ワークフロー一新!世界の建築ビジネスは「BIM」の時代へ
- Vol.139
- 日本BIM普及センター 代表 山形 雄次郎 氏
CAD(2D-CAD)は手描きの代替。BIMは3次元データですべてを管理する!
ずばり、「BIM」とは何を指すのでしょうか?
BIMとは略語で、「Building Information Modeling」が正式名称です。コンピューター上に3次元で建物の形状やコストなどの情報(Information)を持たせ、設計、施工、管理までトータルで行う概念を指します。10年以上前から考え方はあったのですが、概念を実現するBIMソフトの登場により、日本よりも海外で先行して普及しました。 例えば、設計図上で「壁」を表現したい場合は、線を引いて「描く」のではなく、ソフトの「壁」メニューを選択して、そのまま「置く」ことで表現します。
建築設計の分野と言えば、「CAD」を使って設計図を作ることが常識でした。
「CAD」は「Computer Aided Design」の略称で、コンピューターで設計するためのツールと思われがちですが、線の一本一本をコンピューターで書いているだけなので、コピーや移動は簡単にできますが、本来のコンピューターの力は発揮しておらず、概念的には手描きの代替なんですよね。手で設計図を描いていたことを、単にコンピューターを使ってできるようにしたもので、考え方や作業は手描きと同じです。 BIMは、手描きでは決してできない3次元での設計です。
スピード、コスト、整合性、プレゼン性が改善! 一度使うともう戻れない!?
BIMが注目されている理由は?
設計にはいろいろな図面が必要で、今まではCADを使ってひとつひとつ作る必要があったのですが、BIMはひとつのデータですべての情報が管理され、設計に必要な図面はひとつのデータから生成することができます。そのため、図面作成にかかる手間が大幅に削減され、時間もかからず、工数が短縮されます。もちろん、その分のコストも削減できます。 また、情報が一元化されることで、整合性のとれた図面を作成しやすくなります。今までは修正があると、関連するすべての図面をひとつひとつCADで修正しなくてはならなかったので、不整合が起こりがちでした。しかしBIMならば、データをひとつ修正すれば、他の図面データにもすべて反映されるので、不整合のリスクがなくなります。
BIMの3次元データは、建築の素人の私が見ても、イメージしやすいですね。
施主、設計者、施工者の三者がイメージを共有しやすいプレゼン性の高さも、BIMのメリットです。今迄はCADデータだけではわかりにくいので、別データとしてCGを作成してイメージを共有することが一般的ですが、BIMならば外観や内観もひとつの元データから展開した絵を見ることができます。関わっている人が同じイメージを描きながら話ができるので、コミュニケーションが取りやすく、スムーズに進行できます。
スピードや効率がアップし、コストが削減され、整合性が高まり、コミュニケーションも取りやすいと、BIMのメリットは多くありますね。
私自身は、7〜8年ほど前にセミナーでBIMを知ったのですが、その時点で「これからの設計が変わる!」と直感し、すぐにソフトを導入して使い始めました。使い始めたら、すべての業務が改善され、もう元には戻れないですね(笑) 建築物は3次元ですが、今までは頭のなかで3次元でイメージしたものを、図面に落とすことで2次元化して暗号化され、さらに現場でその暗号を解読してもう一度3次元にイメージし直していたのですが、BIMを使えば最初から最後まで3次元で考えられます。
新築だけでなく、リフォームやリノベーションにもBIMは活かせるのでしょうか?
CADデータをインポートすることができますし、BIMには、縦・横・高さのXYZ軸に加えて、時間の概念をもたせることができます。時間軸(t)を加えたデータなので、リフォームやリノベーションの設計もやりやすくなります。もちろん、工程管理も楽になります。
BIMの普及は国益につながる。 建築業界でBIMは必須のスキルになる!
お話を伺っていると、BIMには多くのメリットがあり爆発的に導入が進むように思うのですが、そこまで広がっていないのはなぜでしょうか?
BIMソフトを使うまでに、いくつかハードルがあるのが現状です。まずCADに比べて高額であること。また、操作も覚える必要があります。すべてのソフトに同じことが言えると思うのですが、直感的に使いやすいものは応用に限度があり、応用が効くものは習得するのに時間がかかります。 また、心理的なハードルもあります。3次元で設計図を描くことは建築士にとって未経験なわけですから、そのギャップになかなか対応できません。
海外では日本よりも導入が進んでいるそうですね。
BIMが普及することは、明らかに工数低減、コスト削減、建築の正確性アップにつながりますから、積極的に導入を進めている国は多いですね。例えばシンガポールは、BIMの普及は国益につながると判断し、法律を変えて大規模な建築物については、建築確認申請で意匠、構造、設備のBIMモデル提出を義務付けています。
日本でも今後、導入が進むことは間違いないでしょうか?
スピード、コスト、コミュニケーションと、建築に必要な要素がすべて改善されるわけですから、導入が進んでいくことは間違いありません。現状でも、国交省が発注する公共工事の入札の条件に、BIMモデルの活用を義務付ける案件が出てきました。ソフトの金額や操作性の課題はありますが、逆に言えば現段階で身につけておけば、今後の仕事の幅が大きく広がるということ。これから建築に関わる人にとっては、BIMの習得は必須だと思います。
取材日: 2017年2月20日 ライター: 植松織江
日本BIM普及センター事務局
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