新しい仕掛けでムーブメントを起こす スポーツ特化型のクリエイティブ集団

大阪
株式会社ベスティ 代表取締役
Yoshimasa Esaki
江﨑 仁祐

野球、サッカー、フィギュアスケート、ハンドボール…スポーツに打ち込む人たちの姿は、時に私たちの心を揺さぶり、大きな感動を与えてくれます。今回取材したのは、スポーツ分野に特化したコンテンツ制作・企画・プロデュース業を行っている大阪の株式会社ベスティ。テレビ番組の制作からイベントの運営、ウェブでの展開まで、コンテンツの枠を超えた広い視野でスポーツを盛り上げています。代表の江﨑 仁祐(えさき よしまさ)さんは、テレビ局で20年近くもスポーツの番組制作に携わってきた生粋のスポーツ“コンテンツ”マン。スポーツ界の応援者として力を尽くす、その想いを伺いました。

応援団に打ち込んだ大学時代、そして憧れのテレビ局に

ベスティではスポーツ関係の事業を手がけていらっしゃいますが、江崎さんご自身でも何かスポーツはされていたのでしょうか?

中学、高校を通してバレーボールに打ち込んでいました。大学に入っても続けようと思っていたのですが、レベルが高くちょっと厳しそうで。代わりに何をしようかと思ってキャンパスをふらふら歩いていたら、学ラン姿の異様な集団がいたんです(笑)。それが、大学の応援団でした。
僕の高校は制服がブレザーだったんです。だから学ランに憧れがあって。それに、いろいろなスポーツを見てみたいとも思い、応援団への入団を決めました。

大学ではプレイする側ではなく、応援する側にいたのですね!

大学の応援団というと野球やラグビーの応援のイメージが強いかもしれませんが、アイスホッケー、柔道、スキーなど、ありとあらゆるスポーツの場に行きました。柔道では畳の上に正座して応援、スキーでは学ラン姿でスキー靴を履いて雪の上で応援して。4年生の時には団長も務めました。僕は理系の学部だったので、授業では白衣姿でフラスコを振り、授業が終われば学ランに着替えて応援団の団長として声を張り上げる(笑)。今考えると無茶もたくさんしたなあと思いますが、あの4年間で心身ともに鍛えられました。

スポーツを応援する心は、現在のお仕事にもつながっていますね。

スポーツを見るのは小さいころから好きで、小学生の時にはすでに、スポーツを伝える仕事をしたいなあ、と考えていました。得意な科目が理系だったので大学も理系の学部に進みましたが、希望の就職先はずっと変わらずマスコミでした。いち早く始めた就職活動では、理系出身の応援団長、という特殊な経歴も功を奏したのか、テレビ局・朝日放送テレビ株式会社(ABCテレビ)への入社が決定。最初の配属は念願のスポーツ部でした。

会社ではどのようなお仕事をされていたのですか?

入社してからは、プロ野球やゴルフの中継のディレクター(現場監督のような立場)や、プロ野球番組のプロデューサー(企画・進行など番組全体の指揮を担う立場)などを担当しました。高校野球の番組「熱闘甲子園」のチーフディレクターも5年くらい務めていました。別の部署に移ったこともありましたが、数年間でまた戻り、20年ほどをスポーツ部で過ごしました。

スポーツ部から、ベスティの立ち上げに至った経緯は?

入社して25年近くが経ったころでしょうか。テレビ局としてスポーツ番組をこれまでのように放映し続けていくかどうか、考え直さなくてはならない局面を迎えました。
プロ野球中継の全国ネットでの放送の取りやめや、スポーツ番組の打ち切り…ここ数年だけでも、スポーツ関連でなくなったコンテンツは数知れず。スポーツを支援している企業や団体に「放送します!だから中継や番組をサポートしてください」というスタンスで仕事をもらっているだけでは、事業を続けられない時代になってしまったのです。
スポーツ番組を続けていくのか、それとも見切りをつけるのか。会社としての決断を迫られていました。
社内でいろいろと検討を重ねたすえ、やはり私たちはスポーツを盛り上げていく立場でありたい、という結論に至りました。しかし、これまでと同じやり方では何も変わらない。そこで、「スポーツ事業の中核となる新会社を立ち上げよう」という話が出たのです。すべてのスポーツ番組の企画・制作をひとつに集めることで効率化し、より柔軟な事業展開をしようと。2021年1月、ABCテレビのスポーツ部、衛星放送を手掛けていた株式会社スカイ・エーの制作部、制作プロダクションの株式会社カガミの3社がまとまり、総勢50名ほどの会社が立ち上がりました。それが、株式会社ベスティです。

新しい会社の代表として、江崎さまに白羽の矢が立ったのですね。

僕はスポーツ部に長く在籍していましたし、中堅の若くて勢いある人材に新会社を任せたいという意向があったのでしょう。
それまではプロデューサーとして人をまとめる立場になることはありましたが、社長となるとまったく違います。雇われる側でいたのが、いきなり人の人生を背負う立場になったのですから、プレッシャーは大きかったです。でも、会社がスポーツとの関わりを断ち切らず、むしろ新しい会社で盛り上げていきたい、という決断をしてくれた。それが本当に嬉しかったし、期待に応えなくてはいけない、と思いました。

スポーツも仕事も、目標に向かって進む姿勢は同じ

御社の事業内容について教えてください。

ベスティは、スポーツに関するありとあらゆる取組みを、一気通貫で手がけられる新しい業態の会社です。スポーツ関連の番組やコンテンツ制作は得意分野ですし、イベントの企画、ウェブや動画サイトでの展開も行っています。母体である放送局の強みを活かし、テレビの地上波、衛星放送などでのPRも可能です。
また、これまでずっと取材してきた経験から、選手との距離が近いのも強み。各プラットフォームでの発信を意識した取材で、よりリーチ力のある展開ができます。普通の制作会社では多くの人や会社を通さないとできない企画を、当社は丸ごと請け負える。だから費用を抑えつつ、企画がスムーズに進められるんです。
ベスティ設立の目的は、スポーツを盛り上げ、しっかりとマネタイズできるビジネスを構築すること。事業のジャンルにとらわれず、色々なことに挑戦していきたいと思っています。

スポーツ界をサポートする応援者のような存在ですね。

資金が集まらず活動していくのに困っているスポーツチームを、多くの人に知ってもらい、大きくしていくために行動するのも僕らの役割だと思っています。自分たちの持っている番組で紹介したり、YouTubeチャンネルを立ち上げたり、イベントを企画したり。様々な方面からアプローチしています。
そのひとつとして、2022年1月、僕たちが手がける新しいテレビ番組「ぺこぱのまるスポ」が始まりました。月に1回、日曜の午前中に関西地方で放映される番組で、「スポーツの魅力は勝負だけじゃない」がテーマ。食べる、見る、育てる、始める、など、様々な切り口でスポーツを紹介しています。この番組は、既存のスポーツ番組とは違ったものにしたい、と思って始めた取り組みです。ここを起点として、新しい選手やチームにスポットライトを当てていきたい。ベスティ設立当初から立ち上げの準備を続け、1年かけて、やっとカタチになりました。

放送開始から1か月ほどが経ちましたが感触はどうですか?

まだ放送し始めて間もないですが、いい番組になっていると思います。でも、「いい番組ですね」で終わってしまったら、これまでと同じなんです。この番組がきっかけで新しいムーブメントが起こり、「スポーツ番組からこんな展開ができたんだ」と言われたい。次の何かにつながる番組に成長させていきたいです。

御社では幅広い事業展開をされていますが、スタッフの方々はどのように分業されているのでしょうか?

スタッフは、ゴルフ担当、野球担当、高校野球担当、水泳担当、などスポーツのジャンルごとに分かれ、自分が担当するスポーツの一連の流れに関わります。具体的には、取材、撮影、中継、イベントの企画など。さまざまな分野の仕事を横断的に受け持っています。新しい会社が立ち上がり、スポーツに携わるスタッフの意識は格段に変わりました。スタッフにはスポーツ界とともに大きくなるという志とともに、業務に励んでもらっています。ベスティ設立前は、番組の「視聴率」という結果が出た時点で終わってしまっていました。しかし今では皆、その先の展開やさらなる成長を考えるようになっています。これは非常にいい傾向だと思っています。

スタッフの方々と仕事をされるうえで、意識されていることはありますか?

スタッフに対しては、「目標を明確にする」ことを求めています。目標がないままに1年を過ごして、この1年はどうだった?と訊かれても、答えようがないでしょう?スポーツと同じで、人は目指すゴールがわからなかったら、どちらの方向を向いて進んでいけばいいのかわからなくなってしまう。いま自分がどのくらいの地点にいるのか、何に対して努力するべきなのか。それを見定めるためには、目標をしっかりと持つことが大切です。スタッフとは面談をこまめにして、目標に対して何をしていけばいいのかを話しています。

具体的には皆さんどのような目標をお持ちなのでしょう?

人によって本当にさまざまです。マイナーなスポーツをもっと有名にしたい、こんな番組を作りたい、憧れのチームに取材に行きたい、とか。テレビ局で番組を作っていた時は、目標も予算も決められていました。でも今は、目標を自分で考えるところからのスタートです。仕事もスポーツも同じですね。目標やゴールはとても大切なもの。たとえすぐに辿りつかなくても、確実に前に進んでいる、という自覚があれば頑張れますから。

スポーツを通して人々が集まる場を作る

今後の展望をお聞かせください。

これからは、関西を基盤として、地域と密に関わった取り組みに本腰を入れていきたいです。「この競技を応援したい」「このチームを応援したい」という人を増やし、スポーツを軸としたコミュニティが作れたらいいなと。今まで見て楽しむだけだったスポーツを、地域の人々が参加して盛り上げられるようなものにしていきたいです。この取り組みに対しては、必要があれば、僕らが資金を出すこともあります。他の仕事の収益をそちらに投資してでも応援していきたい。多くの人々が集まる場ができれば、そこからビジネスチャンスも生まれるはずですから。アマチュアスポーツの露出の支援や、イベントを通した地域コミュニティの活性化など、「スポーツ界のトータルコーディネート」ができる存在になりたいと思っています。

会社を設立されて1年。今思うことはありますか?

自分たちの利益を追求せず、社会に貢献していく心を持って行動しなくてはならない、ということを、この1年で痛いほど感じています。ある交渉の場での話です。スポーツをいかに収益化するかという話をしていたのですが、最後に先方から「私は子供たちの笑顔のためにやっています!」と胸を張って言われてしまい、「お金の話ばかりしていた自分は、アカン男やな」と思いました。そして、先輩からの言葉も思い出しました。「大義がある人間とない人間では、決断の時に大きな差が出る」と。自分たちの利益だけ考えていたら、決断は小さくまとまってしまいます。関わる人たち、さらに社会全体に何かできるかを考えれば、自信を持って大きな決断ができるはずです。

物事をより大きな目線から考えるということですね。

これまでの僕は、取材を受けた人が見て「出演してよかった」を思える番組を作る、というポリシーを持っていました。でも、それだけではいけないな、と思うようになったんです。目指すべきなのは「いい番組を作ってくれてありがとう」ではなく、「新しいムーブメントにつながってよかったですね」という言葉。番組はゴールではなくスタートだ、という考えに変わりました。

これからの広がりが楽しみです。

私はスポーツが好きで、スポーツを盛り上げたくて、テレビ局に入社した人間です。今回、新会社の設立という機会に巡り合い、社会と向き合うチャンスをもらいました。だからこそ、社会に「笑顔」や「感動」をもたらすことを第一目標に掲げていきたい。一生懸命やっている人を応援するのは気持ちいいもの。その姿を見て、僕も頑張ろうと思えますから。楽しい仕事です。

取材日:2022年2月7日 ライター:土谷 真咲

株式会社ベスティ

  • 代表者名:江﨑 仁祐
  • 設立年月:2021年1月
  • 事業内容:スポーツ放送番組及び配信コンテンツの企画、制作 / 各種スポーツ中継制作 /スポーツイベントの企画、制作 / 広告代理業
  • 所在地:〒553-0003 大阪市福島区福島2-4-3 ABCアネックス2階
  • TEL:06-6452-2580
  • URL:https://bestie-sports.co.jp/

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