演出の力で、視聴者に喜怒哀楽を感じてもらえる番組作りにこだわりたい

大阪
株式会社レジスタエックスワン 代表取締役
Yutaka Hasegawa
長谷川 豊

関西のバラエティを中心にさまざまな番組を手掛けるテレビ制作会社、株式会社レジスタエックスワン。「上沼恵美子のおしゃべりクッキング」(朝日放送、テレビ朝日系列)や「胸いっぱいサミット!」(関西テレビ)をはじめ、多数の有名番組を収録編集し、大阪、東京、名古屋の3拠点で事業を展開しています。

高視聴率が獲れる面白い番組作りの秘訣はどこにあるのでしょうか。代表取締役の長谷川 豊(はせがわ ゆたか)さんにこれまでの歩みや仕事への思い、業界の展望について伺いました。

先輩が厳しくても、あちこち動けて刺激的な毎日

会社立ち上げまでのキャリアをお聞かせください。

大学卒業後、1978年にAD(アシスタントディレクター)として制作会社の東通企画に入社したのが始まりです。40年前のテレビは華やかな世界で、ミーハー心をくすぐられて刺激的な毎日でした。先輩は厳しくてADとして大変なこともありましたが、サッカーをやっていた学生時代の上下関係に比べたら大したことではない。一日机でじっとしているよりもあちこちへ動けるこの仕事は自分に向いていると思いました。

入社3年目に、朝日放送の「プロポーズ大作戦」でディレクターとしてデビューしました。「フィーリングカップル5vs5」が有名ですが、僕が担当したのは、お目当ての好きな人を探し出してスタジオで対面させるコーナー。依頼者がどんな経緯で相手を探したいのか、そしてこんな手掛かりからここへ探しに来たという内容で、タレントを連れて面白く演出して2分程度の映像を撮り、公開収録していたABCホールで流していました。

この2分間は毎週ドキドキでした。笑ってほしいところで観客にシーンとされると後で先輩に怒られて、「次どうしよう」と悩み、ドッと笑いが起こった日はもう「やったー!」と快感で。これがディレクターとして最初に感じた厳しさと面白さで、芸人さんが舞台に立つときと同じような気持ちでした。

笑ってもらえる映像を作るために、どのような工夫をしてきましたか。

考えてもそう簡単にアイデアは出てこないし、今まで自分が培ってきた経験から導き出すしかないのです。これとこれを化学反応させたら面白くなるかもとか、ここにこれを当てはめたら笑いが起こるんじゃないかとか。

関西No.1の番組制作会社を目指して立ち上げ

その後、独立された経緯をお聞かせください。

若いときに在阪局の方たちと一緒にいろんな番組の仕事をさせていただきました。東通企画という大きな会社だったからこそ、バラエティに限らず幅広いジャンルの仕事が経験できて、局の方たちと知り合えたのも僕にとって今でも大きな財産になっています。

35歳を過ぎたとき、上司から「関西でNo.1の番組制作会社を一緒に作らないか」と声をかけられて。結婚して子供も既にいたんですが、なぜか不安や迷いもなく、直感的に面白そうと思ったんです。嫁も反対しませんでしたね。それで1993年に退職して、前身となる株式会社エックスワンを立ち上げ、新たな番組制作に取り掛かりました。しばらくして「上沼恵美子のおしゃべりクッキング」がスタートし、今年25年目の長寿番組になります。

立ち上げ当時、大変だったのはどんなことでしたか。

僕は現場の責任者として制作を引っ張る立場だったので、いかにスタッフがモチベーション高く仕事ができて、現場をスムーズに回せるかに腐心しました。

一緒に仕事をする方が複数いると、それぞれの仕事に求める内容やレベルに違いがでてくるので、スタッフはそのレベル感を的確に捉えたうえで立ち回らなければなりません。そのなかで「いい番組を作る」という使命はぶらさずに、出演者に自信を持ってもらったり、撮り直しをしたりと、現場にいる人たち全員で作り上げました。

2008年にエックスワンの持株会社への移行に伴い、テレビ制作部門を分社化してレジスタエックスワンを設立。社長に就任されます。現在の事業内容と、同業他社と比べた強みをお聞かせください。

大阪、東京、名古屋で番組制作を行い、「サワコの朝」や「サタデープラス」(毎日放送、TBS系列)、「朝生ワイド す・またん!」(読売テレビ)、「本能Z」「チャント!」(CBC)など、バラエティからトークや情報、報道まで幅広いジャンルを多数手掛けています。

チーム体制で動く制作会社は、関西では当社ぐらいなのが強みです。最近では各テレビ局が制作会社を持つようになって、番組内のコーナーでディレクターだけを貸してほしいといったニーズも多いんですが、我々は番組を1本丸ごと、完全パッケージで任せてもらえる。

プロデューサーやディレクター、AD、庶務を担うデスクなど、番組作りに必要なチームが社内にいくつか編成されているのが、他とは違うところです。丸ごと番組に関われる分、責任も重いですが、やりがいは断然違います。

チームでいい番組作りをするのに大切なことは何でしょうか。

オンとオフをはっきりさせることと、コミュニケーションですね。遊ぶときは思いっきり遊んで、仕事では皆で頑張ろうというのが、立ち上げ当初からの考えです。飲み会やBBQ、旅行などのイベントも多く、チーム内や社内のコミュニケーションが日頃から活発なのは、業界でも「珍しい」と言われます。

「自分がディレクターだったらどうするか?」を常に意識して

番組作りで心がけていることは何でしょうか。

気を付けているのが、「視聴者の目線で見ること」です。

たとえば「おしゃべりクッキング」の場合、プロの先生が出したレシピ案に対して、ディレクターや構成作家と一緒に「これをそのまま流して、テレビを見る人が理解できるの?」という視点で見ています。

先生やスタッフはずっと関わっているから僕よりも料理に精通しているし、「見る人は分かっているものだ」と思って発信することもある。でも視聴者は必ずしも知識がある人ばかりではないですから、分かってもらえるように伝えないといけないんです。

若いスタッフ、特にADにはどんなことを求めていますか。

「いろんなことに好奇心を持って、行動してほしい」といつも言っています。テレビ制作の仕事は、別に一つのことに精通する必要はないんです。浅く広く関心を持つことが大事で。そのなかで何かに詳しくなってくれば、番組作りに役立つことがあるかもしれませんが。

また、ADは「自分がディレクターの立場だったらどうするのか?」を常に考えながら行動すべきです。先輩から「あれを買ってきて」「これを準備して」と言われた雑用でも、どっちの商品の方が良いのかとか、どう使うのかなど、目的を踏まえたうえでやるのが大事。それを積み重ねて4年とか経って、「ディレクターとしてやってみなさい」と言われたときに自分に引き出しがどれほどあるかということなんですね。あの先輩はあのときにこんなことをしていた、この先輩はこの場面ではこうしていた…という引き出しがいっぱいあれば、そこから取り出して対処できる。

ネット配信の時代でも、見る人に喜怒哀楽を感じてもらえる演出を

会社の今後の展望についてお聞かせください。

最近ではネットでの制作や配信が台頭してきて、テレビ番組でもドラマをスマートフォンで撮影することでコストを抑える動きもあります。若い人たちもスマホを駆使して、僕らが見てもビックリするぐらいのクオリティで動画を編集していますよね。

今後テレビがどうなっていくのかは我々の間でも答えは見いだせていないですが、映像制作という観点で考えたとき、時代のニーズに合った動きを意識する必要があります。その際に、何らかの経験をしていたら、いざ本格的に稼働させる段階で役立つので、動画サイトでの映像制作や配信をやりたいと希望する若いスタッフがいれば、できる限りやらせてあげたいし、あるいは仕事として映像制作に興味を持つ若い人たちにこの業界を目指してもらい、知恵やアイデアをいただきたい。

ネットでの映像制作や配信が時流になったとしても、テレビ番組制作ならではの魅力はどこにあると考えますか。

技術やハードな部分がどんなに発達しても、ソフトの部分は人間が考えること。番組を見て喜怒哀楽を感じていただけるものづくりは、人間にしかできないと思うんです。テレビの画面のなかに夢や希望、感動を詰め込んで、視聴者の感情を揺さぶることが、自分たちによる演出の醍醐味(だいごみ)です。

取材日:2020年9月8日 ライター:小田原 衣利

株式会社レジスタX1

  • 代表者名:代表取締役 長谷川 豊
  • 設立年月:2008年2月
  • 資本金:1,000万円
  • 事業内容:テレビ番組制作
  • 所在地:〒531-0075 大阪府大阪市北区大淀南1-5-1 ケイヒン梅田ビル5階
  • 電話番号:06-6453-0801
  • URL:https://regista-x1.co.jp/
  • お問い合わせ先:上記URLの「WEBでお問い合わせ」より

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