名古屋から世界へ! サブリメイションが挑んだ“ありそうでなかった”オリジナルアニメーション企画とは?
中京テレビが企画した、名古屋発のアニメーションを制作するドキュメンタリー「ナゴヤアニメプロジェクト!」をご存じでしょうか? スタッフ・声優・制作・作中に登場する舞台などを“オールナゴヤ”を目指し、その過程を週1回配信する前代未聞のプロジェクトです。
「名古屋発のアニメを作りたい」という情熱が結実し、遂にオリジナルアニメーション『シキザクラ』が完成。2021年10月から放送がスタートしました。『シキザクラ』を制作したのは株式会社サブリメイション。今回は総監督を務める須貝真也(すがい しんや)代表取締役と、制作現場の責任者兼プロデューサーの横田一平(よこた いっぺい)氏に話を伺いました。
サブリメイションと名古屋の幸福な関係
創業からの経緯をお話しいただけますか?
弊社は2011年に、Production I.GのCGチームが独立した形で創業しました。私が代表取締役に就任したのは2021年4月からです。創業当初は6人くらいでしたが、今は120人くらいの規模になりました。平均年齢は27.5歳で、業界内でこれほど若手が多い会社は珍しいのではないでしょうか。成長できたのは、やはり名古屋スタジオができたのが大きかったと思います。
名古屋スタジオの開設は、遊技機関連の仕事でお付き合いがあった株式会社K&Kデザインさんに誘われたのがきっかけです。
名古屋にはCGの専門学校が数多くありますが、卒業生は東京か大阪に行くしか道がなかったそうです。優秀な人材を流出させないためには、スタジオを用意して活躍できる場を作ることが必要でした。当初は名古屋に進出するスタジオが少なかったこともあり、よくメディアに取り上げられました。
スタジオ開設で注目が集め、さらに名古屋との関係が深くなった分岐点はありましたか?
短編CGアニメ『WALKING MEAT』を完成させたというのがターニングポイントになったと思います。出資してくださった(株式会社)「玉越」さんが「次も一緒にやりましょう!」と言ってくださり、『シキザクラ』でも快くスポンサーになってくださいました。それから「中京テレビ」さんや「中日本興業」さん、そして「K&Kデザイン」さんと弊社の5社で「シキザクラ 製作委員会」を組みました。
我々より、名古屋の関係者の皆さまがものすごい熱量で、ウワーッ!と、積極的に動いてくださいました。その結果、いろいろなご縁ができて、今回の作品につながりました。
お二人にとって、名古屋をはじめとする東海地方の魅力はなんでしょうか?
やっぱり「人」が大きいですね。特別授業やセミナーなどで全国の学校を回る機会が多いのですが、その際に名古屋の学生はレベルが高いと感じていました。あと、誰かに頼まずに「俺やるよ!」って自発的に行動してくださる人が多い。
私も人が魅力的だと思います。スタジオができた当初、名古屋で有名なタレントのYO!YO!YOSUKEさんが「一緒にやりましょう!」という超長文メールを弊社に送ってくださり、大変感動しました。
とにかく名古屋の皆さんは「そこまでやらなくてもいいですよ〜!」って恐縮するくらい動いてくださいます。そのおかげで「シキザクラ」を“オールナゴヤ”と言っても過言ではない形で完成させることができ、感謝しています。
そして街並み。例えば名古屋駅周辺を見ると、近代的で「あれ? 東京とそんなに変わらない?」と思いますが、ちょっと歩くと歴史を感じさせる古い建物が混在していて、カオスだけど味があるなと。行くたびに好きになっていますね。
自社初のオリジナルTVアニメーションから紐解く、サブリメイションの実力
「シキザクラ」が中京テレビで放送されたことを皮切りに、動画配信サービスでの配信や日本テレビ系列局での地上波放送も始まりました。手応えはいかがですか?
テレビを見ながら、TwitterなどのSNSでコメントを追いかけていました。「面白い!」とおっしゃってくださる人が予想以上に多くてビックリしました。
私もSNSを見たのですがすごく評判がいいですね。
否定的な意見も多少ありましたが、ほとんどが作品ではなく3DCGアニメそのものに対しての拒絶反応のようでした。冒頭の数秒で「あ、CG使っているなら自分無理だわ」って感じで。
まだ3DCGアニメに抵抗があったり、ある種のアレルギー反応のようなものを起こしてしまうような方々がいらっしゃるのは仕方がないです。
ただ、そのような人たちにも受け入れてもらえるような作品づくりに取り組んでいきたいと思っていて。これはサブリメイションだけではなく、CGアニメ業界全体で協力して、解決していかなくてはいけない課題と捉えています。
制作でこだわっていることはありますか?
サブリメイション全体で言うと、作品を見てくれた人にどういった感動を与えるかを意識しています。また、スタッフが楽しく働ける現場づくりにも力を入れています。必要があれば増員もしますし、スタッフ全員と向き合うことが良い作品づくりにつながると思っています。
『シキザクラ』でこだわっているところはセリフです。愛知県出身でストーリーライダーズの永川成基(ながかわ なるき)さんにシリーズ構成をお願いしたので、方言をちょっとだけ入れました。ただ、会話の中で方言がずっと続くと視聴者が気になってしまうので、勢いのあるシーンの中にポイントで入っています。
『シキザクラ』の最大の推しポイントはどこでしょうか?
作品の成長ですね。スタッフと声優それぞれの伸びしろがすごいんです。まずCGモーションは回を重ねるごとに動きがどんどん良くなっています。
また声優は東海地区の方にこだわりました。彼らのほとんどが長編アニメ初挑戦でしたが、1話で初々しかった演技が、最終回では圧倒されるレベルになっています。その成長度合いも含めて楽しんでいただけたら幸いです。
地方から出てきて起業、目指すは名古屋の発展と世界進出!
クリエイターでもあるお二人にお聞きします。元々アニメーション制作がやりたかったのでしょうか?
私は山形県出身で、建築・プロダクト系の大学に進学しましたが、大学4年生の時、映像業界・CG関係を志して専門学校にも通い始めました。卒業後はゲーム系の会社でモーションデザインを経験し、その後アニメーション制作会社、Production I.Gで働くことになりました。
私は地元の石川県で親から大学進学を勧められましたが、映像関係の仕事にすぐつきたかったんです。それでアルバイトをしながらお金を貯め、19歳で上京して専門学校に通いました。在学中、シンエイ動画株式会社の中途採用試験に合格し、アニメクリエイターとしてのキャリアをスタートしました。サブリメイションに転職してきてから最初の仕事が、『シキザクラ』のプロデューサーでした。
須貝さんは社長になって間もないとお聞きしました。クリエイターと経営者の二足のわらじを履いて、どのような変化がありましたか?
大きく変わったところは特にないですね。以前と変わらずものづくりをしていますね。私自身、経営者という感覚があまりなくて、会社の運営は周りの人に助けてもらっています。
とはいえ会社の皆と向き合うために、社員全員と1対1の面談を実施しています。1人15分くらいの持ち時間で思いを自由に話してもらう場です。先日東京拠点の約80人との面談を終え、名古屋拠点の約40人とはこれから行います。なかなか時間を作るのが難しいですが、有意義なことなので続けていくつもりです。
サブリメイションが次に目指すところはどこでしょう? お二人それぞれお聞かせください。
『シキザクラ』を世に出せたことは良かったなと思う一方で、この座組を1作品で終わらせるのは正直もったいないです。自分としては、スタッフが多くの時間をかけて得た経験やスキルを活かし続けるためにも、プロデューサーとしてこの企画が長く続くように、努力していきたいです。また元々この企画は、名古屋にアニメ産業を定着させるという趣旨のもとで始まりました。東京で企画したアニメに負けないくらい、さらに面白い企画、作品を今後も作っていきたいと思っています。
サブリメイションにとって、今回のTVシリーズ初元請け作品である『シキザクラ』の制作経験はかなり大きかったです。まずはこの制作ラインを強化し、安定させていくつもりです。
スタッフが成長してきたら、今度は企画作りに力を入れて、日本だけではなく世界に受け入れられるようなコンテンツを、弊社から発信していきたいと思います。もちろん、これを機に名古屋にある企業と手を組み、地域全体を盛り上げていきたいですね。もし、弊社に興味がある方がいましたら「ここでは好きなことができるよ、好きが見つかる会社だよ」と伝えたいです。
取材日:2021年10月14日 ライター:岩崎
株式会社サブリメイション
- 代表者名:須貝 真也
- 設立年月:2011年7月
- 事業内容:アニメーションの企画、制作及び販売
- 所在地:東京 〒186-0002 東京都国立市東1-4-15 国立KTビル4F
名古屋(塩釜口) 〒468-0058 名古屋市天白区植田西2丁目1506KDビル2F
名古屋(金山) 〒466-0059 名古屋市昭和区福江二丁目9番33号 nabi/白金312号室 - URL:http://www.sublimation.co.jp/
- お問い合わせ先:http://www.sublimation.co.jp/contact/
©︎シキザクラ製作委員会
©Walking Meat製作委員会
※記事内記載の社名、サービス名、作品名などは、各社の商標または登録商標です
2021年10月9日より中京テレビ・日本テレビ・BS日テレほかにて放送中
『シキザクラ』
©︎「シキザクラ」製作委員会
過去と未来、現世と異界、想いと願いが交差する、活劇英雄譚、ここに開幕!
キャスト
三輪翔:野田雄大 明神逢花:茉白実歩 永津吉平:中元大介 服部涼:水上翔斗 成瀬楓:坂崎絵理 山田春子:落合菜月 イバラ:米山伸伍 明神紅緒:矢方美紀 雉嶋右近:新井ユウト 犬塚一左:イヲリ 遠藤:虫眼鏡 コアラ幻覚:としみつ ガチ勢のおっさん:佐藤二朗
スタッフ
総監督:須貝真也 監督:黒﨑豪 シリーズ構成:永川成基(ストーリーライダーズ) 原案デザイン:井上涼雅(K&Kデザイン) キャラクターデザイン:中武学(Yostar Pictures) CGディレクター:佐藤真、佐藤悠 美術監督:小島俊彦(プランタゴゲームス) 色彩設計:野地弘納 撮影監督:山﨑忠明(スタジオ雲雀) 編集:神野学(ソニーPCL) 音響監督・音楽:齋藤匠 音響効果・録音調整:東海サウンド キャスティング:TYK Promotion 制作協力:K&Kデザイン 原作・アニメーション制作:サブリメイション