世界で唯一のフリーペーパー専門店~フリーペーパーだからこそ表現できる面白さを伝えたい~
- Vol.104
- 株式会社Beatface 代表取締役CEO 松江健介さん
世界唯一のフリーペーパー専門の本屋さん 作り手と読み手をつなぐ架け橋に
ONLY FREE PAPERを始めたキッカケを教えてください。
最初は3人でスタートしました。3人ともカルチャー雑誌を読んで育った世代で、雑誌や本の紙媒体が好きだったのですが、インターネットが普及して雑誌が次々と廃刊になり、寂しい気持ちがあったんですよね。そんな時代だからこそ、あえて面白い本屋をやりたいという思いがありました。3人のうちの1人がフリーペーパーを集めていて、面白いフリーペーパーがたくさんあるから専門の本屋を作ろう!という流れになったのです。
フリーペーパー専門の本屋、というのは初ですよね。
世界で唯一の本屋だと思います。フリーペーパーを作っているクリエイターと読み手をつなぐ架け橋になりたかったんですよね。「誰でも参加できて楽しめるフリーペーパーのプラットフォーム」がコンセプトでした。
ごく普通のフリーペーパーも収集してオープン 誰でも参加できて楽しめるお店に
最初はどのようにフリーペーパーを集めたのですか?
発行元に連絡を入れて送ってもらったりして、9割は自分たちで集めました。「これが無料なの?」と驚くようなクオリティの高いものや視点が面白いものも集めましたが、一般的なフリーペーパーも多く集めました。感度の高い人だけでなく、ごく普通の人が普通に楽しめるお店にしたかったのです。
最初のお店は渋谷の一等地だったんですよね!
キャットストリートにお店を構えました。サブカルチャー寄りになって、自分たちが探してきた面白いものを見せつけるようなお店にするならば、「知る人ぞ知る」ような立地でも良かったかもしれません。ですが、ONLY FREE PAPERは「誰でも参加できて楽しめる」がコンセプト。間口の広さが必要だったので、あえて人目に触れやすい場所を選んだのです。
オープンしたときの反響はいかがでしたか?
予想以上に反響がありましたね。メディアの取材もたくさん受けました。「フリーペーパーだけの本屋」というコンセプトがとてもわかりやすく、誰もが直感的に「面白そう」と感じられるものだったことが良かったと思います。もちろん、キャットストリートという目立つ場所にお店を構えたことも大きかったですね。
読んでみて楽しめることが取扱いの基準 フリーペーパーならではの表現が面白い
フリーペーパーは、クーポンが多く掲載された大手企業が出しているものから、ごく個人的なものまで多種多様ですが、ONLY FREE PAPERで取り扱う基準はあるのですか?
ハッキリした基準を設けているわけではありませんが、基本は「本屋」なので、「読む」「見る」という目的がないクーポンばかりのフリーペーパーはお断りしています。見たり読んだりして楽しめる「本」として価値のあるものなら、100%広告でもかまいません。記事広告は読んで楽しめますし、クオリティの高い写真ならばカタログでも見て楽しめますから。
ONLY FREE PAPERに置いてあるフリーペーパーを見ると、きちんと装丁されたものもあれば、ペライチのものも、手書きのものもありますね。
表現するために紙を使っているものであれば、形態はこだわっていません。100ページあって、きれいに装丁されて「これが無料?」と驚くようなフリーペーパーも良いですが、フリーペーパーでなくてはできない表現がされていると面白いなあと思います。
力の入った有名フリーペーパーの真似はつまらない 「たかがフリーペーパー」ぐらいでちょうどよい
ONLY FREE PAPERは4年目だそうですが、この4年でフリーペーパーの傾向は変わりましたか?
フリーペーパーのコンテストがあったり、雑誌やテレビで特集が組まれたり、フリーペーパーに注目が集まってきたと思います。ただ、注目が集まった分、クオリティをすごく上げようとしたり、つたないものを出してはダメと考えたり、あまりにも真面目にフリーペーパーと向き合ったものばかりになるとつまらないと思うんですよ。フィルターをかけないで、そのまま出してしまうところにフリーペーパーの面白さがあると思うので。
同じようなものばかりになってしまう、ということですか?
最近は自治体が有名なディレクターや編集者を入れて有料の雑誌のようなクオリティのものを作ることが多くなっています。北九州市が出している「雲のうえ」というフリーペーパーがあるのですが、非常にクオリティが高くて人気があって、ファンが作った「雲のうえのしたで」というフリーペーパーがあるくらい(笑)。「雲のうえ」が良いフリーペーパーなのは私も異論はないのですが、他の自治体や学生が作るフリーペーパーが「雲のうえ」の真似になってしまうと、あまり面白くないですよね。
真似だと、頑張っても本家は越えられないですよね。
フリーペーパーは、読んで人生を変えるようなものでなくてもいいと思いますし、無難なものを作っても読み手の印象には残らないと思うんですよ。「たかがフリーペーパー」くらいに考えて、肩の力を抜いて作ってほしいです。
クリエイターにとって、フリーペーパーの面白さはどこにありますか?
普通の人が何となく持っている面白い目線に触れられることですね。誰にでもある発想かもしれませんが、それを形にしているフリーペーパーを見ると、気づかされることも多いですよ。
不完全なものを扱う面白さが魅力 地方にも拠点を作りたい
そんないろいろな普通の視点が集まった「フリーペーパーの本屋」なんですね。
たとえ自費出版であろうが、有料誌には「売る」責任がありますから、きちんと編集されたものが世に出回ります。フリーペーパーのようなある意味不完全な紙を取り扱っている本屋はどこにもありません。そこが他にない面白さですね。
今後の展開を教えてください。
有料の本や雑誌は、古本になってもAmazonなどで買えますが、フリーペーパーは出したら出しっ放し(笑)。もったいないと思っているので、電子化してアーカイブとして残していきたいと思っています。また、地方のイベントに呼ばれることも多いので、カフェとコラボレーションするなどして、地方にも拠点を作っていけたら良いですね。これからもフリーペーパーの制作者と読み手をつなげる役割を担っていきたいと考えています。
取材日:2014年4月5日 ライター:植松
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