グラフィック2020.12.09

共同代表だからこそ、できることは倍以上に。理想の会社も街も「ないなら作ろう!」

新潟
CS合同会社 代表
Haruka Oguro/Ayumi Tanabe
小黒 知佳 氏/田邉 あゆみ

新潟県において第2位の人口を誇り、日本3大花火大会でも知られる長岡市に、「クリエイティブすごいらしい!」という変わったフレーズのデザイン会社「CS合同会社」があります。2015年に設立され、Webと企画立案に強い小黒知佳(おぐろ はるか)さんと、グラフィックに強い田邉あゆみさんの2人の女性が共同代表を務めており、それぞれの持ち味を生かした事業を展開しています。 「地方だから諦める」ではなく「ないなら自分たちで作ろう!」というマインドで、時にはオタクの感性も発揮する⁉ 多角的な取り組みを伺いました。

社名は「クリエイティブすごいらしい!」合同会社

社名は「クリエイティブすごいらしい!」合同会社

田邉:

私は地元長岡の長岡造形大学で視覚デザインを学んだ後、6年ほどエディトリアルデザインの企業でデザイナーをしていました。私自身あまり本を読まないので、どうやったら同じタイプの人も読みやすくなるのかを考えながら、文字数やフォントの大きさ、ページ構成などをデザインすることにハマっていました。

小黒:

私は大学で心理学を学び、金融機関や求人広告会社、パソコン教室などでいろんな仕事を経験しました。金沢で働いたこともあったのですが、家庭の事情で長岡に戻り、職業訓練校で講師をしているときに、デザイン会社を退職して訓練校に学びにきていた田邉と出会いました。

田邉:

2人で飲む機会があり、「就職どうするの?」「働きたい会社がない」「新潟・長岡がもっと楽しくなったらいいのにね!」「じゃあ2人でやろうか⁉」と盛り上がり、出会って三カ月で「CS合同会社」を立ち上げました。

小黒:

お互いのこともほとんどよく分かっていないまま(笑)。二人ともオタクで、漫画やゲームのイベントなどで東京に行く機会が多かったんですが、事情があって長岡を離れられない。だったら「自分たちが面白いことを作り出して、住む場所が楽しくなって、県外から人が来るようになったらいいよね」と意気投合したんです。

「CS合同会社」の名前の由来を教えてください。

小黒:

2人で出資しているから合同会社で、責任も半々。CSは「クリエイティブすごいらしい!=Creative Sugoirashii!」の頭文字です。そもそも制作物は私たちが価値を決めるのではなくお客さまが決めるものだから、私たちが「すごい」と言い切るのは違う気がしました。

ただ、立ち上げた当初は「『クリエイティブすごいらしい』ってどういうこと?」という質問に明確に答えられませんでした。

田邉:

言えるようになるまで、何年もかかりましたけれど、制作物に対して「これは『クリエイティブすごいらしい!』と言えるのか? 無難に作っただけじゃないか?」とすごく考えるようになりました。そううたっている以上、お客さまにそれなりの価値を提供しないといけませんから。

小黒:

毎回そのやりとりはしています。「なんか普通だね」「ターゲットはこれでいいの?」とか遠慮なく言います。

田邉:

方向性が間違っているものを作って効果がないと、自分にとってもお客さまにとってもダメージが大きいので、常に効果は意識しています。ただ、作っている側としては、やり直しになると締め切りとの兼ね合いに焦りますけどね(笑)。そこは小黒のスケジュール管理能力が発揮されます。

地に足のついた効果のあるブランディングを提案

地に足のついた効果のあるブランディングを提案

田邉:

企業や商品のブランディング全般からフライヤーやパッケージなどの制作、イベントやワークショップの企画などを行っています。「こういうのやりたいけどどうしたらいい?」という漠然とした相談から始まることも多いですね。

小黒:

最近だと新潟県からの依頼で、隣の十日町市の伝統産業である着物を盛り上げる企画として、25歳以下の若者が新しいデザインの振り袖や訪問着を考えるワークショップを企画しました。

田邉:

地方だと「ブランディング」という言葉自体も知らなかったり、企業のキャラクターとかけ離れた流行やハイブランドを意識した相談もあるので、ただ見栄えがいいもの、派手なものを作るのではなく、長い目で見て着実に効果の上がりそうな提案を心がけています。

小黒:

特徴的な取り組みとしては、毎週水曜日を休みにしています。一応出社扱いにはなりますが、インプットのための1日なので過ごし方は自由。仕事が手いっぱいになっていたら予備日として使ってもいいことになっています。

Bizコミ」という漫画を使った制作物のサービスが特徴的ですね。動画ナビゲーターの漫画は、田邉さんが描かれるんですか?

田邉:

私は、イラストとデザインを組み合わせてカッコよく見せることが好きなので、漫画は地元の漫画家さんにお願いして、私はデザイン面でよく見せていくパートを担っています。エディトリアルの経験を生かせています。

小黒:

例えば、経理事務所の業務内容を漫画で紹介した制作物は、「難しそうに思われる業界だからこそ、漫画で分かりやすく伝わる」と好評でした。

田邉:

私たちは、もともと漫画やゲームが好きなので、「もっとこうしたらよくなる」ということが分かるし、趣味も仕事に生かせるのがいいところです。こういった仕事は、もっと増やしていきたいです!

Webとグラフィック両方の視点から、効果を意識した制作ができる

2人で仕事をするうえで、どんなところに強みを感じますか?

小黒:

私は得意な企画やブランド戦略、スケジュール管理を担当して、田邉はグラフィックやイラストなどビジュアル制作を担っています。

意見の対立などはありませんか?

小黒:

できることがお互い違うので、対立は基本的にありません。ただ、やっていないことに対して「なんでやっていないの?」と言ったりすることはあります。田邉のいいところは思ったことをすぐ素直に言えるところですね。

田邉:

でも、たとえ私が反論しても、小黒に論破されて「確かに言っていること正しいな」と納得することが多いです。

小黒:

私はWebサイトを作る仕事をしていたこともありますが、Webとグラフィックでは、視点が違うんです。Webは数字で結果が出るかを見るし、グラフィックは見た目の印象の話をする。Webとグラフィック、ハイブリッドで、それぞれ良いバランスで整えた「伝える力があるデザイン」を作れるところも、2人ならではかもしれません。

田邉:

私にできて小黒にできないことがある。小黒にできて私にできないことがある。2人でやることで1人よりもできることが増える。地方で仕事をしていくうえで、一緒に活動していけるネットワークを持っていることは大事だと思います。

住んでいる長岡を、住みやすく楽しい土地にするために

今日までにターニングポイントがあったら教えてください。

小黒:

立ち上げから半年が経った頃、ある程度お仕事はいただいていたんですが、このままだといずれいき詰まると思ったので、月1回、深夜に「CS超会議」を開催するようになりました。

田邉:

会社の将来やビジョンなど、とにかくどんなことをしていきたいか話し合うんです。長岡駅前にビルを建てたいとか、農家アイドルをプロデュースしようとか、おにぎり屋さんやりたいとか…。最近は会社の目標が「人生の生活の質を上げること」に整理されました。

小黒:

初心に帰るようですが、住んでいる街を住みやすく楽しいものにしたいという思いは、結局自分たちの生活の質を上げたり人生の楽しみを作るということだと思うので、会社全体でその方向を目指すのはいいことではないかと。デザイン業にこだわらず、やりたいことをやっていこうと話しています。

クリエイティブの仕事をするうえで、長岡はどのような土地ですか?

小黒:

ブランディングの価値は、グラフィックやWeb以上にまだまだ認識が低いと感じています。クリエイティブに対して「投資」よりも「消費」という意識が高いので、活用がうまくなされていない。言い換えれば、そこにこれからの伸びしろを感じます。 「長岡造形大学」「長岡技術科学大学」「長岡大学」「長岡高専」がある土地なので、連携して若者が活躍できる機会を設けることで、ポテンシャルは高まってくると思います。

どんな人と一緒に仕事したいと思いますか?

小黒:

私たち2人とスタッフの間にあまり上下関係を作りたくなくて、できないことや思っていることははっきり言ってもらうようにしています。なので、自分がやりたいことや意見を言える人、ポジティブな後ろ向きじゃない人がいいですね。 聞いた情報やネットからの情報で満足するのではなく、実際に自分でやってみて試行錯誤をするのが好きな方は嫌いでなければ、クリエイターに向いていると思います。

今後やっていきたいことを教えてください。

田邉:

長岡が、自分たちが住んでいて楽しい場所になるように、「クリエイティブすごいらしい!」を主軸にしながら、フットワーク軽く、チャレンジしていきたいですね。

小黒:

まさに「人生の質を上げる」です。デザインで実現することはもちろん、スタッフが「これが世の中にあったらいいのに!」と思うことを「じゃあやろうよ!」と言える会社でありたいと思っています。

起業したときも、働きたいと思う会社がなかったから「ないなら作ろうか!」から始まったので、気軽に希望を言葉にして実行できる会社でありたいです。

取材日:2020年10月29日 ライター:丸山 智子

CS合同会社

  • 代表者名:代表 小黒知佳・田邉あゆみ
  • 設立年月:2015年5月
  • 資本金:20万円
  • 事業内容:ブランディングデザイン、PRデザイン(グラフィック・Web)、漫画コンテンツ、コンサルティング、講師など
  • 所在地:〒940-0066 新潟県長岡市東坂之上町1丁目4-3 スカイハイツ201 クリエイティブすごいらしいオフィス
  • URL:https://csllc.co.jp/
  • お問い合わせ先:Tel:0258-94-4904

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