WEB・モバイル2021.12.01

真面目にふざけながら“オモシロイ”をつくる会社「コラボプラン」

山形
株式会社COLABPLAN 代表取締役
Yoshitomo Yokoyama
横山 佳友

山形市に本社を置く株式会社COLABPLAN(コラボプラン)の代表取締役・横山佳友(よこやま よしとも)さんの名刺は3つ折り。Webサイトなどを企画・制作するCOLABPLANをメインに、クリエイティブスペース「KE&KU space」の運営、「やまがたIT協同組合」代表理事、輸入雑貨販売など5つもの肩書きが記載されています。

自由な発想で前向きに仕事に取り組む横山さんに、会社を設立するまでの歩みや、事業の根底にある“真面目にふざける”“オモシロイことをしたい”という思いを伺いました。

 

独学で覚えたWebサイトの制作を専門的にやるため起業を志す

大学でグラフィックデザインを学んだそうですね。卒業後はどのような仕事をしていたのでしょうか。

子どもの頃からイラストを描くのが好きで、小学校のときは漫画家になりたいと思ったこともありました。高校卒業後はクリスチャン・ラッセンのようなイラストを描きたいと思い、イラストに近いデザインを学ぼうと考え、東北芸術工科大学の情報デザイン工学部でグラフィックを専攻しました。Web制作は授業で数時間やった程度です。大学時代は、地元の大手印刷会社で印刷用データを作成するアルバイトをしていました。

大学卒業後、すぐに就職はしませんでした。バイクで日本一周したいという夢もあり、モノやお金に執着もなく、何にも縛られたくなかったからです。

バイトしながら生活をしていましたが、学生時代からお世話になっている印刷会社から声をかけてもらい、23歳で中途入社しました。デザインや印刷用データの制作、DTP、動画制作、ほかの人ができない作業などなんでもやらされるチームに所属していました。

 

印刷会社を辞めて、起業しようと思ったのはなぜですか?

自分がいたチームは、皆がやれないことを何でもやる部署でした。入社してすぐに、ホームページの制作をやるように言われました。社内にできる人がいないし、教えてくれる人もいないので、ネットなどを調べながら独学で覚えました。

会社でやった仕事で、一番楽しかったのがWebサイトの制作です。

僕はWebサイト構築をメイン担当していて、お客様と直接やり取りすることがなくサポートする側でした。Webサイトのデザインや企画提案など、もっと専門的にWebサイトに関わりたいと会社に申し出てみましたが、なかなかチャンスはありませんでしたね。

それなら自分で仕事を始めようと、約4年で勤めた会社を辞めました。

 

起業の準備はどのように始めたのでしょうか。

職業訓練校に通うと失業手当がすぐ受け取れるようになるとハローワークで聞いたので、とりあえず基礎を振返る意味も兼ねて職業訓練を受講してみました。3ヶ月間の授業の後に、1カ月間の実習期間がありました。

実習先はシステムソフトウエア会社だったのですが、前職でWebサイト制作をしていたこともあり、実習期間ではありましたが、普通にWebサイト制作業務を与えていただき普通に仕事をしていた感じです。実習終了後もサイト制作業務が残っていたので、引き続きそのまま仕事をさせてもらえました。

起業してからもその実習先の会社からはありがたいことに、仕事の依頼をいただけたり、紹介してもらったりもしました。Web制作やデザイン制作はパソコン1台あればOKな仕事ですから、起業のために特別な準備はしませんでしたね。

 

出会いと運に恵まれ、営業しなくても次々と仕事がもらえた

 

 

仕事はどのようなルートで受注していますか?

幸いなことに、独立してから営業も挨拶まわりもそれほどしたことがありません。以前働いていた印刷会社や実習先、実習先に紹介いただいた会社などから仕事をいただけました。

また、異業種交流会や地元のクリエイターの集まり、実習先の会社の紹介で入会した「やまがたIT協同組合」で知り合った方々から、仕事を依頼されることも多々ありました。

異業種交流会などの集まりには主に、自分の「人見知りを直す」「人と話すトレーニング」のために参加していました。そこで「Web制作をやっています」というと、仕事のご相談やご依頼をいただけたり、そこから少しずつ仕事が増えていったという感じです。

また、地元に限らず県内外で活躍していた大学時代の友人達から仕事を依頼されたり、紹介してもらうこともありました。

 

出会った人に仕事を任される理由は何だと思いますか。

僕の場合は、運が良かったんだと思います。リーダーには、優秀で自分から引っ張っていくタイプと、周りから助けてもらうタイプと2パターンあると僕は思っているのですが、自分はあきらかに後者。僕はスキルが特別高いというわけではありませんが、運だけはいいという自信はあります。「仕事がそろそろ終わる」と思っていると依頼が舞い込んできたり、手が足りないときには手伝ってくれる人が現れたり。もちろんクライアントにもとても恵まれます。運が良いと思うことで運を引き寄せていたのかも知れません。

実は、32歳のときに若年性脳梗塞を経験しました。仕事の打ち合わせで訪問した会社で急な異変を感じて休ませてもらったところ、脳梗塞を疑った打ち合わせ先の社長が救急車を呼んでくださいました。

発症した場所とタイミング、打ち合せ先の的確な判断と対応のおかげで一命をとりとめました。後遺症が残る確率が非常に高いのですが、僕は後遺症もほとんどなく、これも運のおかげだと思います。

 

現在の事業内容を教えてください。

ホームページ制作、CMS構築、ECサイトやWebサイトの企画・構築・運営などWeb関連事業、チラシやパンフレット、名刺などの紙媒体、CIやロゴマークなどのデザインなど、何でもご相談を受けています。メインはWeb関連、グラフィックデザインですが、エディトリアルデザイン、イラストやキャラクターの制作、撮影や動画編集、イベントの企画まで、お客さまからのご依頼があれば、とりあえず何でもやってみます。もしやったことがない依頼でも、面白そうならば喜んでチャレンジします。

 

小さく生んで大きく育てる。予算内で最大限の効果を提案

 

Web制作について、御社の強みを教えてください。

デザイン事務所や制作会社は自分たちのデザインを売る会社が多いと思いますが、僕はお客さまのご要望を親身に聞いて一緒に作り上げたいタイプです。

会社の規模やホームページをつくる目的、誰に見て欲しいのか、ターゲットやペルソナ設定をお聞きし、予算の中で出来得る最も効果的な方法を模索して提案します。

予算が少ないなら、SNSの情報発信でもいいし、スマホ専用のサイトや1ページ完結のランディングページでもいい。最初は小さくても、大きく育てられればいいので。

もちろん費用をかければ良いものができますが、お客さまに無駄な費用はかけて欲しくありません。お金が欲しいから仕事をするという感覚があまりないので、以前はおまけのつもりでSNSのページ制作を手伝ったりアドバイスをしてきました。そうしていたら、追加で代金をいただけることがありました。その流れが普通なのですが、僕からすればこんなことでもお金をいただけるんだとそのときは驚きましたね(笑)。

また、お客さまには良い悪いもはっきり伝えるようにしています。お客さまが言いたいことと、エンドユーザーが聞きたいことは違うことが多いので、お客さまがやりたいことも加味しながら、ユーザーが求めていることをアドバイスするようにしています。最終的にお客さまのためにならないものはつくる必要がないと思うので。

 

横山さんが思う仕事のやりがい、大事にしていることは?

やはり、お客さまに喜ばれることです。お米をメインにしたあるECサイトを制作した際に「数年はなかなか売れないとは思いますが、じっくり育てていきましょう」と伝えていたのですが、1年目から売り上げが伸びてとても喜んでいただきました。そういう瞬間は本当にやっていて良かったと感じます。サイトの管理もお客さま自身でできるようになり、今も継続してお仕事をさせていただいております。このような結果がうれしいですね。

ふざけることを真剣に、とことんやりたいんです。例えば食べ物のCMの企画で、禁断ともいえるオフィスラブを絡めた企画を提案したりもしました。ボツりましたが、今までと同じことをやって変化も前進もないのであれば、常識にとらわれない“ノリ”で提案してみることも大事だと思っています。

 

ちなみに社名でもあるcolabplanの意味は?

「Collaboration Laboratory Planning(協同・実験室・計画)」を組み合わせた造語です。

2006年に独立し、最初は個人事業としてスタートしました。「お客様と皆と一緒に協同・協力しながら、実験室的に、普通じゃない“オモシロイ”ことに挑戦したい」という思いを込めています。

2012年に法人化し、十数人のスタッフを抱えていましたが、2018年に個人で飲食店を始めた後、コロナ禍の影響などが相まったこともあり、一度一人に戻ることにしました。今はプロジェクトごとにカメラマンやデザイナーらとコラボして仕事を進めるカタチを構築中です。

今はディレクションから制作まで手をかけていますが、今後は実制作はそれぞれ好きで得意な人に任せられる環境にしたいと思っています。僕より腕のいいデザイナーにデザインをお願いして、僕より正確で速いコーダーにコーディングをお願いする。そうすれば、クオリティが高くかつ速く効率的にできるので、お客様も制作者もみんなwin-winだなと。

最近はリモートワークではなく、「ノモートワーク」を勝手に流行らせようと、軽く飲みながら仕事をしているのも公開したりしています。喫茶店で何杯もコーヒーを飲みながら打ち合わせするなら、軽くビールでも飲みながらの方が開放的になり自由な発想が出てくるかなと。もちろん、翌日冷静になってから見直す必要がありますが…

 

Web制作にこだわらずモノや場所、人をつくるのが好き

 

COLABPLANのほかに、飲食店のオーナーやクリエイティブスペースの運営などをしている理由を教えてください。

自分は生まれも育ちも山形県で、地元に会社があります。地元のJR奥羽本線「蔵王駅」の駅前商店街は、昔は賑わっていたのに、店がどんどん減って通りが暗くなってきたので、また人が集まる場所をつくり明るくしたいと思いました。

そこで、飲食店をやりたいという人が現れたので、会社とは別に「inovα」という名前で新たに個人事業を立ち上げ、飲食店の「KE&KU」をつくり、任せることにしました。

もともとは、飲食店と一緒に老人介護施設と子どもの学童保育が融合したような、お年寄りと子どもがお互いに教え合ったり、支え合ったりできる空間をつくりたいと思いましたが、資格や規制があって難しかったんです。

そこで、飲食店の隣に自由に使えるクリエイティブスペース「KU space」(レンタルスペース)をつくりました。コワーキングや打ち合わせ、学生が学校帰りに勉強したりおしゃべりする場、貸切のイベント会場などに利用していただいています。

「KU space」では、全国的にも取り扱いが少ないフランス産の乗用玩具、ペダルカーやキックカー(レーシングカー)などの輸入雑貨や、オリジナルデザインのプリントTシャツの展示販売もしています。ほかに地元の地区の名前でデザインしたTシャツの制作もしたりしています。Tシャツのデザインは仕事に集中できないときなどに気分転換がてらつくったりしています。

 

横山さんにとって「オモシロイこと」とは?

モノをつくるのは好きですが、最近は、人が集まれる場所をつくることがオモシロイです。やりたいと思うことがあったら、人を集めてディレクションをして、やりたい人に渡せる環境があったらいいなと思います。

 

やらないより何でもやってみたい。挑戦したことに失敗はない

現在の仕事で課題や難しいことはありますか。

今は基本一人で、業務はアウトソーシング化していますが、忙しい時期が重なることもあり、スケジュール管理が難しいです。

クリエイターが自由に集まってプロジェクトごとにやりたい人が手伝ってくれる、助け合える環境をつくるのが理想です。今はコラボできるメンバーがもっと欲しいですね。

一緒に働くとしたら職人肌でコツコツ制作に取り組む人。自分は楽観的な性格なので、真面目で堅実なタイプ、そしてお互いにはっきり意見を言い合える人が欲しいです。

 

会社の今後の展望を教えてください。

こんな会社にしたい、こうなりたいというこだわりはありませんが、時代に合わせて変化していきたいと思っています。一番は自分がやりたいこと、“オモシロ”そうなことができる会社にする、そしてメンバーがやりたいことができる会社にしたいです。

全国を回って、いろいろなところを見て、知らないことや経験していないことをやってみたいとも思いますね。僕は何でもやってみる派。やらないでうだうだ言うのは嫌いです。

できるかできないか、ではなく、やるかやらないか。やると決めたらまずはとりあえずやってみればいい。できないとしても、それは失敗ではないと思います。できないことがわかっただけ。新しい方法を模索し続けられればそれは成功だと思います。

 

これから社会に出てクリエイターを目指す方にメッセージをお願いします。

何でもやりたいことをやった方がいいですし、自分がやりたい仕事に就いた方が良いと思います。

やりたくないことをする場合は集中しなければいけない、努力しなければいけないと思いますが、やりたいことであれば集中ではなく夢中になれるし、そうなれば努力をしていると感じません。

自分がやりたいことがあるなら、まずはそれをつきつめることが一番いいと思います。

取材:2021年10月13日 ライター:佐藤 由紀子

株式会社株式会社COLABPLAN(コラボプラン)

  • 代表者名:横山佳友

  • 設立年月日:2012年5月1日

  • 事業内容:Web制作・グラフィックデザイン

  • 所在地:〒990-2313 山形県山形市松原378-14

  • URL:https://WWW.colabplan.co.jp
  • お問い合わせ先:090-1738-4802 / yoyo9140@colabplan.com

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