クリエイターのためのWEB2.0講座-その2- ~ビジネス支援会社/クインランドの場合~
- vol.24
- 株式会社クインランド 代表取締役社長 岩田昌之さん
取材協力者 株式会社クインランド 代表取締役社長/岩田昌之さん http://www.quinland.co.jp/
中古車市場には、情報の不均衡があった。それをWEBで解決しようとし、ビジネスチャンスが生まれた。
レモンの理論で有名な経済学者/スティグリッツは、「売り手と買い手の間に情報の不均衡がある市場は成長しにくい」と言いました。1990年代初頭の中古車販売市場は、まさにその不均衡の真っ只中だったのです。悪徳業者が走行距離メーターを改ざんしていても、事故車であることを隠していても、素人であるユーザーさんにはわからない。レモンを買って帰り、切ってみて初めて中が腐っていることがわかる。同じ車種の価格相場も、地域によってまったく違っていました。そんな状況が、中古車への不信感を醸成していたのです。私たちがWEBを使ってその不均衡を是正した結果、市場が成熟し、真面目に商売をしている業者が成功できるようになった。その功績には、自負を持っています。
米国特許を取得したNIA-MUCがブレイクスルーを生んだ。
自動車購入時にユーザーには3つの情報源があります。ひとつは自動車メーカーからの広告などの情報、もうひとつは雑誌などでの専門家からのアドバイス情報、そして3つめにあるのが先行ユーザーからの体験情報。その3つの集合知が顧客の購買行動につながると考え、構築したのがWEBにおける意思決定促進ビジネスモデル「NIA-MUC(ニアマック)」です。専用のエンジンを開発し、先行ユーザー情報を閲覧できる掲示板を組み込んだNIA-MUCは、想定以上のコンバージョンレート(購入率)を達成しました。掲示板を介したユーザーのコミュニティが、広告や専門誌を超える情報源となることが証明されました。米国特許を取得(2007年3月)し、近く日本での特許取得も視野に入れているNIA-MUCは、今でも当社の重要なコア・コンピタンス(競合他社に真似できない核となる能力)です。
UGCを企業の武器とするには、何が必要か。
現在当社は、企業のWEB戦略、インターネット戦略を支援する業務に注力しています。パッケージプロフェッショナルとして、ビジネス支援企業として、クライアントが望む機能や仕組みをパッケージにしてご提供します。特に、UGC(ユーザージェネレイテッド・コンテンツ)は得意分野だと言えるでしょうね。WEBユーザーが自立的に、自然発生的に作り上げていくUGCは、その使い方ひとつで企業の強力な武器にもなります。もちろん、闇雲に作れば、資金をどぶに捨てることにもなりまねません。NIA-MUCの開発・運用で培われた当社のノウハウが、大きくものを言う分野です。効果的な使い方の模索も含めて、当社のディレクターが開発・運用のお手伝いをいたします。
SIPS事業、Qlep(キューレップ)事業、FrameFree(フレームフリー)事業の3本柱からなる、DMES事業。
当社はICTを駆使するDMES(デジタル・マーケティング・エンジニアリング・サービス)を核に、戦略的WEBサイトの構築をワンストップで請け負うSIPS事業、地域密着型ポータルサイトQlepを開発・運用支援するQlep事業、デジタル映像の特許技術であるFrameFree(フレームフリー)技術の各国へのマーケティング戦略立案のサポート及びR&DをするFF事業の3事業を柱としています。 SIPSは1社1社にディレクターが入り、その会社のビジネスをITで支援するものです。いわば、オーダーメイドの戦略支援ですね。Qlepとは、SIPSでまかないきれない中小、個人の事業支援ビジネスです。地域ポータルを立ち上げ、そこに中小、個人経営の店舗に廉価で参加してもらう。2004年1月に立ち上げた『地域生活情報ポータルサイトQlep』は、京阪神でトップクラスのアクセス数(月間約550万PV:2006年12月末時点)を誇る人気サイトに育ち、2007年4月2日には全国47都道府県でQlepを開設しました。全国でのアクセス数も2,000万PVを超えました。
株式会社クインランドの事業領域
次世代のデジタル映像技術――FrameFree
FrameFreeは、まさに次世代のデジタル映像技術です。動画映像は、1秒間に24~30の静止画フレームによって成り立っています。FrameFreeは例えば、人が前を向いた静止画と後ろを向いた静止画を設定すれば、その間の20数フレームを予測演算し、バーチャル静止画として自動生成します。従来のQuickTime、DVD、MPEG、WMVといったビデオ形式とはまったく違った理論で映像作りをする技術です。 実は、当初はSIPSとして株式会社モノリス様のFrameFreeにまつわる販促プロジェクトに参加しましたが、その技術の将来性に大きな可能性を感じ、当社からも出資する共同事業に仕切り直しをしました。それがFF事業です。 クリエイターズステーションの読者の中にも、映像制作者さんがたくさんいらっしゃるとお聞きしています。ぜひ、お試し版を使ってみてください。
数年前のSIPSブームとは、環境が違う、ニーズが違う。
SIPSは、Strategic Internet Professional Serviceの略です。決して目新しい用語ではなく、「数年前に流行ったけど、すぐに廃れたね」というお話をされる方もいらっしゃいます。あの当時、SIPSがお題目で終わってしまったのには理由があります。それは、ブロードバンド以前で、環境がまったく追いつかなかったからです。インターネットで何かしようと考えても、結局選択肢はきわめて少なかった。メールマガジンを送るのが関の山でした。しかしブロードバンド以後の現在、ユーザーのインターネットへの依存度も飛躍的に上がり、プロモーションの選択肢も飛躍的に増えました。そうなると一転、それを利用したビジネスを創案する企業さんは、何を選び、どう組み合わせるかが悩みの種になるのです。そんな今こそ、SIPSが重要です。まず、何を選ぶか、どう考えるかの交通整理からお手伝いできる当社の存在はきわめて大きいと思っています。
WEB2.0は、当然の帰結だ。
WEB2.0が話題になっていますが、まず、定義があやふやですよね。ある人はアマゾンのロングテールビジネスが2.0だと言い、ある人はSNSこそ2.0だという。私の実感としては、インターネットの特性を考えれば、どちらも当然の帰結でしかないと思います。インターネットは双方向のメディアです。それを活かせば、ロングテールも、SNSもできて当たり前。できていなかったこれまで、まるで新聞やテレビと同じ扱いをしていたこれまでが稚拙だったのです。インターネットの特性を活かした諸々のことすべてが、WEB2.0なのだと思います。