ヒットの秘訣は「脳」にある! 脳科学にもとづいた映像制作・ワールド
私たちの意識は、常に「脳」によってコントロールされています。血の流れや心臓の動きを自分で調節することは不可能ですよね。意識もまた同じで、ほとんどがコントロールできない無意識。表面に浮かんでくる感情は、ほんの一部でしかありません。
「何に興味をもち、何を好むのか?」その答えは、脳だけが知っているのです。行政機関や大学、国内大手メーカー、出版社、旅行会社……そうそうたるクライアントが実績に名を連ねる映像制作会社、株式会社ワールド。クライアントから高い支持を得ているワケは、「脳科学」を応用した独自の映像制作スタイルにあります。
専業主婦だった代表取締役の前村愛(まえむら めぐみ)さんが「脳科学にもとづいた映像制作」で会社を成長させてきた、その道のりを伺いました。
人は「無意識」に左右されている? 脳科学を知らずに映像制作はできない
御社の事業について教えてください。
私たちの会社が手がけているのは「脳科学にもとづいた映像制作」です。私たちの脳が、どんなことを感じ、どんなことを好むのか? 科学的な知見から検証し、そのプロセスを応用した映像制作を行っています。
映像は、視覚や聴覚など、人のさまざまな感覚に訴えかける媒体ですよね。ですから、これらを処理する「脳」の働きを理解することなしには、感情に訴えかける作品は作れません。映像制作には脳科学の知識が欠かせないんです。
それは面白い切り口ですね! 具体的にはどういうことでしょうか?
こんな面白い実験があります。アンケートで「この中から自分の好きなものを選んでください」と選んでもらった映画と、「実際に映像を見てもらって計った脳波が好意的な反応を示す」映画とでは、まったく違う結果になる、というものです。
これは何を意味しているのでしょうか? 実は、人間の趣味趣向は、無意識の領域にコントロールされている部分が大きい、という事実です。私たちの体では、心臓は勝手に動きますし、血は常に流れています。今日は鼓動をちょっとゆっくりめにしてみようとか、血の巡りを早めにしてみようとか、できないですよね(笑)。
人の体は、実はそのほとんどが無意識に動いています。どんなに意識的に動いているつもりでも、人は無意識にいろいろなことを感じて判断しています。
人を動かす映像を作るためには「脳が映像に対してどのような反応をするか」を知ることがポイントなんです。私たちは、脳科学の論文などから集めたノウハウを応用し、映像制作に反映しています。
人の興味を引くためのポイントを押さえた映像が作れるのですね。
脳科学的な知見のほかにも、「ユニバーサル&バリアフリーデザイン」「マーケティング」「社会心理学と統計学」というポイントも押さえた映像づくりを心がけています。年齢や病気などで見えない色や形、聞こえない音があるのをご存知でしょうか? 子どもと大人では、聞こえている音は違います。年齢や文化の違い、障がいの有無を問わず、誰でもが見られるデザインを推奨しています。また映像を作る上では、マーケティングの観点からの分析や、流行や社会現象も無視できません。ただデザインがかっこいい、映像がキレイ、というだけでは駄目なんです。これらの知識とノウハウこそが、私たちの映像制作であり、最大の強みです。
もともとは専業主婦、パートからのキャリアスタート
なぜ脳科学と映像制作を結びつけようとお考えになったのでしょうか?
もともと両親が製薬会社で働いていたので、医療分野の知識には関心がありました。私も大学ではマーケティングと心理学を学んでいて、脳科学や社会心理学には親しみがあったんです。ただ、大学を出て数年働いたのちすぐに結婚して子どもが生まれましたので、そこからは長いあいだ専業主婦をしていました。
そうだったのですね! そこから起業までのいきさつをお聞かせいただけますか?
子どもが生まれてからはずっと子育てにかかりきりで、子どもが中学校に入った時点でやっと「ちょっとパートでもしてみようか」と思うようになりました。30代半ばを過ぎた頃、うどん屋のパートとして働き始めることに。でも、これが思った以上に大変で!一番新米でしたし、毎日怒鳴られる、何をやっても怒られる。「もうこんなのイヤだ」と、泣きながら家に帰ったこともありました。2年ほどは我慢して頑張りました。そこではっきり分かったんです。自分は人に指示されて働くことには向いていないなって(笑)。
そこからはどのようなお仕事を?
カーテンの販売店に転職しました。これは1人でやる仕事だったので、楽しかったです。誰かに指示されて働くより、全部まかされたほうが頑張れるし、向いているな、と感じました。ただ、この仕事もパートだったので、お給料は月に5~6万円くらい。もっと稼げる仕事はないかと思っていたところ、大手メーカーの「月給25万円のリーダー職」という募集広告を目にしたんです。これはいい、とさっそく応募したところ、やる気を買われて採用になりました。
いきなりリーダー職とは、大抜擢ですね!
ところが、そこからが大変だったんです! 実は当時私は、パソコンの使い方をまったく知らなくて。「フォルダって何?」「マウスって何?」という状態。採用してくれた上司も、まさか私がパソコンを使えないとは思わなかったらしく、何で言わなかったのかと大問題になりました。取締役までが出てきて責任を取れと。これは大変だと思って、すぐに本を買ってきて、死ぬ気で勉強しました。夜な夜なパソコンの特訓の日々が続いたんです。
未経験からのスタート、ご苦労なさったのではないでしょうか?
確かに、勉強しなければならないことは多かったし、頑張らなきゃというプレッシャーは大きかったです。ですが、いくら大変でも何かを勉強したり、自分が誰かに教えたりすることには充実感がありました。やはり自分はそういう性格だったのでしょう。滑り出しは苦労しましたが、パソコンも無事使えるようになり、リーダーとしてやりがいを感じながら仕事をしていました。
会社を立ち上げたのはその後ですね。
リーダー職が向いていると確信してからは、起業を視野に入れるようになりました。会社を立ち上げようと決意したのは、45歳を迎えた時。子どもたちが大学に入り、子育ての心配がなくなったからです。
初めは、インターネットを使った通信販売事業からスタートしました。掃除道具や、建物のエクステリア(外装)を扱う仕事です。その頃は、1つ売れたら「やったあ!」という感じ。趣味のように見えたかもしれませんが、この経験を通して売り買いの流れが分かるようになりました。
映像制作を始めたのは、どのようなきっかけでしょうか。
当時はいろいろな知識を学ぶのにセミナーに参加していました。そこで出会った方が「仕事を手伝ってあげるよ」と言ってくれたんです。その方は絵や写真が得意だったので、販売に必要なデザインをお願いして、本格的な営業活動に取り組むようになりました。映像制作を手がけ始めたのは、会社を立ち上げて約2年経った頃。今から8年ほど前でしょうか。映像のニーズが急速に高まっていたので、デザイナーの方とタッグを組んで映像事業を立ち上げました。
そこから、脳科学を活用した映像制作事業の始まりですね。
大学で学んでいたこともあり、もともと人間の脳のつくりや行動パターンを理解することなしには事業はできないと思っていました。
起業する前から、マーケティングについてたくさん学び、「脳科学」というコンセプトをずっと活用していましたが、あまり前面には打ち出してこなかったんです。それでも少しずつ実績を積み上げていく中、少しずつ自分たちのスタイルに自信がもてるようになりました。
「脳科学にもとづいた映像制作」を打ち出すようになったのは2~3年ほど前から。今はもう前面に打ち出しても恥ずかしくない出来です。「他のどの会社にも私たちのような映像制作はできない」と、確信をもって言えるようになりましたね。
会社が成長し続けてきた秘訣は「小さな努力」の継続
現在は数多くのクライアント様の案件を手がけていらっしゃいますね。
おかげさまで会社を立ち上げてからの12年間、少しずつ、でも確実に成長し続けてきました。年に100万円の売上を、200万円、300万円、と増やしていったんです。私は、成功の秘訣は「小さな努力」だと思っています。今でこそ売り上げは安定しましたが、急に成長したのではありません。小さな成長の積み重ねの結果です。
「小さな努力」とは具体的にどういったことでしょう?
借金をしたり、大きな額を一気に投資したりするのは、私には怖くて到底できません。ですが、少額の投資を続けることはできます。 例え話をすると、ネットで広告を出すのに初期費用が10万円、月に1万円の広告費がかかるとしましょう。この最初の10万円が怖くてやめてしまう人がほとんどで、全体の9割ほど。 残りの1割の人がチャレンジして、結果が出なくてやめてしまうのが、その中でまた9割。捨て銭になるかもしれないけれど続けてみよう、1万円でダメなら2万円でやってみよう、と続けられる人はそのまた1割だけ。実はとても少ないんです。 会社で1万円しか利益が出なかった時に、自分の給料にするのではなく、次につなげるための広告費に回す。そういった決意が大切です。大事な1万円を投資する「小さな努力」こそが、成長し続けられるかどうかの分かれ目なのではないでしょうか。
今回のコロナ禍で受けた影響はありましたか?
動画制作を依頼されるクライアントさんの層が、がらりと変わったと感じていて。コロナ前は、飲食関係、観光や宿泊、旅行関係が多かったのですが、それがピタッと止まりました。 今は医療・衛生関係、そして車関係が増えています。勢いのある業界と完全に連動していて、映像制作会社こそ社会の縮図だなあ、と感じましたね。 売り上げはやはり減ってはいます。しかし、こういう時だからこそ、広告宣伝費、人件費への投資は惜しみません。確かに厳しい状況ですが、これまでも逆境の時には守りに入らず、投資を続けてきましたから。 「小さな努力」で売り上げは後から必ずついてきます。つらい時に投資し続けていなかったら、この会社は存在していなかったと思いますね。
現在の目標があれば、お聞かせください。
これまでのように、ずっと成長し続けていきたいですね。 自分と従業員の仕事量を減らして、でも利益はしっかり上げられるような働き方を叶える。それが私の目標です。時間に余裕ができれば、ゆっくり考え事ができますし、自分の趣味や勉強にも取り組めます。 そして何より、余裕をもってお客さまに接することができます。お客さまに対する余裕は、価値を生みます。しっかりと打合せができて、よく考えて提案ができる、だから結果的にいいものができ上がる。喜んでもらえたら、きっと次にもつながりますよね。 1日1日、働き方に対する「小さな努力」をすること。それを毎日心がけていれば、これからも必ず成長できると信じています。
取材日:2021年10月22日 ライター:土谷 真咲
株式会社ワールド
- 代表者名:前村 愛
- 設立年月:2010年9月
- 事業内容:インターネット広告事業 映像制作・動画制作・メディア事業 360度撮影・ドローン撮影・動画撮影・写真撮影 ホームページ制作 グラフィックデザイン・プロダクトデザイン CG・3DCG・アニメーション制作
- 所在地:〒534-0021 大阪市都島区都島本通1-7-19 都島楠風ビル705号
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