ゲーム2020.09.23

「なぜ」と考え続けて、それを言語化することが、新たな「ゲームの企画」を生み出す

東京
株式会社アッパーグラウンド 代表取締役社長
Toshiyuki Uehara
上原 利之

家庭用ゲーム機、アーケードゲームの開発、スマートフォンアプリの開発や運営を手掛ける株式会社アッパーグラウンド。スクウェア・エニックスのスマートフォン向けRPG『星のドラゴンクエスト』の人気コンテンツ「モンスター闘技場」のプラニングなども担当した、ゲームの企画に特化した開発会社です。

「ゲームの企画・ディレクション」とはどのような仕事なのか、どんな人材が求められるのか。自身も長年にわたってさまざまなゲームの企画・ディレクションをしてきた代表取締役社長の上原利之さんにお話を伺いました。

フリーランスの時代から、なんとなくだが抱いていた会社設立の思い

会社立ち上げまでの経緯を教えてください。

フリーランスでゲームの企画・ディレクションをずっとやってきました。チームを任せていただくことが多かったのですが、個人の場合はチームが変わってしまうと、ゲーム作りに関するいろいろなことをイチから作り直さなければならないんです。なるべく同じメンバーでやるようにしていたのですが、どうしても限界がありまして、それで法人にしたんです。

個人では1人で1本しかできないというジレンマもありました。僕は「また一緒にやろう」と言ってくださった方とのお仕事を優先させてきたのですが、そうした相手との案件に取りかかっているときに、別のところから「何かやりましょう」と言っていただいても、お断わりしなければならない。そうしたことが結構ありまして「もったいないな」「もっと、いろいろやってみたいな」と思ったのも理由のひとつです。

それまでは、ずっと個人でやっていこうと思われていたのでしょうか?

いえ、本当に「なんとなく」というレベルですが、会社的なことを1回やってみたいという考えはフリーランスになったときから持っていまして、会社名を「アッパーグラウンド」にするというのも早くから決めていました。 ですから、スタート時は僕を含めて社員は3人だけでした。「ちょっと会社をやってみるんだけど、一緒にやってみない?」みたいな感じでフワっと始めたのが、気付いたら人も増えて「会社っぽくなってきたなあ」というのが正直な感想です。

自分の考えを正確に伝えることが、面白いゲームを作る第一歩

企画やディレクションに特化されているということですが、どういった形でお仕事を進めるのか、ご説明いただけますか。

いろいろなケースがありますけど、弊社の場合は「スクウェア・エニックス」や「バンダイナムコエンターテインメント」のようなパブリッシャーから「こんなゲームを作りたいんだけど、一緒にやりませんか?」みたいな相談をまずいただくことが多いです。それに対して、「こんなゲームにしたらどうでしょうか」とか「こうしたら面白いと思うんです」といったことをお伝えして、先方が「ああ、それ面白いですね」となったら、正式にスタートです。

そうして企画が立ち上がったら、今度はどんなゲームにするのかを具体的にイメージして、書面にしていく。弊社はあくまで企画がメインですので、僕たちだけでモノを作りあげることはできません。ですから、自分たちが何をやりたいのか、チームのメンバーに正確に伝えるということは意識してやっています。

出来上がってきたら、想定通りになっているのか、想定通りだとして、それは面白いのかをチェック。トライアンドエラーを繰り返しながら仕上げていきます。そして、ゲームがリリースされたら今度は運営のフェーズが始まるという感じです。フェーズごとにやることは違いますが、ゲームのことをずっと考えて、何が正解かを模索し続けるのはどのフェーズでも変わらないとは思います。

企画やディレクションは「コミュニケーション」が大事と、よくおっしゃっていますね。

自分が思っていることを正しく伝えないと、イメージをしたゲームにならないからです。もちろん1人で作る訳ではないのですが、たとえ話とかいろいろな手段を使って、できるだけ自分のイメージを正確に伝えるようにしています。そこを諦めてしまうと、いいモノは出来上がってこないですからね。

そのための環境作りも重要です。ディレクションをしていて一番キツいのは隠されること、事実と異なることが上がってくることなんです。そうなると、正しい判断ができなくなります。

もちろん、ウソをつくほうが絶対的に悪い。でも、話しやすかったら、そうはならないはずで、その環境を作っているのは仕切っている側ですから、そうならないようスタッフにも意識させています。「意見を言わない人だけが悪いんじゃないよ」と。なかなか難しいですけどね。

企画・ディレクションをする者にとって、最も重要なことは何だと思われますか?

いろいろなことに「何でだろう?」と思えることでしょうか。先ほども言いましたように、企画やディレクターは「なぜ、これが面白いのか」を、ゼロの状態から作る人たちに説明しなければなりません。そのためには言語化する訓練を常にやっておかなければいけないのですが、そもそも「なぜ?」に気付かなければ、言語化するところまでいけないです。

自分なりで良いので、疑問に思ったことの結論を付けていく。このような自分なりの思考が、企画が成長できるきっかけになるのではないかと思います。

説明するには知識が必要ですが、「なぜ?」と思わなければその知識は得られないということですね。

そうです。企画やディレクターは「なぜその視点にするのか」、「なぜ画角をその角度にするのか」みたいなことを全部自分で決めていかなければなりません。そのための指示をちゃんと出せるようになる。なんとなく指示したものは、なんとなくなモノにしかならないと思ってしまうんです。

「『楽しい』の地平を広げよう!」を今後10年のビジョンと定める

今後はどんな会社にしていきたいですか?

我々は「少しでも多くの笑顔を、よりたくさんのワクワク感を」という理念にプラスする形で、これから10年のビジョンとして「『楽しい』の地平を広げよう!」というフレーズを掲げています。ゲームのノウハウを使って、ちょっと新しいことといいますか、ゲーム以外の事業もやっていきたいと思っています。新しい価値が生み出せるようなことと言いますか。ただ、ゲームを作ること、がうちの会社の根幹ですので、そこはブレないようにしたいです。

企画以外の部分も手掛けたいというお考えはありますか?

実はプログラムやグラフィックの会社さんに、業務提携という形で弊社に入ってもらっているんです。企画として「こんなことをやりたい」と提案しても、一緒にやっている別の会社さんに「できない」と言われたら、それまでじゃないですか。だったら自分たちですがすがしく責任を取りたいと。ダメだったとしても「自分たちが悪かった」という構造にしたいと思うようになったんです。まだ試行錯誤の段階ですが、いずれは弊社にも企画・プランナー以外の人材を入れたいと考えています。

これから一緒に働くスタッフ、仲間にはどんな人を求めたいですか。

ちゃんと人と一緒に仕事ができる人です。弊社は上と下の距離が近いといいますか、話しやすい環境ではあると思います。だからプロフェッショナルとして、ちゃんとフォローし合いましょうと。ただし、人を攻撃し合うのはダメです。誰かを攻撃すると自分も攻撃されて、結果、皆が追い込まれて弱っていってしまう。それは、やはり良くないなと思います。

自己主張のあるなしというのは性格に付随するもので、能力とひも付かないと考えています。仲良くやってくれるのなら引っ込み思案でも全然かまいません。もちろん、会社なので仲が良いだけのグループではダメとも思っていますし、僕も業務では決して緩くはないです。仕事のできる人たちが、仲良くいいバランスで仕事ができるのが一番ですね。

アッパーグラウンドは社のメンバーにはこうなってほしい、こういうことを考えてほしいという6つの「UG-ism」を定めている。

取材日:8月31日 ライター:仁志  睦

株式会社アッパーグラウンド

  • 代表者名:上原 利之
  • 設立年月:2014年3月
  • 事業内容:コンソールゲーム・PCゲーム企画・ネイティブアプリ・Webゲーム企画・アーケードゲーム企画などのディレクション、ゲーム制作にあたっての総合コンサルティング
  • 所在地:〒169-0075 東京都新宿区高田馬場4丁目39−7 ユニゾ高田馬場四丁目ビル 6階
  • URL:https://www.upper-ground.jp/
  • お問い合わせ先:上記URLの「お問い合わせ」より

日本中のクリエイターを応援するメディアクリエイターズステーションをフォロー!

TOP