アメ車の魅力を伝える SEEKが挑む ヴィンテージスクールバス有効活用プロジェクト
ヴィンテージモデルを中心に、いわゆる“アメ車”(※)を輸入販売し、コアなファン獲得に成功している「株式会社SEEK」。代表の佐々木保之(ささき やすゆき)さんは、ソーシャルデザイナーとして活躍する清水夏樹(しみず なつき)さんや地元大学生とともにアメリカンスクールバスを活用した新たなプロジェクト「AMETOWN」に挑んでいます。
取材日の2021年8月21日は「ライブペインティングイベント」の開催日。プロジェクトの概要やクリエイターとコラボレーションする醍醐味、今後の展望などを、清水さんにも同席していただき伺いました。
※アメリカのメーカー・ブランドが販売する車
アメ車を見た衝撃が忘れられず、輸入販売の道へ。
佐々木社長がアメ車に出会ったのはいつ頃でしょうか?
17歳です。ガソリンスタンドでアルバイト中に、シボレーのトラックが特有のエンジン音を効かせて給油に来て。サブウーファーで洋楽の重低音をズンズン響かせ、車体にはファイヤーパターン、グリルには十字架のようなエンブレムが光る見たことのないクルマに「なんだこれは!?」と衝撃を受けましたね。その出会いからアメ車に興味が湧き、いつか自分も乗ってみたいと思うようになりました。
そしてアメ車販売をしているディーラーを見つけ、「ここで仕事をさせてください!」と頼み込んでアルバイトを始めたのです。
そこから起業までの道のりを教えてください。
洗車から始め、徐々に仕事を任されるようになって、20歳になるとアメリカでの仕入れに同行させてもらいました。初めてパスポートを取得し、ロスアンゼルスへ。映画でしか見たことのないハイウェイや現地の風景、そして多彩なアメ車を見て興奮したことは今もはっきり覚えています。その後、お金を貯めようと運送業界に転職したのですが、やっぱりアメ車に携わる仕事がいいとディーラーに戻りました。輸入販売のノウハウを学んで24歳で独立し、数年して株式会社SEEKを立ち上げて11年になります。
アメリカンスクールバスの輸入販売を始めたいきさつは?
4年ほど前に訪れたオレゴン州・ポートランドでの体験がきっかけです。その時は普段の仕入れとは違い、美容師の方と訪問しました。視察するポイントや視点も普段とは違い、徒歩で散策もしていたところ、住宅街の裏路地にアメリカンスクールバスが駐車されているのを偶然見つけ、その圧倒的な存在感に興味を持ったのです。帰国してすぐにバスの輸入を始めたわけではありませんが、自然な流れでバスを扱うことになり、その活用を模索するなかで地元の学生さんや清水さんとのつながりができました。
「AMETOWN」プロジェクトに挑む
清水さんと佐々木社長が出会った直接のきっかけは何だったのでしょうか?
学生のインターンシップがきっかけでした。私は広告業界で長い間キャリアを重ねてきたのですが、ソーシャルデザイナー(※)を志して2019年に独立しました。
お付き合いがあった学生インターンシップの仲介会社を通じて、学生と佐々木社長をつなぐコーディネーターとして関わることになったんです。最初にインターンシップ学生とアメリカンスクールバスを見せてもらいました。佐々木社長は当時、広告代理店から「ラッピングバスとしての広告的な活用」を提案されていたのですが、私も学生も「そんなのは面白くない!」と感じ、最適な活用方法をみんなで考えることにしました。それが現在の「AMETOWN」につながっています。
※「ソーシャルデザイン」は社会を構成するあらゆるものをデザインする意。対象はモノだけではなく社会インフラの整備から社会制度まで多岐にわたり、これらをデザインする人をソーシャルデザイナーと呼ぶ
「AMETOWN」について教えてください。
京都で話題になっていた「アメリカンフードフェスティバル」を名古屋で開催することに決め、そのイベント名を「AMETOWN」としました。
「アメリカンフードフェスティバル」は、国産車を改造したキッチンカーではなく、アメ車を改造した本格的なキッチンカーが一堂に会するイベントで、「これはアメリカンスクールバスを活用できるチャンス」と考えたんです。
最初に予定していたイベントは新型コロナの影響でうまくいきませんでしたが、無人販売に形を変えてプロジェクトを継続しています。
今日はこれから始めるパン無人販売のプレイベントとして、地元の美大生にバスのライブペインティングをしてもらうんです。
バスの隣にはコラボレーションいただいたハンバーガーショップ「パームスプリングス安城」もあるので、アメリカンな雰囲気を存分に味わっていただけると思いますよ。
バスには間仕切りした隠れ家のような商談スペースもあり、今後は空間のレンタルも行う予定。この1台はショウルームとして位置付け、アメリカンスクールバスの活用方法を多くの方にイメージいただくことを目標にしています。
「クリエイターが身近にいる」という環境はいかがですか?
とにかく面白いですね。これまではクリエイターの作品に触れる機会はありましたが、直接交わることはありませんでした。清水さんは刺激的なアイデアをくれる存在で、相談もよくしますし、私が楽しいことを仕掛ける側になれたことを実感しています。お客さまから「また面白そうなことやってるね!」と言っていただくことが増えましたし、喜んでいただくことが次のビジネス展開にもつながるでしょう。
私としても、以前に行ってきた広告デザインの仕事とは違ってきていると感じています。以前は「目に見えるもの」のデザインでしたが、今は「目に見えない価値」のデザインにチャレンジしています。今日のライブペインティングも、絵を見てもらうだけが目的ではなく、「見てくれて次に何が起こるのか?」に興味があります。「AMETOWN」のプロジェクトも、アメリカンスクールバスを通じて社会が変化したり、見た人の心がザワザワして新しいイメージが湧いてくることを狙っています。ソーシャルデザイナーとして50年後を作る仕事をしていきたいですね。
「信頼」で仕事がつながる関係性を築きたい
「AMETOWN」のこれからについて教えてください。
無人販売や商談スペースを見て「アメリカンスクールバスの使い方」をイメージしてもらい、さまざまなシーンでご活用いただきたいですね。ヴィンテージカーなので移動を主体とした使い方は難しいかと思いますが、圧倒的な存在感や空間としての価値に気づいてもらえると嬉しいです。また、プロジェクトの可能性を狭めることなく、多くの企業さんと積極的にコラボレーションして、さまざまなアミューズメントやエンターテインメントを「AMETOWN」で展開していきたいです。アメリカの大型重機を使って穴掘り体験を楽しめるストレス解消エンターテインメントなど、アイデアは尽きません(笑)
アメリカンスクールバスを複数台用意して、どろんこレースなんかも面白そうですね(笑)
佐々木社長にお聞きします。株式会社SEEKとしての展望について教えてください。
アメ車が大好きなので、輸入販売はこれからも継続して行っていきます。アメリカンスクールバスも、今までの顧客とは違う新たなファンの獲得につながっています。バスの設置依頼が全国に広がりつつあるので、さらに伸ばしていきたいです。
「事業をこうしていきたい!」というビジョンはもちろんありますが、仕事のスタンスとして固くなりすぎず、仲間たちとの信頼感で築く関係性を軸にしていきたいと常に思っています。
スーツを着て商談をするのでなく、アメリカンスクールバスの商談スペースでリラックスして雑談をするなかで、重要なことが決まっていく環境を整えていきたいですね。
取材日:2021年8月21日
【取材当日のイベントに参加したインターンシップ学生のコメント】
榊原 海斗さん
広報担当:日本福祉大学 3年生
大学受験がうまくいかず、ここ数年はチャレンジすることをためらっていました。それを変えるきっかけになればと、インターンシップに応募したのです。どこに置いても目立つアメリカンスクールバスにも魅力を感じ、広報だけでなく経営戦略や企画にも挑戦することで、教科書の学びにはない深い経験をさせてもらっています。この経験を活かして、将来は会社経営をしながらずっと温めている夢(内容はナイショですが)を叶えたいと思っています。
野田 春香さん
ライブペインティング:名古屋芸術大学 2年生
ソーシャルアートに興味があり、人と関わるのも好きなので参加しました。メンバーで相談しながらアートを描いていく過程を楽しめましたね。ライブペインティングを通じて幅広い世代の方とコミュニケーションがとれたのも良かったですし、ペインティングの様子をSNSで発信すると多くの反響が得られました。
小林ひかりさん
ライブペインティング:名古屋芸術大学 2年生
野田さんに誘われて参加しました。新型コロナの影響で大学の授業やグループワークがオンライン中心だったので、リアルなコミュニケーションをとりながら作品づくりができる貴重な経験でした。ふだんの創作活動は一人が中心なので、グループでの制作にもっとチャレンジしてみたいと感じています。
株式会社SEEK
- 代表者名:佐々木 保之
- 設立年月:2009年8月
- 資本金:500万円
- 事業内容:アメ車販売、レッカー事業、通販事業、「AMETOWN」事業
- 所在地:〒444-0071 愛知県岡崎市稲熊町後田4-3
- URL:https://carshop.aichi.jp
- 電話番号:0120-026-444