プロダクト2022.04.13

ミッションは「IT×モノづくり」 企業や学生と共創し、伝統と未来の融合を目指して地域創生に貢献

京都
株式会社神谷商会 代表取締役
Naoyuki Kamiya
神谷 尚志

「おみやげ」として長く愛用される上質な工芸品を、オンラインショップや京都の観光地で販売する株式会社神谷商会。伝統工芸品に対する従来のイメージを脱却し、今の暮らしにマッチする製品にアップデートしながら、新しいマーケットへの販路拡大に積極的に取り組まれています。代表の神谷尚志(かみや なおゆき)さんに、モノづくりに対するこだわりについてお話を伺いました。

IT業界からモノづくりの世界へ。伝統工芸を使った新プロダクトで地域産業を活性化

東京のIT企業に勤めていらしたそうですが、神谷さんのこれまでのキャリアを教えてください

大学を卒業し、東京のDTP・Webデザイン会社などで経験を積んだ後、IT企業のサイバーエージェントで、広報やAmebaブログのデザイナー 、アバターを使ったコミュニティサービスやソーシャルゲームなどのクリエイティブディレクターとして10年ほど勤務しました。その後、よりリアルなもの、形に残るものを作ってみたいという思いが強くなり、2016年夏に京都に拠点を移し、父の事業を継いで、工芸品の製造と卸を行っています。今から思うと、大学(神戸芸術工科 大学・映像学科)に在学していた頃から、モノづくりに携わっていました。
事業を継いでから最初の1,2年目は、インバウンドの観光客が入れ代わり立ち代わり京都に押し寄せていた時期で、たくさんの経験を通して仕事を覚えることができました。観光客の国籍が韓国、インド、タイ、インドネシア、中国と目まぐるしく変わっていきましたが、全体を通して本質をついた日本らしさを感じ取れる製品が人気で、よく売れていましたね。

神谷商会の現在の事業コンセプトは何ですか。

「IT×モノづくりによる地域活性化」をミッションに掲げ、自分のこれまでの経験を活かして新しい分野への展開やWebサービスを使った事業展開を行っています。例えば、主要事業は、観光地での物産品の卸売となります。これまでは、価格帯(予算)にあった雑貨中心のモノづくりになり、その範囲内では、取り扱う商品分野がある程度決まっていました。そこにSNSによる情報発信やオンライン販売、海外メディアへの展開など複数の販売・流通チャネルを持つことで、価格帯の異なるマーケットへチャレンジしています。
そこに、伝統工芸を使った新しいプロダクトを提案することが可能となりました。また2020年10月には、オンラインショップ・京都芸美堂(https://kyotogeibidou.com/)をオープンしました。InstagramやYouTubeで新商品を紹介したり、人気スタイリストや海外ブランドとのコラボレーションなど、新しい発信手法に取り組んでいます。
結果として、地域創生への課題解決に取り組んでいます。いま、京都の伝統工芸である西陣織の職人さんの仕事が減ってきています。「西陣織=着物の帯」というイメージが強く、着物の需要が少なくなっていることが直接の理由です。私たちは、西陣織ならではのこだわりや魅力を引き出しつつ、現在のニーズに合った商品を展開することで伝統工芸を守ると同時に、地域産業の活性化につなげていきたいと考えています。

若者のフィルターを通したモノづくりを推進し、新しいニーズを開拓

具体的な取り組みとしてはどんなものがありますか? 

未来の担い手を作っていくために、西陣織や清水焼を使った商品の提案も行っています。例えば、他社との協力もあって実現した西陣織を取り入れたスニーカー「URBANSUN x NISHIJIN」。
この取り組みは、これまでの顧客とは違ったユーザー層をターゲットとし、日常的に使えるものを意識しています。

西陣織を取り入れたスニーカー「URBANSUN x NISHIJIN

また、来年度から大学生とコラボレーションして、日本の伝統工芸品を海外に販売する取り組みを進めています。学生が主体的に販売するお手伝いをすることで、弊社もノウハウや経験が積めますし、新しい方向性も見えてきています。学生は、未来の地球を守っていく世代としての意識が高く、環境に対してとてもシビアです。打ち合わせの時も、「エシカル」「SDGs」「再利用」などの言葉が飛び交っていますね。若い世代の当たり前のツールである動画メディアを積極的に活用していきたいと思っています。SNS世代の拡散力はものすごい力があるので、私たちも見習って上手く取り入れて活用していきたいですね。

御社の強みは何ですか。

製品の流通は、小売店、問屋、メーカーと大きく3つに分かれていますが、弊社は問屋とメーカーとしての両方の機能を備えています。卸業者として小売店と直接取引があるので、トレンドをいち早く把握しやすいことも強みです。お店の販売員さんから直接お話を伺い、生の声をすぐ商品に反映できるスピード感も、小さい会社の強みとも思っています。
また、これまでのキャリアで得たITやクリエイティブの知見を生かして、デザイン性のあるご提案を行っています。

今後やっていきたいことは何ですか?

工芸品の更なる開拓はもちろんですが、地域の特産品や農業、カルチャーを守っていきたいです。今の時期は和歌山の梅や、山科のたけのこが美味しいんですよ。その他にも、大原のシソの葉といった加工品や野菜など地域の良いものをオンラインショップでご紹介していく予定です。農家さんには本来の畑作りにしっかり取り組んでいただいて、販売・販促のところを弊社にまかせていただく。地域の農業が活性化することで、若い方が農業に従事する流れを作ることが地域活性化につながります。
四季に恵まれた日本で、地域ならではの特色を生かしたいいものを、京都に限らずご紹介していきます。「IT×モノづくり」で、地域活性化に貢献していきたいですね。
また、コロナ禍が過ぎた時には、神社仏閣での展示や体験イベントなど、オフラインの集まりを主催したいです。全国に京都ファンがたくさんいらっしゃるので、改めて京都の歴史に触れてもらいたいですね。

ユーザーに付加価値が伝わっていることを肌で感じられる瞬間が何よりも嬉しい

仕事でやりがいを感じる時はどんな時でしょうか。

モノづくりに携わっている時ですね。 アイデアを考えている時や、提案した企画が実現した時はわくわくします。よいモノ、地域のモノを使うことにこだわっており、エンドユーザーに付加価値が伝わっていることを肌で感じられる瞬間が、何よりも嬉しいです。
クライアントからの「イベントで配るノベルティとして、何かありませんか?」というリクエストに、弊社は岡山産デニムを使った生地など、国産の良質な素材を使った商品を提案します。他にも、ロックフェスでアーティストのロゴが入った清水焼のマグカップを作りました。差別化を図らないと弊社にオーダーする意味がありませんから、提案をする時は、品質の高さや、職人の技、手作りの良さといったことを商品のストーリーとして伝えています。
また、小ロットのノベルティを作る場合でも、素材を変えてみたり、特殊な機能をつけるなど、付加価値をつけて提案します。 伝統工芸としての清水焼や西陣織をPRして、ファンを作り、後世に繋いでいきたい。伝統工芸品を使ったモノづくりで地域創生に貢献できることがやりがいです。

仕事をする上で大切にしていることはなんですか?

意識しているのは「商売として成り立つか?」ということです。これからの時代に見合った提案として、エシカルやSDGsに結びつけるとどうしても採算が合わない部分がでてきます。そういう場合でもビジネスとして成り立つよう、常に意識して仕事をしていく。最終的には数字を出していかないと、お客さまや職人さんと話す時に説得力がないので、販売実績や海外での事例をもとに提案をしています。SDGsを意識しながら、ビジネスにもつながるアイデアを常に模索しています。

最後に、クリエイターの皆さんにむけてメッセージをお願いします。

相手の立場に立ってヒアリングし、その内容をもとにどのような提案をしていくことを基本としています。おみやげの場合、観光地に行ってお客さまのニーズや販売トレンドを調査します。その上で、弊社ならではのアイデアも交えることで、クリエイターとして、個々を確立していけると考えています。
今後は、日本らしさにはこだわって作っていきたいと思います。 自分が気に入ったものは、値段が高くても手に入れたいと思いますよね。金額に関係なく手に入れたいと思ってもらえる商品を作るためにも、日本の良さが感じられる伝統工芸品や職人技を守っていきたいです。
観光客が望む「日本らしさ」に無理矢理合わせるのではなく、自分たちが納得し自信を持てる商品を作り、提案していくことが大事だと思います。 これからも、ユーザーに心から手に入れたいと思ってもらえる商品を作っていきたいです。

取材日:2021年2月19日 ライター:田中 未来

 

※記事内記載の社名、サービス名などは、各社の商標または登録商標です

 

株式会社神谷商会

  • 代表者名:神谷 尚志
  • 設立年月:2017年3月27日
  • 資本金:300万円
  • 事業内容:観光品・伝統工芸品の製造卸
    グラフィックデザイン・Webデザイン制作、イラスト制作
  • 所在地:京都市山科区川田菱尾田6-30
  • URL:https://kamiya-craft.com/
  • お問い合わせ先:上記HPの「お問い合わせ」より

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