B to Bマーケティングの今
- Vol.87
- 株式会社イノベーション 代表取締役 富田直人さん
日本のBtoBマーケティングのIT化はまだ始まったばかり
日本のBtoBマーケティングの現状を教えてください。
日本企業のBtoBマーケティングへの取り組みは、米国に比べて大きく遅れています。米国は国が広大かつ大都市が点在しており、マーケティングの技術も優れていたため、効率化の取り組みが早くから進みました。新規テレアポや飛び込みなど「量」中心の営業では効率が悪く、インターネットなどのツールを活用した法人営業の仕組みを作る必要があったのです。ところが日本は、企業は東京に一極集中してるので、仕組みを作るよりも直接会いに行ってしまった方が早いのです。今でも「営業は足で稼ぐもの」という概念が根強く残っている会社もあります。オフィスで仕事をしていると、弊社にやってくる飛び込み営業の多さに驚きます。この人件費を会社が負担しているのですから。
一般の消費者に対するBtoCマーケティングでは、パソコンや携帯電話でのECはもう常識で、今ではスマートフォンやSNSを使った仕組み作りが進んでいるのに比べると、大きな違いですね。
BtoBマーケティングは、マス広告やSNSを使って注目を集めたり、話題性を作ったりする、というBtoCマーケティングとは少し異なります。そしてインターネットの活用はまだまだという段階だと思います。それでも、GoogleやYahoo!のリスティング広告の利用が当たり前になってきたり、ITツールを使って営業を効率化しようと試みる企業が増えてきたりと、ここ10年で意識は大きく変わってきています。
営業活動を効率化するITツール「リストファインダー」
御社で提供しているサービス「リストファインダー」も、BtoBマーケティングの支援ITツールですね。
リストファインダーは、自社サイトに訪問した社名がわかるアクセス解析ツールです。BtoBの営業活動向けに機能を絞り、どんな業種のどんな企業がどんなキーワードでサイトを訪れ、どのページを見たのかがわかります。自社サービスに興味のある見込み客にリアルタイムにアプローチできるマーケティングツールなのです。リストファインダーは月々28,000円と低価格で提供しており、順調に契約が伸びています。現在は300社近くの 企業のマーケターの皆さまにご利用いただいています。
見込み客を開拓するために、ひたすら飛び込み営業をしたり、電話をかけていくよりも、ずっと効率的な営業活動ができますね。
ある特定のキーワードでの来訪や指定ページにアクセスがあるとメールでお知らせするアラートメール機能を使うことで、効果的なアプローチができます。さらに、サイトに訪れた見込み客には、電話でアプローチするのですが、この機能もオプションで提供しています。(リストファインダー「テレマーケティングオプション」)。Googleなどのリスティング広告でキーワードで広告を出稿して、特定ワードで接触した見込み客への直接アプローチをアウトソースできるのです。このサービスをご利用いただければ、営業活動の人的・時間的コストが大きく削減できると思います。
なるほど。しかし、日本企業のコーポレートサイトはこうしたマーケティング活動に適した作りになっていないことが多いと思うのですが?
確かに、日本のコーポレートサイトの役割は、ブランディングと採用活動の2つに限定されていることが多く、「自社サービスを売る」役割が弱いサイトが多いですね。そのため、弊社ではマーケティング活動に適したランディングページ制作のお手伝いもしています。
「教育」と「見込み客獲得」「見込み客獲得」と「受注のクロージング」を分けて考える
お話を聞いていると、BtoBマーケティングの支援を様々な視点からサポートしていますが、もともと富田社長はどのようなバックボーンで起業されたのでしょうか?
私はリクルートの出身でFAXの一斉同報システム「FNX」や企業向けIT製品比較サイト「キーマンズネット」の立ち上げに関わるなど、長く「法人営業の仕組み化」に携わってきました。2000年に起業してからも、テレマーケティングや企業向けのリスティング広告など、BtoBマーケティングの仕組み作りやサービス提供に特化して事業展開しています。
先ほどのお話にもありましたが、日本企業のBtoBマーケティングは遅れていて、未だに「足で稼ぐ」企業も多いですよね。そんな中で「仕組みを作って効率化する」ことに拒否反応を示す企業も多いのではないですか?
新人営業マンに「100件電話営業すること」「名刺を100枚獲得すること」といったテーマを課すことも多いですからね。しかし、新人営業マンが多大なる労力と時間をかけて100件電話して、どれだけの効果があるのでしょうか?もちろん、電話で自分や商品を売り込む経験を積むという「教育」は必要です。弊社でも毎年、新人教育の一環で飛び込み名刺獲得大会をやっています(笑)でも教育をしながら「見込み客獲得」という結果を求めるのは難しいと思います。
これまでの営業では、片っ端からあたって砕けていく見込み客獲得は新人や若手の仕事だ、という風潮がありましたが、教育と見込み客獲得は分けて考えた方が良い、ということでしょうか?
その通りです。リストファインダーのような営業支援ツールを使えば、何人もの新人営業マンを雇って見込み客獲得のための多大なるコストをかける必要はありません。多くの新人の教育に煩わされることなく、精鋭の新人営業マンにはじっくりと教えることができますし、自身の営業活動では受注のクロージングやフォローに専念する体制を作ることができます。
マーケティングツールの活用で人件費を削減する!
企業にとって、人件費は最大の固定費。人件費を削りながら、効率よい営業活動ができるのは魅力ですね。
マーケティング活動にかけるお金を人件費の削減から捻出する、という考え方がまだ根付いていないので、弊社の営業活動も力が入りますね。実は、弊社のリストファインダーの営業活動にもリストファインダーを活用しており、サイトを訪れた見込み客にアプローチすることで大きな成果を上げているんですよ。弊社自身も営業コストを削減できているのです。
それはリストファインダーのメリットを何よりも証明していますね(笑)今後の御社の方向性、つまりはBtoBマーケティングの分野は、どのように進んでいくでしょうか?
BtoBマーケティングの仕組み化は、まだまだ手が付けられていない分野が多くあります。我々の商品開発力次第では、まだまだ大きな市場があると思っています。今後は、獲得した見込み客をどうフォローして育成していくか、というステップでのサービス提供も考えています。また、先ほどの話にも通じますが、営業マン向け教育もニーズがあるとおもっています。「こんな仕組みが欲しかった」というサービスをBtoBマーケティングの分野で提供していきたいと考えていますので、今後も弊社の動きに注目してもらえればと思います。
取材/2012年10月5日 取材・文/植松