次世代の才能を発掘・応援するデザインとアートのコンペティション「Tokyo Midtown Award」
- Vol.141
- 東京ミッドタウンマネジメント株式会社 タウンマネジメント部 プロモーティンググループ シニアマネージャー 井上ルミ子さん
グランプリ賞金100万円!受賞後のフォローも手厚い「Tokyo Midtown Award」
今年で「Tokyo Midtown Award」がスタートして10年目となります。アワードがスタートした背景やその想いについて聞かせてください。
2007年に開業した東京ミッドタウンは、防衛省の跡地の再開発事業として開発されました。都心にありながら広大な敷地で、これだけ広いスペースは今後100年たっても生まれないだろうと言われたほどで、この敷地をどのようなコンセプトで開発するか、どんな街にしていくのか、その責任を重く受け止めながらプランニングをすすめました。同時に、(三井不動産が)土地を取得した2001年当時は日本経済がどん底だったんですよね。
そんな状況の中、この街を通して日本に誇りを持てるように、日本を元気にできるようにとの想いを込め、東京ミッドタウンの街のコンセプトを「JAPAN VALUE(新しい価値・感性・才能)の発信」とし、「創造性」をキーワードにして文化施設や美術館を誘致しました。また、建築デザインやパブリックアートについても、一貫したコンセプトに基づいて設計しました。
そして、2007年、東京ミッドタウンは開業しました。ただし、街づくりは“箱"を作って終わりというわけではありません。開発時の想いやコンセプトを具現化するための取り組みとして、開業1周年を期に、次世代の若き才能を発掘・応援するアワードを設立しました。次世代の才能は、大事な「JAPAN VALUE」でもあります。
「Tokyo Midtown Award」は、アートコンペとデザインコンペの2部門に分かれ、どちらもグランプリ賞金が100万円と、若いアーティストやクリエイターにとっては破格の賞金額ですよね。
純粋に若手アーティストを応援したい気持ちでアワードを運営しているので、どちらも39歳以下であればどなたでも応募できます。
賞金額だけでなく、受賞後も活躍の場を提供したり、フォローをしていることが特徴で、アートコンペの受賞者には翌年以降の東京ミッドタウンで開催するアートイベントに作品を展示してもらったり、ワークショップの講師を依頼したりしています。
デザインコンペの受賞作品は、商品化やイベント化をサポートします。これまでに14点が商品化され、1点がイベント化されました。また、賞の授与にとどまらず、東京ミッドタウンで開催される様々なイベントに参加できる機会を積極的に創出し、活動の場のサポートを行っています。
数々のサクセスストーリーが誕生!応募作品の商品化を積極的にサポート。
「歌舞伎フェイスパック」は、話題になりましたね!
2008年度の受賞作品で、受賞から数年後、作品を目にした企業から直接「ぜひ商品化したい」と問い合わせがありました。2016年にはG7伊勢志摩サミットで参加国代表団に贈られる公式お土産に選ばれたり、現在では30種以上のバリエーションがあったり、人気商品になりました。そのサクセスストーリーを間近で見ることができて、私たちもワクワクさせてもらいました。
商品化に対しては、どのようなフォローをしているのですか?
商品化のキッカケは、東京ミッドタウン側で商品化できそうな企業を探す他、歌舞伎フェイスパックのように企業から直接問い合わせがあるケースや、受賞者が自ら企業にコンタクトを取ったり、審査員が作品に惚れ込んで企業に推薦したり、いろいろなケースがありますが、商品化までにはさまざまなハードルがあります。受賞者も迷い、悩むことが多いので、随時アドバイスをしたり、解決のために必要な機会を探してサポートをしています。
作家はアイデアやデザイン力はありますが、ものづくりのことはわからない方も多いんです。受賞者にとって、商品化のプロセスを経験することは、大きな財産になります。逆に、ものづくりの現場では、後継者不足により、伝承が難しい日本の技術がデザインの力によって息を吹き返すこともあります。
アートコンペでは、制作段階から支援がありますね。
書類による一次審査、模型を使ったプレゼンテーションによる二次審査を通過し、最終審査に進む作品に対しては、100万円の制作補助金を支給しています。
若手アーティストがアワードに応募するときは、自費で制作費を捻出し、受賞した賞金でようやく制作費を補填できるサイクルが一般的で、制作費を工面するのに苦労している人がほとんどです。審査プロセスの中で制作費を支給することで、制作に集中できる環境を整えています。
審査員がそうそうたるメンバーなのも、目を引きますね。
いろいろな分野の審査員が集まり、様々な視点で審査をしていきます。選考の際は、すんなり決まらないことも多く、熱い激論が交わされています(笑)。審査員の方々も若手を応援したい気持ちが強く、将来性なども考えながら、真剣に審査をしてくださっています。純粋な気持ちで、若き才能に出会うことができるので、審査を楽しみにしてくださっている方も多いんですよ。
六本木が「アートの街」に変貌した10年。アワードが続いてきたのは、若き才能のおかげ。
「Tokyo Midtown Award」が10年間続いている理由とは?
ひとつは、このアワードに東京ミッドタウンを作った人たちの想いが込められていることでしょうか。だいたいの街づくりは、ハードが完成すると開発から運営フェーズに入るので、スタッフが移動となります。人が変わると、作ったときの背景やコンセプトが風化していくことが多いのですが、東京ミッドタウンでは、開業からこれまで一貫して「JAPAN VALUE」の発信を街のコンセプトに掲げ、街づくりを進めています。そのコンセプトを具現化するための活動のひとつとして、「Tokyo Midtown Award」を私たちは大切にしてきました。
また、応募してくれる若きアーティストやデザイナーが真剣にアワードに向き合い、情熱を注いだ作品たちが、アワードの質や存在価値を高めてくれていることも、理由のひとつです。
10年続けてきた中で、変わったと感じることはありますか?
六本木という街が持つイメージが変わったと感じています。東京ミッドタウンにはサントリー美術館と21_21 DESIGN SIGHTがありますが、六本木ヒルズには森美術館があり、国立新美術館も東京ミッドタウンと同じ2007年に開館しました。さらに「Tokyo Midtown Award」が開催されることで、六本木は「デザイン・アートの街」としての認識が年々高まってきています。さらに今では、変わってきた六本木が持つ街としての力が、「Tokyo Midtown Award」を支えてくれています。
確かに以前は、六本木といえば「夜の街」の印象が強く、昼の顔が見えなかったのですが、急に大人の文化的な街に変わってきましたね。
六本木をデザイン・アートの街にしていこう、クリエイティブな感性に溢れた街にしていこうと、六本木の街全体が同じ方向を向いているな、とを感じます。クリエティブな会社が六本木に集まってきている流れもありますよね。
新たなサクセスストーリーは応募から。躊躇せずにチャレンジして欲しい。
10年目を迎える「Tokyo Midtown Award」に出品を目指す若きクリエイターに、アドバイスをお願いします。
アワードの評価が上がってきたこともあり、「力をつけてから応募しよう」と考える存在になってしまっているのかな、と時々思うこともあります。ですが、「Tokyo Midtown Award」は若き才能を発掘・応援するアワードです。表現したいものがあれば、ぜひチャレンジをしてほしいです。まずは、応募していただかないと、私たちは才能の原石に出会えません。
アートコンペでは審査の過程で、審査員からのアドバイスもあります。そのアドバイスを受けながら、作品を作り上げていくことで、作家として成長できる貴重な機会にもなります。また、デザインコンペは、紙1枚を提出するというシンプルな応募内容で、学生から一般の方まで広く門戸が開かれています。ですから、少しでも応募してみようかな、という気持ちがある方には、ぜひ躊躇せずに応募していただきたいです。
応募にあたって、ここは頑張って欲しい!というポイントはありますか?
やはり書類審査ですね。応募用紙に、作品の力や可能性がすべて凝縮されます。審査員は応募用紙を見て、そこですべてを理解して判断します。審査員の目にとまるように、真剣に情熱をかけて取り組んでください。新たな才能に出会い、サクセスストーリーを一緒に作り上げていくことを今から楽しみにしています!
取材日: 2017年4月27日 ライター: 植松織江
Tokyo Midtown Award
才能あるデザイナーやアーティストと出会い、応援するアートとデザインのコンペティション
Tokyo Midtown Award 公式サイト※デザインコンペは、2017年6月23日(金)~7月24日(月)作品を募集!
MID DAY WEEK
期間:6/23(金)~7/2(日)2013年のデザインコンペでは、これまで祝われることのなかった“一年のまんなかの日”である、7月2日を「MID DAY」として祝おうというアイデアがグランプリを受賞しました。
東京ミッドタウンでは、アワードから生まれた「MID DAY」を祝うイベントを開催します。詳細は5月下旬に東京ミッドタウンのオフィシャルサイトをご覧ください。
東京ミッドタウン