GUILD OKINAWAは広告制作会社の領域を超えクライアントの課題解決を目指す
「GUILD OKINAWA(ギルドオキナワ)株式会社」は、商品や企業のブランディング、グラフィックやWebの制作といった、一般的な広告制作会社の枠に収まり切らない事業も数多く手掛けています。
例えば「琉Q(ルキュー)」という沖縄産加工食品のオリジナルブランドを展開したり、大型観光施設の中に小さな街を作ったり。これらは代表取締役の仲本博之(なかもと ひろゆき)さんをはじめ、働くのが大好きな“ワーカホリック”なスタッフたちのアイデアがなせる技です。
全てのゴールはクライアントの課題解決のため。ギルドオキナワが幅広い領域を手掛ける理由や、会社の展望を伺いました。
より自由に、より真摯にクライアントと対峙するため
キャリアのスタートから教えてください。
大学進学を機に上京して以来、30歳まで広告制作会社や代理店に勤めていました。ずっと東京にいたかったのですが、沖縄の家族が心配でもあったためUターンし、沖縄の広告代理店に転職。その会社で「コミュニケーションプランニング部」という新しい部署を立ち上げました。
それはどのような部署ですか?
CMを流しただけでは商品が売れない時代になり、グラフィックやWebや印刷物など、広告の種類が細分化され始めていました。広告のあり方そのものを見直すべきだと感じ、従来の代理店の枠に収まらない提案をできる体制を作りました。それが「コミュニケーションプランニング部」です。
当時の案件で、どんなものがありましたか?
専門学校から「印刷物を軸に、生徒間のコミュニケーションを活性化する方法を考えてほしい」という依頼がありました。定石通りなら何らかの印刷物を作って完了…というくらいですが、それでは課題解決にならないと、校内のロビーに生徒が集える場所を作るなど、建築会社の領域にまで手を広げました。
このように、クライアントが本当に必要としていることを突き詰めて考えると、従来の広告代理業からはみ出てしまうこともあります。
しかし会社からは、普通のCMやグラフィックを作るように指示されることが多くて……。 その頃、障がいのある方が作った商品を地域の祭りなどで販売する、という案件を受託しました。先方へヒアリングを重ねたところ、商品を多く売ることで工賃を上げ、障がいのある方の「“クオリティオブライフ”も向上したい」という目的が見えてきました。しかし単発のイベントでいくら頑張って販売したところで、売上規模に限りがありますし、パンや雑貨といった商品の性質上、あまり高い単価は付けられません。 それらの課題を解決する手段として、継続的に高品質な商品を製造、販売していけるブランドを作ることを思いつきました。今も弊社オリジナルのブランドとして続けています。「流Q」という加工食品シリーズで、高品質の農作物を使ったり、無添加にしたり、容器に沖縄の伝統工芸品「やちむん」を使ったりして付加価値を付け、健康や生活への意識が高いアッパー層をターゲットにしました。 このプロジェクトはうまくいったものの、会社なので、予算が切れればそこで終了です。しかし私は継続してやりたかった。ほかにも似た状況に陥ることが多々あり、次第にクライアントの課題解決のゴールを、代理店の枠へ無理やり当てはめることに懐疑的になって。もっと柔軟に自由に、適切な提案をできるようにと、2015年に独立を決意しました。
クライアントのパートナーとして協同する
クライアントへ提案をする上で、心がけていることはありますか?
「あなた方のパートナーになりたい」ということを、まずお伝えするようにしています。パートナーなので隠しごとがあってはいけません。先方の売上規模や利益率、予算規模などを明示していただけるのか、つまり弊社を信頼していただけるのかを確認。そこが最初の分岐点で、難しければお断りする場合もありますし、見せていただければ、ヒアリングを重ねて提案の段階に進みます。
さらにプロジェクトの初期段階で、担当者だけでなく決裁者も同じ熱量で課題を解決したいと考えているかを確認します。そうでないとプロジェクトは成功しません。
依頼内容とこちらの考えが違う場合はそこでお断りすることもありますか?
もちろんありますよ。決裁者が企業案内などのデザインだけを変えたいのであれば、印刷会社にお願いした方が価格は安く済みますから、他社をご紹介することもありますね。
全社が一枚岩だと確認できたら、さまざまな角度から課題を捉え適切な提案をするために、決裁者や担当者はもちろん、時にスタッフ一人一人にもヒアリングを行い、経営の深い部分にまでかかわっていきます。
課題解決のための大きなテコ入れとなると、抵抗を示すスタッフも出てきそうですね。
スタッフだけでなく、トップに嫌がられることもありますよ。しかし、「あなたたちのことを真剣に考えているんですよ」という意思表示でもあるので、強い姿勢は崩しません。
最近は決裁権を持つ方の年齢層が徐々に下がっているせいか、弊社のやり方や「ブランディング」という概念に対するリテラシーが高い方が増え、やりやすくなっていると感じます。
また特に沖縄の企業に関していえば、決裁ルートが短いのでさらにスムーズですね。その点はメリットだと感じます。正直沖縄は単価が低く、金額面だけ見ると首都圏に比べて不利なのですけれど。
スタッフが自律し、より強固な「ギルド」になる
これからの夢や、展望を教えてください。
恐らく今後、広告代理店が弊社のような事業形態になると感じています。だからこそ代理店に追いつかれる前に違うことをやりたい、一歩先に進みたい。「流Q」という自社ブランドを持っていることは強みです。
商品開発からEC運営まで全て自社で行っているので、ナレッジがどんどん蓄積され、代理店の追随を許さないレベルになるはずです。 今後はさらに「流Q」をブラッシュアップするとともに、新しいサービスとして、旅行企画も展開したいですね。
それはどのようなサービスですか?
加工食品作りでお世話になっているアセロラやパッションフルーツの農家で、自らジャムなどに加工して瓶詰めまで行う、という一連の体験をパッケージ化しました。参加者の満足度はかなり高く、手ごたえがあります。 農業関連では他にも、観光客用のレンタル農園を運営してみたいです。一年で何度も沖縄に来るような「沖縄ファン」は多いので、面白がってもらえるのではないかと。 一坪単位で貸し出し、Webカメラでいつでも畑を見られるようにして、レンタル料の半分は農家さんに支払うというイメージです。今沖縄では耕作放棄地が問題になっているので、このレンタル農園も一つの解決方法になり得ると思っています。
次から次へと新しいアイデアが生まれますね。その発想の源はなんですか?
長風呂が趣味なんですが、湯船につかりながら思いつくことがあります。あとは新入社員の頃から「こんなときどうする」というシミュレーションを頭の中で繰り返す訓練をして、提案力を鍛えていました。
他にも展望があれば教えてください。
弊社の事業はいろいろですが、一言にまとめるとサービス業です。サービス業の資本は、やはり人。スタッフ皆が自立し、自ら進んで新しい企画を作れるようになってほしいです。 社名の「ギルド」とは、中世で「組合」という意味です。スタッフはサラリーマンではあるけれど、それぞれが自立して利益を生み出せてこそ、その集合体が強い組織、つまりギルドになれると思っています。 もう一つスタッフに対しての願いは、月並みですが、健康でいてほしい。弊社の社員は私も含めてワーカホリックで、夜12時を超える残業は減給という規定を作ったほど。仕事が楽しいのはいいんですが、体が資本です。体調にも十分気を付けてほしいですね。
社員の皆さんが自立できるために、何かしていることはありますか?
会社の利益目標と、それを達成しないと給与や賞与にどれほど影響するのかをオープンにしています。さらにそのためには何をすべきか、何をしたかをレポートとして提出してもらい、予算に対しての責任感を持つよう指導しています。その甲斐あってか、あるデザイナーは自らWeb制作のパッケージ商品を作って、売り上げを立てられるようになりました。
最後に、どんなスタッフと働いてみたいですか?
普通の広告プロダクションとは違い何でもやりますので、それを楽しめる方がいいです。つい先日も入社数日後の社員に倉敷へ出張に行ってもらいました。彼女はそれを楽しめるタイプだったので良かったのですが、抵抗がある方もいると思います。新しいこと、未経験のことにワクワクできる方と、一緒に働いてみたいですね。
取材日:2021年6月28日 ライター:仲濱淳
GUILD OKINAWA株式会社
- 代表者名:仲本 博之
- 設立年月:2000年2月
- 事業内容:商品・店舗・企業ブランディング、印刷物・ロゴ・立体・Webデザイン、イベントプランニング、ショップコンサルティング、テレビ・ラジオ・WebCM制作 等
- 所在地:〒901-0306 糸満市西崎町4-15-2 3F
- URL:https://guild-okinawa.co.jp/
- お問い合わせ先:098-955-0505