国内外で育んできたクリエイターのネットワークと経営手腕で起業へ、新潟をローカルからグローバルへとアップデートさせる仕掛人の描く未来像とは
大学卒業後、国内外で営業職やマーケティング職を渡り歩いた亀貝康明(かめがい やすあき)さん。経営にも深く関わった企業での経験を糧に、2021年3月に生まれ育った地元・新潟県で株式会社サンゾウを立ち上げました。
プロデュース業「サンゾウP」では「当事者意識」で企業や団体と関わり、地元のクリエイターなどを紹介する自主メディア「アップデート新潟(https://update-niigata.com/)」も運営。笑顔でインタビューに応じてくれた亀貝さんに、これまでのキャリアや会社の理念、共に働きたいクリエイターの理想像などを伺いました。
国内外で営業やマーケティングを経験。様々な体験を根拠に起業を決意
会社設立までは、どのようなキャリアを歩んできたのでしょうか?
大学卒業後、2008年に自動車関連のインターネット広告企業へ就職しました。営業職で運よく月間MVPを獲得できた時期もあり、日本全国を出張で飛び回っていましたね。その後、一念発起で上海へ移住したんです。一時期は現地でホームレスとして過ごした経験もあって。現地の方々と共に、飲食店やレンタルオフィス事業など色々な仕事を経験しました。
2014年に帰国し、IT系企業のマーケティング職に就きました。そこを2年ほどで退職し、2016年に台湾へ移住して、32歳でインフルエンサープロデュースやコンテンツマーケティングなどを手がけるカプセルジャパン株式会社へ入社したんです。そこでの経験が起業への後押しになりました。取締役として組織づくりを担っていたほか、プロジェクト立ち上げのための資金調達であったり、事業達成のために必要な仕事をたくさん経験して。5年間で経営に関わる様々なことを学び、地元・新潟県での起業を決意しました。
国境を超えて様々な経験をされてきた亀貝さんが、起業に踏み切った決め手はあったのでしょうか?
はっきりとした根拠があったわけではなくて。当初は、会社設立となっても何をやるか決めていたわけではなく、売り上げを立てられる確信もなかったんです。ただ、色々な経験をしてきたので、体験という意味での根拠はあったんですよね。起業を志す人には2つのタイプがあり、根っからの強い憧れがある人か、偶然にもどこかで経営に関わる機会があり楽しさを見出す人のいずれかだと考えていて。僕は、後者だったのかなと思います。
先ほど述べたカプセルジャパン株式会社では、本当にたくさんの経験をしました。子会社買収にも関わりましたし、心苦しく思いながらも人を解雇する経験もして。新サービス開発など、事業拡大のために何でもやっていました。会社を設立した今思うのは、やるべきことを積み重ねてきた結果だったなと。前職からのつながりで僕を信じて付いてきてくれる仲間もいましたし、決意してよかったなと考えています。
外の世界で戦える力を―。地元・新潟県で「居場所」を作りたかった
国内、上海、台湾と渡り歩いてきた亀貝さんが、生まれ育った地元・新潟県での起業を決意した理由は何でしたか?
また、新潟県にと考えたのも理由でした。これまでイベント事業なども手がけてきて、様々なクリエイターの方々ともお会いしてきました。ただ、都内と比べると、地方ではクリエイターの方々の活躍できる場所が少ないと感じているんですよね。そう考える中、迎えたコロナ禍で、リモートならば活躍の場は世界に広がると身をもって体感して。マーケットが日本に限らない時代になったのであれば、新潟県でも充分にやっていけると考えました。
現在、株式会社サンゾウではどのような事業を手がけていらっしゃいますか?
プロデュース事業とメディア事業です。プロデュース事業では「サンゾウP」として、企業や団体に向けた提案をしています。大きく分けると軸は3つで、ノーコードのサイト制作やSNSマーケティングを手助けする「Web」分野、企画運営はもちろん補助金申請も担う「イベント」分野、そして、過去の経験も生かして中華圏に向けた「海外展開」も支援しています。
一方、メディア事業では「アップデート新潟」を自主運営しています。「人にはそれぞれストーリーがある。新潟で挑戦する人を応援するメディア」をコンセプトに、地元で活躍されているクリエイターや農家の方々などへインタビューし、YouTubeチャンネルやサイトで紹介しています。メディア事業ではマネタイズを意識せず、自分のライフワークとして取り組んでいます。
企業や団体とユーザーの間に立つ事業を展開されていますが、自分たちの役割を亀貝さんはどう考えていらっしゃいますか?
例えば、SNSマーケティングで、依頼者側に「ツイッターで30回投稿します」と約束して回数を達成できれば、コンサルティングとしては成り立つのかもしれません。相手の売り上げにつながっていないのであれば、私たちが関わる意味はないと感じているんです。依頼者側とはチームを組む意識で、相手にはないものを持っているので「一緒にやりましょうよ」と提案するような姿勢で事業へ取り組んでいます。
当事者意識でローカルからグローバルに。仕事を“楽しめる人”を求める
地元・新潟県で立ち上げた会社の今後を、どう描いていますか?
やはり、過去の経験も生かしながら地元へ還元していきたい気持ちが強いですね。会社設立から2年目となったばかりで、色々な課題も山積みですが、新潟県のクリエイターやフリーランスの方々とのつながりも増やしていきたいです。ただ、依頼される案件が多くなればそうした方々に還元できる機会も増えるかもしれませんが、無理矢理な事業拡大はしたくないんです。会社にある「当事者意識」の姿勢は崩さず、バランスをみきわめながら成長していければと思います。
プロデュース事業「サンゾウP」では「ローカルをグローバルに。グローバルをローカルに」というミッションを掲げていますよね。こちらは、どのように実現していこうと考えていますか?
地方の企業として「ローカル」を掲げるのは正直、誤解を受ける怖さもあるんです。地域密着という言葉を聞くと、人によっては「腰を据えた地域“の中”で貢献し続けなければならない」と考えるかもしれませんが、そう思ってはいなくて。拠点は新潟県ですが、市場は新潟県だけでなく、日本全体や世界中にも広げていくことを考えています。新潟県への愛着はいつまでも大切に、他の地域とも結び付けられるように貢献していきたいと思っています。
iPhoneをはじめプロダクトが世界を変えたように、新しいテクノロジーも積極的に取り入れながら、新潟県からグローバルへとつなげていくのが理想で。弊社ではDX化も支援しており、新潟県を中心に日本国内の各地域はもちろん、アジアなど世界ともつながれるきっかけづくりを担っていきたいです。
最後になりますが、会社の成長が期待される今後、どのようなクリエイターの方々と一緒に働いていきたいですか?
クリエイティブと経営、いずれの視点もあわせ持つ方と一緒に仕事できればと考えています。私は元々、営業やマーケティングなど経営に関する仕事を経験してきました。会社設立後のメディア運営をきっかけにIllustratorやPhotoshop、動画編集を学んで、クリエイティブ分野にも関わるようになったんですよね。経験してみたら、両方の気持ちが分かると「よりよいものができる」と感じられるようになりました。
仕事を「エンターテインメント」として楽しめる人を求めています。近年、個人発信がさかんな時代になってからは「やりたいことを仕事に」という風潮も強くなってきて、今後よりその流れが加速すると思っているんです。人を楽しませるにも自分が楽しんでいなければその感覚を伝えられないと思いますし、弊社も「おもしろいことをやっている会社」と感じていただけるように進んでいきたいと思います。
取材日:2022年3月3日 ライター:カネコ シュウヘイ
株式会社サンゾウ
- 代表者名:亀貝 康明
- 設立年月:2021年3月
- 資本金:250万円
- 事業内容:広告代理事業、メディア事業、中華圏進出サポート事業
- 所在地:〒950-0078 新潟県新潟市中央区万代島5番1号 万代島ビル11階
- URL:https://sanzooo.com/
- お問い合わせ先:上記サイト「問い合わせ」フォームより