商品を自分で取りに行くネットショップ?! 『にっぽん てならい堂』

Vol.109
合同会社続(つづく) 代表 中村真一郎
たくさんのモノがあふれている中で、自分で「見て」「体験して」手に入れたモノは価値が違います。大切に使っている道具は、単に「買う」だけではない、ストーリーが込められていることが多いもの。そんな商品を集めたセレクトショップが「にっぽん てならい堂」です。今回は「にっぽん てならい堂」を運営する合同会社続(つづく)の中村真一郎代表にインタビュー!個性的なネットショップを立ち上げた経緯や、日本のモノづくりの現状、品揃えへのこだわりなどについて伺いました!

「商品を取りに行く」ネットショップ 見て感じる買い物のプロセスを楽しんでほしい

ネットショップと言えば「便利」が特徴ですが、「にっぽん てならい堂」は普通のネットショップとは一線を画していますよね。

まったく便利ではないですからね(笑)。 てならい堂では「商品を取りに行く」ことにこだわっています。つまり、モノづくりの現場に行って、見て、感じる・・・そんな買い物のプロセスを楽しんでほしいと思っています。

個性的なネットショップを立ち上げることになった経緯は?

前職はオールアバウトのネットショップ部門の責任者でした。2年前に独立したのですが、以前からネットショップの「早さ」「安さ」を競う方向性に疑問を感じていたんですよね。「商品を届けないネットショップ」のコンセプトから発想を広げて行きました。

そこから「取りに行く」「体験して買う」などの商品が生まれてきたのですね。

日本のモノづくりは、その土地の風土に根付いたものです。現地に行き、実際にモノづくりの現場を見たり、職人さんに話を聞いたりして感じることで、モノの価値は高くなるのではないか・・・そんな付加価値のある商品を売るショップにしようと考えました。

構造変化が起きているモノづくりの現場 危機感を持つ同世代の職人と一緒に仕事を!

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「にっぽん てならい堂」の商品は、モノづくりの現場の協力が不可欠ですよね。どのように取引先を開拓しているのでしょうか?

前職はオールアバウトのネットショップ部門だとお話ししましたが、もともとは人事や経営企画の部署でした。事業をやってみたくて希望を出して異動した時に、勉強のために取引先メーカーの現場を回ったのです。オールアバウトのネットショップ「スタイルストア」は、ストーリー性のあるこだわりの品揃えをしていたので、熱意を持ってモノづくりをしている「一国一城の主」の職人たちと出会うことができました。そのつながりで、てならい堂を立ち上げる時に声をかけたら、「やってみよう!」と賛同してくれたのです。

モノづくりの現場でも、「にっぽん てならい堂」のような企画商品を必要としていたのでしょうか?

職人に聞くと「地域に人を連れてきてほしい」と話す人が多かった。自社のことだけじゃなくて、地域のことを想う人が多いんですね。それから、モノづくりの現場は構造変化が起きている真っ最中なんですよ。例えば、今まで問屋や百貨店のバイヤーに任せていれば勝手に商品が売れたのに、売れなくなった。その原因が、今まで誰に売っているのかもよくわからないままに作ってきたので、よくわからないんです。お客さんの声を聞いて商品を作る、これまでとはまったく違う新しいプロセスのモノづくりを、最初から構築しなくてはならない。技術もあるし、お客さんのニーズもあるのに、何を作ったら良いのかわからない現場は多いですね。

商品を作る現場に行って買う「にっぽん てならい堂」の商品は、モノづくりの現場のニーズにも合っていたわけですね。

私と同世代の30代の職人たちの中には、モノづくりの現状に危機感を持っている人が多いです。伝統的なモノづくりの現場は保守的な世界ですが、後世に伝えられずに途切れてしまうのではないかと危機感を持って、打破しようと頑張っている同世代の職人たちを心から尊敬しています。彼らと一緒にずっと仕事をしたい、という思いも、てならい堂を立ち上げる動機になりました。

暮らしを見つめ直すニーズに応えたい 「体験」ではなく本物に近いプロセスを提供

買い手であるお客さんの反応は?

SNSなどで気軽にバーチャルなつながりが持てるようになった反動で、リアルなつながりを求める人が増えていると感じています。実際に見て、触って、体験しながらコミュニケーションを取れる場を求めて、てならい堂の商品を購入してくれるお客さんが多いですね。また、これはやってみてわかったのですが、「学び」の要素がすごく求められているんですよ。「体験して楽しかった」というより、「製造工程がわかって勉強になった」「現場で感じることで学ぶことがあった」という感想が多いんです。

「学び」が求められるとは、とても興味深いですね。

私自身もそうですが、子どもができたり、人生のステージが変わるタイミングで、暮らしを見直そうとする人が多いのではないでしょうか。今まで「安いから」「人気があるから」という理由で道具を買って、どこでどんなふうに作られたかもわからずに使い、暮らしを人任せにしてきたけれども、あるタイミングでもう一度自分たちの暮らしを見直したい、学びたい、というニーズが増していると感じています。

染め夜塾

「染め夜塾」での型染め

どんな商品が人気がありますか?

新潟で90年続いている味噌蔵の職人に味噌づくりを教えてもらい、自分で味噌を仕込む商品は人気がありました。手づくりの味噌にこだわっている蔵で、職人が熱い思いを語りながらのワークショップでしたね。

また、新宿区の落合は実は染めの町なのですが、ここで月1回開催している「染め夜塾」も女性に人気です。染めといってもいろいろあるのですが、職人がやっている手順と同じように「型染め」をしています。できるだけ「お試し」ではなくて、本物に近いプロセスを体験できるようにしています。

47都道府県の商品を揃えたい 海外向け、シニア向け、親子向けブランドの構想も

お話を伺っていると、「にっぽん てならい堂」の商品づくりは、とても手間がかかりそうですね。

めちゃくちゃ手間がかかります(笑)。私ひとりで基本的にはやっているので、もっと商品を増やしたいのですがキャパシティ的になかなか難しくて・・・。頭の中に商品候補リストはズラリとあるのですが、なかなか商品化できないのがもどかしいです。

今後はどのような商品を考えているのでしょうか?

お客さんが1組でも「体験したい」「学びたい」というニーズがあるならば応えられるような、ショップ側も受け入れる現場側も無理のない持続的な仕組みが構築できれば、と考えています。これまで試行錯誤してきましたが、リピーターになってくれるお客さんも増え、どこにニーズがあり、どこに資源を投入すれば良いのか見えてきました。今後はスタッフも入れて、商品を増やしていきたいですね。47都道府県の商品が揃っている状態にしたいです。

「にっぽん てならい堂」の商品は、日本のモノづくりがテーマなので、海外の観光客の需要も高そうですね。

今は私と同世代の同じ価値観を持つ人たちをターゲットにしたサイトづくりをしていますが、もともと海外向け、シニア向け、親子向け、のターゲットに対してもニーズはあると思っていました。特に海外向けは、東京オリンピックもありますし、チャンスがあると思っています。いずれは、それぞれブランドを分けて展開したいですね。

頼らない気概を見せつつ助けてもらえば何とかなる! 柔軟な考え方でチャレンジを!

合同会社続(つづく) CEO 中村真一郎氏

合同会社続(つづく) CEO
にっぽん てならい堂 店長

中村真一郎氏

今後の展開が楽しみです!最後に、中村さんのように独立してビジネスを展開したいと考えている若い人へのメッセージをお願いします。

独立するまで、人事や経営企画、またネットショップ運営で「社長」と近い立場で仕事をしてきました。そこで感じたのは、やりたいことがあれば、自分でやった方が絶対に楽しいということ。「やりたい」という思いを大切に、周りの人に「これがやりたい」と話していれば、助けてくれる人が必ずいます。周りに頼ってはダメですが、助けてもらわないとやっていけない。頼らない気概を見せつつ、助けてもらっているうちに何とかなります(笑)。

中村さんは、「にっぽん てならい堂」の運営の他にも、コンサルタントとして活動されているそうですね。

キャリアの世界には興味があり、人事畑が長かったので、人事制度のコンサルタントとしても業務委託で働いています。人事とモノづくりのショップは一見関係ないように見えますが、それぞれの仕事は深いところでつながっているんですよ。異なる視点を持てることだけでも、価値があります。人事を長くやってきた経験からも、働き方はひとつではないし、固定でもないと思っています。 皆さんにも是非、自身のキャリアについて柔軟に考え、やりたいことにチャレンジしてほしいと思います。

取材日:2014年8月29日 ライター:植松

◆ 商品のご紹介 ◆

hashi

<東京都世田谷区> 木の道具を考える。木工作家に学ぶ箸作り。 日時:2014年9月13日(土)10:30~/14:00~ 場所:世田谷代田「ダイタデシカ、」にて http://www.tenaraido.jp/experience/woodpecker

 
bassen3_200

<東京都新宿区> 江戸の染め屋を学び舎に。「染め夜塾」9月の夜。 日時:2014年9月16日(火)19:00~ 場所:染めの里 二葉苑にて http://www.tenaraido.jp/experience/someyajuku

 
kinari_yoko_250

<東京都三鷹市> 職人に習う。革の親子バッグ作りワークショップ 日時:10月4日(土) 場所:safuji lether worksアトリエにて http://www.tenaraido.jp/experience/kinari2

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