自分でスコアを記入していくスコアカードやカートに広告を掲載したり、場内に看板やポスター掲示、レストランの卓上にPOP（ポップ）を設置したりしています。最近では、カートにナビゲーションやスコアを記入できるタブレットが付いていることがあって、そこへの広告配信もはじめました。プロモーションに関しては、新製品や試供品のサンプリングや車の展示会などを行っています。以前はホールを示すピンフラグに広告を入れる、カスタムフラグスティックも扱っていましたが、コストが高いことで伸び悩み、現在はほとんど取り扱っていません。

これまでゴルフ場が自費で作っていたスコアカードを、広告主となる企業様がお金を出してくれることで経費削減になること、またサンプリング手数料が新しい収入源になるという点です。サンプリングは、お客様にプレゼントができる、付加価値を提供できるという感覚で満足度が高く、一回やりとりをさせていただくとゴルフ場の方から「またお願いね」と声をかけていただくことばかりなんです。

大学を卒業して広告系の制作会社で勤めていました。その時はイベントや展示会、式典をメインにやっていて媒体は「人」でした。

その中で訴求するターゲットがある程度セグメントされた媒体を構築すると、一層メディアとしての価値が高まるのではないかと思っていたんです。いろいろ調べた中でゴルフはスポーツ市場で断然トップの産業で、プレーする人は富裕層、シニア層、経営者層、健康志向層がメインで、お金を持っていて時間にも余裕がある人が多いと。そういう層にピンポイントで訴求したいメーカー、商品やサービスは世の中に多くあるのではないかと思って、ゴルフ場を媒体化して展開することにしました。

親族を含め、友人関係など身近に事業を興している人が多かったですね。そのようなまわりの環境に引き込まれて、自分もやってみようと思いました。今までの経験や人脈を生かすなら、経験してきた広告の分野だと決断しました。会社員の最後の1年間は、何の分野の事業にするか模索していましたね。きっかけとなったのは前職の社員旅行で訪れたグアムでゴルフした時、スコアカードに高級車の広告が載っているのを見て、この広告は「面白いな」と思ったんです。

それでゴルフ場での広告、プロモーションを思いつきました。さらにタクシー内でのサンプルリングやスキー場での広告、プロモーションを考えました。29歳で会社を辞め、数か月後に独立しました。

最初はサンプリングタクシーをやりました。例えば、福岡の中洲にはあちこちにタクシーが止まっていますよね。タクシーに乗る時、二日酔い防止の効果があるといわれるドリンク剤を貰えるタクシーがあったら、そのタクシーを選んでもらえるんじゃないかと考えたんです。ドリンク剤の他にもサンプリングしてくれるメーカーの開拓を頑張りましたが、結局あまり反応が良くなくて半年で断念しました。スキー場に関しても利用客が集まる季節が限られるという理由で、オールシーズン展開が可能なゴルフ場をターゲットにした広告、プロモーションに移行したんです。

まずは提携ゴルフ場の確保から始めましたが、最初は提携先を増やすことがすごく大変で、九州のゴルフ場だけでも1年、全国に広げるのに2、3年かかりました。約2年は売り上げがプラスになりませんでしたね。全く予想通りいきませんでした。イメージとしては、売り上げはどんどん上がっていくだけと思っていましたから。

意地もありましたね。ただ手ごたえはずっと感じていました。絶対に需要はあると思っていて、やり続ければある程度いけるんじゃないかと。続けることで、ゴルフ場側がやりたいと思っている他の情報が入ってきて、それがいろいろと化け、仕事につながるのではないかと信じていたからです。

社名はAGOと書いてエージ―オーと読みます。正直な話をすると私、顔が逆三角形でアゴがとんがっているもので、前職のとき周りにいじられていて。起業しようと決めた時も「株式会社アゴにしろよ」って（笑）。最初はさすがに「いやいや……」と答えていたんですけどね。

よく考えてみたら、そこまで言われるって皆さんに覚えてもらえるかなと。それでアルファベットで「AGO」にして、後付けでAはactive、Gはgrasp、Oはopportunity（チャンスを得て機会を得る）というような意味を込めて名付けました。

自分で考えて行動を起こすというのが初めてで、0を1にするのはすごく難しいことでしたが、それをなし得たことで、ある程度事業がまわるようになったのは良かったです。

広告業界は常に新しいことを生み出すことが求められるので、常に追及しなくてはいけない、マンネリ化もしないのが自分に合っていますね。あとは人ですかね。この業界は発想力豊かな人と仕事する機会が多いので、自分の成長につながっていると思います。

小さな会社ですが代表取締役という肩書きなので、それだけでも出会う人が変わってくるんです。他の会社の社長さんと話すのも楽しいですね。会社のサービスとしても好きだし、人との出会いも面白いというのが魅力です。

誠実で真面目にやるということです。お金を稼ぐだけのためにやらない。お金を頂戴するのであればちゃんと期待に応える。お客さまのメリットにつながることを真面目に考えて、提案して、喜んでもらって、それがいいプロモーションになって、最終的には満足していただく。そういう環境を作るのが大事だと思います。

亡くなった叔父が経営者だったんですが、昔堅気で豪快でとにかく人を大切にしてお金をばらまいて、それがまた魅力的な人だったんですね。

メリハリがあって優しくするところは優しく、厳しいところは厳しい。でも伝説のようにいろいろな人から「あの人がいたからこうなれた」と語られていて。叔父のように、人や会社を大切にする人になれたらと思います。

これまでの広告業界とは全く関係ないんですが、2年前からがん治療に特化したクリニックのコンサルティングを始めました。妻が医者なので医療に対して徐々に関心が出てきたというのが理由です。

私の仕事は法人が相手で、妻は個人が相手。医者は患者さんを治したら「ありがとう」って言われるじゃないですか。でも私の仕事はあくまでも社会の歯車の一つで「ああ本当に助かったよ、ありがとう」というのはないんですね。

直接人の役に立つ仕事は魅力的だなと思って、個人を相手にする仕事ができないか考えていた時に、たまたま取引先で出会った方からクリニックの話をいただき、今後はBtoB（企業間取引）とBtoC（個人に対して商品やサービスを提供）の両方をやっていこうと。

今までの広告やプロモーションの仕事は、いかに商品を世の中に広めて買ってもらえるかでした。クリニックも一緒。この治療を、いかに患者に知ってもらって、クリニックにきてもらえるかなんです。これまでの経験は役に立っているので、どちらかに集中するのではなくて、今後も両方の事業を継続してやっていきたいと思っています。

事業を行うにあたってリスクがあるのなら、それをどれだけ小さくできるかが大事だと思います。リスクを小さくするのに必要なのはお金か人脈か、はたまた別のものなのか考えて、努力をしないといけない。10個のリスクのうち4個解決できた、4個できたならあと2個は解決できるのでは？という感じで追求していかないといけないと思います。一つ解決できればそれが自信につながりますし。リスクを無視してやると絶対失敗します。解決法は必ずあるはずです。正直、リーマンショックと東日本大震災の後、会社は本当に潰れそうになりましたが、なんとか乗り越えてきました。

ただ自分一人で解決したとは思っていません。人の助けや協力があったからこそ。やはり人とのつながりは大事ですよね。私はまだ成功とは言えないかもしれないけれど、起業はやってよかったと思っています。起業を考えている人がいたら、ぜひ背中を押してあげたいですね！