海外生活で経験した価値観の転換が起業のきっかけ。デザインを通して人々にひらめきを与える
オーストラリアから日本へ、モデルから社長へ
オーストラリア出身の渡辺さんが、沖縄で起業した経緯を教えていただけますか?
オーストラリアのパースで生まれ、小学生から母の出身地である静岡で暮らし始めました。17歳の頃再びオーストラリアに戻り、ずっと憧れていたモデル業をスタートしました。この仕事を通して人に感動やインスピレーションを与えられることが、大きな喜びでした。
シドニーを拠点に充実した毎日を過ごしていたのですが、新型コロナウィルス感染症拡大の影響で、街がロックダウンすることに。自由に生活できない毎日で徐々に気持ちが落ち込んでしまい、思春期に過ごした日本がとても恋しくなったんです。心機一転、新たな環境で暮らそうと、2020年に日本に戻ることを決意しました。
慣れ親しんだ静岡ではなく、なぜ沖縄を選んだのですか?
それまで一度も沖縄に行ったことがなかったのですが、「暖かくて自然豊か」というイメージで決めました。友人が沖縄におり、相談できたことも大きかったです。また沖縄は本島から離れているので、新型コロナウィルスの影響をあまり受けないだろうと思ったのですが、いざ来てみたら日本で1、2番目に感染者が多く、驚きました(笑)。
沖縄でモデルを続けなかったのはなぜですか?
人の作ったものを着せられるモデルより、自分で何かを生み出すことが本当の意味での表現であり、生き方そのものをアピールしたいと感じたんです。そこで、人に感動を与えるプロダクトを作る会社を自分で起こそうと一念発起し、「ワイズエフェクト株式会社」を設立しました。
モデルの経験を生かし、香水、ランジェリーをプロデュース
「人に感動を与えるプロダクト」として、どのようなものを作られたのか教えてください。
まず手掛けたのが「サガリバナ」という、奄美大島や八重山諸島に自生する花の香水です。沖縄に来たばかりの頃、その花を西表島で見て、独特の甘い香りや美しさ、そして初夏に一晩だけしか咲かないという神秘性に魅了されました。この花の香りを何とか残せないかと考えたのが、香水にすることでした。
1、2か月で商品化できるだろうと甘く考えていたんですが、いざ始めてみると理想とする香りを再現することなど想像以上に大変で。しかし私のアイデアを形にしてくださる沖縄の化粧品製造会社に出合い、何とか1年ほどで製品化できました。いい会社と巡り合えたと感謝しています。
香水の反響はいかがですか?
クラウドファンディングで予約販売を実施したところ、予想以上に注文が入りうれしい限りです。サガリバナの香水は今まで作られていなかったことと、「一夜しか咲かない貴重な花」というコンセプトに共感していただいたようです。
香水以外に、手掛けられた商品を教えてください。
目下注力していることは、「WE ARE WILD Lingerie」というランジェリーブランドのローンチです。ランジェリーとジュエリーを組み合わせた商品展開を考えていて、数か月の間にオープン予定です。
私は幼い頃から「Victoria’s Secret(ヴィクトリアズ・シークレット)」という女性向け下着、婦人服、香水などを扱う、アメリカ発のファッションブランドが大好きで、このブランドが作り出す世界観に憧れていたんです。
なぜ憧れているのかと突き詰めて考えた時に、ランジェリーは一人ひとりのありのままの姿を表現できることが美しい、と感じたんです。そして、人それぞれの肌の色や体形に合うものがあり、多様性に満ちています。
私自身もそのような、多様性のある製品を作りたいと思い、このブランドを立ち上げました。ゆくゆくはナイトウェアや水着も作り、ネット販売を軸に国内外へ販路を広げていきたいですね。
香水、ランジェリーと異なるジャンルに意欲的に取り組んでいますが、ほとんどコネクションのなかった沖縄で、どのように事業を広げたのですか?
沖縄特有の環境に助けられていると思います。人脈がつながりやすいですし、SNSなどを使えば、自分の求めているサービスを比較的探しやすいんです。それを繰り返すことで、徐々に輪を広げていくことができました。
スピーディーに事業を進め、影響力を持つ会社へ
会社理念に「突然のひらめきをもたらし開花させる」と掲げられています。なぜ人々に、「ひらめき」をもたらしたいと思われたのですか?
17歳の頃に日本からオーストラリアに戻った時、私の中で価値観が大きく変わりました。オーストラリアには多くの人種が暮らしているので、考え方もさまざま。一つの物事に対して何通りも見方があり正解も間違いもなく、社会が寛容なんです。そのような中でモデルの活動をすることで、ぐっと視野も考え方も広がり、自分の可能性に気付くことができました。
私が経験したような発想の転換や自由な感覚を、「ワイズエフェクト株式会社」のプロダクトを通して多くの人に体験してもらいたいと思い、この理念を掲げました。香水やランジェリーなど、作っているものはさまざまですが、「人の心にインスピレーションやひらめきを与えたい」という点では共通しているので、自分の中では全てつながっています。
今後はどのような取り組みをしていきたいですか?
これからも企業理念のもと、より影響力のある会社になっていきたいと思っています。そのためには、私自身の中でひらめいたアイデアを粘り強く追い求め、かつスピーディーに実現する必要があります。今は、必要に応じて会社や人と業務提携しているものの、基本的に企画からデザインまで全て一人で行っています。今後はスピードアップのために、目標を共有できるスタッフと一緒に動いていきたいですね。少しずつですがスタッフ募集も始めています。
最後に、クリエイターを目指す方へ、メッセージをお願いします。
自分がやりたい、作りたいと思うものがあったら、自分を信じて行動した方がいいと思います。周りの方からは案外適当(笑)にいろいろなご意見をいただくこともありますが、やるのは自分です。振り回されず枠にとらわれず、突き進みましょう。
取材日:2022年1月27日 ライター:仲濱 淳
ワイズエフェクト株式会社
- 代表者名:渡辺 アンナ
- 設立年月:2020年10月
- 資本金:100万円
- 事業内容:アパレル、化粧品等のデザイン・販売、グラフィックデザイン、フードコーディネート
- お問い合わせ先:090-8292-0736
- mail:wiseeffect@gmail.com
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