ITの力で企業の経営課題を解決する専門家集団ウォーディッシュ
地元広島の企業を中心に、システムの設計・開発・運用・保守を行うウォーディッシュ合同会社。「ITだって、シンプルがいちばん」と、複雑にみえる高度な技術や知識を使いやすいシンプルなカタチで届けることをモットーにしています。2007年の創業以来、順調に業績を伸ばし続けている同社代表社員の三戸鉄也(みと てつや)さんに、会社設立までの経緯や仕事の魅力、今後の展望をお伺いしました。
突然起きた、在籍していた会社の資金の枯渇。顧客との関係を守るために独立することを決意
会社を立ち上げるまでのキャリアを教えてください。
大学を卒業し、福山市に本社があるソフトウエア会社に入社しました。そこで広島事業所を任されて、広島市近辺のお客さまを主に担当していました。仕事内容は、研究開発のプログラム作成や、既存のソフトウエアの一部改修、大規模システムのリプレース、Linuxサーバーの構築とかリプレースなど多岐にわたり、お客さまも公官庁、大学、テレビ局、製造業、小売り業などさまざまな業種業態の会社とお付き合いがありました。
就職先にこの業界を選んだのはなぜですか?
もともとパソコンが好きだったんです。中学生のころ、親が買ってきたパソコンに夢中になって「パソコンを仕事にする職業があるらしい。こんなに楽しいことが仕事になるなんて」と憧れを持つようになり「趣味が仕事になる」そんな感覚でこの業界を選びました。今も時間ができれば仕事じゃなくても、パソコンでプログラムを作ったりデータ分析をしています。
なぜ、独立をしようと思われたのですか?
大学は近畿大学の工学部経営システム工学科(現:情報学科)に進学しました。大学ではプログラムを作るというより、マーケティングや経営について学んでいて。それは今でも役立っていますね。独立の決断をするときも、大学で得た知識が大きな支えになりました。
直接のきっかけは会社の資金の枯渇です。入社して7年ぐらい経ち私が30歳を迎えたころの話です。会社から突然「今月から給料は払えない」と宣言されたんです。
しかし、それまでも会社の数字を見ていたので、資金の枯渇もそう遠くない話だと覚悟はしていました。大学で経営について学んでいたため、損益計算書もバランスシートも読めるし、ビジネスの仕組みも知っていましたから。「退職金の代わりに、お客さまと事務所を譲り受ける」のを条件に会社を退職し、広島事務所のメンバー3人で独立してウォーディッシュを設立しました。
「再就職をするのではなく、独立を選ぶ…」迷いはなかったのですか?
全くありませんでした。信頼して「私たちだから」と仕事を依頼してくださるお客さまを、他の会社に任せられません。勤めていた会社は別会社に引き継がれることになったのですが、新しい会社の方針にお客さまと我々との関係が左右される可能性がありました。自分たちの決定権を手放してしまうことは、リスクでしかなかったんです。お客さまとの関係を守るためにも、自分たちが決断できる体制を守らなくてはいけないと独立を決意しました。
地方ならではのフットワークとネットワークを生かし事業を拡大
現在の事業内容を教えてください。
一般的なSIer(エスアイヤー)という位置づけです。SIerはシステムインテグレーターのことで、システム開発にまつわる全ての業務を引き受けます。具体的には一般企業やIT企業から、「業務の改善がしたい」「こういうソフトが作りたい」などのご相談をいただいて、それを実現するようなソフトウエアの要件定義から設計、開発、納品、その後の運用と保守を引き受けています。仕事領域は多岐にわたります。特にデータ分析やそのデータ分析基盤の制作、クラウドへのインフラ整備などが得意です。
業種業態問わずに引き受けられているんですか?
前の会社から引き継いだお客さまや、そのご紹介からの仕事が多いので、お客様の業種業態は問いません。ただ業務についてはマーケティングやプロモーション、広告、物流など、我々に競争力がない領域は、「手を出さない」と決めています。そのようなお仕事の依頼があったときは、その分野を専門にしている会社を紹介したり、一緒に組んで仕事をしています。
ウォーディッシュも会社を始めた当初はいろいろな挑戦をしましたが、ある時期から自分たちが少しでも苦手に感じる仕事は手を出さず、得意とする会社に協力をお願いする今のスタイルに方向転換をしました。より高いパフォーマンスを発揮できる方法を選択することが、お客さまにとっても我々にとってもプラスになると思っています。
広島を拠点に活動されているのは、仕事を協力しあえるネットワークがあるからなんですね。
それもありますが、一番の理由は広島を拠点にしているお客さまが多いからですね。やはりお客さまの近くにいる方が、ビジネスはやりやすいですから。それだけでなく、広島はフットワークが軽く、事業を進めやすい土地だと思っています。さまざまな事業者がまとまって存在していますし、市場のサイズも手頃です。
県や行政でも意思決定者へのルートも近く決断も早い、地方都市ならではの規模感がちょうどいいんですよね。地元でしっかり交流をしていれば、仕事を進めやすい地域です。自分の事業を頑張ることで、地元の経済や活気ある街づくりに貢献できるのも魅力ですね。
仕事を一緒にする会社やクリエーターに求めることを教えてください。
第一には、クオリティです。お客さまの要望を理解したうえで、最適な成果物を納めてくれる会社やクリエーターの存在はありがたいですね。例えばデザイン。ただ情報を並べるだけでは伝わらないから、デザインが必要になるわけです。ボタン一つ、フォントデザインやサイズをとっても、「なぜこのデザインなのか」の理由が説明できる人は、信頼できます。仕事には全てに意味があるはずです。
お客様の意向を汲んで考え抜いたことを仕事に反映できる人は、当然クオリティの高い仕事をすると思います。
心惹かれる仕事を楽しみながらできる環境を、自ら作る
貴社の今後の展望をお聞かせください。
そろそろオリジナル製品を作りたいと思っています。我々の仕事は、受託開発がメインです。案件毎に違う環境、違う条件のもとお客さまに合わせた製品を作るのは、面白さもありますが大変な作業でもあります。
ここ数年、大規模な仕事に携わることも増え、それに応えられるように社員を増やすなど、会社の組織も大きくしてきました。さらにこれから会社が安定するためにも、自社製品をベースにした売上構成に変えていく時期だなと感じています。長年、さまざまな会社を見てきました。やはり「製品」を持つ会社は安定もしていて強いんですよね。今はプラントや工作機械、船など、半分建築に近いような製造業をターゲットにした、業務改善ツール開発に取り組み始めています。
1年くらい集中して開発する時間を設ける予定で、財務的に安定する基盤を作ります。その上で自分たちがやりたい仕事に注力できる体制を整えたいと考えています。
働き方の見直しですね。
はい。私にとって仕事は趣味の延長みたいなところがあるので。「楽しいことが仕事になる」と考えていた中学生のころと変わっていないんですよ。「面白そうだな」と思える仕事に注力できる、そんな働き方を自分自身も会社のメンバーも続けていくために、新しい体制づくりに時間をかけようと思っています。
最後に、この業界を目指す人へアドバイスをいただけますか
「我々のような先輩の話を、鵜呑みにしてはいけない」でしょうか(笑)。常識が大きく変わってきています。我々が歩んできた道や学んだ手法が、参考にならない時代になっているんです。
ITが必要とされる業界は、昔に比べ広くなり細分化され内容も深いので、その知識を身に付けるだけでも大変な時代になっています。その上、この業界に限らずですが、「働く」ことに関する考え方や世間の定義が、大きく変わってきています。
働き方が見直されるなか、生産性が一定のラインに達していない人は働けない時代になっていき、専門職に就くには職務経験があることが前提になる時代が来るのもそう遠くないでしょう。難しい時代になっていますが、まだまだ可能性のある業界です。柔軟な思考と感性、行動力で、これからの業界を牽引して欲しいですね。
取材日:2021年5月13日 ライター:山名 恭代
ウォーディッシュ合同会社
- 代表者名:三戸 鉄也
- 設立年月:2007年10月
- 資本金:250万円
- 事業内容:クラウド移行サービス、舶用艤装品製造業様向け 受注&販売管理ソフト「today」開発、作業計画ソフト「ノー残Lights」開発
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