プロダクト2021.06.09

看板から建築、グラフィックをトータル提案する個性派集団ハーヴィッドは「ハートで繋がり、ハートを動かす」

新潟
株式会社ハーヴィッド代表取締役社長
Toshihiro Oda
小田 利洋
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サイン(看板)事業から始まり、今では建築内装やデザインなどへと広がっています

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ハートで繋がる仕事、ハートが伝わるデザインを大切にしています

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ガレージを自分たちで手を加えてリノベーション

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エントランスには大きなブランコが下がっているオシャレな内装

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少数精鋭だからこそ、大事なことは皆で意見交換することも大切にしています

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新潟市中央区役所のサイン

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docomoショップ新津店のサイン及び外装

新潟市東区において、2008年4月に一人で設立した株式会社ハーヴィッド。

サイン(看板)事業でスタート以降、時代のトレンドやユーザーのニーズに向き合いながら発展を続けています。コロナ禍の今も、新たに子会社を立ち上げるなどその勢いは留まるところを知りません。

今回は代表取締役社長の小田 利洋(おだ としひろ)さんにインタビューし、社員10名となった看板屋さんの黒字経営の秘密に迫りました。

 

業種や会社の枠にこだわらない。柔軟性=企業の成長になる。

会社設立のきっかけと経緯について教えてください

2007年の春に個人事業として一人で看板事業をスタートしました。約1年、仕事をして手応えを感じたので、翌年「ハーヴィッド」を設立。

もともと資金も経験も人脈もなかったのですが、それでも「どうせ仕事をするなら自分の力でやってみたい」と思っていました。たまたま就職した会社が看板屋だったことから、その道で起業したんです。

起業の動機は、単純に言えば生きる上での欲を満たすことです。「いい車に乗りたい」「好きなものを買いたい」「楽しく遊びたい」「豊かな暮らしがしたい」…。

「起業によりそのチャンスが増えるかもしれない」と少し安易に考えていました。簡単ではなかったですが、「チャンスは自分次第でいくらでも作れる」という思いは今も変わりません。

社名に込めた思い、願いはありますか?

社名は「HEART 」と「VIVID」を合わせた造語でハーヴィッド。会社立ち上げ当初から“情熱”や“ポジティブ”といった、熱い気持ち(ハート)を大切にしてきました。また、“看板・デザインは鮮やかでなくては”というシンプルな思いも込めています。

設立後10年を経てこの「HEART VIVID」を改めて経営理念として掲げました。会社が成長する中で社員も増え、会社の存在意義を自分たちで考え行動していく必要があると考えました。

人へ、社会へ、たくさんのハートで繋がりたい。躍動感あふれる感動を創造したい、そんな思いを社員一同で共有しました。

小田さまの仕事に対するお考えなどをお聞かせくださいますか?

昔からカッコイイものやデザイン性があるものは好きでしたが、看板屋一社の就職経験で、そういった漠然とした感性を仕事にするほどの教養やノウハウ、スキルは皆無でした。

実は起業時、親戚の農機具小屋を借りて、まさにゼロからの出発でした。そのためか「業種」にもこだわりがありません。だから、看板だけに関わらず、お客様や協力会社、多くの仲間たちに“喜ばれるモノ、また幸せを届けられるコト”に挑戦していきたいと考えサービスメニューが広がってきたのだと思います。

「会社」に対する考え方も同じです。「会社なんてただの箱、社員の皆がいなければ何の価値もない」と社内でも伝えています。先ほども言ったように仕事って、要は自分自身が豊かに生きていくための手段。

情熱を原動力としながら、どうしたら社会に貢献していけるかを追求する中で、会社のカタチは変化していくものだと思っています。

 

「デザイン重視の看板屋」としての組織づくりに注力

 

風通しの良いコミュニケーションが自主性を育む

看板事業を中心に、現在の事業について教えていただけますか?

看板を依頼していただくお客さまの要望で、内装や建築の仕事が増えてきました。昨年の実績では、看板5割、内装・建築3割、デザイン・設計2割の内訳です。

看板を提案する際に「どんなクロスが良いか?」「照明はどうしよう?」という相談をお手伝いしていく中で、店舗設計に関わることも多くなりました。

基本的に「できない」とは言いたくない。何にでもチャレンジする中でいつの間にか知識が身につきましたし、お客さま、人との繋がりも深くなってきた気がします。

HPに「看板屋ならではの目線・視点、できること」とあります。その具体的な事例を教えていただけますか?

例えば新店舗がオープンする際、周囲に知ってもらうための「視認性」が重要です。

「見せる」役目を最大限果たせるような看板・外装のデザイン提案を心がけています。当たり前のように聞こえるかもしれませんね(笑)。ただ看板は建物全体の一部ではありますが、看板だけ突出すれば良いわけでも、埋もれてしまってももちろん良くない。“看板があることで調和する建物”として、看板の視認性もあり建物との一体感もあるといったマッチングが大切。例えば、看板に合わせた店舗外壁のカラーリングの変更なども、私たちだからできる提案です。

話は変わりますが「ストレングスファインダー®(※)」を社員全員が受講しているということですが、導入した理由は?

社員の資質を見極めるため、チームビルディングのヒントになればと思って導入しました。Web上の質問に回答するだけでなく、役員・幹部は3日、社員は1日のセミナーを受講して理解を深めました。

成果としては、社員一人ひとりの「個」の特徴を知り、「会社」としての強みを考える機会になったことです。

ちなみに私は、人間関係力というカテゴリーの中にある「個別化」の資質が最上位でした。「個別化」という資質が高い人は、一人ひとりが持つユニークな個性に興味をひかれ、異なるタイプの人たちの集団をまとめ、生産性の高いチームを作ることに長けているとの診断でした。やはり会社の成長は社員次第であり、強い個の集まりが強い集団・チームになるのだと考えます。

今後ますます個の強みを活かしていく時代になりますし、私たちが成長するための手段のひとつとして活用していくつもりです。

また思考力というカテゴリーの中の「戦略性」という資質が高かったことからも「やみ雲に動くことはしない。差別化が図れる(=自分の強みを発揮できる環境の)中で競争することが勝ちパターンになっていく」意識を社員とも共有しています。

※ストレングスファインダー®米国ギャラップ社の開発したオンライン「才能診断」ツール。Web上の質問に答えると自分の才能(=強みの元)が導き出される。各資質の特徴を把握することでビジネスや人間関係の構築に活かすことができる。

ハーヴィッドの強みと、他社と差別化できる部分も教えていただけますか?

「看板屋ぽくない」という評価をいただくことが多いのですが、それが最高の褒め言葉ですね。

看板屋=鉄骨などのハード部分のものづくりイメージがあると思いますが、我々はデザイン・設計などのソフトに重きを置いているからです。

10名の社員のうち、4名がデザイナーとしてクリエイティブに関わっています。最終的には看板取り付けをもって完結しますが、そのプロセスで常に見せ方を重要視している点が強みであり個性でしょうね。

どんな点に会社としての成長を感じますか?

起業時は私ひとり、その後「社長とその仲間たち」になり、現在は人数も増え、会社組織となってきました。

当初から考えていたのは、報酬、休暇、将来設計など社員の幸せのための手段が、会社であり仕事だということ。

この考え方に共感してくれる仲間が自分の周りに集まってくれて、自分たちにできることに、とことん向き合ってきました。少しずつ会社が良くなってきていると感じますが、まだまだ成長過程だと思います。

ではそんな御社が大事にされていることはありますか?

チームワークも大事ですが、やはり個の集まりがチームなので、個人のスキルアップは大事だと考えています。それなくして強いチームビルディングは成し得ないからです。

ふるいにかけて達成できない社員を切り捨てるのではなく、その人なりのポジションを見つけていく。会社としては、社員全員を叱咤激励して鼓舞する中で全員を同じように能力開発するのは難しい。社員一人ひとりの個性や強みを最大限発揮させ、出来ること(能力)を伸ばしてもらいたい。少数精鋭の組織だからこそ、個の成長が会社の成長にダイレクトに反映されます。
中小企業の体力は限られているので、今ある経営資源の中でいかに戦える組織にするかが問われていると思います。

 

ビジョンを描く、理想を目指す。個々の幸せを追求するために。

会社と共に成長していく仲間たち

「10年ビジョン」を作った経緯を教えていただけますか?

ビジョンは、会社としての設計図であり、“取説”であると思います。ビジョンがあるから戦略が立てられるのです。

まずはそのビジョンを2019年に社員全員で作ろうとなったのですが、私が発案してから7~8ヵ月を要しました。日々、売上アップのために働いていると、ふと「一体何のために利益を出すのか? と社員に聞かれたら、何と答えれば良いのか」と思ったり迷ったりして途中何度も断念しかけましたが、社員と共に作り上げることで会社を成長させるための共通認識ができたと思っています。そして、いろいろな意見をぶつけ合いながらもその年の12月に完成しました。

社員が主体となって作った10年後になりたい会社の姿

「10年ビジョン」作成後の変化や効果などは?

効果としては、目指すビジョンに近づこうとするようになりましたね。分かりやすい例では、今年1月に子会社「株式会社サイエッジ」を立ち上げました。LEDビジョンやデジタルサイネージなどを取り扱う会社ですが、社員がさらに能力を発揮できる場所で、将来展望を描きやすい環境を、と考えたひとつのカタチです。掲げたビジョンに対して、小さくても何でもカタチにしていく、そこに向かって動いていることを感じられる状態が大事だと思っています。

ちなみに、以前しばしば海外出張をしていた私が感じたのは「日本人は先を見るのが苦手だ」ということです。つい、ビジョンといった理想像や未来の姿といった大きな風呂敷よりも、控えめに、身の丈にと、こじんまりとした、スケールの小さい話になってしまう。その時点ですでにビジョンではなく戦略や戦術といったやり方や短期目標になってしまっている。シンプルにやりたいことを掲げる、理想の未来を描くのが大口をたたくといったネガティブな印象になるのを嫌ってか下手なのかもしれませんね。

東京オフィス(2019年10月開設)はどのように活用されていますか?

地元・新潟だけではなく首都圏にもお客さまが多くいます。東京も大事なマーケットのひとつであることから、拠点を持ったんです。

しかし開設後にコロナの影響があり、シェアオフィスに切り替えました。お客さまと会議をする際は「オシャレだね」と大変喜ばれていますが、これも会社のブランディングのひとつですね。今夏より東京ヘッドオフィスとして人員を配置し再稼働する予定です。

ただ、長期的な視点ではどうでしょう? マーケット規模として東京は揺るがないと思いますが、東京に拠点を持ち続けるべきなのかどうかは模索中です。これも時代に合わせて変容していくんでしょうね。

東京オフィス

会社は私のものではなく「継承」していくものと考えます。今年7月からハーヴィッドは2名が取締役に昇格となり、私はサイエッジの発展に尽力するつもりです。やりたい社員に会社を受け渡していく中で、多角的な展開ができればと思っています。

小田さまが今後も大切にしていきたい部分を教えていただけますか?

繰り返しになりますが、自分と社員が豊かになるための場所が会社、これを意識していきます。

また自分らしく生きていくためにも、自分らしい経営者になりたい。だからビジョンに繋がらない、やりたくないことはしません。

そして、社員がやりたいことを引き出し、導いてあげたい。社員を信頼し、社員の自己判断を尊重することは今までもこれからも、大切にしていきたいと思います。

変革の時代において、広告やデザインの分野はどのように変わっていくと思われますか?

どんな業態においても、これからはテクノロジーの進歩に追随しないと存続しないと思います。いわゆる「デジタルトランスフォーメーション」に我々のような規模の企業も取り組まないと未来はない。

例えばデザインの分野においても、デザインの実務や実績のない方や他業種も含めた参入が増え垣根が低くなってきています。また屋外広告の分野である看板も、モノからコトの時代に入っています。コトとは、VR・ARなどを含めたバーチャルの次世代技術です。

実態がある看板(モノ)はなくなりはしないと思いますが、デジタルで投影・表現する技術(コト)にも取り組んでいかないといけません。そして働くカタチ、仕事への取り組み方はますます変わっていくと思いますね。

どういった方と一緒に働きたいですか? クリエイターを目指す方へメッセージをお願いできますか?

私がビジネスパートナーに求めるものは…「未完成でも夢を持っている人」「仕事を面白がれる人」「情熱的な人」「これからのハーヴィッドを一緒に作っていきたいと思える人」です。

人材募集の会社説明会などでは、こちらが情熱を傾けて思いを伝えていくと、新卒の方からもリアクションがしっかり返ってきます。採用側も、志望者も「共に働く」「共に“創る”」という気持ちを“全面に出し合っていく”のが大事ですね。「ハートで繋がり、ハートを動かす」、情熱を注ぐことが良き出会いへと繋がっていくんだと思います。

取材日:2021年4月6日 ライター:本望 典子

株式会社ハーヴィッド

  • 代表者名:小田 利洋
  • 設立年月:2008年4月
  • 資本金:500万円
  • 事業内容:サイン(看板)工事、グラフィックデザイン(ロゴ・キャラクター)、設計(三次元パース・図面)、管理・委託業、ドローン空撮、その他おもしろい・おしゃれなこと全般
  • 所在地:〒950-0831新潟県新潟市東区下場52-11
  • URL:https://heavid.jp/
  • お問い合わせ先:TEL:025-374-6796/Mail:info@heavid.jp

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