デジタルサイネージの可能性とは?
- Vol.89
- 株式会社オックスプランニング 代表取締役 三浦嚴嗣さん
デジタルサイネージは 屋外広告だけじゃない!
「デジタルサイネージ」という言葉をよく聞くようになりましたが、なぜ急に注目されるようになったのでしょうか?
20年ほど前から新宿や渋谷の繁華街で流れている街頭ビジョンもデジタルサイネージなので、特に新しい概念ではないんです。ですが、ここ数年でコンテンツを表示するLEDや液晶などのディスプレイが安くなったことと、配信システムや通信の普及が進み、「デジタルサイネージ」という言葉が定着しました。街頭ビジョンがデジタルサイネージの一番わかりやすい例なので誤解されがちなのですが、ディスプレイにデジタル広告を流すことだけがデジタルサイネージではありません。
デジタルサイネージは、アウトドア広告の手法のひとつだと思っていました。
もちろんアウトドア広告としてのデジタルサイネージは、大切な市場ではあります。しかし、広告媒体として価値があるのは、人が集まる渋谷や新宿など都心部で、限られたエリアですよね。この広告モデルの市場規模は、我々だけが頑張ってもあまり広がるものではありません。
ネット対応の情報端末やPOPとしても大活躍!
デジタルサイネージは、広告以外ではどのような市場があるのでしょうか?
最近は情報端末としての活用が浸透してきました。例えば、ビルのフロア案内ですね。最近は店舗の入れ替わりも激しいですから、その度にアナログでひとつひとつ案内の看板を作っていたのでは手間もコストもかかる。デジタルサイネージならば、すべてのフロア案内ディスプレイをネットワーク化して、管理画面で情報を修正すれば、ビル内のすべてのフロア案内を一気に最新情報に更新することができます。いわゆる「ネット対応電子掲示板」です。駅ビルの再開発案件など、新規ビルの建設では、必ずデジタルサイネージの導入が検討されるようになった、と言ってもいいでしょうね。また、大学やマンションの掲示板をデジタルサイネージにする導入例も増えています。キャンパスがいくつもある大学や大規模マンションでは掲示板をアナログ管理するのも大変ですから。この情報端末としての市場は、弊社でも問い合わせが多く、確実に伸びています。
そう言えば、ビル内のキャンペーンやイベントの案内などが、デジタルで次々に変わるのをよく見るようになりましたね!他にはどんな活用がされているのですか?
集客のために店先に置くなど、セールスプロモーションツールとして活用されています。話題になったプロジェクションマッピングも、この集客モデルのひとつと言えるかもしれませんね。また、ドラッグストアの店頭で新商品の使い方の動画などが小さな液晶画面で流れているのを見たことがある人も多いと思いますが、店頭で目を引くためのデジタルPOPとして、デジタルサイネージが取り入れられることも多くなってきました。例えば、何店舗も持つドラッグストアチェーンの店頭デジタルPOPを、本部で一括して管理し、動画を配信できるようになれば非常に効率的です。
利便性とコストダウンで選ばれる デジタルサイネージ
これだけ様々なシーンでデジタルサイネージが取り入れられ、市場が広がっている理由は何ですか?
デジタルサイネージには、大きく分けて3つの利点があると思います。ひとつは、まず目立つこと。従来のアナログの看板に比べて表現の幅も広がり、人目を引くことができます。もうひとつは、利便性が高いこと。先ほどもお話ししましたが、アナログならばちょっとした修正でも数が多いと大変な手間になりますが、ネット対応のデジタルサイネージならば、一回の修正でネットワーク化されたすべてのディスプレイに反映させることができます。そのため、即時配信、一斉配信が可能なので、例えば地震が起こったときの地震速報や避難情報などをリアルタイムに一斉に配信することができるのです。そして3つ目は、コストダウンが可能なことです。
更新の手間が減ることで、人的コストなどの運用コストが大きくダウンするのは理解できますが、導入コストはまだ高いのではないでしょうか?
テレビの価格破壊が話題になっているように、ディスプレイなどのハードは本当に値段が下がりましたし、通信ネットワークのインフラにかかるコストも以前とは比べ物にならないくらいに下がっています。それでも、もちろん初期コストはかかりますから、運用コストの低減と比較して導入するか否か、という経営判断は必要になりますが、オックスプランニングではこのデジタルサイネージ導入のシステムをASP化することで、できるだけ初期コストを抑えることができるサービスを提供しています。デジタルサイネージを新規に導入するときは、実に細かい様々なタスクが発生するのですが、すべてのタスクをワンストップでこなすことができる弊社ならではのきめ細かいサービスです。
導入に伴う様々なタスクをパッケージ化することで 導入ハードルを下げる!
デジタルサイネージ導入の際の細かなタスクとは?
まずひとつ目は、表示するディスプレイ、つまりハードに関わるタスクですね。ディスプレイも様々な選択肢があります。LED、液晶、プラズマ、有機ELなど、コストや環境に合わせてハードを選ばなくてはなりません。ふたつ目は、施工と通信に関するタスクです。通信方法も、有線なのか無線なのか、無線だとするとLANなのかWi-FiやWiMAXなどの手段を取るのか、施工の場所や条件によって選択は変わってきます。弊社はハードに関してはメーカーとアライアンスを組んでいますし、通信手段についても中立的な立場で最善のプランをご提案できます。
さらに、運用に関するタスクもあります。情報を管理側から各ディスプレイにプッシュ型で配信しなくてはなりませんが、配信する管理者はデジタルに疎い場合も多々ありますので、いかに簡単に運用管理できるか。そのため弊社では、わかりやすいインターフェースの配信管理ソフトウェアを開発しています。最後にコンテンツに関するタスクですね。デジタルサイネージに表示するコンテンツは特別な仕掛けが必要な訳ではありませんが、わかりやすく情報整理してパッと見た瞬間に理解できるコンテンツを作らなくてはなりません。
確かに幅広い分野で、非常に多くのタスクがありますね!これらをすべてパッケージ化して提供されているとしたら、導入側としては非常に助かりますね。
パッケージ化したきっかけは、デジタルサイネージを導入したくても、どこに相談したらいいのかわからない、という話をよく聞くんですよ。確かに、ディスプレイだけ見るとメーカーに相談したらいいような気もしますが、ネットワーク管理したいとなると通信会社?それとも、コンテンツありきで考えると制作会社?と、困ってしまうケースが多いようです。そこで、我々の出番です。デジタルサイネージを検討するなら、ワンストップですべてをクリアすることができるオックスプランニングにまずお声がけください(笑)
「デジタルサイネージならでは」の表現はこれから 未開拓分野の多い有望業界
わかりました(笑)コンテンツについてですが、デジタルサイネージならではの表現はありますか?
広告としての街頭ビジョンはインパクトやストーリー性などが求められると思いますが、今後の市場拡大が見込める情報端末としてのデジタルサイネージのコンテンツは、まずわかりやすいことが必要です。その上で、行き交う人の目をハッと引く小さな仕掛けがあっても良いですね。実は、この分野ではまだ「デジタルサイネージならでは」の表現は確立していないのです。そういう意味では、クリエイターの方にとっては、まだ未開拓のものを作り上げていく楽しみがあると思います。
これから需要がますます増えていく有望業界ですから、やりがいがありますね!どのような人材が求められているのでしょうか?
システム構築のためのSEなど、それぞれのプロフェッショナルな人材はもちろん求めていますが、ハードからソフトまでカバーしなければならない範囲が広いので、浅くても良いので幅広い知識を持った提案型営業ができる人材も歓迎です。数字を求めてガツガツと営業していく、というよりは、ひとつひとつのタスクを丁寧に検討して課題を解決していって欲しいですね。ハード・ソフトともに技術も常に進歩しているので、柔軟な考えを持ちながら、クライアントやプロフェッショナルなスタッフと話し合いができるコミュニケーション能力も必要です。これからもデジタルサイネージの可能性は広がっていきますので、一緒に市場を作っていく気概のある人を求めています。
取材/2012年11月5日 取材・文/植松