自分たちもお客様もハッピーな仕事は次につながる—ラフスタイルが挫折の先に見出した広告仕事の流儀
愛媛県松山市で、ホームページ制作を中心に広告事業を展開する株式会社ラフスタイル。
「自分たちも楽しくお客様もハッピー」をポリシーに、お客様も自分たちも幸せになる働き方を模索しています。代表の平岡広章(ひらおか ひろあき)さんに、ご本人の現在に至るまでの波乱に満ちた経歴、会社方針の裏にある思い、今後の展望を聞きました。
大学時代にホームページ制作の仕事を開始
まずはラフスタイル設立までの平岡さんの経歴を教えてください。
私のホームページ(以下「HP」)制作の仕事は、大学時代から始まっています。当時はインターネットの接続方法がダイヤルアップからISDN回線に変わった頃。インターネット時代の幕開け。HPに関心を持つ企業も少しずつ増えていました。
ある時所属ゼミの先生から、パソコンを使い大学のサーバーに接続するという課題が出されました。いろいろ試行錯誤して接続したところ、突然同じゼミの同級生から「今から会わないか」とネット上で誘いを受けまして。彼との出会いが、私がインターネットで仕事をするきっかけになりました。
同じゼミの彼は趣味でHPを作っていました。それを見て刺激を受けた私は、自分でも勉強してHPを自作して彼に見せたところ、意気投合。若さとは怖いもので、その勢いで企業のHPを作る仕事を始めました。
挫折の中でつかんだ成功への糸口
大学卒業後はどういった道へ?
地元の印刷会社に入社しました。ただ結局一年で辞めてしまいました。その後はフリーランスとしてHP制作の仕事をちょくちょく請けていましたが、人との出会いで大きなプロジェクトに参加することに。これが私のターニングポイントです。
彼はプレゼンテーションがうまく、あるとき地元で行われた大手通信会社のコンペで勝ち抜き、一大プロジェクトが始まったのです。
プロジェクトでは、その通信会社が、愛媛・松山市の中心部にある大街道商店街に新店舗を設け、そこに地元のラジオ局やテレビ局などと共同でサテライトスタジオを設置。私もそのプロジェクトに関わり、当時次々と登場していた携帯電話の特長や使い方を紹介する企画やイベントを担当しました。
そうこうするうちに、法人化が必要となりました。大手通信会社とプロジェクトの関係者との間でトラブルも発生しました。そこで私ともう一人いた店舗責任者に「会社を作り店舗を運営してくれないか」と申し出があり、2006年5月に設立したのが株式会社ラフスタイルです。
意外なきっかけで設立されたのですね。
ただ、会社がうまく回っていたのは、通信会社が方針を変えるまででした。2008年にその会社が店舗経営からの撤退を決定し、我々は急に自分たちの稼ぎだけで会社を運営しなければならなくなったのです。当然、経営状態は悪化。一緒に会社を立ち上げた店舗責任者が辞め、もう一人の責任者だった私が、当時抱えていた負債もスタッフも全て引き取り、再スタートを切ることになりました。その際に、事業内容は、これまでの私の経験が生かせる広告制作事業に絞りました。
新体制になった後は、うまく軌道に乗れたのですか?
残念ながら経営状態はさらに悪化しました。収益が出ない状態が続き、2011年、ついに会社が立ち行かなくなってしまいました。
そこで翌2012年に、会社の事業を一旦全てリセットしました。当時商業施設の隣という好立地に事務所を借りていたのですが、そこをたたみ実家の2階に移ることに。さらにスタッフ数やそのほかの運営コストも限界まで落とし、もう一度スタートを切ったのです。
この後は、目の前のお客様に対して、一生懸命、真摯(しんし)に応えるという仕事の基本姿勢に立ち返りました。するとお客様が徐々に増加。仕事が増えたことで私たちのスキルも向上し、お客様の信頼にもつながりました。こうして、いろいろな要素がうまく回り出し、現在、経営状況は非常に安定しています。
世界に「笑顔」を増やす仕事
今はどういった事業を展開しているのでしょう?
広告制作事業全般を手掛けていますが、特に力を入れているのが企業HPを作るウェブ事業です。そのほかにも紙媒体、看板制作、企業のロゴ制作、映像制作など広告に関わることは一通り。
お客様が「こういうことがしたい」とおっしゃったときに、それはウェブを使う方がいいのか、イベントを実施する方がいいのか、あるいはチラシをまくのが正解なのか、依頼内容によって違うと思います。当社ではお客様の話を聞いて、それをそのまま行うのはまれ。「それならこういう方法でやりましょう」と私たちが提案することがほとんど。その提案の幅広さが強みです。
その背景には、私がいろいろな経験の中で持ち札を増やしていったことがあります。たくさんの持ち札の中から、お客様に適切な提案ができる。当たり前かもしれませんが、このことがお客様の信頼となり、次の依頼につながっていると思います。
「ラフスタイル(LAUGHSTYLE)」という社名には、「ラフ(LAUGH)=笑う」という言葉が入っていますね。どういった思いが込められているのでしょう?
まず我々が良い仕事をすることで、お客様が笑顔になってほしいという思いが一つ。さらに、仕事でベストを尽くしながらも生活とのバランスを取り、自分も家族も笑顔になれるような人生を送りたいという思いもあります。これは私だけでなく、社員も同じ。
こうしたことを全てひっくるめ、世界に笑顔を増やす仕事を作ろうと、「ラフスタイル」という社名を掲げています。
平岡さんは、コロナ禍で成人式が中心になった松山市の新成人を祝うための「ハタチ〜オトナビトプロジェクト」( https://peraichi.com/landing_pages/view/seijinshiki2021/ )で、思い出作りのための撮影スポットのデザインを手掛けるなど、地域貢献にも力を入れています。そこにはどういった思いが?
2012年にリスタートしてからは、最初に少し営業をしたぐらいで、その後はずっと、お客様からの紹介など人のつながりで仕事をいただいています。そのため当社は地元の人とのつながりをとても大事にしています。
私たちの仕事は、相手に与えたものがそのまま自分に還ってきます。地域の人たちに協力したことも、いろいろ回って結局自分に還ってきます。ですから、近くにいる人たちから「手助けしてほしい」と言われたら、できる限り、よろこんで力になりたいと考えています。
自分ができる精一杯のボールを投げて、それが身近な人の幸せになって、自分に還ってくる。それが地域貢献であり、お互いが幸せな未来を作るためのベストな道だと思います。
この先は世界を巡り、将来のビジネスの基盤を築きたい
今後の展望をお聞かせください。
これからは若いメンバーやクリエイターを増やしながら、私自身は制作現場を離れ、お客様と一緒にビジネスを立ち上げるような部分に軸足を持っていきたいと考えています。それにより、今以上にお客様のためにできることを増やしたい。
またコロナ禍で、仕事の大部分はオンラインでできることがわかってきました。コロナが落ち着いた後は、海外を転々としながら仕事をしてみたいとも考えています。
私は10年、20年後の日本は、人口減少もあり、経済が衰退してしまうのではと危惧しています。そのときの我々の生き残る道は、人口が増えている国や地域の人とビジネスを行うことだと思います。そのためにも、今のうちに各地にネットワークを作り、人と人をつないで、新しいビジネスを展開できるようにと考えています。
そうなるとスタッフに求めることも変わってきそうですね。
私が松山にいなくてもいいように、一人一人に自立と成長を求めていきたいです。私がいなくても、仕事に責任を持ち、自分たちだけでも仕事を遂行できるようになってもらえればうれしいですね。そうなると、自ずとお客様にもより良いサービスを提供できるようになると思います。
心をコントロールすることが成功への近道
最後に、これから起業を目指す若手のクリエイターにメッセージをお願いします。
フリーランスのクリエイターは、孤独な生き方になると思います。もちろん一人で生きられるならそれでも良い。でも一人でできることにはやはり限界があります。
例えば私は数字が得意じゃないので、税理士さんのサポートを受けていますが、こんな風にその道のプロの力を借りることも大事です。いろいろな人の力を借りながら、自分にふさわしい仕事のやり方を模索していってください。
あと私は2012年にリスタートしたのですが、そのときにすごく重要だったのは、「自分のマインドをどう変えるか」でした。
当時の私は人のアドバイスを聞こうとせず、「自分のやり方はこうだ」と決め込み、自ら泥沼にはまっていきました。でもどん底まで落ちたときに、「これは自分の考え方が間違っていたから起こったことだ。だったら、自分の考え方を変えればいい」と気付けたのです。これが大きかった。
若手のクリエイターは、すごく才能があるのに、その人のマインドが周りと合わないがゆえにうまく成果が上げられず、自信を失ったりする人も多い。
大事なのはそのあとです。どのように心を変えられるか。
クリエイターに限らないかもしれませんが、時々でもいいので、自分の心の有り様を確認し、うまくコントロールしていくと、より良い人生が送れると思います。
取材日:2月24日 ライター:庄司健一
株式会社ラフスタイル
- 代表者名:代表取締役 平岡 広章
- 設立年月:2006年5月23日
- 資本金:300万円
- 事業内容:ウェブサイトの企画・作成、広告物作成、イベント企画提案・実施運用管理など
- 所在地:愛媛県松山市祝谷6-1193-6 2F
- URL:https://laughstyle.net/
- お問い合わせ先:https://laughstyle.net/contact