WEB・モバイル2019.09.11

ファンは「ノム友」、サントリー公式VTuber「燦鳥ノム」を通じた新しいコミュニケーション

Vol.169
サントリーコミュニケーションズ株式会社
Shintaro Maeda, Honoka Kamikura
前田 真太郎 氏、神藏 ほのか

コミュニケーションモデルの新しい形として、「バーチャルYouTuber(VTuber)」が浸透してきています。現在では250万人を超えるチャンネル登録者を誇るVTuberも!インフルエンサーとしてのVTuberの情報発信力が注目を集める中、企業や自治体がプロデュースするVTuberも次々と登場しています。そこで今回は、企業のオフィシャルVTuberとしては先駆け的存在の「燦鳥ノム」を手掛けているサントリーコミュニケーションズの前田真太郎さんと神藏ほのかさんにインタビュー!プロジェクトの背景や、今後の展開などについて、お話を伺いました。

新しいオウンドメディアとしてVTuberに注目。企業文化「やってみなはれ」枠としてスタート!

(左)前田真太郎さん、(右)神藏ほのかさん

サントリーのオフィシャルVTuber「燦鳥ノム」を企画した背景やキッカケについて、教えてください。

前田さん:

私が所属する宣伝部デジタルグループは、デジタルのトレンドをキャッチして、新しいコミュニケーションに取り組んでいくミッションがあります。その中でVTuberは、2017年ごろから徐々に登場し始め、「キズナアイ」さんを中心として、人気VTuberが出現するようになり、デジタルトレンドのひとつとして注目していました。

神藏さん:

私はデジタルマーティング本部で、SNSを担当しています。Twitter、Instagram、Facebook、LINEの公式アカウントの運用をしているのですが、やはり公式アカウントではお客様との距離を縮めることに限界があるのですよね。ですが、SNSはお客さまとの大事な接点なので、公式アカウントとは違った方法でより深いコミュニケーションを取る方法はないか?と考えているところでした。

前田さん:

そんな環境の中で、VTuberという新しいオウンドメディアが作れるのではないか?と検討を始めました。サントリーが作るVTuberを介して、これまでの公式SNSアカウントとは違った情報発信やお客さまとのコミュニケーションができるのではないか、と考えたのです。

その結果として「燦鳥ノム」が生まれたんですね!「燦鳥ノム」さんは水の国出身、120歳など、さまざまな設定がありますが、どのようにキャラクターの方向性を決めたのでしょうか?

前田さん:

やはりサントリーの公式VTuberなので、最初の方向性はかなり丁寧に考えました。サントリーらしく、“水”をテーマにしたキャラクターをデザインし、設定も「水の国出身」としました。また、VTuberの企画を考え始めた当時、人気のあるVTuberはまだ5人ほどだったのですが、その方々と個性がかぶらないよう、「天然」や「清楚」といったモチーフで考えていました。そして、最終的には燦鳥ノム本人が持つ個性も交わって、今の燦鳥ノム独自のキャラクターになっていったのです。

企画当時はまだVTuberは一般的ではなかったので、社内で企画を通すのは大変だったのでは?

前田さん:

企画段階では、まだ企業のオフィシャルVTuberはいなかったので、「VTuber」を理解してもらう最初の一歩が大変でしたね。何度説明したかわからないのですが、いくら説明しても、ポカンとした顔をされてることもしばしばありました(笑)。
ですが、サントリーの企業文化である「やってみなはれ」の精神で、チャレンジしてみよう、ということになり、スタートできました。

“透明感があって清楚”な方向性に本人の個性がミックスされた「燦鳥ノム」。

動画の企画や制作は、どのような体制で行っているんですか?

前田さん:

動画は、制作会社のドワンゴさんに作ってもらっています。私がプロジェクトリーダーで、神藏がソーシャルメディアとどのように絡めていくかを考えています。動画の企画は、みんなで考えていますね。週に1本はアップしているので、とにかくスピード感が大事。みんなでネタを持ち寄って、行けそうだと感じたら大急ぎで制作して、アップする。必死に回しています(笑)。

「燦鳥ノム」さんは歌が上手だったり、短歌が得意だったり、いろいろな個性がありますね。

前田さん:

VTuberは、アニメキャラクターではないので、私たちがすべて決めて動かしているわけではないんです。燦鳥ノム本人が実際にいて、しゃべって動いています。歌がうまいとか、短歌が得意というのも、私たちが決めたわけではなく、本人の特技なのです。
例えば、燦鳥ノムがサントリーの飲料を飲んで感想を言う、いわゆる“食レポ”のシーンがあるんですが、初回では「伊右衛門」を飲んで『水に比べると、たくさん味がするね!』というレポートをしてくれました(笑)。私たちがしっかりした食レポコメントを用意することはできるんですけど、それでは広告になってしまいます。我々は燦鳥ノム本人の言葉を、そのまま出すことを大切にしています。

「歌ってみた」動画でブレイク。コンテンツのみがチャンネル登録者を動かす!

現在、「燦鳥ノム」は人気VTuberとなりましたが、知名度が高まるキッカケとなった動画、いわゆる“バズった”動画はありましたか?

前田さん:

デビューして3本目に、「歌ってみた」動画をアップしたんですよ。すると、もともと歌がうまい本人の個性と、映像クオリティが高いことが評判となり、あっという間に50万回くらい再生されたんですね。「サントリーがすごい逸材を見つけてきたぞ!」と話題になって、一気に知名度が高まりました。 それが一つのきっかけではあったのですが、その後も、まずはVTuberの「燦鳥ノム」をわかってもらおう、好きになってもらおうと考え、企業のオフィシャルVTuberではありますが、広告色をできるだけ抑えることを意識して動画を制作した結果、徐々に人気が広がっていきました。

数多くの動画をアップしていますが、どんなジャンルの動画が人気ですか?

前田さん:

やはり、歌の動画の再生数が伸びますね。YouTubeでは、気に入った歌の動画を「リスト」に入れる行為が定着しているので、歌が伸びやすいということもあります。

神藏さん:

生放送のライブ配信も人気ですよ!ノムちゃんがユーザーのコメントにすぐに反応したりできるので、リアルタイムでのコミュニケーションが楽しめます。また通常のトーク動画よりも、より飾らないリアルさを感じていただけることも魅力です。

「ノムちゃん」と呼ばれているんですね!(笑)企画を立ち上げるまでも大変だったというお話でしたが、YouTubeデビューしてから大変だったことはありますか?

前田さん:

週に1本の動画を上げるだけでも大変なのですが(笑)。「燦鳥ノム」は、おそらくYouTuberの育成に企業が本気で取り組んだ最初の事例だと思うので、スタートしてからも初めて知ることばかりでした。例えば、チャンネル登録者数を増やすことがこんなに大変だとは、ビックリしましたね。
デビューしてから、すぐにネットニュースで取り上げられ、さらに2〜3ヶ月後にはテレビでも取り上げられました。でも、朝の人気情報番組に出ても、夜の経済番組に出ても、チャンネル登録者数はピクリとも動かないんですよ。これまでのノウハウでは、頑張ってPR活動してテレビに出たり、広告を打ったりすれば伸びるはずですが、それが通用しない。 どんな時に登録者数が増えるかと言うと、動画が面白いと思われて、視聴数が伸びた時。つまり、コンテンツだけが、チャンネル登録者数を増やすんです。改めて、チャンネル登録者数が数百万人もいるYouTuberはすごい!と思いましたね。

人から人への発信は、反応が違う!「燦鳥ノム」を通じたお客さまとの絆は、とても深い。

サントリーという企業にとって、「燦鳥ノム」とは、どのような存在でしょうか?どのようなメリットがありますか?

神藏さん:

ノムちゃんのファンは、10代、20代の方がメインです。企業として、こうした若いお客さまとしっかりした接点を持てていることは大きいですね。単純にリーチを取りたいなら、Twitterなど若い人が使うSNSに広告を出せばいいのですが、それは企業からの一方通行の情報発信になってしまいます。ですが、ノムちゃんのファンは、ノムちゃんの動画を見たくて、能動的に見に来てくれています。そうした熱い思いを持っている若いお客さまと、いつでもコミュニケーションを取れるのは、ノムちゃんだからこそできることです。

前田さん:

「燦鳥ノム」には、最初からオウンドメディアとしての役割を期待していました。その役割は十分に果たしていますが、期待以上だったのがこのメディアを通じたお客さまとの絆がとても深いこと。SNSの公式アカウントからは企業から人への発信になりますが、「燦鳥ノム」アカウントでは、人から人への発信になります。企業からの発信と、「燦鳥ノム」という人からの発信では、反応が全然違うんです。

神藏さん:

最近では、サントリー商品とコラボした情報発信もしています。社内タレント的な存在として、社内のブランドを担当するチームから「コラボして動画を作りたい」と依頼が来るんですよ。例えば、最近発売した「君にルムウム」もクラフトボスミルクティーとのコラボで生まれたのです。

 

今後の目標は?

前田さん:

CDデビュー、CM出演、ライブ、TV番組出演など、YouTubeデビュー前に考えていた目標は、ほぼ達成しました。これからも、企業所属タレントとしてのタレントパワーをさらに高めていきたいですね。そうすることで、サントリーブランドと組む「広告案件」の効果も上がりますから。そのためには、やはりコンテンツ力が勝負。いかに面白いコンテンツを作って、「燦鳥ノム」の魅力を高められるか、にかかっていると思います。

神藏さん:

今まで企業から一方的にお客さまに発信していくことから、どうすれば喜んでもらえるか、情報があふれている中で好きになってもらえるか、お客様の心に響く新しいコミュニケーションにチャレンジしてきました。その結果、ノムちゃんがCDデビューした時、お客さまが一緒にお祝いしてくれて、すごく大きなパワーを感じ、私たちがノムちゃんを通じて伝えようとしたことがお客さまの心に届いていると実感しました。 これからも、ノムちゃんという存在を通して、お客さまの心に響くものを伝えていきたいですね。ひとりのタレント、ひとりの人としてノムちゃんを応援してもらえるように、頑張っていきます。

前田さん:

「燦鳥ノム」にはいろいろな側面の魅力があるので、単発の動画だけでなく、全体を見てほしいですね。いろいろな方向で好きになってもらえるように、日々考えています。これからも「燦鳥ノム」のVTuberとしての活動に注目してください!

取材日:2019年7月30日 ライター:植松織江

プロフィール

燦鳥ノム

世界のどこかにあるという『水の国』からやってきた。 飲み物が大好きで、いろいろな飲み物に興味がある。 好奇心旺盛なお嬢様。 トレードマークは傘と鳥と花の飾り付きの帽子。

・ 年齢:120歳(1899年生まれ)

・ 性格:ほんのりと天然

・ 趣味:短歌

・ 好きなもの:飲み物

サントリー公式バーチャルYouTuber 燦鳥ノム特設ページ

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