、長期的にそのような制度確立の働きかけも求められる。 しかし、当面の最大の課題は、海外からのロケ誘致。これまでは、統括窓口がないためかなり多くのロケ案件が水泡に期していた。日本や東京の風景を東南アジアなどで撮影したハリウッド映画が多いのが、その証なのである。

【前澤さんのお話】 海外からのロケニーズという意味で言えば、課題になるのは東京でしょうね。海外からのオファーのほとんどは、「東京で撮りたい」。一方、世界で一番と言っていいほど、東京はロケーション撮影が難しい都市なのです。 東京はビジネスの街ですから、道路を遮断しての撮影に市民の理解が得づらく、警察も許可をなかなか出しません。許可うんぬんの前に、「撮影禁止区域」の指定をしてしまっている区域もかなり多い。たとえば新宿の歌舞伎町などは、禁止区域なのです。 その点、ニューヨークはフィルムコミッションに警察からの人材も加わり、円滑な運営ができています。あの街もビジネスの街ですが、実は、道路が碁盤の目になっているため、あるエリアを通行禁止にしても必ず迂回路がとれるというアドバンテージが大きかったりするのですが。 東京では、撮影許可の権限は、警察がほぼすべて握っていると言っていいでしょう。統括窓口であるJFCが、いかに粘り強く交渉し、状況を変えていけるかに期待がかかっています。

2007年公開の日本映画は、 ほとんどがフィルムコミッションを利用。 もはや、不可欠な社会資本となっている。

この数年、全国に次々に、自然発生的にフィルムコミッションが生まれている。 全国フィルム・コミッション連絡協議の加盟フィルムコミッション数は101ながら、非加盟フィルムコミッションは200には達しているのではないかというのが前澤さんの見解。 すでに、日本における映像制作に、欠かせない存在となりつつある。

【前澤さんのお話】 2008年ベースで、劇場公開用の長編映画のうち全作品の78%、全国公開作品に限っては95%がフィルムコミッションの支援を受けています。2008年公開の日本映画は、もはや不可欠の社会資本となっています。

<取材協力者> 全国フィルム・コミッション連絡協議会 専務理事 前澤哲爾さん

<取材協力者>
全国フィルム・コミッション連絡協議会
専務理事
前澤哲爾さん

では、映像制作者が、フィルムコミッションを上手に利用するためのコツはどんなところにあるのだろう。

【前澤さんのお話】 まず、フィルムコミッションはロケコーディネーターでもないし、観光協会でもないということを認識すべきですね。プロデューサーや助監督は、まず、自分の力で情報収集し、イメージ等の要望を絞り込み、具体的な要望を整理した上でフィルムコミッションに相談すべきです。 「こういう風景の場所を3つ、候補にあげてくれ」などという要請の電話がいまだにあるようですが(笑)、そういうことを請け負う機関ではありませんから。また、タイアップ企画にからむこともありません。そのような基本原則は、全国フィルム・コミッション連絡協議のHPに「フィルム・コミッションの三原則」として公開されていますのでご参照ください。

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