手芸のポータルサイト「ステッチステッチ」~博報堂DYグループの社内ベンチャー制度から誕生~

Vol.102
ステッチステッチ株式会社 代表取締役 システム担当取締役 小田則子さん、山中裕子さん
「手芸」と「デジタル」は縁遠いもののように感じますが、この2つを融合するサービスが登場しました。「ステッチステッチ(https://stitch2.com/)」は「手芸のポータルサイト」を目指し、昨年10月にオープン。編み図やパターン図の1点ごとの販売やSNS機能など、今までになかった手芸に関するサービスを次々と提供しています。 そこで今回はステッチステッチ株式会社代表取締役の小田則子氏と、システム担当取締役の山中裕子氏にインタビュー。女性2人で立ち上げた想いや、今後の展開について、興味深いお話をお聞きしました!

手芸に関する情報をトータルで扱う 日本初「手芸ポータルサイト」

「ステッチステッチ」はこれまでにないコンセプトのサイトですね。

小田さん:「手芸」のWeb分野では、毛糸メーカーなどが商品の普及や販売のために独自に情報発信をしていましたが、包括的に情報を探せるサイトはありませんでした。例えばマフラーが編みたいと思ったとします。ある程度技術があり、マフラー1本ならば本を買うほどのことでもなく、Webを検索して編み図を探そうとしても、あちこちのメーカーサイトや販売店サイトに行かなくてはなりません。各社はとても素敵な作品と編み図を提供しているんですが、比較しながら自分が作りたい作品を探すことができないので、ユーザーはとても不便だったんです。それを一括で調べられるサイトが欲しいと思っていました。

小田さんは元々手芸が好きだったんですか?

小田さん:はい、ブランクがありながらも、小さい頃から手芸を楽しんできました。海外には様々な情報を一括で探せるサイトがあり、300万ユーザーを集めているほどなのですが、日本にはないのが不満だったのです。

自分が欲しいサービスをビジネスプランに 博報堂DYグループの社内ベンチャー制度に応募

その不満からサイトの立ち上げに至るキッカケは?

小田さん:博報堂DYグループの博報堂アイ・スタジオに勤務していた2012年9月に、博報堂DYグループの社内ベンチャー制度に手芸ポータルサイトの企画をビジネスプランにまとめて応募したことが始まりです。いろいろな方の力を借りつつ、なんとか審査に通過しまして、起業することになりました。

小田さんはもともと起業志向だったのでしょうか?

小田さん:いえ、まったく(笑)。Web業界でのキャリアは長く、最初は自社サービスのマーケティングなどを手がけ、博報堂アイ・スタジオに入社後は解析チームでクライアントサイトの効果検証など分析業務を手がけていました。特に野望というほどのものもなく仕事をしていたのですが、たまたま自分が好きな手芸の分野で欲しいサイトがなかったから自分で作っちゃおう、という感じです(笑)。

2012年9月の応募から、わずか約1年後の2013年10月10日にローンチしてますね。

小田さん:実は審査が通って起業が決まったのは、2013年2月。そこからスタートして、8ヶ月後にはローンチにこぎつけました。最初は編み図などの作り方を1点ずつダウンロードできる機能だけでオープンし、12月にはユーザーが投稿したり、「作ってみたい!」ボタンを押したりできるSNS機能を追加しています。

山中さんは最初から参画していたのですか?

山中さん:小田さんのビジネスプランを見て、プログラマーである自分の出番が多いことを理解して、一緒にやらせてもらうことにしました。自分自身にはあまり「手芸好き」という意識はなかったのですが、自分で身につけたいアクセサリーをビーズで作ったり、小物に好みのデコ(飾り付け)をしたり、ライトな手づくりはしていたんですね。そうしたら小田さんに「それこそが手芸だよ!」と言われて、「そうか自分は手芸好きだったのか」とそこで初めて気づきました(笑)。

小田さん:編み物をしたり、裁縫をすることだけが「手芸」ではないんです。手芸とは、もっとライトで間口が広いもの。ちょっとした手づくりを楽しむ気持ちが手芸なので、そんな想いを持つ人の受け皿になっていきたいですね。

手芸市場を広げる場としてコンテンツホルダーが協力 「レシピ」は現在4,000以上!

ところで、ステッチステッチでは編み図や作り方を「レシピ」と称していますが、これは一般的な呼び方なのでしょうか?

山中さん:編み図やパターン図、型紙を見ながら作っていくことだけが手芸ではありません。形式におさまらないビーズやデコの「作り方」も総称して「レシピ」と呼ぶのは一般的になってきています。

小田さん:手芸の世界でも料理のクックパッドのように、ユーザー同士で「レシピ」を交換し合ったり、作ってみた感想を言い合ったりすることが当たり前になってほしいですね。

名刺

現在はどのくらいのレシピが公開されているんですか?

小田さん:手芸業界全体として、手芸人口を増やして市場を広げていこう、という機運があったことが幸いし、現在では21団体の協力があり、全体で4,000以上、無料でも800以上のレシピが公開されています。

サイトの企画性を高め、認知拡大へ 「作家」とのコラボイベントも

ローンチから4ヶ月経ちますが、手応えは?

小田さん:まだ手探りなことも多いのですが、リスティングやアドネットワークの効果も上がってきて、ユーザー数もPVも伸びています。とはいえ、まだまだ認知度が低いので、手芸好き・手づくり好きの人にもっと知ってもらうことが課題です。

認知度を高めるための施策は?

小田さん:広告はこれからも打っていきますが、より幅広い人に知ってもらうためには、ステッチステッチ内の企画性やイベント性を高めて、情報発信をしていくことが大切だと考えています。メディアに取り上げてもらったり、他媒体とのタイアップをすることで、裾野を広げていきたいですね。

山中さん:手芸作品を創り出す「作家」さんのパワーもすごいんですよ。ファンが付いている作家のオリジナル作品を掲載したり、コラボイベントも企画していきたいです。

デジタルの力で「手づくり」の文化を残したい 手芸を楽しむプラットフォームに

今後、どんな機能拡充を考えていますか?

山中さん:現在の「編み物」「ソーイング」「ビーズ」「デコレーション」のレシピカテゴリーをもっと増やしていきたいです。また、気軽に質問できるフォーラム(掲示板)システムを現在作っているところです。手芸に対してテクノロジーができることはまだまだあると思うので、いろいろな便利ツールも作っていきたいです。

小田さん:レシピだけでなく、手芸を楽しむプラットフォームにしたいので、手芸愛好家のコラムなど読み物コンテンツも増やしていきたいです。ただレシピを探しに来るだけではなく、カワイイものを見たい時に来てくれて「カワイイから作ってみたい!」と感じてもらいたいですね。

山中裕子氏

ステッチステッチ株式会社
取締役
山中裕子氏

小田則子氏

ステッチステッチ株式会社
代表取締役社長
小田則子氏

ステッチステッチの今後の方向性を教えてください。

小田さん:多言語対応して、世界中の人がレシピを探しにきたり、手芸好き同士でコミュニケーションできる手芸のプラットフォームになることが目標です。今は何でもすぐに買える時代ですが、買ったものは忘れてしまっても、小さい頃にお母さんに作ってもらった手づくり品は思い出として一生残るもの。そんな手づくりの文化を残していく役割をステッチステッチが担いたいと思っています。

 

取材日:2014年2月7日 ライター:植松

■ステッチステッチ

ステッチステッチ 「ステッチステッチ」は、新しい“手芸のポータルサイト”。 手芸を「さがして」「つくって」「つながる」機能と、 1レシピから購入できるレシピ集を兼ね備えた、 「手作りの楽しみがもっと広がる」サイトです。 URL:https://stitch2.com/

 
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