「挑戦する人を助けたい」コロナ禍でも折れないエンジニア出身の社長の思い
社名の「Re:Build(リビルド)」とは、再構築という意味。その名の示す通り、株式会社Re:Buildの目標は、WebシステムやWebサービスの開発によって沖縄のさまざまな課題を解決し、活力ある社会へと再構築することです。
エンジニア出身の社長である鈴木孝之(すずき たかゆき)さんは、自身の経験や技術を生かした自社サービスで沖縄の多くのWebエンジニア、ひいてはさまざまな事業者をサポートし、助け合える世界を目指しています。鈴木さんが解決したい沖縄の課題とは何か? 詳しく伺いました。
沖縄の課題を解決し、労働環境を「再構築=リビルド」
エンジニアとしてのキャリアのスタートを教えてください。
2013年に新卒で東京のITベンチャー企業に入社したことです。約2年プログラマーとして経験を重ねた後、インターネット広告会社へ転職し2年ほどエンジニアとして働きました。そこを退職してから、フリーランスのエンジニアになりました。
起業を見込んでフリーランスになられたのですか?
そうです。実は学生の頃から起業が夢で、地域活性化について学んでいたこともあり、起業するなら地方の課題を解決できる会社にしたいと思っていました。フリーランスになったことを機に日本全国を転々としながら、起業したい場所を探しました。なかでも沖縄が一番よかったので、2017年に移住し、半年後に弊社を設立しました。
なぜ沖縄に決めたのでしょう?
温暖な気候で住みやすいうえに、スタートアップ企業に対する創業支援が充実している点が決め手になりました。また沖縄が抱える課題の多さを知り、それらを解決してみたいと思ったことも、理由の一つです。
沖縄の課題とはどのようなものですか?
県全体の産業が観光に依存していたり、他県に比べ貧困率が高かったりといくつかありますが、一番深刻な課題は給与水準が低いことだと感じました。私自身、お金に苦労した経験を持っていたので、何とか力になりたいと思ったんです。
どのようなご苦労だったのでしょう?
家庭の事情で大学の学費を自分で稼ぐ必要があり、学生時代はバイトに追われていました。本当は留学したり、プログラミングの勉強に集中したりしたかったのですが、かないませんでした。だからこそ沖縄でチャレンジしたい人をサポートできる事業を展開し、私のように「学びたいけど経済的に厳しい人」を少しでも減らしたいんです。
さらにそのような事業を通して利益を増やし、全国並みの給与水準にしたいと思っています。弊社は「挑戦する人を助けたい」というミッションを掲げています。会社設立当初から「誰かを手助けしたい」という思いは一貫しています。
社名の「Re:Build」に、その思いは反映されているのですね。
そうです。「Re:Build」とは再構築という意味です。沖縄の課題を一つずつ解決することで労働環境を再構築したいという思いを込め、名付けました。
自社サービスで地域活性化を目指す
御社の事業内容を詳しく教えてください。
他社から依頼されたWebシステムの開発と、自社サービスの開発・運営が2本柱になります。特に自社サービスでは、社会課題を解決することに注力しています。
どのような内容になりますか?
2つのサービスがあります。1つ目は、昨年リリースした「Tadoru(タドル)」です。エンジニアと企業をリファラル(紹介・推薦)でマッチングするサービスで、エンジニア同士で仕事を紹介し合い、採用された場合は紹介者にフィーが入る仕組みになっています。エンジニアはスキルの可視化が難しい業種だと感じていて、10年経験があるエンジニアでも、スキルは千差万別です。そこで「一緒に働いていたエンジニア」というフィルターを通すことで、採用を希望しているエンジニアの持つスキルの精度を見極められると考えました。
2つ目は、今年(2020年)の6月にリリースしたばかりの「OREIO(オレイオ)」というサービスです。オンラインイベントに参加すると、 参加費用の返礼として地方の名産品がもらえるという仕組みで、地域活性化が目的です。昨今の新型コロナウィルスの影響で困っている地方の小売業者と、地域PRイベント開催ができなくなってしまった主催者を何とか助けたいという思いから生まれました。
イベント主催者は、地域の名産品を返礼品にすることで地域をPRできます。またその地域の土産店などの小売業者は、自社商品が返礼品に選ばれることで、全国のイベント参加者という今までリーチしなかった客層にアプローチでき、新規顧客の獲得にもつながります。
コロナ禍の逆境から生まれた斬新なサービスですね。既に利用されていますか?
福井新聞社からのご依頼で、福井県を紹介するイベントを近々開催する予定です。沖縄でも、「フロントエンドエンジニア」や「ライター」といったテーマでイベントを開催したところ、多くの方に参加いただき、返礼品を提供してくれた小売業者にも喜んでいただけました。
自社サービス以外に、エンジニア教育にも力を入れているとHPに書かれていました。
「挑戦する人を助けたい」というミッションを掲げる会社として、まさにやりたかった事業の一つです。あまりお金がないけどエンジニアになりたいという学生や若手社会人に向けて、自社でオンラインスクールを開催しています。一般的な専門学校に比べると規模は小さく、少人数制で3カ月スパンですが、その分授業料は抑えています。沖縄は初心者向けのスクールばかりなので、弊社のスクールは主に中級者向けにして企業の即戦力となるように教えています。
沖縄でも全国レベルの給与水準の会社へ
これからの目標を教えてください。
沖縄の企業の多くは、Webサービスにかけるコストが他県に比べ圧倒的に少ないのが現状です。けれど、その中で全国レベルの給与水準にすることを目標にしていますので、沖縄に限らず全国の企業の開発に携わるようにしています。それと並行して、自社サービスを一層充実させることで会社の規模を大きくし、5年以内の上場を目指しています。
最後に、エンジニアを志す方へメッセージをお願いします。
エンジニアになりたい方が増加している一方で、長続きしない方も多いように感じます。その理由は、目標設定が明確ではないからだと思います。「エンジニアになればなんとなく稼げそう」という漠然とした目標ではなく、「こんな会社で、こんなプロダクトを作りたい」という具体的な目標がないと、挫折してしまうのでしょう。
目標を明確にするためにも、まずは独学でプログラミングを勉強することをおすすめします。50時間ぐらい勉強すれば、何が楽しいのか分かってくると思います。ひとまずやってみて喜びを見いだせたら、これから作ってみたいものや、働いてみたい会社が見えてくるはずです。逆に全然楽しく感じられないのであれば、早めに目標を切り替えられます。
もう一つ、エンジニアと起業の両方を経験したからこそ分かるのですが、プロダクトを作り上げることと、ビジネスを構築することは、同じ「作る」でもやりがいは全く違います。どちらの「作る」に興味があるのか、明確にしておくことも大事だと思います。
取材日:2020年8月25日 ライター:仲濱 淳
株式会社Re:Build
- 代表者名:鈴木 孝之
- 設立年月:2017年11月
- 資本金:2100万円
- 事業内容:自社サービス「Tadoru」、「OREIO」の開発・運営、Webシステム開発、エンジニア教育、デザイン制作
- 所在地:〒900-0015 沖縄県那覇市久茂地2-2-2 タイムスビル
- URL:https://re-build.company/
- お問い合わせ先:050-5480-4501