WEB・モバイル2009.02.01

ウェブデザイン技能検定という国家資格~いよいよ、ウェブデザインにも国家資格が必要な時代?~

vol.46
厚生労働大臣指定試験機関 特定非営利活動法人インターネットスキル認定普及協会 理事 菊池拓男さん
「今までなかったのか」と思わずうなりました。ウェブデザイナーの国家資格。で、とうとう生まれたのが2007年10月。特定非営利活動法人インターネットスキル認定普及協会(NPO法人格取得2003年7月)が、厚生労働省から指定を受けて検定試験を実施する「ウェブデザイン技能検定」制度がスタートしました。 この検定試験は、他の、アプリケーションメーカーなどが発給する資格とは違い、実技試験があり、合格すれば国家資格としての「技能士」を名乗ることができる。 で、「ウェブデザインに国家資格が必要なのか?」という素朴な疑問には、本文で、同協会理事の菊池拓男さんが答えてくれています。ぜひご一読を。 ■特定非営利活動法人 インターネットスキル認定普及協会 HP http://www.webdesign.gr.jp/

2007年に誕生した新しい国家資格――ウェブデザイン技能検定

国家資格としてのウェブデザイン技能の資格は、このウェブデザイン技能検定だけなんですね。

そうです。ウェブデザイン技能検定は、職業能力開発促進法にもとづく厚生労働省の技能検定で、現在、ウェブデザインに関する唯一の国家資格です。この資格を取得した人は、「技能士」を名乗ることができます。 2009年2月現在、技能検定は全137職種について実施されていて(2009年2月厚生労働省公表データによる)、ウェブデザイン技能検定は2007年10月に加わった、きわめて新しい職種です。基本的に資格試験は都道府県(都道府県職業能力開発協会)において実施されるのですが、現在、137職種のうち10職種は民間機関である指定試験機関において実施されています。ウェブデザイン技能検定は、その10職種のうちの1つであり、特定非営利活動法人インターネットスキル認定普及協会が厚生労働大臣指定試験機関として試験を実施しています。

実技試験あり。 合格者は、国家資格としての「技能士」を名乗ることができる。

ウェブデザインに国家資格があることを、知らない人もまだ多いと思います。メーカーや各種団体が認定する資格と国家資格は、どう違うのですか?

まず、国家資格としての「技能士」を名乗れるか否かがもっとも違う点と言えるでしょう。 また、この検定は、いわゆるアプリケーションの技能試験とは違い、ウェブ設計全般についての技能を検定します。「ウェブはネットワークすべてに通用するインターフェイスであり、情報発信の手段でもある」と定義し、グラフィカルなデザインはもちろんですが、スクリプトやコーディング、プログラムに関する技能も対象になります。資格基準は、既存の民間資格との間に綿密な調整を施して設定したものでもあります。試験細目は、ウェブに公開していますから(http://www.webdesign.gr.jp/wdsc/pdf/2008082505.pdf)ぜひご一読ください。細目は、技術動向に照らし合わせ、3年を目途に変更をしていきたいと考えています。 ウェブデザイン技能検定には、実技試験があることも忘れてはなりませんね。既存の資格は筆記試験のみのものばかりですから、その点も大きな特徴と言えます。

たとえば、実利として、この資格を取得したことでのメリットはあるのですか?

資格は、一般的に、資格は業務独占資格と名称独占資格にわけることができます。業務独占資格とは、医師や弁護士などの国家資格で、これを持たない者がその業務をすれば法律違反で罰せられます。 ウェブデザイン技能検定は、名称独占資格のひとつで、有り体に言えば、この資格がなくてもウェブデザインの業務はできます。ただし、「技能士」を名乗って仕事をするにはこの資格が必要ですから、たとえばクライアントが発注先の技量の基準として技能士資格の有無を問題にすることが定着すれば、きわめて重要な資格になっていくはずです。また、ウェブデザインに関する能力を、国が公証するわけですから、非常に有用性があると思います。従って、資格の価値やその使い方については、受験者個々の判断に委ねられるでしょうね。

ウェブ業界は、社会的認知も進み 業界規模も大きくなっているにもかかわらず、 制作者の能力評価基準がはっきりしていないことが問題。

この資格を設けようと考えた動機は、資格の意義は?

ウェブ業界は、社会的認知も進み業界規模も大きくなっているにもかかわらず、制作者の能力評価基準がはっきりしていないことが問題でした。 仕事を発注するにも、技能者として雇用するにも適正な能力評価がなくてはならない。そのための国家資格が必要と考えたのが動機です。国が保証した基準があることは、評価する側にとっても評価される側にとっても、きわめて意義は大きいと思います。

資格は1級、2級、3級とある。ペーパー実技試験も、大きな特徴。

検定試験は、2008年度から本格的に実施されていますね。

2008年度は、3級試験を年3回、2級試験を年2回、1級試験を年1回実施しました。2、3級試験は2月15日に本年度最後の試験が実施され、1級試験は1月11日に学科試験が終了、学科の合格者を対象とした実技試験が3月1日に実施される予定です。

1級は、かなり難易度が高いのでしょうね。

受験資格として実務7年以上、ただし2級合格者は3年に軽減するなど、細かな規定があります。詳細は、HPの受験案内――受験資格(http://www.webdesign.gr.jp/wdsc/guide.html)をご参照ください。 今回は、第1回目の1級試験ということで、国家資格番号1番をめざした受験生(笑)もかなりいるようです。

試験科目に「ペーパー実技試験」とありますが、これはどんな試験ですか?

文字通り、実技試験としてのペーパー試験です。ウェブデザインの現場には、企画書や設計書など、ウェブ設計を進めるにあたって必要とされる書類がいくつもあります。それらの書類を、課題に沿って実際に制作する試験です。

マルチタスク時代のウェブデザイナーに求められる能力を検定する。 つまりは、ウェブデザイナーの地位向上につながる。

<取材協力者> 厚生労働大臣指定試験機関 特定非営利活動法人インターネットスキル認定普及協会 理事 菊池拓男さん

<取材協力者>
厚生労働大臣指定試験機関
特定非営利活動法人インターネットスキル認定普及協会
理事
菊池拓男さん

繰り返しの質問になりますが、ウェブデザイン技能検定の資格の意義をもう少し説明してください。

ウェブは、ここまで長足の進歩を遂げた世界ですし、これからも進歩はつづくでしょう。たとえば、ユーザービリティに求められるものも日々高度になります。そんな中で、ウェブ制作者に求められるものはグラフィカルなデザイン力だけでなくなるのはもちろんのこと、スクリプトやコーディング、プログラミングへの理解、時には技術にも至るようになるはずです。要は、いろいろなネットワークデバイスに同じように表示できるものをつくるために必要なものは、すべて求められるようになる。マルチタスクになるということです。 そんな時代に適応したウェブデザイナーとは?に、国家資格が基準を示すことは、業界の発展と繁栄のために必要不可欠と私は思います。ウェブデザイナーの地位の向上という側面でも、果たす役割は大きいでしょう。この資格には、そのような意義があると確信しています。

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