日本初のスマホ向け放送局!NOTTVだからできること
- Vol.97
- 株式会社mmbi 編成統括部 番組企画担当シニアマネジャー 馬場淳之さん
放送と通信それぞれの特性をどう活かしていくかについて、試行錯誤を重ねてきた株式会社mmbi編成統括部番組企画担当シニアマネジャーの馬場淳之さんに、NOTTVならではのコンテンツづくりと可能性について、お話をうかがってきました。
開局から1年半を無事に乗り切れた 今からが本当のスタートだと思う
まず、簡単にNOTTVのサービスについて教えてください。
そうですね、チャンネル数は3つで、情報バラエティやスポーツ生中継、ドラマ、BS・CSの人気番組などを放送している「NOTTV1」、「NOTTV2」と、ニュース専門チャンネルの「NOTTV NEWS」があります。 各チャンネルは2~3セグメントの情報量で送っているんですが、画質はワンセグの約10倍、すごくきれいですよ。野球中継でもボールがどこに飛んだかハッキリ見えます。今、地上波であまりしなくなった地方の野球中継も観られるというのですごく喜ばれています。 この3つのチャンネルは“リアルタイム”で放送しているのですが、これとは別にNOTTVならではの“シフトタイム”視聴というのがあります。 これは、深夜から早朝、おすすめ番組やコンテンツを自動的に送信してスマホのSDカードなどに一時保存し、期間が過ぎたら自動的に消去されるというものです。 スマホなので場所によって圏外になることもありますが、そんな時でも何も観られないということにならないためのサービスです。
視聴料を払ってもらいながら圏外だから観られない、では済まない?
そうです。これなら圏外でもいつでもどこでも視聴できます。ただ、このシフトタイム視聴には注意点があって、こちら側がデータを送信している深夜から早朝にかけては、窓際など受信状態の良い場所にアンテナを伸ばして置いてほしいんです。それから、普通のテレビとは違う、今までになかった視聴方法なので、ちゃんと受信できていても気づかないうちに期限切れで消去されてしまうことがあるので気を付けていただければ。 このシフトタイムでは、番組だけでなく新聞などのデジタルコンテンツもお届けしています。たとえば毎日新聞さんの電子版「毎日新聞TAP-i(タップアイ) NOTTV版」。毎朝ポストに朝刊が届くように、スマホに新聞が届きます。また、わりと近いうちに電子書籍も実現すると思います。
月々420円の契約者が、今年の9月に150万件を超えたそうですね!
やはり対応端末の発売と合わせて契約数もグンとのびるんですね。開局当初はスマホ1機種、タブレット1機種しか対応していなかったのですが、8月末でドコモのスマホ・タブレット端末33機種に対応しています。 NOTTVはアイコンをタップするだけでテレビが映ります。ただ、これを継続して有料視聴してもらうには、無料アプリをタップするよりも圧倒的に内容が面白くなければならないし、一人ひとりのユーザーさんにとって少なくとも毎週1回は必ず観たくなる番組がないと、「もういらないや」ってことになってしまう。 それには何と言っても重要なのが番組編成なんですよね。
ネットなのかテレビなのか?誰がいつ観るのか? 何を観たいのか?反応を見ながら今も模索中
日本初のスマートフォン向け放送局として開局から1年半経ちました。 番組編成についても試行錯誤の連続だったと思いますが。
実は開局からこれまでは、大きな事故もなくやってこられただけで御の字みたいなところがあって、ユーザーのみなさんが何を観たいと思っているのかは、やってみないとわからないよねというのが正直なところです。 開局当初は、スマホを持っている人が対象になるので、まずメインのユーザーになるのは「デジタルに強くて新しいものに飛びつく人」ということで、20代から30代の男性をイメージしていました。 でもそこから先はノーイメージで、いったい彼らは何時にこれを観るんだろうか、と。地上波のピークは夜8時過ぎから10時過ぎぐらい、ネットは深夜0時を過ぎたらアクセスがガッと上がります。スマホは昼間は必ず持っているし、朝も、寝てるときにもだいたいそばにありますよね。でも、観るのはいつなのか?このへんで観るんじゃないのか?という編成だったんですよ。 ジャンルも、やってみて反応を見るしかないねということで、総合編成です、と言い切って、本当に幅広く色々なジャンルの番組を並べました。
地上波だと視聴率がひとつの指標になりますが、NOTTVでは?
実は、視聴者のカウントを正確に測るシステムはないんです。プロフィール登録をしてくださっている方のデータと、連携しているSNSのコメントやコールセンターに入ってくる再放送のリクエスト、公開生放送への問い合わせなどから読み取るだけですね。そこで見えてきたのは、ネットの人たちとは少し志向が違うな、という事。お昼の時間帯にビョンと反応が上がったりするんですよ。やっぱりネットというより、テレビとしてこれを観ているんだな、と。
まったく新しいメディアなので、本当にひとつひとつ手探りなんですね
とにかく地上波では観られないものを編成していかないと、誰もお金を払ってまで観てはくれない。これだけは方針としてあったので、そういうものを色々試してきて、結果が少しずつ出てきている感じです。 当初の若い男性視聴者というイメージも、契約者数100万、150万という単位になってくると、もうその方々だけがメインターゲットということはあり得なくなっていることは肌で感じています。さらに地上波放送でも普通にデータ放送で投票を始めたので、それを超えるようなものを作らなきゃいけない!というのが我々の次のステップです。
視聴率に左右されない自由さが強み 地上波ではできないことをやる!
「地上波ではできないこと」というと?
たとえば、放送と通信の連携という意味では、「アイドル☆リーグ!」という番組をやっています。MCはドランクドラゴンの塚地武雅さんで、日本テレビの同名番組と連動して、アイドル9人が地上波に出るための予選会を生放送しているんです。出演できる5人の座をめぐっていろいろな企画に挑戦するんですが、視聴者は「在宅プロデューサー」としてNOTTVの投票機能を利用して投票したり、意見を出したりして、アイドルを育てていくというバラエティ番組です。すごくマニアックな世界ですけど反応はかなり良くて、やっぱりアイドルおたくの人たちのツボなんだと思いますね。
アイドルと言えば、AKB48の番組もありますよね?
「AKB48のあんた、誰?」ですね。こちらもAKB48だけれど地上波にはほぼ出てこないメンバー、思わず「あなた、誰?」って聞いちゃうような子たちをメインに、AKB48 CAFE&SHOPで毎日公開生放送しています。 こちらもポイントは視聴者の企画参加です。番組プロデューサーがGoogle+に「明日○○さん、○○さん、○○さん,○○さんが出ます。これから企画会議しましょう」みたいな感じで、書き込むんですね。 そうするとファンの方達から、この子はこういうことが得意だからこんなのをやってほしいとか、この子とこの子でこういう対決を見たいとか、アイデアがワーッと来て、その中から「採用!」みたいな。しかもそこに本人も入ってきて「こういうことやりたい」なんてコメントを出したりしてね。さらに、夜は再放送を観て、Google+上で反省会までやっていますね(笑)。
すごいスピード感とリアル感ですね。
最初からこういう形だったわけじゃなくて、自然にこうなったんですよ。というのも、AKB48は毎日何かやっているので、出演者が決まるのが前日、前々日ぐらいなんですね。時間はないし資料はないしで、だったらファンの人たちから教えてもらった方が早いってことで始めたんです。毎日の番組なので毎日どうしようかってやっているうちに企画会議になって、それで番組の内容をここで夜決めようというふうになっていったんです。
その緩さも、まさにネット連動ならではですね。
それで言うと「#エンダン」という月~金の深夜にやっている生バラエティは、ツイッターを使って当日その場で企画を動かしていくという生番組なんですが、これもけっこうな人気番組です。やついいちろうくんというお笑い芸人がメインMCで、今日はこんなことやりたいとか、こんなことしたいとみんなに投げかけて、ツイッターで答えを返してもらうと。 ここにはいろんな方が来てくださっていますが、今年の7月11日には政界を引退された鳩山由紀夫さんが来てくれました。で、鳩山由紀夫さんに何をしてもらうかって、「僕の十八番の歌を歌います」とかね。そんなことすんの!?みたいなことをよくやっています。 ゲームの高橋名人が来てくれたときは「高橋名人と連打対決〜!」とか言って、高橋名人よりも速くタップできた人が勝ち!みたいな。その時に対決する相手はスタジオにはいなくて、画面の向こう側にいる視聴者なわけなんですが、視聴者は自分のスマホで何打したかわかるし、僕らのところにもそれがデータとして送られてくるんですよ。高橋名人は何打しています、それより早い人がいましたって。直接触れるのですごく参加感があるんです。スタジオは、テレビなのにみんな下向いて誰もしゃべらずひたすら連打。でも、視聴者も連打してるから観てられな~いって(笑)。
CM料ではなく、視聴料で制作しているから、自由度がある?
そうなんです。そういう意味ではスポンサーのことを考えないで作れるんですよね。昔の深夜番組みたいな空気があります。 「GIRIGIRIアウト! しばらくお待ちください」っていう金曜日の深夜にやっている番組は開局当初からの番組なんですが、トータルテンボスの二人がMCで、現役アイドルたちが地上波では放送できない「ギリギリなこと」に挑戦するお色気たっぷりな生バラエティです。 もちろん、男性にはとても人気なんですが、さらにデータ放送を使って楽しめるんです。正面からのカメラでギリギリ見せちゃいけないシーンになってくるとふすまが閉まるんですが、画面を連打するとそのふすまがちょっとずつ開いてくる。自分の叩き方によってスマホの画面上でふすまの開き方が変わるんです。今日は反応が悪いとかっていうツイートがたくさん来るんですよ。 地上波ではR18の番組なんて絶対流せないですし、いわゆるお色気番組っていうのはもうなくなっちゃっているので、20年ぐらい前のお色気番組をやってみたらみんな観るんじゃないかっていう感覚ではじめたんだと思います。地上波でできないことの筆頭はお色気系なのかもしれないですね(笑)。
手の中の自分だけのテレビとしての可能性
スマホはとてもパーソナルなものだから、個人で楽しめる番組というのも鍵かもしれませんね。
そうなんですよ!ある意味、それがこのメディアの最大の特徴なんですよね。家族で一つのスマホを観るということはあまりない。だから男でも女でも「個人で観る」「個人で楽しめる番組」ということがキーワードであるとハッキリわかってきました。ただ観ているだけじゃなくて、自分のスマホで参加していると楽しい。テレビもリモコンボタンで参加できたりしますが、その感覚とはちょっと違う。普段から触って操作しているものだから参加しやすいんですよ。そういう意味では、見るテレビよりも、触るスマホに近い感覚で受け入れられていると思います。
スマホで参加する番組づくりということ?
去年の12月からの番組で「お昼の100万円クイズLIVE」というのがありますが、月〜金のお昼に毎日生放送しているクイズ番組です。1日5問、すごく簡単なクイズを4択とか8択とかで出して、全問正解すると賞金20万円をその日全問正解した人で山分けするというシンプルな企画です。正解者が一人なら20万円丸ごと、正解者がいない場合は翌日にキャリーオーバーになります。月~金毎日やっているので、1週間で総額100万円の賞金になるというわけです。 通常クイズ番組はスタジオに解答者がいますが、この番組ではいないんです。地上波の番組はスタジオに出演した人が賞金をもらうっていうのが基本ですよね。でも、NOTTVはスタジオに来なくても、全国どこにいてもスタジオと同じように参加できる。さらに、ここでもやはりスマホならではの特徴としてその賞金がドコモの送金サービスを利用してすぐに手元に届くんです。 今はすごく簡単なクイズですが、もっと本格的なクイズを盛り込んだ番組にリニューアルしようかと思っています。地上波でもデータ放送で参加する番組がでてきていますよね。我々はもっと違う楽しみ方、敷居は低く、地上波テレビじゃ絶対やらないとてつもないことを近々やろうって、ちょっといま企んでいるところなんです。
NOTTVの可能性にわくわくしますね。ありがとうございました!