アニメ2021.02.24

「日中交流の促進」をキーワードに、映像コンテンツ制作の世界に革新を!

東京
株式会社白菜娯楽 代表取締役社長
Bai Jin
白 金

「コンテンツ制作を架け橋に、日中交流の促進」をミッションに掲げ、2017年に設立された株式会社白菜娯楽。日本のテレビドラマや漫画を中国でリメイクする際の契約仲介や、日中の垣根を越えた映像コンテンツ制作、文化交流活動に尽力しています。代表取締役社長の白金(バイ・ジン)さんに、会社設立までの経緯や現在注力している事業、今後の展望を聞きました。

映像作品作りへの抑えきれない思い

白菜娯楽を設立するまでのキャリアを教えてください。

テレビ業界を中心に活動していました。最初は株式会社BSジャパン(現BSテレビ東京)が放送していた、アジアのエンタメ情報などを紹介する『MADE IN BS JAPANアジア♥スキ』で番組スタッフとして1年ほど働いていました。2011年頃のことです。

その後、中国の国営放送局・中国中央電視台(CCTV)の東京支局に移り、5年ほど働きました。当時同局はNHKの放送設備を使って中継していたのですが、渋谷に新たに自分たちのスタジオを作ることになり、私もそこにも参加しました。いろいろな業務に携わらなければならず苦労しましたが、非常に勉強になりました。

 
 

そこからなぜ白菜娯楽を立ち上げることになったのでしょう?

CCTVでは、日本の株やマーケティング動向など主にビジネス関連の取材を担当していました。しかし、そうしたジャーナリストの仕事が自分の性格に合わないと感じるようになったのがきっかけです。

ジャーナリストの仕事はどちらかというと、世の中の出来事を調査・分析することがメイン。しかし私自身は、気の合う仲間と一緒にストーリー自体を創造したいと常々考えていました。つまりエンターテイメント業界で映像作品を作る仕事に携わりたいと思っていたのです。その思いを抑えきれなくなり、2017年に白菜娯楽を設立しました。

社名の「白菜」は中国で縁起の良い物とされていて、発音が「百財」と同じことから、財を呼び込むと言われています。

日本ドラマのリメイク仲介から着手

 

白菜娯楽で最初に手掛けた事業について教えてください。

会社を立ち上げても、すぐに投資者が集まるわけではなく、資金も乏しいものでした。そこで最初はニーズがある分野を手掛けようと、テレビ番組や出版物の著作権取引に携わりました。

当時の中国では、日本のドラマや漫画、アニメ、小説などをリメイクする需要が高まっていました。

そこで当社はまず中国湖南省の放送局・湖南テレビの依頼を請け、フジテレビドラマ『のだめカンタービレ』(二ノ宮知子 原作)の中国語リメイクドラマの契約締結を仲介しました。クラシック音楽をテーマにした若者向けのコンテンツが中国で少なかったこともあり、『のだめカンタービレ』は同時間帯1位と、高い視聴率を記録しました。

 

滑り出しは好調だったのですね。

はい。ただ、この業務はどちらかというとエージェント的な仕事で、自分たちがクリエイトできる領域が少ない。ここをどうクリアすればいいのか、ずっと悩んでいました。

そうした中で、2019年に、中国政府が突然外国ドラマをリメイクすることを禁止しました。背景には中米貿易戦争があると考えられます。これを機に当社では事業領域を広げ、日中の垣根を越えたコンテンツ制作にも注力するようになりました。

国やジャンルを超えた映像作り

 

現在、特に力を入れているのはどういった事業でしょう?

アジアを中心とした海外市場をターゲットに、ゲームとアニメーションを一つにまとめるような作品を開発しようとしています。

中国ではゲーム業界が活況を呈しており、『原神(げんしん)』や『崩壊学園』『陰陽師(おんみょうじ)』など、世界中で大ヒットしているゲームが多数作られています。一方、日本の強みはキャラクター設計やアニメーション作りです。

そこで、まずは中国でアニメや漫画に深くのめり込んでいる「二次元・オタク」的な人たち向けのゲームを開発し、次にそのゲームをベースにしたアニメーションの制作へと広げていこうと構想しています。

あるいは、すでに中国でヒットしているゲームと、日本でヒットしているアニメを合体させるといった展開もあり得るでしょう。同時に著作権ビジネスも展開していけば、ものすごい経済効果が生まれるだろうと期待しています。

 

他に注力している事業はありますか?

SNSで視聴するオンラインコンテンツにも注目しています。私たちの生活に一番身近な機器はスマートフォンでしょう。そこで気軽に視聴できるオンラインコンテンツは、今後間違いなくニーズが高まると思います。

我々が特に力を入れようとしているのは、若者の間で人気が高まっている「TikTok(ティックトック)」のショートムービーです。ただSNSの動画コンテンツは基本的に無料で提供するものなので、利益につなげるのが難しい。当社ではその解決策を「雪玉ビジネス」に見出しています。

 

「雪玉ビジネス」とはどういったものでしょう?

小さく始めて、大きく育てていくビジネスモデルです。例えばジャニーズ事務所さんの、ジャニーズJr.の育て方もその一つだと思います。

ジャニーズJr.たちはまだ小さな子供で、演技やダンスは未熟なところが多々あります。でもファンたちは熱心に応援する。やがて10年、20年経ち、自分が応援していたアイドルが「嵐」のように育てば、その達成感はすごいものがあるでしょう。

オンラインコンテンツもこれと一緒だと思うのです。最初はSNS上で少人数のファンを獲得するだけでいい。そのファンと深くコミュニケーションを取り続けていくことで、将来的に数十億円規模もの大きなビジネスに育てていけると確信しています。

日本のアニメ映画業界に刺激を

白さんは、映画配給会社「チームジョイ株式会社」の代表取締役CEOを兼任していますね。

一応テレビに関することは白菜娯楽で、映画に関することはチームジョイでといったすみ分けをしていますが、「日中交流の促進」という点では同じ方向を向いていますし、私自身はあまり違いを意識してはいません。

 

映画配給で力を入れているのはどういったことでしょう?

中国のアニメ映画を日本で公開することです。2020年には、中国の動画サイトから誕生した大ヒットアニメ映画『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)』を日本で公開しました。コロナ禍であることや、『鬼滅の刃』が同時期に公開されている中で、30万人以上動員となかなかの興行成績を記録しました。

2021年夏に公開するのは、中国の映画会社とワーナー・ブラザーズが共同制作したアニメ映画『白蛇:縁起』です。これは非常にクオリティも高く、すでに日本のトップレベルの俳優やアイドルによる吹き替えも済んでいます。

『白蛇:縁起』は中国の四大民間説話の一つ『白蛇伝』の前世の話。晩唐の時代、国師が民間人に蛇を大量に捕獲させていた。白蛇の妖怪「白」(見た目は人間の美少女)が国師を刺殺しようとしたが失敗。少女は逃亡の末、記憶をなくしてしまったが捕蛇村の少年「宣」に救われる。「白」の記憶を取り戻すため二人は冒険の旅に出る。その旅の中で二人は恋に落ちるが、少女が白蛇の妖怪ということも明らかになってしまう。一方、国師と蛇族との間に激しい戦いが始まろうとしていた。二人の恋に大きな試練が待ち受ける。

©Light Chaser Animation ©Bushiroad Move. ©TEAM JOY CO., LTD.

 

2021年2月26日には、『白蛇:縁起』の制作陣が作ったアクションアニメーション『ナタ転生』が先に公開されます。中国人から愛されている神「ナタ」を3DCG技術で描いています。大切な仲間や市民を守るため、戦いに挑む壮絶なアクションに注目してほしいです。

 

 

なぜアニメ映画に力を入れるのでしょう?

まず、日本の視聴者に日本以外のアニメ映画という選択肢を提供したい。何も中国に限ったことではなく、世界中の優れたアニメ映画を紹介したいと考えています。

もうひとつ、日本のアニメーション業界を活性化させたいという思いもあります。日本のアニメ作りの技術は確かにすごい。でもあまりにも高度になった分、業界全体が硬直しているようにも感じられます。

例えば『羅小黒戦記』は動画サイトから派生した、メディアミックスものです。日本であれば企画段階ではじかれるかもしれません。でもそれがヒットし熱烈なファンがいるのを見れば、日本のアニメ映画の製作者も考え方を変えるかもしれない。そういった刺激の一つになればと考えています。

才能ある若手クリエイターを世界へ

今後の展望を教えてください。

日本の若手クリエイターには優秀な人がたくさんいます。島国であるせいか、他国の人間がまねできない繊細な感性を持っています。

そこで彼ら彼女らに、世界中で認められるような映像作品を作る場をどんどん提供し、「こんなすごいクリエイターがいるんだ」と伝えたいですね。

当社の強みは、中国をはじめとする海外市場と太いパイプがあることです。例えば映画の製作費一つをとっても、日本国内だけを見ている制作会社さんよりもずっと大きな予算を付けられます。なぜなら日本国内だけで回収するのではなく、海外の市場も見据えているからです。そうした強みを生かしながら、一人でも多くの若手クリエイターの才能を開花させてあげたいです。

 

最後に若手クリエイターに向けてメッセージをお願いします。

私が好きな言葉に、「人の一生は重き荷を負うて遠き道を行くがごとし」という徳川家康の教訓があります。人は重たい荷物を持って果てしない道を進んでいくようなもの、失敗や頓挫が当たり前のように感じられれば、不満は減るという意味です。

どれだけ輝いている人生でも、おそらく95%はつまらない日常の繰り返しだと思います。他の人との差は残りの5%しかありません。その5%で輝くために、日々努力をすることが何より大事だと思います。

もう一つ、私は「少しずつ自分を殺す」という中国の言葉が好きです。これは「毎日少しずつ、自分の弱点を克服していく」という意味です。もちろん簡単なことではありませんが、これを続けることで数年後には別人のようになれると信じています。クリエイターとして成長したい人は、ぜひ実践してみてください。

取材日:2020年1月17日 ライター:庄司健一

 

 

株式会社白菜娯楽

  • 所在地:東京都渋谷区東1-32-12渋谷プロパティータワー1F
  • 設立:2017年8月21日
  • 資本金:500万円(2018年3月現在)
  • 代表者:代表取締役社長 兼CEO 白 金(バイ ジン)
  • 電話:03-6675-5793
  • ホームページ:http://cc-entertainment.com/index.html

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