WEB・モバイル2013.04.17

ヒットアプリ開発の最前線から! ~KLab『真・戦国バスター』プロデューサーに聞く~

Vol.93
KLab株式会社ゲームスタジオ 2部部長 野口真吾さん
現在、ゲーム業界とインターネット業界を通じて最も元気な分野と言っても過言ではないソーシャルゲーム市場。今回紹介するKLab株式会社は、そんなソーシャルゲーム市場を牽引する企業のひとつです。数々のヒット作を抱える同社ですが、中でも「戦国バスター」や「恋してキャバ嬢」といった作品は息の長いタイトルとして多くのユーザーからの支持を集めています。ユーザーを虜にするKLabのゲームたちは、いったいどのような想いや仕掛けの上で誕生しているのでしょうか。その秘訣を探るため、今回はKLab株式会社ゲームスタジオ2部部長の野口真吾さんにお話をうかがいました。

ヒットタイトル量産中! 「戦バス」チームの先進性と秘訣とは?

 

「真・戦国バスター」、いつもプレイしています。こちらのシリーズの立ち上げには野口さんも関わってらっしゃるんですよね?

はい。「戦国バスター」や「恋してキャバ嬢」といったタイトルの制作に携わりました。前者は主に男性向け、後者は女性向けという立ち位置で企画されたタイトルでしたね。ですが、実際には「戦国バスター」は男女両方から受け入れられる作品になっています。

「戦国バスター」は、多数のSNS戦国系ゲームが配信される中、埋もれずに支持され続けていますよね。秘訣のようなものはおありなのでしょうか?

特にこれという決定的な秘訣はありませんね。ユーザーの支持を得られるように、地道にコツコツと運営を続けてきたという感じです。 ただ、戦国系ゲームの競合という点で言うなら、「戦国バスター」立ち上げ当時には戦国時代をテーマにした他社のタイトルはあまり出てきていなかったんですよ。ですから我々としてはむしろ、現在の戦国アプリの流れを作った側なのではないかと思っています。当時はストーリー性を持つタイトルもあまり出ていなかったので、早くからシナリオやキャラクターを重視していた点も受けたのではないでしょうか。 また、もうひとつ戦国バスターの先進性を挙げるなら、フィーチャーフォン時代から戦国武将たちの美麗なカードを配信していたことでしょうか。スマートフォンが普及してきた現在では美麗なイラストをウリにするタイトルも増えて来ましたが、戦国バスターが登場したばかりの頃はイラストに力を入れた作品はあまり見られませんでした。この点においてもユーザーの心をいち早く掴んだのではないかと自負しています。 あとは、ユーザーが退屈しないようにカードやシナリオを定期的に配信していくことも重要ですね。近年ではユーザーの流動性も減ってきているように感じますので、ひとつのタイトルを長く、じっくり遊んでもらうための工夫は特に重要だと考えています。

現在のところ、野口さんが関わっているタイトル数はいくつぐらいでしょうか?

水面下で動いている未発表のものを含めれば10タイトルほどとなります。

それらのタイトルにどのような形で関わられているのですか?

タイトルによってまちまちですが、基本的にはプロデューサーとして大まかな方針を決めるのが私の役割ですね。また、ゲームの内容だけではなく新規ユーザー獲得のためのプロモーションについても意見を出します。また、すでに配信されているタイトルについては、データ分析や調整も行います。

大変な役割ですね。失礼ですが、野口さんは現在、入社何年目なのでしょうか?

7年目ですね。ちなみに私の代はKLabの新卒採用第一期生です。

KLabの海外展開と ソーシャルゲーム市場への展望

klabgames

画像はKLab Gamesホームページより

野口さんが関わられている中で、現在、ご自身が最も期待されているタイトルはなんですか?

どの作品にも期待はしていますが、勢いという点で選べば「ロード・オブ・ザ・ドラゴン」でしょうか。こちらのタイトルは現在、日本語版のみならず英語版も配信し好評を博しています。また、今後は英語圏のみならず中国でも弊社タイトルを配信していきます。米中に配信するとなればマーケット規模が大きくなりますので、今後のさらなる成長に期待しているところです。

ですが、言語や文化の違うエリアに配信するとなるとローカライズも大変なのでは?

「ロード・オブ・ザ・ドラゴン」に関して言えば、さほど大きな障害はありません。こちらははじめから海外展開を意識してデザインしたタイトルですので、システムや世界観についてもほぼそのまま各地域で受け入れられるよう設計しています。 私はどちらかと言うと「こういうゲームを作りたい」という情熱で突っ走るのではなく、自分たちの目的や課題を達成するためのタイトルを理詰めで作るタイプです。その意味では、「ロード・オブ・ザ・ドラゴン」は狙い通りの役割を果たしてくれていると思います。 もちろん、タイトルによっては地域や国家に合わせて大幅な変更が必要になるケースもあると思いますので、そのあたりは臨機応変に対応していきます。KLabでは現在、サンフランシスコや上海、シンガポール、マニラといった各地に海外拠点を構えていますので、ローカライズについては現地メンバーも交えて方針を決定していくことになるかと思います。

では、今後のソーシャルゲーム市場はどのように展開していくと思われますか?

業界の規模も大きくなり安定してきた感がありますので、弊社としては、現在の市場の中でシェアを伸ばす努力をしていくことになるのではないでしょうか。 ただ、スマートフォンの登場によって、以前よりも「ゲームらしいゲーム」が作れるようになってきましたので、今後はもっと複雑なシステムを持ったタイトルが増えてくるかもしれません。 その分、1タイトルあたりにかかる時間や費用も増えることになりますから、新作をどんどん配信していくよりも、一部の人気タイトルにリソースを集中するスタイルへと移行していく可能性はありますね。

開拓者精神を心に秘めて モバイルゲームの楽しさを世界に伝える

今後、ソーシャルゲーム業界への就職を希望される方も多いと思います。その参考として、野口さんが求められる人材をお教えいただけるでしょうか。

一言で言うと「一本立ちしている人」ということになるでしょうか。我々は組織の中で働いてはいますが、全てを他人が管理してくれるはずがありませんからね。言われた作業だけをするのではなく、自身のマネジメントやディレクションも一人で行えるような万能型の人になら安心して仕事が任せられます。 と言っても、全員が万能型ならいいというわけではなく、「UIデザインのセンスは抜群」とか「イラストはすごく上手い」といった特化型の人材ももちろん必要です。また、我々の組織の拡大とともに、プロジェクトやグループ全体をマネジメントできるバランス感覚を持つ人材も重要視されてきています。 ですので、大きく分けると「万能型」「特化型」「管理型」の3タイプが私の求める人材でしょうか。これは弊社や私だけに限らず、どの企業でも同じことかもしれませんが。

プラフェスサイト

「プラフェス2012」社内向けオフィシャルサイト

今後の御社の展望や展開についてお教え願えますか?

今後、KLabは新規事業にも力を注いでいく予定です。これは何もゲームだけに限らず、将来性が感じられればまったく新しい分野に対しても挑戦したいと考えています。 その一環として弊社では昨年、「プラフェス(プランニングフェスティバル)」と題して社内向けの企画コンペを開催しました。プラフェスではゲームのみならずアプリやWebサービスなどを含めた130件の企画が提出され、優秀賞に選ばれた作品は現在、事業化も検討されています。こういった試みは、今のKLabに必要なものだと個人的にも感じますね。 今年度、弊社は約50名の新入社員を迎え、社員数は700名を超えることとなりました。会社がここまで成長できたのは嬉しいことではありますが、反面、気を引き締めなければいけないとも思っています。 KLabは本来はベンチャー企業なんです。でも組織の規模が大きくなってくると、どうしても開拓者精神が薄くなってしまう。だからこそ初心を忘れないよう心がけて、常に挑戦し続ける姿勢を保ちたいですね。 ただ、これは心がけだけで解決できる問題でもありませんので、今後はより小回りがきく体制づくりも考えていく必要があります。コンパクトに動ける体制を保っておかないと、いずれ市場変化についていけなくなってしまいますからね。

では最後に、野口さんが作りたいと思うゲームについてお教えください。

現在KLabは海外展開に力を入れていますので、理想とするのは「どこの国でもヒットするゲーム」でしょうか。ひとつのゲームが世界中のユーザーに受け入れられるようになれば言うことはありません。実現困難な望みかもしれませんが、モバイルゲームの楽しさを世界に広めるのもKLabの使命のひとつですから。今後の我々の活動にどうぞ期待してください。

取材/2013年3月25日 取材・文/笠間

KLab 野口氏

【インタビュー対象者】 KLab株式会社 ゲームスタジオ2部 部長 ビジネスデベロップメント部 マーケティンググループ グループマネージャー 野口真吾氏

 

<参考URL>

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