言葉の力を信じ、コミュニケーションを改善し、愛と平和に貢献するライター集団・チカラ
福岡を拠点に全国の仕事を手掛けているライター集団・株式会社チカラ。雑誌や書籍などの原稿制作をはじめ、企業のブランディングや、スクールなどライティングを核に事業を展開しています。
代表取締役社長の元木哲三(もとき てつぞう)さんは、バンドでのメジャーデビューや上海生活を経験し、会社を設立。また福岡のFM局で長年ナビゲーターを務めるなど、ユニークな経歴の持ち主です。
自身の哲学をもとにどのように会社を運営しているのか、これからチカラで何を行っていきたいのかなどを伺いました。
音楽でのメジャーデビュー、ベストセラー出版、海外生活を経て、福岡で会社を設立
起業までのキャリアを教えてください。
僕は子どもの頃から音楽と読書が好きで、福岡の出版社に勤めた後、続けていた音楽活動に軸足を移して、29歳でメジャーデビューしました。ただ、バンドはデビュー後にすぐに解散。東京にそのまま残り、フリーライターとして生きていくことにしました。最初は仕事がなくて苦労しましたが、3年目には担当した書籍がベストセラーになるなど、けっこう忙しくなったんです。
そのライターの個人事務所が、チカラの原点なのですね。
そうです。ただ、その間に変化を求めて上海に拠点を移して3年8カ月、執筆業をしたりもしました。福岡に戻ったときに、旧知で師と仰ぐ一風堂(福岡のラーメンブランド)の創業者・河原成美(かわはら しげみ)さんの創業の店であるバーを引き継がないか、という話をもらったんです。
それで2007年10月に株式会社チカラを設立しました。大きな志があったとか、社長になりたかったとかいうわけではなく、成りゆきで経営者になったという感じです。
2008年2月からは旧知のライターと、執筆業をスタートしました。飲食店経営と物書きという、よく分からない会社ですよね(笑)。
雑誌や書籍等の制作、ブランディング、スクール事業を展開
現在の事業内容を教えてください。
飲食部門は別会社(株式会社キッチン)にしたので、今、チカラはライター7人による制作に特化した 集団です。主な事業は3つあり、1つは「エディトリアル」と呼んでいる編集系の仕事。雑誌やムック、学校案内、広報誌、社史、ウェブメディアなどの制作で、僕らのバックボーンと言えます。また書籍の制作も手掛けてきました。新型コロナ感染拡大の影響でしょうか、自分や会社を見つめ直す方が多くなったのか、昨年から書籍の依頼がかなり増えています。
エディトリアルや書籍の仕事は、長年携わってきた分野ですね。
はい、営業をしなくても実績や信頼をもとに仕事をいただける分野で、ありがたく思っています。2014年からは2つ目の事業として「ブランディング」の事業を始めて、会社のブランドコンセプトやステートメント、理念体系など、会社の根幹となる言葉や文章づくりをサポートしています。きっかけは、広告関係の方からブランディングのチームに入ってほしいと言われたこと。社長へのヒアリングに同行した際、僕らが書籍の制作や取材で培ってきた、「聴く力」が大いに生かせると実感し、本格的に始めました。これまで九州を中心に関東や関西、北陸など50社以上に関わってきましたが、まだまだ探求しながら高度化していける面白い分野です。 https://chikara.in/works/
もう1つの事業は何でしょう?
スクール事業として、2010年から文章力の向上を実現するセミナー「文章の学校」を開校しています。また、NPO(非営利活動法人)と一緒に、子ども対象の作文教室や記者養成講座、子どもが書いた記事を紹介するウェブメディア「キッズプレス」の運営もしています。スクールの事業は収益こそ小さいけれど、僕たちがとても大切にしている仕事です。僕らの存在意義は、プロのライター集団として「書く」に真摯に向き合い、その技術や考え方をできるだけ多くの人に還元することにあると考えているからです。子どもから大人まで文章に苦手意識を持っている人は本当に多いんです。その意識を取り払えば自信がつき、世界が広がっていく。スクール事業はこれからもっと強化していきたいと考えています。
ライターの能力は社会のさまざまなシーンで活用できる
どのような会社にしたいとお考えですか?
設立当初から、僕は会社を道場のような場にしたいと考えていました。文章を愛して技術の向上に取り組む人が集まり、高め合える組織となるのが理想です。その思いは今も変わりません。実際は、僕がスタッフの原稿をチェックし、議論するという過程があるため、僕自身こそ一番の学び手です 。チカラのブランドコンセプトは「素晴らしき人生を言葉のチカラで」です。僕らは「書く」と「聴く」能力を磨き、その成果を一人でも多くの方の“コミュニケーションの改善”につなげることで、結果的に世界が愛と平和に向かう流れを加速する側にいられたらいいな、と考えています。愛と平和って、ちょっと大げさですが(笑)。
会社で日々取り組んでいることはありますか?
ライターは協業が難しく、それぞれ個々で仕事をすることが多いので、朝礼は欠かさないようにしています。雑談も含めて、大切な時間ですね。また日報代わりにSNSのグループで「3つの感謝と2つの達成」を全員が毎日アップするようにしています。感謝すること、それに自分を褒めてあげることを習慣化できていることは、組織の一つの特徴になっていると思います。
今後やっていきたいことを教えてください。
ライターの存在やその能力、活動領域が、一般的に知られていない現状を、大きな課題だと捉えています。経営者が理念体系を整理したいのにうまく言葉にできなかったり、ホームページの改善策が分からなかったり、オウンドメディアを始めたけどクオリティが高められないと悩んだりしたとき、「ライターの力を借りればいい」という発想が出てこない。パートナーになれると分かってもらえるように、もっとPRしていかなければいけないですね。文章を書けるというライターの能力は、社会でますます必要になってきていると思いますから。
日々の積み重ねによってクリエイティブになれる
一緒に働くスタッフに対して、会社としてどのようなことを求めますか。
僕は「経営している」なんておこがましくて言えないですし、スタッフにどうしてほしいと上から言えるものは持ち合わせていません。
仲間たちには物書きとして刺激と気づきを与えられる存在でいたいし、僕自身も、彼ら、彼女らから影響を受ける側でもある。同士のような感じですかね。
そんな関係を継続するためには、物書きとして当たり前のことを地道に追究していくこと。文章に常に真剣に向き合い、飽くなき探求心を持ち、考え続けてほしいと思っています。
最後に、クリエイターに対してアドバイスをお願いします。
クリエイティブかどうかは、生まれ持ったセンスに左右されると言う人もいますが、僕は知識と経験が大切だと思っています。そのためにはまず、好きなことに夢中になること。ライターなら読書はもちろん、映画や音楽などのアート全般、人との出会い、旅などの経験からもたらされるものも大きいでしょう。
とくにライターは「ライターの視点」で24時間を生きていてほしい。いつも何か面白いものがないか、書ける材料がないかとアンテナを立てて、たとえばおいしいご飯や心地よい音楽に出会ったらどう伝えたらいいかと考える。ニュースを見たら背景まで思いを巡らすなど、常に経験を自分なりの視点で考える姿勢です。この積み重ねによって、人はクリエイティブになれる。むしろ、それを怠ったらすぐにダメになる気がして、僕は自分に常に言い聞かせています。創造力って、やっぱり毎日の積み重ねだと思うんですよね。
取材日:2021年4月15日 ライター:佐々木 恵美
株式会社チカラ
- 代表者名:元木 哲三
- 設立年月:2007年10月
- 資本金:100万円
- 事業内容:取材・執筆業、書籍制作、ブランディング、スクール事業
- 所在地:〒810-0041福岡市中央区大名2-2-1MIKIビル401
- URL:https://chikara.in/
- お問い合わせ先:092-737-5725