クリエイティブの未来が見えるSXSWへ!コンフォートゾーンを出て、イノベーションの種を見つけよう。
世界的なスタートアップの登竜門と言われる「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)」の注目度が日本でも高まってきました。とはいえ、SXSWの名前は聞いたことがあるものの、その内容や特徴については、まだ良くわからない方が多いのではないでしょうか?そこで今回はSXSW日本事務局の曽我浩太郎さんにインタビュー!ご自身もSXSWへの参加がキッカケで起業したという曽我さんに、SXSWのコンセプトや魅力、クリエイターにとっての価値などについて、お話を伺いました。
SXSWに行くと、未来が見える!これから来る才能を見つけられる場所
そもそもSXSWとは、どのようなイベントなのでしょうか?
「音楽」「映画」「インタラクティブ」を3本柱とした複合的なイベントです。“イベント”という枠を超えたお祭り、フェスティバルと呼んだほうが良いですね。
スタートは30年以上前で、音楽の未来について議論するイベントとしてスタートしました。開催地のテキサス州オースティンは小さな街ですが、リベラルな気風があり、ユニークで個性豊かな街を目指しています。メジャーシーンの中心地といえばニューヨークですが、SXSWはオースティンという街の個性を活かし、NYスタイルとは異なる個性的でユニークな場を目指して運営されています。
当初は音楽の勉強会・演奏会など新しい才能を発掘し、買い付けやブッキングが行われる場でした。それがフィルムやインタラクティブ分野に広がり、最先端テクノロジーを活かした新しいビジネスの展示会、事業提携の場という側面も持つようになりました。また、3つの柱の領域を越えて、「ゲーム」「ファッション」「ウェルネス(健康)」などの新しいカテゴリーも生まれています。
カンヌなど他の世界的なフェスティバルとSXSWの違いは?
「SXSWに行くと、未来が見える」と言われています。次に何が起こるのか、新しい可能性を知ることができるのが、SXSWです。例えば音楽では、小さなステージで歌っているシンガーが2〜3年後にグラミー賞を受賞することがあるんですよ。これから来る才能を見つけられる場所ですね。
また、インディーズの音楽からスタートしているので、フラットでフレンドリーな雰囲気で、門戸が誰にでも開かれていることも特徴です。「SXSWはクリエイティブな人々のそれぞれのゴールを達成するために、世界にインパクトを与えるプラットフォームになる」とうたっていますし、クリエイターとしてはただ見るだけではなく、参加しないともったいないですね。例えば、パネルセッションは誰でも応募できます。応募内容はWeb上に公開され、一般投票とSXSWのスタッフや専門家の投票により民主的に選抜されるので、チャンスは誰にでもあります。カンファレンスの形式によっては自分のアイデアを発言できるワークショップなどもありますし、スピーカーに対しても話しかけやすい雰囲気なので、カンファレンス終了後に声をかけることもできます。
Twitterもアワードを受賞!SXSWをキッカケに、世界へと羽ばたける。
Angie McMahon performs onstage during the 2019 SXSW Conference and Festivals. (Photo by Kaylin Balderrama)
日本でも、年々注目が集まっているようですね。
10年以上前から音楽業界ではよく知られていました。「JAPAN NITE」というパーティが行われていて、PUFFYが出演したこともあります。
大きな転換点としては、2007年にTwitter(ツイッター)イノベーションアワードを受賞したことです。その後、AirBnBやPinterestも受賞したことで、インタラクティブのスタートアップの登竜門として、世界的に注目されるようになりました。そこから日本のスタートアップや、大手企業の新規事業部門が参加するようになり、私が初参加した2013年は日本人の参加は100人弱でしたが、2018年には1500人以上が参加しています。
日本からはどんな人や企業がアワードに出展しているのですか?
スタートアップの登竜門としての要素が強くなった最近は、広告会社がカンヌ広告祭とは違ったアプローチで作品をSXSWに出していますし、大手メーカーの開発担当部署が新規ビジネスのプロトタイプを出展することが多いですね。SXSWは誰にでも門戸を開いているので、もっと若手のクリエイターやエンジニア、ベンチャー企業に参加してほしいです。あまり知られていないですが、大企業の方はトレードショーだけでなく、大規模なハウスをたてたり、SXSWのスポンサーとしてイベント自体とコラボできるチャンスもあります。
エントリー費用、展示会の出展費用は、ビックリするくらいお手頃価格ですよね。
フィルム部門は日本円で3万円以下、音楽部門は1万円以下ですからね。展示会も実質20万円程度から出展することができます。
世界的な認知があるSXSWなので、バリューは非常に高いです。アワードへの応募、受賞をしなくても新しい才能やアイデアを求めて世界中から決裁権を持った人が集まっていますから、チャンスは転がっています。コスパは高いと思いますよ。
実際に日本のスタートアップのアイデアが、SXSWで注目されて北米に認知され、翌年はその評判を聞きつけたヨーロッパのフェスに招待され、ヨーロッパでも広く知られるようになった事例を知っています。有名なところでは、片付けコンサルタントの近藤麻理恵さん、通称「こんまり」さんは今、アメリカで日本以上に大ブームを巻き起こしていますが、NETFLIXドキュメンタリー公開前にSXSWでプレゼンテーションしました。こんまりさんの片付けの魔法は、SXSWでは新しいデザインの概念として紹介されました。
自分の領域を飛び出そう!異分野との掛け合わせで、イノベーションが生まれる。
現地に行ったら、何を見れば良いですか?オススメの「SXSWの歩き方」を教えてください。
まずは自分の領域の展示会やカンファレンスを見て、これからの未来を感じて、直接的なインスピレーションを得るのが良いと思います。ですが、実はSXSWにおいては自分の領域外に踏み出してこそ、価値があります。
SXSWのプログラムディレクターもよく「コンフォートゾーンを出ろ!」と話すのですが、異分野のゾーンに出向いて自分の領域と掛け合わせてできることを考え、新しいアイデアを生み出してほしいと思います。それがイノベーションの卵となり、「世界にインパクトを与えるプラットフォームになる」というSXSWの想いにつながります。私自身も、SXSWに参加したことが刺激となり、起業したんですよ。
そうなんですね!SXSWでどんな刺激を受けたのでしょうか?
初めて参加した時はWebプロデューサーでしたが、SXSWでサービスを自分で作り出しているスタートアップの人たちと出会い、自分も新たな価値を生み出したいと刺激を受けました。それまでクライアントワーク中心でしたが、エンドユーザーの喜ぶ顔が見えるモノを作り出したいと考え、事業開発部署に異動して自社サービスの立ち上げに関わりました。すると、もっと自由にサービスを作り出したいとの思いが強くなり、起業することにしたんです。すごく自然な流れで起業を決めましたね。SXSWで多くのスタートアップの人に出会って話をする中で、自分でも新しい仕事を作れるという自信も付いたからだと思います。
クリエイターも、SXSWに行くべきでしょうか?
もちろんです!これからの時代はアウトプットして作れる人が強い時代になるので、クリエイターにはどんどんSXSWに行って、刺激を受けてイノベーションの種を見つけてほしいと思います。異業種の展示を見て、自分のスキルと掛け合わせてアイデアを考えるだけでも、すごく勉強になると思いますよ。 そして、先ほどもお話しましたが、できればただ行くだけでなく、何でも良いので参加してほしいです。クライアントワークではない自分の作品を作るのはとても大切なことなので。SXSWならエントリーフィーも安いですし(笑)、作品作りや、プレゼンテーションのキッカケにしてほしいですね。
私たちもSXSW日本事務局として、日本でSXSW関連のイベントを主催したり、日本語のオフィシャルサイトを作ったり、Facebook(フェイスブック)などのSNSを活用したりして、情報を発信しています。SXSWを遠い世界のお祭りとして眺めるのではなく、身近なものとして捉えてもらえれば嬉しいです。
取材日:12月13日 ライター:植松 織江
VISIONGRAPH Inc.(正式名称・未来予報株式会社)
- 設立年月:2016年9月
- 事業内容:ビジネスリサーチ・デザイン・コンサルティング・ブランディング・マーケティング・戦略策定支援・コンテンツ企画・制作・講演・執筆
- 所在地:東京都千代田区神田練塀町3富士ソフト秋葉原ビル12F
- URL:https://miraiyoho.com/