プロダクト2022.03.16

多角的なアプローチで人やモノの魅力を引き出し、総合優勝を目指したい

札幌
株式会社ambient 代表取締役
Tomotaka Shiogai
塩貝 友崇

2012年に起業した株式会社ambient(アンビエント)。企画や空間デザインなど、さまざまな方法で「モノ・ヒト・コトのつながりを広げ、おもいをカタチにする」デザインファームです。代表取締役である塩貝友崇(しおがい ともたか)さんに、仕事への思いやこれまでの歩み、今後の展望について話を伺いました。

 

さまざまな“ものづくり”をツールにコミュニティを作りたい

立ち上げ以前の職歴についてお聞かせください。

大学卒業後、東京のハウスメーカーに3年半ほど勤務し、住宅の設計に携わっていました。札幌に戻ってからは設計事務所やコンピューターグラフィックの会社など転々とし、最後に勤めたのが商業施設のデザイン・企画を行う会社です。ここでの仕事が今の業務の礎になりましたね。8年ほど勤務して独立し、2022年の7月で10年目を迎えます。

独立されたきっかけは何ですか?どのようなビジョンを描いていましたか?

大きなきっかけになったのは、2011年の東日本大震災です。あのときテレビで流れた映像に衝撃を受け、北海道で同レベルの災害が起きたときに、ものづくりの知恵や知識で迅速な対応ができるのではないか、復興の糧になるのではないかと思ったんです。ちょうど30代も半ばでしたので、今しかチャンスはないという思いと、大きなプロジェクトを終えたタイミングだったこともあり、僕たちのような設計やデザインに携わる人間も含めて、ものづくりをツールとして多くの人とつながることで、さまざまな問題解決ができるようなコミュニティを作りたいという気持ちが強くなりました。

最初に取り組んだお仕事は何ですか?

知り合いの設計事務所からの紹介で取り組んだ、帯広の焼肉店のインテリアの仕事です。その後も紹介でさまざまな飲食店を手がけましたが、なかでも小樽の有名菓子店「LeTAO(ルタオ)」の仕事に携わらせていただいたのが大きかったですね。そこから少しずつBtoBの仕事が増えていき、地元の有名菓子メーカーの店舗デザインやパッケージ、グラフィックデザインをはじめ、空港業務などを担う「(株)えんれいしゃ」の仕事として、新千歳空港増床の際に一部の店舗デザインにも携わらせていただきました。

印象的だったお仕事はありますか?

新千歳空港内にある、LeTAOの店舗什器のプレゼンは楽しかったですね。あのときは、LeTAO全店の什器を分析したところ、モダンからクラシックまで幅広いデザインが採用されていたため、土産店という特性に合わせて、両方の要素を兼ね備えたカジュアルなデザインに仕上げました。さらにA3のプレゼン用紙がちょうどLeTAOのロゴと同サイズだったため、表紙にロゴを描き、什器に表示するロゴはこの大きさで十分伝わると説明したところ、反応が良くて。帰り道にすぐに決定のご連絡をいただきました。

 

北海道の魅力が詰まったモノで、人と人とをつなげる

現在のお仕事について教えてください。

弊社の業務は「企画・調整」「デザイン」「施工・製作」「販売」で構成されており、それらはバラバラに進んでいますが、すべてがつながっています。独立したばかりの頃は、空間デザインをメインに考えていましたが、お客さまと長く付き合っていくにはグラフィックが必要になり、グラフィックを手がけているうちに、骨格部分も作りたいという気持ちになっていきました。そこから少しずつ、ブランディングからの空間デザインやグラフィックデザインという現在の形に変わっていきましたね。
施工・製作に関しては、2019年に建設業の許認可を取得し、建築や内装の施工も請け負うようになりました。販売面は現在、札幌ステラプレイスと札幌PARCOに“北海道を贈る”ためのギフトショップ「TOIRO THE GIFT(トイロ ザ ギフト)」の店舗を構え、北海道のものづくりを発信しています。

塩貝さんがギフトショップを始めたきっかけは何ですか?

2011年に北海道のものづくりを世界に発信するショーケースとして「TOIRO HOKKAIDO」を立ち上げたのが最初で、当時の事務所の一角に、陶芸や木工品など道内作家の作品を展示販売する「円山ギャラリートイロ」を設けました。デザインに携わっていながら、なかなか作家さんと知り合う機会がなかったため、作家さんがワークショップを開けば、コミュニティ作りが出来るのではないかという思いがあったんです。実際、毎月のように開催したワークショップを通して知り合いの輪も広がりましたし、クラフトショップ&カフェ「toiro」として円山に移転してからもワークショップは人気で、たくさんの方に参加していただきました。店は2年半で閉めましたが、自分たちの取り組みは、多くの方に知っていただけたと思います。

近頃は百貨店やイベントへの出展が増えていますね。

そうですね。そのなかでも印象に残っているのは、「日本スペイン交流400周年記念事業」の一環として、2014年にスペイン・バルセロナで開催した「北海道クラフト展」です。現地でもワークショップを行い、とても好評だったのですが、現地の方に“made in Japan”と言われ、改めて「“made in Hokkaido”と言わせたい!」という気持ちにさせられました。

他にもプライベートブランドをお持ちですね。

北海道をコレクションして日常使いしてほしいという思いで立ち上げたのが、「TOIRO HOKKAIDO」のプライベートブランドの「日日コレ」です。道内各地の農水産加工品のパッケージを替え、1つのブランドとして発信することで販売や流通がしやすくなるのではないかという、実験的な要素を持った取り組みです。現在の取り扱いは10アイテムほどですが、今後はもっと数が増えて、1つの北海道ブランドになったらいいなと思っています。そこから派生した「日日の〜シリーズ」では、カヌレやプリンなど、札幌の人たちの手土産になるスイーツを、地元の製菓ブランドやパン屋さんとコラボして製造し、「TOIRO THE GIFT」で販売しています。スイーツをきっかけに「TOIRO THE GIFT」に興味を持っていただいたり、器と合わせてギフトにしてもらえたら嬉しいですね。他にも、コロナ禍で結婚式が出来ない方の思い出に残るものを作りたいと誕生したのが、ケーキ型とロリポップ型にドライフラワーをアレンジした「Petite Dried Flowers」です。どちらも食べられませんが、種類も豊富で、ギフトとして喜んでいただいています。

日日コレ

 

多角化することで興味を満たすとともにリスクを解消

先ほどお話に上がった、建設業の許認可取得の経緯についてお聞かせください。

これまで一部の専門工事は請け負っていましたが、一社ですべてを請け負うことでお客さまにはコストカットのメリットがありますし、自分たちの収益にもつながるため、許認可を取得しました。協力会社と一緒に大きな仕事に挑戦したいという気持ちもありましたね。動き始めてすぐにコロナ禍になってしまいましたが、少しずつ設計施工という形で受注が増えています。これから実績を重ね、将来はリゾートホテルを手がけることが目標です。「TOIRO HOKKAIDO」を絡めて備品やインテリアコーディネートまで一式で請け負い、オープンした時の充実感を味わうのが夢です。

新規事業である不動産について教えてください。また、住宅を通して目指しているもの、表現したいことなどもお聞かせください。

以前から住宅にも興味がありましたが、なかなかそういうご縁に巡り会わなくて。協力会社の一つである不動産・施工会社の「A’s works(エースワークス)」が住宅のリノベーション販売をするという話を聞き、設計やデザインを手伝わせてほしいと声をかけたんです。2社の頭文字を合わせて「A Style(エースタイル)」とし、2022年1月に事業をスタートしましたが、本格始動はまだまだこれからです。いずれは、購入した方の要望に合わせたリノベーションやリフォーム、家具や器のコーディネートまで広げたいと考えています。

開発中のECサイトについてお聞かせください。

既存のプラットフォームにはない、作家さんの取り組みや人となりをしっかり説明するページを設けたくて、「TOIRO HOKKAIDO」の新たなサイトを製作しています。北海道でものづくりをしている人や会社のなかには、ECサイトに興味はあるものの、管理が難しいという人が多いため、サブスクリプションという形で運営管理を担っていけたらと考えています。販売をきっかけにチャネルが増えて、作家さんたちにとってプラスになる仕組みができるといいですね。扱う商品も作品だけでなく、こだわりやきちんとした背景があれば、海産物でもいいと思っています。一カ所で完結できれば利用される方も探しやすいですし、他の作品を知るきっかけにもなります。いずれは道外や世界に発信できるサイトにしたいですね。

将来のビジョンについて教えてください。

将来的には会社として総合優勝したいですね(笑)。周りからはいろんな取り組みをしていると思われていますが、多角化することは僕自身の興味を満たすだけでなく、会社としてリスクヘッジの意味もあります。一つのことに特化した場合では敵わなくても、さまざまな分野に対応できれば、総合的に一番になれる可能性があるのではないかと思っています。もちろん今はその途中で、ゆっくりと地固めをしているところです。

最後にクリエイターを目指している人、独立を考えている人にアドバイスをお願いします。

僕は、デザインで社会貢献や世の中の役に立つことを具現化し、お客さまの継続力をサポートしたいという思いで、この仕事を続けています。デザインは場合によっては独りよがりになりがちですが、誰かのために行うのが工業デザインであることを履き違えないように気を付けてほしいですね。仕事をしているとうまくいかないこともありますが、ネガティブにならず信念を持って突き進んでいってください。

※記載の社名、商品名、サービス名等各種名称は、各社の商標または登録商標です。

取材日:2022年2月7日 ライター:八幡 智子

株式会社ambient

  • 代表者名:塩貝 友崇
  • 設立年月:2014年12月17日
  • 事業内容:インテリアデザイン、ブランディング、建築設計(店舗・住宅)、Webデザインなど
  • 所在地:〒060-0042 札幌市中央区大通西15丁目2-4–3F
  • URL:https://task-ambient.net/
  • お問い合わせ先:上記の「お問い合わせ」へ

日本中のクリエイターを応援するメディアクリエイターズステーションをフォロー!

TOP