シェアオフィスとワーケーション事業で、「新しい働き方・生き方」を伝える
東京でコワーキングオフィス開発や不動産ブランディング事業を行う「株式会社マッシグラ」代表の金子智一(かねこ ともかず)さん。沖縄の新聞社「株式会社沖縄タイムス社」と提携し、沖縄に基盤を置いた新会社「株式会社マッシグラ沖縄タイムス」を2018年の6月に設立しました。「howlive(ハウリブ)」というコワーキング、シェアオフィス事業を軸に、ワーケーションやオフィスデザイン事業を展開しています。金子さんいわく、全ての根幹に流れるのは「how live=どのように生きるか」というメッセージ。その真意を伺いました。
地元の新聞社と提携し、新しいスタイルのシェアオフィスを作る
東京で「株式会社マッシグラ」を経営している金子さんが、なぜ沖縄にも会社を作られたのでしょう?
「株式会社マッシグラ」では、リノベーションを通して中小規模の不動産をブランディングする事業を行っていますが、近年、オーナーさまから増えてきたのが、建物をシェアオフィス化したいというご要望。大きな空間を細かく分けてシェアオフィスとして貸し出すことで、空室率を下げたり、トータルで賃料を上げられるメリットがあるからです。
その要望に応えて多くのシェアオフィスを作るうちに、作り方のノウハウだけではなく、「リラックスすることが、最も快適に仕事できる状態だ」という、哲学のようなものも蓄積できました。働きやすさを作るのはオフィスだけではなく、一歩外へ出れば美しい海や澄んだ空気がある快適な環境や、過ごしやすい気候も大事なんです。それらを満たす沖縄は、仕事をするうえで最高な場所といえます。その哲学を身をもって体験すべく、東京に会社を残したまま、2017年に沖縄に引っ越してリモートワークを始めました。
それからどのようにして会社を設立なさったのでしょう?
まず沖縄に来て驚いたのが、オフィス物件の情報がなかなか一般に出回らないことでした。さらに、東京なら街角にたくさんのコーヒーショップがあってパソコン仕事や打ち合わせができますが、そのような「オフィス以外で仕事のできる場所」さえも少ない。不便に感じると同時に、シェアオフィスの商機があるとも感じました。沖縄は仕事する環境としては抜群ですから、テレワークが一般的になれば、多くの人が働く場所として沖縄を選ぶようになり、シェアオフィスのマーケットは伸びるだろうと思ったんです。
当初は国際通り近くにビルを借りてシェアオフィスを作ろうと思っていましたが、沖縄タイムスと琉球銀行が、スタートアップ企業を対象とした「OKINAWA Startup Program」という支援事業を行うと知り、エントリーしたら採択され、これを機に、沖縄タイムスと提携して2018年に弊社を設立しました。
なぜ、沖縄タイムスと提携されたのですか?
「マッシグラ」はオフィスを作るというハード面には強いのですが、地場の企業ではありませんので、沖縄での人脈つまりソフト面は弱く、そこを地元の大手メディアである沖縄タイムスに担っていただけないかと考えたからです。その計画がうまく運び、事業提携できることとなりました。
新聞社と提携するメリットは大きかったですか?
はい。私は独立する前は広告代理店に勤めており、地方新聞社の担当だったのですが、その頃から新聞社の持つ潜在的な能力を今風にリニューアルできないかと考えていました。
新聞の発行部数は全国的に減少傾向にありますが、新聞社には営業から編集、イベント開催までさまざまな専門分野があり、昔から培われてきた幅広い人脈があります。また地方新聞社の多くはその土地の一等地に本社を構えていて、大きな不動産を持っています。沖縄タイムスも例外ではありませんので、弊社とコラボレーションすることで有効活用できればと思い、提携を提案しました。
シェアオフィスブランド「howlive」の役割とは?
御社の事業内容を教えてください。
「howlive(ハウリブ)」というブランド名で展開しているシェアオフィス事業と、オフィスレイアウト事業、ワーケーション推進事業の3本柱があります。なかでも会社設立時から進めているのが「howlive」です。
従来の働き方では、同じ会社の社員であればどんな業種でも、同じ空間で仕事していました。しかし本来働きやすい場所というのは、人それぞれのはずです。さらにテレワークが加速する今、オフィスの意義が問われ始めていますが、いざオフィスを変更したいと思っても、どんな空間が快適なのか、どのように変えればいいのか、いきなりは分からないものです。この問題を解決できるのが「howlive」というシェアオフィスです。
さまざまなレイアウトや機能が施されたモデルルームのようなもので、入居者は本格的なオフィスを構える前に、自分にとって快適な働く場所を見つけることができますし、ときに自分でオフィスを作るコストも削減できます。さらに希望があれば、必要な人脈を沖縄タイムス側から提供できるので、ビジネスの発展に役立てていただけます。
どのような方が利用されているのですか?
県外からの利用者が多いと思っていたのですが、現在はコロナ禍ということもあり、立ち上がったばかりの地元の企業や、沖縄の企業からサテライトオフィスとして利用したいという問い合わせが多いですね。
折に触れビジネスに必要な方を紹介したり、間に入って入居者同士をつなげたりしていますが、いつの間にか入居者の中で新しいコミュニティがどんどん生まれ、新会社が設立されるなど活性化しているようで、うれしい限りです。
「howlive」以外のオフィスレイアウト事業はされていますか?
最近では「howlive」の名前が徐々に広まり、新型コロナウィルスの影響で空室が増えてしまったビルにこれを作るお誘いをいただくことも増えてきましたが、それとは別にオフィスレイアウトも継続して行っています。主に大型のビルや商業施設の中などに、ワーキングラウンジやシェアオフィスを作ることが多いです。
ワーケーション推進事業についても教えてください。
日本トランスオーシャン航空株式会社、株式会社JTB沖縄の2社と業務提携し、沖縄でのワーケーションやリモートワークを推進するための新しいサービスを構築し始めました。既に動いているサービスとしては、JTB沖縄から発表された「Re:sort@OKINAWA」があります。月額3万円で、沖縄の「howlive」使い放題だったり、日本トランスオーシャン航空の3回分の運賃が無料だったり、さまざまな特典がついています。
なぜそのようなサービスを作られたのですか?
デジタル化が進み、新型コロナウィルスの影響も相まって働き方が多様化している今、生活スタイルそのものが見直され始めています。そこで、弊社のシェアオフィスと、航空会社と旅行会社の持つコンテンツを掛け合わせることで、沖縄での新しい働き方、ひいては生活そのものを提案できると思いました。
2020年10月に提携を発表されたばかりですが、反響はいかがですか?
ワーケーションという言葉は広まりつつあり、問い合わせも増えてきていますが、まだ利用者は多くありません。今後の対策としてターゲットを出張族に絞ろうと考えています。せっかく沖縄に出張で来たのであればもう1泊滞在を延ばして、環境のいいオフィスでテレワークしてみるなど、新しい出張スタイルを提案していきたいと思っています。
つい先日、読谷村(よみたんそん)の残波岬近くに新しい「howlive」をオープンさせました。アウトドア用品メーカーの株式会社スノーピークさまのキャンピングギアを用いた正式なコラボレーション店舗で、キャンプ用品を使った遊び心あふれるワークプレイスです。目の前には海が広がる最高のロケーションで、まさに絵に描いたようなワーケーションが実現できます。来年2月末には宮古島にオーシャンビューの「howlive」をオープン予定です。ぜひ、沖縄ならではのワーケーションを体験していただきたいですね。
「how work」ではなく「how live」を考えるきっかけに
今後の夢や展望を教えてください。
「howlive」を、仕事の仕方はもちろん、生き方も考えていただくきっかけになれるような施設していきたいですね。これこそ、この施設を「how work」ではなく「how live」つまり「いかに生きるか」とした理由です。「howlive」を利用することで効率的に働けて残業が少なくなり、増えた自分の時間を有効に使うことで「ライフスタイルが充実できた」という方が、少しでも増えればいいと思っています。
また、弊社の社員に対しても同様に思っています。実は今、利用者をサポートするために忙しくなり、残業が増えてしまうという矛盾が起きています。社員を増やしたり、外部の方と連携してプロジェクト型のチームを作ったりすることで、効率的に仕事を回せるような仕組みを作り、社員のライフスタイルも充実できるような環境を整えたいです。
取材日:2020年11月26日 ライター:仲濱 淳
株式会社マッシグラ沖縄タイムス
- 代表者名:代表取締役 金子 智一
- 設立年月:2018年6月
- 資本金:900万円
- 事業内容:コワーキング・シェアオフィス howliveの開発・運営、沖縄でのワーケーション受け入れ、オフィスデザイン事業
- 所在地:〒900-0015 沖縄県那覇市久茂地2-2-2 タイムスビル2F
- URL:https://massigra.okinawatimes.co.jp/
- お問い合わせ先:098-894-8124