インターネット黎明期に会社設立、四半世紀を経て新たな情報化の時代に経験を生かす
パーソナルコンピューターが人々の間にまだ浸透していなかった1995年。当時はインターネットを利用して情報にアクセスするということも一般的ではありませんでした。アメリカのマイクロソフト社がパソコンの基本ソフト(オペレーションシステム)であるWindows 95(ウィンドウズ95)を発売したことで、状況が一変、「パソコン」が企業や家庭に普及し始めます。
その年に株式会社スーパーネット・ジャパンを設立した代表取締役の藤田欣一(ふじた きんいち)さんは、通信・情報の時代が来ることを確信し、ネットワークの構築、ホームページ制作の事業にいち早く着手しました。四半世紀を経た2020年、政府はデジタル庁を創設、国全体のIT化を図る政策がスタートしました。新たな情報化の波を受け、藤田さんは次の一手を模索します。
インターネットの時代を確信、電力会社から回線を借り上げ事業本格化
会社設立のきっかけをお聞かせください。
石川県内の大手機械メーカーで18年間サラリーマンをしていました。システムエンジンニアとして、生産ラインを導入されるお客さまと設計者、会社の間に入ってシステムを構築する話をまとめていました。
例えば、工場に全長100メートルほどの生産ラインを導入する際に、そこに並ぶ機械をコントロールするシステムを組み、お客さまが作業しやすいように環境を整えるといった業務に携わっていました。そのうちに会社をやめて起業しようという気持ちが強くなりました。まだ世に出ていないインターネットの時代が来ると予測し、通信とかサーバーとかパソコンなどに興味を持ち、起業するならばそうした分野と決めていました。
立ち上げた際は順調に進みましたか。
勤め先を退社し、会社を設立したのが1995年3月。その年の11月にウインドウズ95が日本でも発売され、コンピューターの利用が一気に広がると確信しました。当時はまだインターネットに接続するための光回線が一般にはなかったので、拠点間を結んで情報をやり取りできるようにと考え、地元の電力会社が持っていた光回線を一本借り上げて事業が本格的にスタートしました。
そこから事業が広がっていったのですね。
中小企業やパーソナルな部分でインターネットの利用が広がることを見越して、1996年にはホームページを制作する業務に一気に入り込んでいきました。情報を伝えるだけの普通のホームページには最初から興味がなく、企業向けに特化した制作を展開しました。主に、データベースを構築したアプリがあって、お客さまがほしい情報をデータベースで検索して表示するというページ作りを進めました。
もう少し具体的にどのようなページを作られたのか教えていただけませんか。
例えば、商店街であるブランド品を買うにはどのお店に行けば買えるのかお客さまがすぐに分かるページを作ったり、中古車業者が車を仕入れる際に、探している車種や色、年式などから検索して、情報を入手できるようなページを作成しました。データベースとウェブアプリを結び付けたのは、ひょっとしたらうちが日本で最初ではないかと考えています。
「インターネットって何?」。説明に汗したことで受注が広がる
起業後、どのように営業されたのですか。
それが不思議と営業をした記憶がないのです。インターネットが広がり始めた時代で、相手も新鮮だったのか、いろんな人に出会うたびに「インターネットって何?」「インターネットで何ができるのか?」と聞かれて、説明に汗水を流したことは覚えていますが、本気で話を聞いてくれた数人の方から事業が始まり、その後はそこから横に広がっていきました。
事業内容について、Webデザイン、システム構築、アプリ開発など、複数の事業が挙がっています。現状の売上比率をお聞かせください。
企業向けの検索の仕組みがある「動的ページの制作業務」が会社全体の7~8割、ネットワーク構築など「インフラ整備」が2~3割というところでしょうか。
多くの同業者がいる業界だと思いますが、他社と異なる点や独自性はどこにありますか?
当社の業務のメインである業務アプリを制作することで、ユーザーの情報を読み取り、データを分析します。ユーザーの動向が数値化されたそのデータから、何を読み取りどう生かすのか、提案できることが当社の特徴でしょうか。依頼されたものを制作するだけでなく、「どうにかしたい」というお客さまの悩みや言葉にできない疑問をくみ取り、「もっとこうなったら良いのに」というお客さまの要望を実現します。
10人を超えるスタッフがいらっしゃいます。豊富な力を束ねて事業を展開するために、意識して取り組んでいることはありますか?
現在スタッフは16人。このうち4人が、現在リモートで働いています。自社サイトではスタッフ全員を顔や本名を出さずコメントで紹介しています。サイトを見た方が「こういう仲間と仕事がしたい」「こんな会社で仕事がしたい」と思ってくれるといいなと考えたからです。 仕事は裁量性で、昼寝をしたければそのための休憩を取ってよいし、いつ帰っても構わない。自由度が高いほうがスタッフの持つ力を発揮できると思っています。
スタッフに対して求めることはありますか。
この仕事が好きであることが第一ですね。自分で最新のテクノロジーを勉強してほしい。かつてはフリーランスの方に業務を外注したこともあったのですが、結果的に苦労したことも多かった。納期日の朝になっても1割程度しかできていなかったり、連絡がつかないことが重なり、社員で対応することにしました。
フリーランスの道を選ぶ人が増えており、その働き方を否定するわけではありませんが、社員には「フリーランスの集合体に負けない、社員組織にしかできないことを打ち出せばもっと強くなれる」と説いています。
経営者として、社員を育てることが課題となります。
実は、ちょうど昨年から今年にかけて社員の入れ替わりがあり、自分の考え方を切り替えました。これまでは、経験者に入社してもらえば良いと考えていましたが、一般常識があり意欲があれば採用し、どんどん教えていくことにしたのです。新人でも2、3年すれば今度は先生になれる。次の新しい人に教えていくような体制をとりたいと考えています。
変化に即応できる強み生かし、中小企業が利用できる仕組み作りを促進
テレワークやオンライン会議、ネットショッピングの利用など、新しい生活様式が求められる時代になってきていますが、お客さまから求められることは変わりましたか?
自分の中で変わったことはありませんが、お客さまの考え方が変わったことを実感しています。新型コロナウイルス感染症が広がる以前から、ネットワーク活用の大切さをお客さまに説いていました。それでも担当者は「そのうちね」というような反応でした。
ところが、コロナ禍でお客さまの考え方や理解が深まり、ニーズが一気に増えました。ネットワークの仕組みをいかに次にビジネス展開に活用するかが、大きな課題となっています。そんな意味で当社は、コンテンツ作りとインフラ整備の両方ができる強みがありますので、どう展開すれば良いかをワンストップでアドバイスさせていただいています。
具体的にどのようにアドバイスされていますか。
業務の自動化、システム化の重要性をアピールしています。人が短期間で辞めて、少なくなる状況下、テクノロジーを生かして自動的に対応できる仕組み作りを説いています。今日入った社員でも、すぐに業務に対応できるシステム作りを当社が担っていきますと。
今後の展望、将来のビションなどお聞かせください。
当社の強みは、変化に即応できる、これまでの経験を生かして時代を先に勉強することでいち早く実用化できる点にあると考えています。例えば、大企業が利用する情報システムは、そのまま中小企業で利用できない。システムをコンパクト化し、リーズナブルな価格に落とし込んで、中小企業や個人事業主に先端技術を提供する会社でありたいと願っています。
取材日:2020年11月9日 ライター:加茂谷 慎治
株式会社スーパーネット・ジャパン
- 代表者名:代表取締役 藤田 欣一
- 設立年月:1995年3月
- 資本金:1,000万円
- 事業内容:ソフトウェア開発、ネットワーク構築、インターネットコンテンツの作成、コンピューターおよび関連機器の販売など
- 所在地:〒921-8824 石川県野々市市新庄5丁目6番地
- URL:https://www.supernet.co.jp/
- お問い合わせ先:TEL: 076-214-6147