今、社会で求められている“ヒトヒネリ”モバイルルームサービス「GouRoom」が提案する新しい宿泊のスタンダード
2021年2月に大阪で創業した株式会社HiNeLi(ヒネリ)。今、HiNeLiが提供するモバイルルームサービス「GouRoom」(グルーム)が、宿泊施設から大きな反響を呼んでいます。
コロナ禍による観光需要の急激な落ち込みによって、宿泊施設の在り方は大きな変化を遂げました。もはや宿泊施設は、泊まるためだけの空間ではなく、日常的なリフレッシュの場や仕事場としての役割を持つようになったのです。
そんな新しい利用スタイルに応え、人々の滞在をより快適にするために生まれたのが、GouRoom。既存のフードデリバリーサービスにはなかったGouRoomの着眼点とは、一体どこにあるのでしょうか? ユニークなサービスの裏側には、「人と社会のために“ヒトヒネリ(創意工夫) ”の心を忘れない」HiNeLiの企業精神が隠されていました。HiNeLi代表取締役・中西訓生(なかにし くにお)さまにお話を伺いました。
未経験から、Webマーケティングの世界へ行ったのが始まり。
もともとは、今の事業とは全く関係のないお仕事をされていたそうですね。
はい、最初の就職先は今の業種と全く関連がなく、町工場でリフトを操縦する仕事でした。その後もいくつかの職を経験しましたが、同様の体を使う仕事が中心で…業界の将来性や時代背景、自身のキャリアに対する疑問を漠然と感じていました。「新たな業種にチャレンジしよう」と決意したのが、30歳を迎える頃。未経験で飛びこんだのはWebマーケティング関連の営業職でした。今から8年くらい前なので、ちょうどWebマーケティングという概念が定着しつつあった頃ですね。クライアントは、飲食店や宿泊施設です。当時はインバウンドの需要が爆発的に伸び、インバウンド向けのサービスが活発になっていました。私は営業ではありましたが、開発や制作にも積極的に関わっていました。当時、専門的な知識はないものの、クライアントの想いを実現するため、「サービスをもっとこうしていかなければいけない」「こういう工夫はできないか」と、開発や制作のスタッフに積極的に意見を伝えていました。なので制作サイドとぶつかることは多々ありましたね。
そこで、今の事業に通ずる経験を養われたのですね。独立に至ったきっかけは何だったのでしょう?
大きな転機になったのは、昨年の新型コロナウイルスの感染拡大です。当時、インバウンドに特化した事業を展開していましたが、国内のインバウンド需要は激減し、方向転換を余儀なくされ、事業の方針を根底から考え直す必要がありました。そんな時クライアントからの一本の連絡があり「ホテル専用のデリバリーサービスを制作して欲しい」と要望がありました。その時、大手デリバリーサービスの競争が激化する中、ホテル専用デリバリーサービスにニーズはあるのか、という疑問を抱きながらも直面する社会課題を解決したいと思い、「起業しよう」と決断したのが、2021年の2月。同月2月22日に、株式会社HiNeLiを立ち上げました。
思い立ってから独立までが1カ月もなかったとは、かなりスピーディーな展開ですね! 以前から、起業を視野に入れて準備をされていたりしたのでしょうか?
いえ、独立願望は、全くありませんでした。いつかは、と野心を持っていたわけでもないし、準備をしていたわけでもありません。独立の背景には、新型コロナウイルス感染拡大により変革を迫られた時、どうせ大きな変化を伴うならば「社会課題を解決できる社会的価値ある企業」「クライアントの想いをカタチにできる会社」「スタッフが自己実現できるフィールド」を創りたい。そんな想いから、急展開で起業しました。仕事を通してクライアントやその先にいるエンドユーザーに喜んでもらうことが自分のやりがいになる。そんな働き方ができる環境を作るための一番の近道だと判断した結果だと思います。
新しい“宿泊”の形「GouRoom(グルーム)」
御社の事業内容について教えてください。
HiNeLiでは、大きく分けて2つの事業を手掛けています。1つは飲食店のコンサルティング事業、もう1つは宿泊施設のシステム開発事業です。この宿泊施設向けの事業で私たちが開発した新しいサービスが「GouRoom(グルーム)」です。GouRoomは、「グルメ」と「ルーム」を組み合わせた造語。GouRoomを導入している施設の宿泊客が、各ホテル専用のモバイルオーダーからお店とメニューを選んでオーダーすると、【部屋まで食事が届く】というサービスです。
いわば、ホテルのルームサービスに代わるようなものでしょうか。
はい。現在国内の宿泊において、ルームサービス実施事業者はごく一部です。チェックインした後に汗を流してひと息ついた後や、暑かったり、雨が降っていたりすると、再び外に出るのは面倒ですよね。そんな時「部屋に美味しい食事が届いたらいいなあ」と思ったのが、GouRoom開発のきっかけでもあります。また現在はコロナ禍で、宿泊施設の需要にも変化が起こっています。デイユース利用が増えて、部屋で女子会をしたり、テレワークをしたり…。食事も外でとるのではなく、感染防止のために部屋でとりたい、というニーズが高まっています。実際に宿泊施設では「部屋で食事をしたい」「近隣のテイクアウトのお店を知りたい」という宿泊ゲストの声に対して、宿泊施設からオフィシャルで、部屋食ができる選択肢を提供できていないのが現状です。GouRoomがあれば、ルームサービスのない宿泊施設でも、部屋で気軽かつ安心・安全・便利に美味しい料理が楽しめます。
現在はさまざまなデリバリーサービスが進出しています。それらとは何が違うのでしょう?
GouRoomと他のサービスとの決定的な違いは、「宿泊している“部屋”まで食事を届けてくれること」です。実は、既存のデリバリーサービスはすべて、ホテルの部屋までは配達できません。セキュリティ上の観点から、敷地外か、せいぜいフロントまで。宿泊客が部屋から出て取りに行かないと、食事を受け取れないんです。
しかしGouRoomは宿泊施設公式のサービスなので、注文した部屋まで食事が届きます。食事を提供している飲食店のスタッフが直接、責任を持って運んできてくれるのも、安心できるポイントです。その他、アプリのダウンロードや会員登録等、面倒な手続きが不要なので誰でも簡単に注文が可能です。
なるほど!宿泊施設公認のサービスなら、フロントの目を気にしながら受け取らなくてもいいし、部屋で気兼ねなく食事ができますね。提携している飲食店は、どのようなお店が多いのでしょう?
宿泊ゲストからエリアのおすすめの食事を楽しみたいとのお声が多いため、宿泊施設周辺の飲食店が中心です。広範囲のエリア展開をしていない地元のお店が多く、中には、GouRoomでしかデリバリー注文を受けつけていないお店もあります。
毎回配達先の場所を調べるのは手間と時間がかかりますが、配達先が近くの宿泊施設だったら、住所を調べなくてもすぐに届けられますよね。人手が少ないお店でも、GouRoomの注文なら対応できるんです。
まだ始まって間もないサービスですが、反応はいかがですか?
実際に需要があるかどうか疑問でしたが、GouRoomをリリースしてみると、思った以上に大きな反響をいただきました。広告は一切出していないにも関わらず、宿泊施設から「導入したい」というお問い合わせをたくさんいただいています。
宿泊施設側からすると、感染リスクを低減させるためのサービスが宿泊プランの付加価値になります。宿泊客に、より安心・安全、便利に過ごしてほしい、という姿勢を伝えられますから。
宿泊施設もお客さまを獲得するために色々工夫をしているんですね。
国内需要とインバウンド需要の拡大により、宿泊施設の新規出店が加速し、市場全体の拡大基調が続きましたが、2019年の外国人宿泊需要の伸び率の鈍化や、台風の影響により需給バランスが崩れ、価格競争に追い込まれる宿泊施設も多かったように思います。そんな中、本当に試行錯誤されていたようにお見受けしました。
しかしながら、そこに新型コロナウイルスの感染拡大。インバウンドは完全に止まり、国内の観光需要も激減、さらには通勤や出張の見直しや、テレワークの推進によるビジネス利用にも変化が起こっています。宿泊施設の価値を再定義する局面にあるのかも知れません。そんな宿泊事業者・観光業の付加価値として貢献できれば幸いですね。
今後、宿泊施設が生き残っていくためには、どのような取り組みが必要だとお考えですか。
私たちは、宿泊施設に向けたプラン提案の事業も行っています。そこで重視しているのが、「宿泊施設の周りの地域に埋もれた観光資源」です。小さな飲食店、土産物屋、体験スポットなど…“エリアならでは”の魅力を見つけ、それらとタイアップしたプランを提案しています。
アフターコロナの世の中になれば、インバウンドを始めとする観光客は必ず戻ってきます。その時には価格を競うのではなく、エリアの魅力を生かした「宿泊」ではなく「旅」を販売する価値の創造が必要なのではないかと考えます。
宿泊施設だけではなく、地域全体で、経済の活性化をはかる目線が大切です。GouRoomの提携先に地元の飲食店が多いのも、そういった取り組みのひとつになっていると考えています。
GouRoom事業の今後の展望は?
今は、より多くの宿泊施設へGouRoomを導入してもらえるよう動いています。まずは、関西の導入軒数の目標を達成することを目指したいですね。そして、来年を目処に「東京に展開したい」という想いがあります。国内において東京は宿泊事業の中心で、宿泊施設の数も宿泊者も圧倒的に多いですよね。
もし東京でGouRoomの需要がなければ、本当に必要とされているサービスとは言えないですから。私たちのサービスが社会にどこまで求められているのかを、東京という土地で見極めたいんです。そして何よりも直面する社会的課題を解決できるサービスでありたいと思います。
仕事の最大のやりがいは、誰かを喜ばせること。
これからチャレンジしてみたい事業の構想はありますか?
今はまだスタートしたばかりですし、既存事業のことで頭がいっぱいです。でも、いつかチャレンジしたいのは、自社で運営する「飲食店」です。これまでに何百軒もの飲食店のコンサルティングを手掛けてきて、マーケティングや資金調達、設備、内装、保険、人材教育など飲食事業者様に間接的ではありますが関わってきました。
これまでの経験やノウハウの“答え合わせ”をしてみたい。より深くクライアントに関わるには、飲食店の現場をもっともっと知らないといけませんから。いつかは、と言っているものの、来年ぐらいには本当にやりたいと考えています。
東京進出や新規事業に向けて会社の規模が拡大し、スタッフも増えていく時期かと思います。中西さんがスタッフを採用する際に見ているポイントは何でしょうか?
一緒に働く上で最も重視しているのは「他人軸で物事を考えられるか」という点ですね。他人軸で考えるというのは、「ユーザーにとって、本当に有意義なサービスが提供できているだろうか?」「クライアントは、この提案で喜んでくれるだろうか?」と、自分本位にならず、相手の立場に立って考えられること。その姿勢が何よりも大切だと思っています。それは社内環境においても同じで、隣で働くスタッフを想うことも重要と考えています。
そのような考え方をされるようになったのには、何か理由があったのでしょうか。
私はWebマーケティングの営業職に就いたばかりの頃は、自己中心的な考え方をしていて、周りの人の気持ちを考えていませんでした。自分の営業成績が上がれば満足で、自分さえ良ければいい、と思っていた時期もありました。
しかし、営業の仕事を続けていくうちに、その考えは変わりました。お店をオープンするには多くの先行投資が必要です。資本力のある大企業ならともかく、個人事業主からすれば、人生を賭けた大金です。でも、どうしてもうまくいかない時はあって…。「中西さん、どうかお願いしますよ」と任せてもらったのに、うまくいかないこともありました。
それは悔しいですね…。
父親くらいの年齢の人が「長年の夢やったんや」って退職金でお店を立ち上げるのを見ていたら、どうにか力になりたい、という気持ちにさせられます。そんな多くの人の想いに触れながらうまくいかないお店をひとつでもなくせるよう、責任と実績を持って仕事をしよう、と決めたんです。そうして仕事を続けていると、自分軸だけではなく、他人軸で物事を考え、行動することが重要だと気付きました。
いくら裕福になったとしても、それは本当の豊かさではありません。「人の豊かさを追求する思考こそが、自分の人生を豊かにする」と考えるようになったんです。「他人軸で考える」大切さは、共に働いてきた会社の仲間、上司、そして出会ってきた何千人ものお客さまたちが教えてくれました。
仕事を通して学んだ知識と経験を、今の会社を通して社会に還元されているわけですね。
GouRoomのような面白くて便利なサービスを生みだして、クライアントをもっと喜ばせたいし、その先にいるエンドユーザーに喜んでもらいたい。もっと言うと社会全体が抱える課題を解決できる企業でありたいです。HiNeLiは新しい価値を創造できる人が、どんどん排出される会社であってほしいですね。夢や目標をまだ持っていない人は、この会社に入って見つけてもらいたいと思っていますし、持っているのであれば、この会社で叶えてくれると嬉しい。HiNeLiという会社を通じて、1人でも多くのスタッフが自己実現してくれること、クライアントの事業がより発展することを願いつつ、HiNeLiは「人」と「HiNeLi」でヒトヒネリします。
取材日:2021年8月6日 ライター:土谷 真咲
株式会社HiNeLi(ヒネリ)
- 代表者名:中西訓生
- 設立年月:2021年2月
- 事業内容:Web開発事業(GouRoomの企画・開発・運用・管理/システム開発・運用・管理/Webサイト制作・運用・管理)、飲食店コンサルティング事業、宿泊プランニング事業
- 所在地:〒550₋0003大阪府大阪市西区京町堀1丁目7-21U2B BLDG 6階
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