職種その他2022.02.02

広報・PRの支援は、現場で汗を流すことから始まる。四国の新たな魅力を発信し続ける「オルタナティブ」企業

高松
株式会社ヨンプラス 代表取締役社長/プロデューサー、クリエイター
Hashiguchi Tsuyoshi
橋口 剛志

「オルタナティブ=過去の常識にとらわれない、形にとらわれない」をコンセプトとして、2021年に設立された株式会社ヨンプラス。主な事業領域は企業の広報・PRやブランディング支援ですが、そのコンセプト通り、従来の業界イメージとはまったく違う取り組みを進めてきました。

企業支援では上流の支援にとどまらず、現場に入り込んで商品開発や店舗設計から着手。また、地元のメディア関係者と企業をつなぐために情報交流拠点「メディアコート四国」と「カフェバー・オルタナティブ」を運営し、新たな価値を生み出す場作りにも注力しています。

さらに興味深いのは、ヨンプラスの共同創業者である3人、代表取締役社長/プロデューサー、クリエイターの橋口剛志(はしぐち つよし)さん、取締役/PRプランナーの妹尾浩二(せのお こうじ)さん、取締役/ディレクター、編集・ライターの井上学(いのうえ まなぶ)さんが、それぞれまったく異なる領域の専門家であること。

3人はどのようにして出会い、起業することになったのでしょうか。現在までのストーリーと、ヨンプラスの活動に込めた思いを聞きました。

 

ボードゲームを通じて、異なる専門領域の3人が集まった

メディアコート四国/カフェバー・オルタナティブにて取材

はじめに、橋口さん、妹尾さん、井上さんのそれぞれの専門領域について教えてください。

橋口:私はイラストレーターとして活動し、グラフィックデザインやボードゲーム制作なども手がけてきました。
妹尾:私は地方の大手不動産企業で広報実務に携わり、その後は独立して自分の会社を立ち上げ、四国の企業や行政の広報・PRを支援してきました。
井上:私は2021年3月末までの17年間、高知新聞社の記者として働き、事件・事故や教育、スポーツ、芸術文化、政治経済などの報道に携わってきました。
 

異なる領域で活躍してきた3人が、なぜ一緒に起業することになったのでしょうか。

橋口:そもそもの出会いはボードゲームつながりでした。ボードゲームを遊べるバーで井上と出会い、井上から妹尾を紹介してもらったんです。
妹尾:私は広報・PRの専門家としてメディア関係者とのつながりが多く、高知新聞で働いていた井上とも以前から知り合いでした。
橋口:最初は「ゲームアプリを作ろう」ということになったんですよね。四国を舞台に、各地の伝承に残る妖怪などが登場するスタンプラリーのようなゲームです。その事業化に向けたプレゼンをする際に法人資格が必要だったので、ヨンプラスを立ち上げました。だから、思いがあって会社を作ったというよりは、気がついたら会社になっていたという感じです。

入り口は意外なところにあったのですね。現在の事業へは、どのようにしてつながっていったのでしょうか。

妹尾:橋口には「ボードゲームを紹介する場としてバーを作りたい」という思いがありましたし、私と井上はかねてより「メディアとPR関係者がつながる場を作りたい」と思っていました。それなら、ヨンプラスで場作りを進めていこうということになったんです。
井上:私は長らくメディアの世界にいて、いろいろな情報が集まってくる「記者クラブ」にも出入りしていました。しかしこの記者クラブには、新聞やテレビ以外のメディア関係者は入れません。地域の雑誌記者やウェブライターなど、より幅広いメディア関係者と地元企業がつながる場所が必要だと考えていました。

 

多種多様な人が出入りし、広報・PRについてカジュアルに相談できる場

なぜ、より幅広いメディア関係者と四国の企業をつなげるべきだと考えたのですか?

妹尾:広報のノウハウを十分に持っているのは、大手企業や上場企業など一握り。それ以外の中小企業や個人事業主は広報のノウハウ・手段が不足しています。一方でメディア側を見れば、既存のマスメディアもウェブなどの新興メディアも「これから伸びていく企業を取材したい」と考えている。そうした双方のニーズがあるのに、つながれないままでいるのはもったいないと思ったのです。
井上:従来の広報・PRといえば、企業からメディアへプレスリリースを送り、取り上げてもらう形が主流でした。しかし今は企業自身がメディア化し、自社の情報をブログやSNS、動画などで発信できる時代です。とはいえ多くの企業では、自社のニュースを選定したり、それを最適な形で発信したりするコンテンツ制作のノウハウが不足している現状がある。そうした「企業のメディア化」をサポートしていくことも、私たちの大切な役割だと考えていました。

現在はその構想を具現化し、情報交流拠点「メディアコート四国」、「カフェバー・オルタナティブ」として場の運営を手がけられています。それぞれの特徴を教えてください。

井上:日中は「メディアコート四国」として、いろいろなメディアの記者やライター、クリエイター、そして企業関係者が自由に出入りし、交流できるようにしています。夜は「カフェバー・オルタナティブ」として営業しており、メディアや企業の関係者に加え、大学関係者やボードゲームファンなど多種多様な人が出入りする空間となっています。
妹尾:夜には「広報・PRよろず相談ナイト」などのイベントも開催していて、企業の悩みをカジュアルに、より気軽にメディア関係者やクリエイターへ相談できるようにしているんです。
井上:このバー自体が一つのネットワーク拠点となりつつありますね。地元のテレビ局や新聞社など、主要メディアの本社から歩いてすぐという立地も手伝って、たくさんの方に利用していただいています。

 

上流からアドバイスするだけではなく、現場で汗を流す

広報・PR支援の実務では、ブランディングからシステム開発、各種制作まで幅広い領域を手がけていますね。なぜここまで手広く携わることができるのでしょうか。

橋口:私たちは社外のクリエイターとも幅広いネットワークを築いています。この3人以外にも志を同じくする仲間がたくさんいて、IT関連など、3人の専門領域の範疇外にあることにも対応できるのです。また、私たちは「断らない」というスタンスを大切にしています。どんな内容であっても、ご相談いただいた案件は基本的に断りません。直接のブランディングだけでなく、商品開発や店舗設計から関わることもあります。

商品開発や店舗設計とはすごいですね。 具体的な事例を教えていただけますか。

橋口:あるグッズ会社さんのプロジェクトでは、「売り物がシールくらいしかない」という状態からスタートして、ユーザーのニーズをリサーチしながらブランドの立ち上げや、商品開発を進めているところです。ゆくゆくは小ロットからユニークなオリジナルグッズを作れる会社として、PRしていきたいと思っています。
井上:クライアントが飲食店なら、店舗設計やメニュー作りから関わります。厨房機器の使い方を覚えることから始めることもあるんです。
橋口:悩みがあって、解決したいと考えている企業すべてがクライアントですね。

実際に行っていることは広報・PR支援の枠を大きく超えて、企業コンサルティングそのものですね。

妹尾:はい。ただ、コンサルティングというと上流から提案するだけのようなイメージがあるかもしれません。私たちはそうではなく、現場で汗を流して企業の再構築に貢献することを重視しています。
井上:四国には、地方創生を旗印にして都市部のコンサルティングファームもどんどん入ってきています。だけどそうした企業は上流からアドバイスするだけで、お金を都市部へ吸い上げていってしまい、地方企業の利益にはなかなかつながらないという現実もあるんです。地域に住む自分たちが地域の課題を解決しなければいけない。四国で面白いことをたくさん仕掛けていけば他の地域からも人が集まり、四国の企業の利益につながるはず。そんな思いで取り組んでいます。

 

地方はクリエイターが数多く仕事を“生み出せる”場所

今後はどんな展望を描いていますか?

橋口:従来の広報・PRの枠にとらわれず、ゼロから価値を生み出し発信していくことにこだわり続けたいと思います。今後も四国のために活動を続け、まだ訪れたことのない場所にも積極的に足を運んで、それぞれの場所で新しい取り組みを始めたいですね。

その展望を実現するには新しい仲間も必要になると思います。どんな人と一緒に働きたいですか?

橋口:クリエイティブなことが好きな人や、特化したスキルがある人は魅力的ですが、それ以上に求めたいのは「素直さ」です。ちゃんと謝れること。ごまかさずに人と向き合えること。これらは特別な技術を持っていること以上に大切だと考えています。
妹尾:私たちは四国愛を大切にしているので、同じように四国に根ざして、地域のために動いてくれる人がいいですね。

地方で働きたいと考えているクリエイターに向けてメッセージをお願いします。

井上:地方創生の文脈では、地方を「救わなければいけない場所」として捉えることが多いのではないでしょうか。過疎化に悩む地域を救うために……とか。でも、地方に住んでいる当事者としての実感はまったく違うんですよ。私の地元・高知では、透明度の高い海で朝からサーフィンを楽しみ、好きな仕事に取り組んで充実した日々を過ごしている人がたくさんいます。このように地方には、とても豊かな面もあるんです。救わなければいけない場所ではなく、「刺激的で魅力的な場所」。そんなリアルな姿を、ぜひ知ってほしいですね。
橋口:クリエイターの中には「地方には仕事がなさそう」と考えている人もいるかもしれませんが、これも誤解だと思っています。仕事を待つのではなく作っていくスタンスで地域を見渡せば、案件はいくらでもありますから。実際に私たちも、クライアントが喜んでくれることをゼロから考え、提案していく中で、たくさんのクリエイティブ案件を生み出しています。そうして生まれる仕事は刺激的だし、何よりもクリエイターとして最高に面白いですよ。

取材日:2021年12月2日 ライター:多田 慎介

株式会社ヨンプラス

  • 代表者名:橋口 剛志
  • 設立年月:2021年2月
  • 資本金:1,000万円
  • 事業内容:メディア戦略コンサルティング、ブランディング、マーケティング、商品企画開発、Web制作、広報・PR支援など
  • 所在地:〒760-0055 香川県高松市亀井町12-4 日の出ビル2F
  • URL:https://4plus-you.studio.site/
  • お問い合わせ先:上記サイト内「CONTACT」より

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