お客さまのニーズに耳を傾け、思いを叶える!グラファスが制作する“ちょうどいい映像”
広告映像制作を主軸に、映像発信のプラットフォームとしてのWeb制作や、放送番組の制作技術を提供する合同会社グラファス。営業制作拠点は京都府と東京都の2カ所。
今回は代表社員である吉永憲之(よしなが のりゆき)さんに、今までのキャリア、編集技術の進歩、仕事のやりがい、これからの展望まで、映像制作に対する強い思いを伺いました。
テレビCMに魅せられて、映像制作の道へ
最初に会社設立の経緯を教えてください。
私は元々、主にテレビ番組の編集をしていた東京のポストプロダクション(以下、ポスプロ)に勤めていました。そこで出会った同僚4人が、数年間それぞれ独自のキャリアを積み、再結集した形です。
私が地元・京都で映像個人事務所を立ち上げていたのですが、2011年に当社を設立、法人化しました。他のメンバーはすでに東京で活動していましたので、京都と東京の2カ所を営業制作拠点としました。
吉永様のキャリアを教えてください。映像制作に携わるきっかけは?
映像制作に興味を持ったのは中学生のとき。1980年代、「MSX」という米マイクロソフトとアスキー(現アスキー・メディアワークス)が提唱した、8ビット規格のパソコンが販売されていました。それでプログラミングを始めました。ゲーム機のようなもので、スペックはそれほどでもなかったのですが、文字を動かしたり、それをアニメーションにしたりと、自分なりに映像で表現することを楽しんでいました。
職業にしたいと思いだしたのは、阪神・淡路大震災があった1995年のこと。震災直後、テレビCMが2週間ほど自粛され、世の中の沈んだ雰囲気や空気の重たさを、まだまだ子どもでしたが、敏感に感じとっていました。
ところが再びCMが放送されると、途端に空気が明るく華やかになったのです。「映像って、すごい」と、映像が人々に与える影響力を実感しました。その後、他の道も考えましたが、そのときの衝撃が忘れられず「映像を作る仕事に携わりたい」と映像業界へ進みました。
ポスプロ時代に学んだ2つのこと
ポスプロへ入社した頃、映像の編集方法が変化してきたと聞きましたが、吉永さんはどのように対応されてきたのでしょう。
2000年1月、ミレニアムを迎え、新しい時代の幕開けに世の中が盛り上がっていたとき、私はポスプロへ入社しました。当時、放送業界は過渡期で、日本でもBSデジタルハイビジョンの放送が始まるタイミングでした。映像編集も、現在の主流となっている「ノンリニア編集」(映像をコンピューターで編集する方法)が徐々に現場でも使われ出してきた、黎明期でしたね。
それまではテープで映像編集をする「リニア編集」が主流。会社はリニアで利益を上げていたため、ノンリニアへすぐに全面移行する状況ではなかったのです。しかし、私は新しい技術を学びたいと、少ない休日を使い、独学で「ノンリニア編集」の知識を得ました。習得した技術を職場で発揮することはありませんでしたが、もし、このとき勉強していなければ、今はもうこの仕事に携わっていなかったかもしれません。
ポスプロを辞めた理由は何でしたか。
一言では言えないですが、ひとつの要因としては、番組制作現場の裏側に少し落胆したからです。その落胆は、広告映像制作をメインの業務とする当社の流れを作るのに少なからず影響しています。
具体的に説明しますと、当時の制作現場は、スケジュールがかなりタイトでした。作り手は番組を完成させることだけに捉われ、視聴者の番組に対する信頼や、番組が与える影響力を想像する余裕がなかったのです。私自身も制作ノルマをこなすだけになっていて、これではいけないと気付きました。そうしてポスプロを離れることに。
今はコンプライアンスの厳格化や「働き方改革」もあり、状況はだいぶ改善されたと思いますが……。当時、同じような理由で現場を離れた人が相当数いたのではないかと想像しています。そうしてふるさとの京都に戻り、映像の編集・制作を始めました。
お客さまのダイレクトな反応がやりがいに
貴社のミッションである「ちょうどいい映像制作」とは、どのようなことですか。
状況から説明しますと、当社を設立した10年ほど前から、「オウンドメディア」という言葉が使われはじめました。そこに動画が使われるようになり、仕事が増えていきました。
今でこそ、映像制作は身近なものになりましたが、その頃、映像は「プロが作るもの」で「プロに頼めば、いい作品を作ってくれる」と、お客さまからの信頼もありました。ただ、「制作側がやりたいこと」を提案する人も少なくなかったのです。映像制作も時代とともに、新しい機材や表現方法など「作り手として魅力的なもの」がどんどん出てきます。しかし、それらを使った作品がお客さまのニーズとマッチしているかは別のことです。
費用やスケジュールを考慮した上で、お客さまの希望に沿うものを最適な形で提案することが、ビジネスにおけるプロフェッショナル。そして、お客さまの期待値を少し超える110%の作品を制作することが「ちょうどいい映像制作」だと考えています。
これまでのお仕事で印象深かった出来事を教えてください。
Web制作会社から制作依頼があったときの話です。内容は注文住宅の販売促進用に、住宅を購入したお客さまのインタビュー映像を作ってほしいというものでした。そのWeb制作会社はコンサルティング業務も請け負っていて、使用した媒体の成果をシビアに分析していました。
限られた機材で作った作品でしたが、その映像をきっかけに注文が入り、住宅を購入したお客さまも、住宅を販売した工務店も、インタビューに答えたお客さまもそれぞれが満足して喜んでいたと聞きました。テレビ番組制作の現場では、視聴者の感想を聞くことがほとんどできませんでした。ただその工務店とお客様からのポジティブな反響からは、やりがいと広告映像制作への手応えを感じることができました。
映像でお客さまの思いを形にして届ける
これからの展望を教えてください。
昨年あたりから動画を活用したデジタルサイネージ(電子看板)に制作力を投入し、それに特化した制作サービス「サイネージPRO®」を展開しています。しかし、コロナ禍で訪日外国人に向けた街頭ビジョン用CMの案件は100%なくなり、依頼はストップしています。
一方、国内で開催できなくなったイベントの代替手段として、映像制作の依頼が増加。新規取引の会社も増えていますが、なかには代替えとして仕方なく映像を用いるお客さまもいるので、そのような方に期待値を超える映像を提供できるかどうかが、今後の大きな別れ道だと思っています。
映像の需要がなくなることはないと考えていますが、これまでに固執せず、お客さまと制作者の双方にとってやりやすい、より良い方法を模索しながら、新しいやり方にもチャレンジしていきたいですね。
今を乗り切れば、平時はもちろん、他の災害時にも乗り越えていけるノウハウを蓄積できているはずです。世の中の変化に合わせて、私たちも変化し、サバイブしていきます。
映像業界を目指すクリエイターにメッセージをお願いいたします。
プロのクリエイターを目指すならば、お客様の思いを形にする意識を持ってほしいですね。そしてその思いを形にできる制作現場を“作ってほしい”と思います。なぜなら現場は好きに選んで入れるものではないですから。
またお客さまは販売促進など何かしら成果を上げることを目的に、映像制作の依頼をする方がほとんどです。アーティスト風の恰好いいだけの作品やひとりよがりな作品は、どんなに素晴らしいものであっても、結果が伴わなければ自己満足にしか過ぎません。ニーズに合わない作品を作ることは、映像に対するお客さまの信頼をも失い、業界全体にとって大きなマイナスになるのです。
だから、これから映像クリエイターになる方は「これからも映像を活用したい」と思ってもらえるような、お客さまの思いにマッチした作品作りができるようになってほしいと思います。
取材日:2020年11月9日 ライター:小西 凛
合同会社グラファス
- 代表者名:代表社員 吉永 憲之
- 設立年月:2011年5月
- 資本金:155万円
- 事業内容:
・映像制作(サイネージ/企業・商品プロモーション/番組)
・技術提供(配信/編集サポート) - 所在地:607-8411 京都府京都市山科区御陵大津畑町23-15 raracasa 110
- URL:https://graphas.co.jp/
- お問い合わせ先: