ニーズ+αのデザインを強みに看板・サインを提案・製作するモリカ
看板会社の仙台所長としてパワフルに営業活動を展開していた、屋外広告士の森 由紀(もり ゆき)さん。リアルな現場でデザインと真摯に向き合ってきた、デザイナーの加藤 克(かとう かつし)さん。
2020年3月、お互いの仕事を認め、信頼し合う二人が手を組み、看板・サイン(表示、案内図、案内板)を制作する株式会社モリカを設立。代表取締役の森さん、専務取締役の加藤さんに看板・サインのデザイン制作や面白さなどを伺いました。
様々な経験を通してやりたいこと、やりがいを模索
株式会社モリカを立ち上げるまでの、お2人のキャリアを教えてください。
大学でビジュアルコミュニケーション(視覚による情報伝達)を学んだのですが、その最たるものは地図ではないかと思っていました。それから東京の測量業界に入り、測量をして図を起こす仕事をしました。もともとグラフィック系の勉強をしていましたが、地図がやりたくて。デスクワークより、現場で身体を動かしながらリアルタイムな知識を得て表現する方が好きだったんです。
その後、測量業界が機械化され、続けるのが厳しい状態になり、どうしようかと知人に話したところ、仙台にある内装会社を紹介され、転職しました。
内装会社では、店舗の内装、設計、デザイン、施工立ち合いまでを担当。6年半ぐらい勤め、その間に自分と自分の考える「デザイン」というものの在り方や距離が分かってきて、次のステップにいくことを決めました。
お客さまに喜ばれる看板・サインを作るために会社を設立
株式会社モリカを設立したきっかけを教えてください。
私は日本デザイン協会で、たくさんのデザイナーの方々と知り合い、とても影響を受けました。
看板屋さんはデザインに弱い会社が多いと感じておりました。東北、また全国各地の看板・サイン業界を自分の足で回りました。そうすることで、それぞれの会社の強みや特徴がわかり、「この会社に頼んでこういうものを作り、お客さまにいいものを適正価格で届けたい」と思うようになりました。
加藤とは4年くらい前に、以前の会社同士のお付き合いを通じて知り合いました。すごく優秀なデザイナーで、会社を辞める時期が同じということもあり、一緒に会社を立ち上げないかと相談しました。
加藤さん:
内装会社にいたときに、サインの工事を経験して面白いと感じていました。森さんは仕事に対する向き合い方が自分と近く、守備範囲が違うので、一緒に仕事をすれば、きっちり役割分担をしながら、お互いの強みを発揮できると思いました。
どんな会社にしたいと思ったのですか。
前職の看板会社に辞めると報告すると、それなら仙台営業所を閉めると言われました。そこで、今までの業務を全部引き継いで弊社を設立しました。
会社経営は、トップがしっかりしていないと、会社のカラーは守れないということ。社員とお客さまを一番に考えていれば、売り上げもおのずと上がると思います。その基本をしっかりとできる良い会社を作りたいです。
経営戦略、利益計上、営業スタイル、お客さまに対する姿勢など、相対的にいい会社、自分が勤めたいと思える会社にしたいと思いますね。
身近で奥が深い看板・サインのデザインを企画から納品まで
現在の事業内容は。
屋外広告業です。前職から引き継いだものが基本ですが、看板・サインのデザイン、企画、設計、制作、施工まで担います。デザインを気に入っていただき、その延長上でTシャツや床マットを依頼されて作ったり、看板から少し外れた案件も対応しています。
サインと言ってもピンとこないという方もいらっしゃるかもしれませんが、例えば、ビルの上に掲げた広告看板、お店の前の小さな看板までいろいろ。LEDで光らせるサインなどもそうです。施設、オフィス、店舗などの外装的な部分や広告の一部、トイレや車椅子のマークなどのピクトグラム、駅、病院などでよく見る床面の誘導サイン、幟(のぼり)など、幅広く、奥が深いものです。
御社の強み、アピールポイントを教えてください。
強みはやはり、きちんとしたいいデザインの看板やサインをお客さまに提供できること。サインは金額が決まっていないオーダーメイドの商品なので、エンドユーザーによりいいデザインを、少しでも適正な価格で届けたいです。
またサイン業界は、最近は女性も増えてきましたが男性社会です。私は男性より男性的と言われることもあり、女性という意識はしていません。ただ女性の方が頼みやすいという人もいますし、女性の目線で仕事ができることが強みだと思っております。
デザインと設計、間違いのない仕上がり。お客さんのニーズをつかんで希望どおりのものを提供するのは当たり前で、テストで100点をとるのと同じですが、120点をとるにはどうしたらいいかを考え、そこに重きを置いています。
金額勝負ではなく、価値をわかってもらえるように、提案、仕上がりを大事にしています。
仕事に取り組む上で大事にしていることは。どんなときにやりがいを感じますか。
前職の仙台営業所を一人で始めたときも全く分からないところからのスタートでした。分からなかったら、歩いて行ってみればいいと考えていました。自分の足で歩いて、人の話を聞いて、どこで何が必要とされているかを知って、お客さまからいろいろ勉強させていただこうと。今もそう思ってやっています。
私は人と会ってその内容を整理して加藤にデザインを依頼するのが仕事です。そこで謙虚さを忘れてはいけない、と常に頭の中においています。
地元の仙台中央倫理法人会に参加して6年目になりますが、経営者の先輩が沢山いて、心構えなどを勉強させていただいています。やりがいは、いいデザインや商品をおさめて、お客様に喜んでもらうとき。ありがとうと言われるとき。そして街を歩いていて自分が作った看板に出会うと、すごく面白いし、うれしい気持ちになりますね。
加藤さん:
言葉にするのは難しいですが、「当たり前」のレベルを上げたい。「ここまでやってくれるんだ」とお客さまに思って満足してもらえるように、お客さまがイメージしているものプラスαを大事にしています。
ゼロから作る、作って出来上がるものを見る、作ったものが残ることもやりがいです。
加藤さんが思う、看板・サインデザイン・制作とは。クリエイティブを磨く上で意識していることを教えてください。
デザインはどんな形にでもできます。明確なイメージがあればそれをもとに何パターンか、あとは全く違う味付けのものを提案したりもします。
僕は、CADではなくフリーハンドで描いて提案しています。クリエイティブを磨くには、デザインの本、雑誌も見ますし美術館に行って直接いいデザインを見るのも大事。ですが、自分の中のデザインは見失いたくないですね。新しいものも、デザインの草創期の50年代、60年代の古いものもしょっちゅう見ます。
新しいものを考えるために、古いものや知識を見直すのは、勉強のためというより自分が楽しいんです。
コロナ禍で必要性に気づき始めたもう一つの事業
株式会社モリカさまの今後の展望、目標を教えてください。
会社を立ち上げて1年目。お客さまからの信用を得るために、誠実にコツコツと仕事をさせていただきました。弊社をもっと知っていただき新規開拓したい。そのためにも、いいものを作って世の中に出していきたいです。
昨年4月から、看板デザインに加えてもうひとつの柱として新しく始めた事業が、抗菌、抗ウイルス効果が期待できる光触媒のコーティングです。
例えばウイルスは、テーブルや椅子などに1週間定着するため、後から消毒や滅菌をするのではなく、予め光触媒を吹付け塗布して、ウイルス自体を定着させないようにします。
外に出るときにウイルスの感染を予防するために、外出前に洋服やマスクにスプレーする「わるいネコ」という商品を2月から販売する予定です。
加藤さん:
光触媒は看板とは異業種ですが、コロナウイルスの感染拡大で看板業界も厳しい状態になり、まずは経済の復活が大前提です。
これからコロナ後の新しい社会が構築されるなかで、活気がある社会に戻すためのツールとして有効だと思い、光触媒と両輪でやっていこうと考えました。まずは光触媒のプロダクトを作り、いずれは光触媒と看板を組み合わせて、いいやり方ができればと思っています。
若いクリエイターにメッセージをお願いします。
看板屋という立場からデザインというものを考えると、やはり看板はデザインにもとづいた仕事だとあらためて思います。「デザインをやりたい」と思うとき、仕事の選択肢の一つとして看板屋があると思います。どういう業種につくかは「目的」ではなく「手段」。
最終的にどういうデザインをやりたいかを、見失わなければいいと思います。
森さん:
チャレンジし続ける、ですね。若いうちに失敗しておけば何も怖くないです。
成功するまで諦めないで続けてほしいと思います。私は、最初は何も分からないところからスタートして、分かりたいと思うのが原動力でした。分かってくると楽しくなってきました。チャレンジし続けるのは大事だと思っています。
取材日:1月19日 ライター:佐藤 由紀子
株式会社モリカ
- 代表者名:代表取締役 森 由紀
- 設立年月日:2020年3月
- 資本金:300万円
- 事業内容:屋外広告/看板・サイン制作/各種印刷/リフォーム/新・光触媒コーティング
- 所在地:仙台市若林区清水小路8-2 ディーマークビルディング五橋駅前ビル5階
- URL:https://molika.jp/
- お問い合わせ先:TEL 022-797-7016 FAX 022-797-7018 Mail info@molika.jp