グラフィック2020.09.23

広告デザインの枠にとどまらない。 目指すのは時代に合った新しいクリエイティブのカタチ

広島
株式会社アンプ 代表取締役・アートディレクター
Shinya Misho
見正 伸也

広島で広告制作を手掛けている「株式会社アンプ」。グラフィックデザインを軸としながらも、TVCM、Web広告、ブランディング、キャラクター開発など、幅広く事業展開しています。質の高いクリエイティブで、大手広告代理店をはじめクライアントからの信頼も厚く、「中国新聞広告賞」や「広島広告企画制作賞」など、多数の広告賞を受賞しています。8月には新オフィスへ移転し心機一転。17年にわたって培った経験を生かし、新たな試みも行っている会社です。 そんなチャレンジ精神旺盛な代表の見正伸也(みしょう しんや)さんにアンプの足跡をお伺いしました。

所属会社の分社化により移籍。気付けば代表のポジション

最初にアンプ設立のきっかけを教えてください。

デザイン会社に所属していたとき、3つのチームに分かれて広告制作を行っていました。しかし、事情により分社化することになって、私が所属するチームで立ち上げたのがアンプのはじまりです。

社名の由来は、「増幅する」という意味のアンプリファイアから。広告クリエイティブを通して、クライアントの強みや思いを社会に増幅させていきたいという願いを込めて名付けました。初めは取締役のポジションでしたが、徐々に経営も任されるようになり、2009年に代表取締役となりました。もともと独立したい願望はなく、気付いたらなっていたという感じですね。

これまでの17年を振り返ってみていかがでしょうか。

いろんなことがありましたね。社員が独立して別のデザイン会社を設立したことも思い出深いですし、東日本大震災のときは世の中の広告がストップして大変な時期も経験しました。

決して順風満帆ではなかったのですね。それでも乗り越えられた理由はどこにあるとお考えですか。

創業から変わらず持ち続けているのは、仕事に対する責任感とクリエイティブへの探究心。その結果が「アンプにお願いしてよかった」という信頼につながっているのだと思います。もちろん私ひとりの力ではなく、共に頑張ってくれた社員たちのおかげで、17年目を迎えられています。

平凡であり、非凡であれ

現在の事業内容について教えてください。

新聞広告やポスター、パンフレットなどのグラフィックデザインを中心に、TVCM、Web広告、ブランディング、キャラクター開発など、さまざまなクリエイティブを展開しています。広告代理店から依頼を受けることが多いですが、最近はクライアントと直接取り引きする案件も増えてきました。

幅広いジャンルで制作されているのですね。

社内に「イラストが上手」「Webに詳しい」「トレンドの情報に敏感」など、それぞれ得意分野を持ったメンバーがいるので、その長所を生かすことで幅広いジャンルに対応できているのだと思います。

また、デザイナーだけでなくコピーライターが所属しているのも弊社の強み。言葉からのアプローチや企画の段階からも関わって提案しています。案件ごとにデザイナーとコピーライターがチームを組んで、ブレストしながらさまざまなアイデアを生んでいます。

制作においてアンプが心がけていることは何ですか?

お客さまに喜んでいただくために「平凡であり、非凡であれ」ということを大切にしています。クリエイターというと、奇抜な発想で今まで世の中になかった新しいものを生み出しているイメージがあるかもしれませんが、広告は大多数の人に受け入れてもらわなければいけないもの。だから一般的な感覚や視点を持っていることもとても大事なのです。

しかし、それだけでは平凡すぎて面白くないですし、誰も興味を持ってくれません。一般的な視点に、何か新しい気付きやエッセンスとなるアイデアを加え、非凡な表現へと変えていくこと。それが、私の理想とする広告作りですね。

そのアイデアは、どうすれば身に付くものでしょうか?

生活者がどんな過ごし方をしていて、どんなことに興味を持っているのか、しっかりアンテナを張って自分の中に蓄積していくことが大事です。

例えば、普段のニュースや人との会話で自分が思ったこと、肌で感じたことをメモに残しておく。そういった地道な努力を積み重ねると、いざというとき、面白いアイデアに化けます。

ヒントは日常に転がっているということですね。

そうですね。また、自分とは違う意見や考え方も新しいアイデアのヒントになります。同じ業界だけでなく、他の業界や職種の違う人とも積極的にコミュニケーションを図って、視野を広げていくのも重要ですね。

東京や大阪などの大都市と比べて、広島でクリエイティブを行うことに違いを感じたりしますか?

広島は被爆の歴史を持つ世界的にも知られた都市。そういった面で、平和に関する社会的な表現に携われる機会があることは、広島ならではかもしれません。印象に残っているのは、被爆70周年で世界に平和のメッセージを届けるプロジェクトに関わったときのことです。

当時は「平和に対して広告はどこまで力になれるのだろう?」と、考えれば考えるほど大きな責任を感じました。自問自答の日々が続きましたが、実際に被曝された語り部の方とお話したとき、「平和のメッセージを訴え続けることが大事なのです」とおっしゃっていて少し救われた気持ちになりました。大変な案件でしたが、強い使命感を持って取り組めましたし、大きな達成感を味わうことができました。

海外にも視野を向けながら、自ら発信するクリエイティブプロダクションを目指して

今後の展望をお聞かせください。

デザイン制作は、広告代理店やクライアントからの発注を受けて制作を行う流れが一般的。いわゆる「受け身」の体制です。しかし、SNSの普及などで世界中の誰とでも簡単につながれるようになった今、制作会社も自発的にコンテンツを発信していかなければならないと思っています。

その挑戦の一つとしてインバウンドに向けた企画を進行していたのですが、残念ながら新型コロナウイルスの影響により、ストップせざるを得なくなりました。

それはとても悔しいですね。なぜインバウンド向けの企画をしようと思ったのですか?

実は前から海外の仕事をやってみたいという願望があったんです。その実現のために、5年前から毎週講師の方を招いて英会話教室を開いてもらっています。

今回、企画のストップは残念でしたが、逆にこの状況を準備期間として捉え、別の企画を立ち上げました。「広島オンライン酒場TANOSHIGE」というコンテンツで、オンラインで広島のさまざまな魅力をトークセッションして発信していくものです。

YouTubeに動画をアップしているのですが、全て英語の字幕をつけて編集しています。手間はかかりますが新型コロナウイルスの終息後、広島に旅行したい外国人観光客に視聴してもらうことをモチベーションに続けています。

逆境もポジティブに考えているのですね。

まだお話できませんが、他にも実現させたいアイデアがたくさんありますよ。今までのクリエイティブに対する考え方は残しつつも、新しいことにも貪欲にチャレンジしていきたいですね。また、学生のインターンシップの受け入れも初めて行います。教える立場ですが、若い人から今の時代の感覚を教わる気持ちでいます。

最後にクリエイティブを志す人たちにメッセージをお願いします。

今、思いついているアイデアがあるならば、あれこれ悩まずとにかく実行に移してください。やらないと何も始まりませんし、どんな結果になるのかも分かりません。一流と呼ばれているクリエイターでさえ「10回チャレンジして1回成功すればいい」と言われています。

クリエイティブに失敗はつきもの。そこから学び、知識を積み重ねれば、次のアイデアに発展することも十分あります。この仕事の醍醐味(だいごみ)は、誰もやってないことをやってみるところにあります。失敗を恐れず、どんどん挑戦していってください。

取材日:8月25日 ライター:馬場 健太朗

株式会社アンプ

  • 代表者名:代表取締役・アートディレクター 見正 伸也
  • 設立年月:2004年1月
  • 資本金:500万円
  • 事業内容:広告、宣伝ツールの企画・制作全般およびグラフィックデザイン      VI・CI・新聞広告・ポスター・ロゴ&マーク・パッケージ・カタログ・パンフレット・キャラクター開発・DM・WEB・装丁・TVCMコンテ・ラジオCM・会社案内など
  • 所在地:〒730-0036 広島県広島市中区袋町5-5 4F
  • URL:https://amp-cr.localinfo.jp/
  • お問い合わせ先:TEL.082-546-1178 FAX.082-546-1177

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