クラウドシステムで沖縄企業の生産性向上をサポートするテラ・ウェブクリエイト
顧客管理・営業支援のためのクラウドシステム「Salesforce」の沖縄唯一のセールスパートナーである株式会社テラ・ウェブクリエイト。Salesforceのほかにも、さまざまなクラウドサービスの導入、活用支援事業を行っています。
社員数は10名以下と少数ながら、全員が「Salesforce認定資格」(※)保持者という気鋭の会社であり、沖縄で先駆けて「ティール組織」という次世代型組織モデルに取り組んでいます。代表の寺田克彦(てらだ かつひこ)さんに、苦労の末に出会ったクラウドサービスの魅力からティール組織導入の経緯、これからの展望まで伺いました。
※Salesforce認定資格は、大きく分けて「管理者/CRMコンサルタント」、「開発者/アーキテクト」、「マーケティング」の3つ。Salesforceの知識や構築・運用スキルを証明するグローバル資格
Salesforceの沖縄初セールスパートナーに
寺田さんのこれまでのキャリアを教えてください。
沖縄出身で、琉球大学工学部を卒業後、自動車部品メーカーに就職しコンピューター解析業務に携わりました。そこでITの可能性に魅了され、ITベンチャー企業に転職しました。その会社が沖縄に研究開発センターを作ることになり、沖縄に戻ります。
大手企業の顧客分析システムなどを開発していましたが、受注してから作る、という流れでしたので、エンドユーザーに接する機会はほとんどありませんでした。エンドユーザーの声を聞き、直接サービスを作ったり提供したいという思いから、2008年に独立し、テラ・ウェブクリエイトを立ち上げました。
創業当初はどのような事業を展開されていたのですか?
前職の経験を生かし、業務管理システムの開発からスタートしましたが、全く受注できませんでした。沖縄は中小企業が多く、システム開発の金銭的余裕がほとんどありません。「その費用をかけるならエクセルでいいよ」という企業ばかりで、全く相手にされませんでした。
そんな最中、先輩経営者から「君の会社が伸び悩んでいるのは、君の会社のサービスが世の中に必要とされていないからだ」という、厳しいお言葉をもらいました。私の人格まで全否定された気がしてかなり落ち込みましたが、よくよく考えてみればその通りだと深く納得できたんです。
「必要とされるサービスを提供しようじゃないか」と奮起し、見つけたのが、クラウド型CRM(顧客管理)アプリケーション「Salesforce」でした。
なぜSalesforceがいいと思ったのですか?
自社システムだと開発に数百万円必要になる場合が多いのですが、Salesforceは「一人当たり〇〇円」という価格設定なので、沖縄の中小企業でも導入しやすいからです。
また、沖縄には当時すでに大手のWebシステム開発会社があり、差別化を図るためにも、沖縄では全く導入されていなかったSalesforceがぴったりで、沖縄初のSalesforceパートナーの認定を受けました。
顧客の反応はいかがでしたか?
非常に厳しい時期が続きました。Salesforce自体が全く知られていませんでしたし、そもそも「クラウド」というシステムに懐疑的な方も多くて。
当時は会社の機密情報を社内のネットワークだけで管理するのが常識でしたので、「どこにあるかわからないインターネットのデータベースに、大切な自社情報を預けるなんて、とんでもない」と“けんもほろろ”でした。
そこで、ミニセミナーなどを開催して「クラウドとは何か」からレクチャーしたり、すでにSalesforceを導入している大手企業について紹介したりと、安全性を理解してもらうことからスタートしました。それと並行して自社でも積極的にSalesforceを活用し、営業効率を上げていきました。
身をもってSalesforceの効果を実感したのですね。
営業に関する情報をしっかり管理したことで商談がスムーズになりましたし、そのような自分の体験談は何より強い営業ツールになります。「商談を管理すれば行動も管理できるし、結果も変わりますよ。我々も実際にそうでした」と自信をもってお伝えできたことも手伝い、徐々に契約件数が伸びていきました。現在では、県内を中心に大手から中小企業まで、約50社とのお付き合いがあります。
地元企業の力になりたい
現在ではSalesforceだけでなく、さまざまなクラウドサービスの導入や活用支援を行っています。その理由を教えてください。
クラウドのサービスは、簡単に相互接続が可能です。Salesforceにできないことを、EvernoteやZoom等で担うことができるため、お客さまの課題に応じていろいろと導入した結果、多くのシステムのセールスパートナーになりました。
沖縄の企業とのお付き合いが中心とのこと。県外進出はされないのですか?
ITビジネスは確かに東京など首都圏の方が成長が早いと思います。しかし沖縄出身でもあり地元に愛着があることと、沖縄の企業の生産性を少しでも高めるお手伝いをしたいという気持ちもあり、沖縄中心のビジネスを展開しています。
そもそも「生産性を上げる」という意識が低い企業もいまだに多く、サービス残業が当たり前という風潮が根付いている土地です。そのような環境で働く方々にクラウドシステムの活用方法をレクチャーし、生産力を高め、少しでも沖縄の働く環境を改善できれば本望です。
リモートワークでクラウドサービスの真価を再認識
一緒に働くスタッフさんは、全員「Salesforce認定資格」保持者と伺いました。経験者を採用されているのですか?
9名の社員は全員知識のない状態で入社しています。入社してから勉強して、Salesforce認定のコンサルタントなどの資格を獲得しました。
研修制度を設けてはいますが、自発的に勉強する意欲のある社員だけを採用するよう心がけています。例えば「本を読むのが苦手」という方は、弊社は厳しいかもしれません。
日々情報や知識をキャッチアップしようと努力する人には、研修はもちろん書籍の購入など、できるだけサポートするようにしています。
その他、スタッフさんに対して心がけていることはありますか?
以前「WAA(働く場所・時間を社員が自由に選べる制度)」を導入しましたが、社員から賛否両論あって、やめていました。仕事をしているのかわからないし、コミュニケーションを取りづらいという問題が出てきてしまって。
そんなときに緊急事態宣言が出て、WAAがあろうとなかろうと、否応なく完全リモートワークにシフトしました。今まで活用しきれていなかったSalesforceの機能や、他のクラウドサービスをフルで使ってみたところ、全く問題なく仕事を進められたんです。
緊急事態宣言が解除された今も、全員出社は月曜だけで、あとはリモートが基本。それでも生産性は全く落ちていませんし、社員も自分に合ったワークスタイルが作れていますね。
またクラウドサービスを駆使することで、生産性を維持しながワークライフバランスを保てることが実践できたので、お客さまへより説得力をもってサービスを提案できるようになりました。さらに、リモートワークなら県外在住の社員を採用することができるため人材不足の解消にもつながります。クラウトサービス活用は、いいことずくめですね。
「ティール組織」で社員全員が成長し、会社を動かす
これからの展望を教えてください。
「ティール組織」という組織モデルに取り組んでいます。これを続け、2,3年後には成功させたいですね。
「ティール組織」について、詳しく教えてください。
意思決定がトップダウンという従来のヒエラルキー型ではなく、「ホクラシー型」といって、上下の関係なく、社員一人ひとりが役割をもって互いに影響し合い循環しながら会社を運営していく、というフラットな組織のことです。
とはいえ、理論上は理解できても、生まれてからずっとヒエラルキーの中で生きているので、自然に理解することが難しくて…。昨年から、ティール組織を提唱している専門家にコンサルティングをお願いし、本格的に取り組んでいる最中です。
どのような方法で「ティール組織」を作っていくのですか?
社員全員で農作業を体験しながら、自然の中から「循環」について感覚的に学ぶことを始めています。自然農法なので肥料もなければ水も雨水のみ。だけど枯れずに育つのは、多くの種類の野菜がそれぞれの役割を担って、互いに影響し循環しているから。それは人間、ひいては会社も一緒だと、頭ではなく体の底から理解するための取り組みです。
またヒエラルキーがないので、私は「社長」ではなく「経営ロール」、つまり経営の役割をもつスタッフでしかありません。経理情報などは全て公開し、給与はトップダウンではなくスタッフ全員で決めます。皆がそれぞれ希望する金額を出し合い、それが妥当か話し合いながら決定していきます。
全く新しい組織作りですね。なぜ取り組もうと思ったのですか?
実は以前、上場を急ぐあまり「給料分働け!」と社員に強引に接してしまい、全員退職してしまったんです。自分の考え方含め、組織のあり方を変えなければならないと悩んでいた時に、ティール組織という概念を知りました。
「ティール組織」作りを始めて1年ほどたちますが、ついつい指示を出してしまったり、社員も指示を仰いでしまったりと、根付くにはもう少し時間がかかりそうです。徐々にスタッフ全員で会社を動かし、成長していける組織にしていきたいですね。
最後に、どんなスタッフと一緒に働きたいですか?
「ティール組織」やリモートワークなど、弊社で取り組んでいる働き方や、その理念に共感でき、一緒に豊かなワークライフを実現できる方がいいですね。そのためには指示を待つのではなく、自分で積極的にインプットして、チャレンジする姿勢が必要です。それができれば、弊社の仕事を楽しめると思いますよ。
取材日:2021年11月11日 ライター:仲濱 淳
株式会社テラ・ウェブクリエイト
- 代表者名:寺田 克彦
- 設立年月:2008年4月
- 資本金:500万円
- 事業内容:クラウドソリューション事業
- 所在地:〒901-2132 沖縄県浦添市伊祖1丁目21-2 牧港建設ビル3F
- URL:https://tera-web.jp/
- お問い合わせ先:098-988-8865