WEB・モバイル2021.11.24

「元に戻るか、先に進むか」コロナ禍を全速力で走り続けるイベント会社

広島
株式会社BRAVE UP 代表取締役
Hirokazu Shimosada
下定 弘和

広島でイベント制作を行なっている株式会社BRAVE UP(ブレイブアップ)。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で各種イベントが軒並み中止となる中、SDGsに関連する自主企画や、コミュニケーション体験に特化した新感覚EC「バーチャルモール」を立ち上げるなど、止まることなく走り続けてきました。

日本は今、「“元に戻るか、先に進むか”のターニングポイントにある」と言う代表の下定弘和(しもさだ ひろかず)氏に、新しい取り組みや今後の展望をお聞きしました。

 

「大きな相手にも勇気を持って立ち向かう」ために

会社設立までの経緯をお聞かせください。

大学卒業後、音楽活動をしながらイベント制作会社に勤務していました。4年間勤めたのち、個人のイベンターとして独立。当初は、わずかな機材と前職で培ったノウハウだけを手に、単身で飛び込み営業をする日々でした。実績が増えるにつれて大きなイベントの依頼をいただけるようになり、同時に、大手の広告代理店と“渡り合う”機会も増えたんです。企業規模が大きいクライアントともスムーズに仕事をするために、2014年に法人化。大きな相手に立ち向かう意気込みを表現し、「株式会社BRAVE UP」と名付けました。

現在の事業内容を教えてください。

主にイベントの企画・制作・運営を行なっています。最も多いのは大型商業施設からの依頼です。音楽ライブや抽選会のほか、任意の客層にアプローチするためのイベントを、ゼロから企画してご提案もします。また、イベント事業と並行して、地域のものづくりを発信する雑貨店「SAKKA ZAKKA」や、多目的カフェ「SNACK Candy HIROSHIMA」の運営などもしています。

イベント制作ならではの難しさはありますか?

イベントもプロモーション活動の一つなので、クライアントの課題解決に向けて企画・提案するという点では、他の広告業と同じです。イベントにおいてはさらに、膨大なマルチタスクを漏れなく完遂することと、クオリティの追求が不可欠で。野外での各種設営や衛生・安全面の管理、煩雑な事務作業など、イベントを実施するためには、クリアすべき専門的なタスクが無数にあります。また、ただ「開催すること」をゴールとするのではなく、参加者の印象に残るイベント、現場の雰囲気が大きく盛り上がるイベントにまで高めるためには、豊富な経験やノウハウが必要になります。

 

イベントに「アップサイクルなデザイン」を

新型コロナウイルス感染症拡大の前後で、変化はありましたか?

イベントが軒並み中止になり、一時は仕事が全くない状態でした。以前は事業の大部分が受託業務でしたが、今後は依頼を待つだけでなく、自社で仕事を“創り出していく”必要があると痛感。広島県内で最大級のフリーマーケット「THE蚤の市」を企画し、2021年の春から5回開催しました。

なぜ今、「フリーマーケット」だったのでしょうか?

端的に言えば、「駐車場で開催できて、SDGsを発信できる、あらゆる人が参加できるイベント」だったからです。私は40歳になった頃、今後の生き方についてあらためて考え、社会貢献や環境保護を強く意識するようになりました。

仕事のつながりで大型商業施設の駐車場を借りられたので、「社会的な意義があり、野外で開催できること」を起点にプランニングを開始。 マルシェや音楽イベントなど、さまざまな案を考えましたが、最終的に、年齢や好みを問わずあらゆる人が参加できること、そして他の誰でもない「大型商業施設」が(中古品を巡らせる)蚤の市を通してSDGsを発信することの意義を踏まえて、この形になったんです。

「THE蚤の市」では、「フリーマーケット」というイベント内容に安住することなく、イベントに不可欠な横断幕やのぼり旗をアップサイクル可能なデザインにするなど、細部までこだわりました。

「アップサイクルなデザイン」とは?

使用後に別の製品に作り変えることをあらかじめ想定したデザインです。不用品に手を加えて新たな付加価値を持たせることを「アップサイクル」といいます。リサイクルとの違いは、元の素材をそのまま活かすこと。再生のためにかかる環境負荷が小さいのが特徴です。しかしながら、元の素材のままで別の用途を持つ製品に作り変えることは簡単ではありません。そこで思いついたのが「アップサイクルなデザイン」です。横断幕には目やうろこをあしらい、山折りにするとこいのぼりとして飾れるように仕上げました。のぼり旗にはあらかじめ切り取り線をプリントし、線に沿って生地を切り出すとバッグを作れるように工夫しました。

 

元に戻るのか、先へ進むのか

Webサイト:https://lit.link/halo

今年(2021年)6月に立ち上げた「バーチャルモール」について教えてください。

「バーチャルオフィス」という単語を耳にしたことはありますか?仮想現実上にデスクや会議室、談話室などがあり、そこで自分のアバターを操作することで業務上のコミュニケーションを図るためのツールです。今回立ち上げたバーチャルモール「VirtualMall HALO!」は、このバーチャルオフィスのシステムを活用したショッピングモールです。

仮想現実上に作られたショッピングモールでアバターを動かし、気になるショップに入店して商品を購入したり、同じタイミングでモールにログインしている店員やゲストと気軽に立ち話をしたりすることができます。

なぜバーチャルモールを作ろうと思ったのですか?

進化するチャンスだと思ったからです。日本は以前からDXで世界に後れをとっていました。それが感染対策をきっかけに、たくさんの人がDXに興味を持つようになっています。今が、これまでにない社会状況で、それを経験した我々が「元に戻ることを目指すのか、進化を目指すのか」の境目なんです。

この先、社会がすっかり元の生活スタイルに戻って、バーチャルモールの需要がすぐに小さくなる可能性もあります。それでも、新しくできたこの「もう一本の違う道」は、決して無駄にならないと信じています。

貴社の幅広い事業の根底にあるテーマはなんですか?

健康的であることと、環境問題や社会的責任において継続的であることです。私は起業前に心身ともに疲弊していた時期があり、健康の大切さが身に染みてわかりました。

また、年を重ねるにつれて、自分のことだけでなく、地球環境の「健康」や「継続性」についても深く考えるようになりました。

今後の展望をお聞かせください。

現在の事業を続けながら新しい事業にも取り組みます。具体的には、近年広島でも増えつつある廃校の活用や、物販・音楽ライブなどに使える多目的トラックの製作・運用をしていくつもりです。

最後にクリエイターの方、これからクリエイターを目指す皆さんにメッセージをお願いします。

これからは、ただ好きなものを形にするだけでなく、環境配慮など、それ以上の価値を生み出せる表現者が求められる時代です。いつか皆さんとお会いできるのを楽しみにしています。

取材日:2021年10月7日 ライター:甲斐 寛子

株式会社BRAVE UP

  • 代表者名:下定 弘和
  • 設立年月:2014年3月
  • 資本金:300万円
  • 事業内容:イベント企画・制作・運営、物販事業(SAKKA ZAKKA)、飲食事業(SNACK Candy HIROSHIMA)、音楽事業
  • 所在地:〒733-0001 広島県広島市西区大芝2丁目9-2
  • URL:https://lit.link/shimosada
  • お問い合わせ先:082-548-4901

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