21歳で起業。柔軟な発想を活かしたシステム開発で「ほしい」を形に
若くして何かを始めるからこそ、気づけることはたくさんあります。システム開発を中心としたIT事業を手がける株式会社Game。代表取締役の佐々木 航(ささき わたる)さんは若干21歳にして会社を立ち上げ、今年設立4年目を迎えました。とはいえ、最初から準備万端だったわけではありません。プログラミングを始めたのも、起業も、きっかけは偶然の巡り合わせ。そこからチャレンジと失敗を繰り返し、いくつもの案件を抱えるまで会社を成長させてきました。
なぜ、大学生で会社を立ち上げる決断に至ったのか?当時を振り返ってお話しいただきました。
さまざまな人と出会い、「就職」以外の働き方を知る
佐々木さんは大学生の時に株式会社Gameを設立されたそうですね。
はい、Gameを立ち上げたのは2019年、21歳の時です。工学部に所属しモノづくりが中心でしたので、IT分野にはほとんど縁がありませんでした。
大学ではサークル活動が中心の毎日でした。入学してすぐ、大学生活をとにかく楽しもう!と思ってサークルを探しました。アカペラ、バスケ、サッカー、ダンス、テニス…いつの間にか、13個ものサークルに入っていて(笑)。飲み会続きの毎日は新鮮で、大学生活を楽しめているように感じていました。でも、1年生の夏休みに急に我に返ったんです。「自分はいったい何をしているんだろう」って。アルバイト代は交際費に消えていくばかりで、このままではダメだと思いました。
そこで、参加するサークルを半分に減らして、ちゃんと貯金しようと決めたんです。「家族を海外旅行に連れて行く」という目標を立てて、その費用を貯めるために頑張ろう、と。
それは素敵な目標ですね。ですが、家族で海外旅行となるとかなり大きな金額だったのでは?
そうなんです。アルバイトだけでは全然足りなくて、どうやったら貯められるだろうかと悩みました。そんな時、起業して仕事をしている先輩がいると聞き、友人に紹介してもらったんです。そこで初めて「自分で商売をする」という選択肢があると知りました。雇われて働くのではなく、自分の力で仕事を受ければいいんだ、と。目の前に新しい道が開けたように感じました。そしてその方から、「独立したいなら1000人と話せ」とアドバイスされたんです。
1000人ですか!壮大なチャレンジですね。
この言葉が、僕の人生の転機になりました。まずは言われたとおりに1000人と会ってみよう、と決意したんです。
13個のサークルに入っていたのも功を奏し、友達や、先輩、後輩など、次々に会う約束を取り付けていきました。ただ、理由がなく会うのでは、向こうも話しづらいし警戒されてしまいます。そこで「全国の大学のサークルがわかるアプリを開発しよう」と考えました。アプリ開発のヒアリングを趣旨に話をすればいいんじゃないか、と。会っていたのは大学生が多かったし、自分もたくさんのサークルに入っていたので、このチャレンジで何か役に立つものが作れるかもしれない、とも思いました。
目標の1000人には会えたのでしょうか?
人数が多すぎて途中で数えるのをやめてしまいましたが、1000人には確実に会いましたね。毎回喫茶店で会ってコーヒーを飲んでいたから、全部でいくらかかったんでしょう?数十万円はかかっているはず(笑)。人との約束があると授業に行く時間も取れなくて、大学には休学届を出しました。それでも、僕にとっては価値のある経験でした。プログラミングができる知り合いに協力してもらい、最終的に1年半くらいかけて「大学カタログ」というアプリを完成させたんです。ITの知識は何ひとつなかったので、3ヶ月間図書館にこもり、必死で勉強してプログラミングを身につけました。毎日違う人と出会ったり、新しい知識を吸収したりするのが楽しくて。当時は夢中でした。
偶然の出会いをきっかけに会社設立
最初のアプリ開発がきっかけで会社を立ち上げられたのでしょうか?
いえ、プログラミングはとにかく楽しかったので、知り合いからの頼まれごとを引き受けたりしていましたが、しばらくは収入には結びつかない状況でした。「大学カタログ」の開発チームも解散してしまったので、これからどうしようかと考えていたんです。そんな時、大学で掲示板を眺めていた60代の男性に突然声をかけられました。「君、アプリ作れるか?」と。詳しく聞くと、事業のパートナーが突然亡くなってしまい、開発中のアプリを完成させるためのエンジニアを探しているとのこと。大学ならプログラミングができる人材に出会えるのではないか、と考えて来てみたのだそうです。
そのタイミングでたまたま出会われたのが、佐々木さんだったのですね。
本当に、偶然の出会いでした。「アプリなら作れます」と返事したものの、心の中は怪しさでいっぱいでした。そこでまずは、プロトタイプの制作をお試しで引き受けることになりました。その後、報酬をしっかりと支払ってもらい、一緒に開発していこう、という流れになったんです。開発したアプリは無事に納品できましたが、今後も大きな額の仕事を受けていくには、会社としての形が必要だと考えました。そこで生まれたのが、「株式会社Game」です。
僕は当時21歳。1000人に会うチャレンジやアプリ開発がひと段落し、大学2年生で復学したタイミングでした。
学生で会社を設立。当時はどのような想いだったのですか?
会社設立は流れに任せてだったので、最初は何がなんだかわからない状態からのスタートでした。休学していた分の単位を取ることにも苦労していたので、勉強と仕事の両立に精一杯で。
立ち上げ時のメンバーは、僕含め年が近い友人の3人。少しでも経験を積むため、仕事は金額の大小に関わらず何でも引き受けるようにしていました。最初は身内のちょっとしたお願い程度の仕事でしたが、ひとつひとつきちんとこなしていくうち、だんだんとシステム開発やWebサイト制作などの大きな仕事がもらえるようになっていきました。
Webサービスやアプリなどのシステム開発に強いGame
御社の事業についてお聞かせください。
Gameの主幹事業はシステム開発です。その中でも特に得意なのが、「Webサービス」と呼ばれるジャンルです。Webサービスの中でも、Google ChromeやSafariといったブラウザ上で使える、勤怠登録、顧客管理、受注発注、在庫管理といった業務効率化システムのほか、Web決済、コールセンターなどのシステムも作れます。Webサービスのメリットは、アプリよりもかなりコストを抑えて開発できること。およそ、アプリの5分の1くらいの費用で制作できます。そのほか、ECサイトやWebサイトの制作などIT分野に関わる仕事を幅広く手がけています。
システム開発の受託から納品までの流れを教えてください。
お客さまからは「こんなサービスがほしいんだけど、できるかな?」と、ざっくりご相談いただく場合がほとんどです。その後、お客さまとコミュニケーションを取りながらご要望を詳しくお聞きし、必要な機能を洗い出してシステムを設計します。システムのプロトタイプができたら、テストをして、最終調整をして納品します。納品後も、ご要望に応じて運用のサポートを行なっています。
お客さまとコミュニケーションをとり、「この方はどんな方なんだろう?」「どんなサービスを提供したら喜んでもらえるだろう?」とシステムを考えるのがとても楽しいです。企画段階から関わるので、自分たちが提案したサービスがそのまま形になるところにも、やりがいを感じています。
社内ではどのような体制でプロジェクトを進めているのでしょう?
プロジェクトマネージャーとシステムエンジニア、デザイナーの3名が中心となり、コンセプトを決めて進めています。今は社外のエンジニアと連携しながら、プロジェクトごとにチームを作っています。人数はプロジェクトの規模によってまちまちで、3名から8名くらいの幅があります。海外のエンジニアの方と仕事をすることも多いです。
手がける仕事の数には波がありますが、常に5~10件のプロジェクトが併走しているので、そろそろ人員を増やしたいと考えているところです。まずはテスターのスタッフから増やし、デザイナー、プロジェクトマネージャー、エンジニアの順で採用していこうと計画しています。ゆくゆくはデザイナーや営業スタッフも増やしていきたいですね。今は外部のパートナーにお願いしている業務を内製化していけたらと考えています。
これからは組織作りも重要になってきますね。
そうですね。何もわからない状態から無我夢中で走り続けて2年が経ち、やっといろいろなことが見えてくるようになったかな、と感じています。これまでは人に頼まず自分自身で作業してしまうことが多かったのですが、自分よりも優れたエンジニアと出会い、「自分が手を離しても大丈夫だな」と思えるようになりました。スタッフに実務を任せ、自分は代表として違う役割を担っていかなくては、と考えています。
今後、チャレンジしていきたい事業はありますか?
これまで、産業、教育、EC、飲食、営業代行、エネルギーなど、幅広い分野のお客さまと密に関わり、業界の課題に向き合ってきました。これらの開発を通して得た業界情報を強みにした事業展開を考えています。その中でもいま最も興味があるのは、販売関連のサービスです。ECサイトを中心に、マーケティングや顧客管理など、販売の課題を解決するためのノウハウを構築したいと思っています。そこで、まずは実務経験を積むために、自分たちで何かを販売してみようかと考えているんです。売れるコツをつかんでシステムに応用し、多くの人に還元したいです。
ゲームをプレイするように、人生を楽しみたい
そもそも、なぜ「Game」という社名をつけられたのでしょう?
「Game」という社名を思いついたのは、ちょうど1000人と会うチャレンジをしていた頃だったと思います。これから自分が何をしたいのかを本気で考えたとき、「目の前のことを全力で楽しみたい」と思いました。そこでふと気づいたのです。この気持ちは、ゲームをプレイするのに似てるなって。ゲームをしていると、その世界の主人公になり切って楽しんでいる感覚になりますよね。目の前にある現実も、「自分」という主人公でゲームをプレイしているようなものなんじゃないかと。そう考えると、今までの失敗もすべて、自分がレベルアップするための経験値のようなもの。出会う人たちは、旅の仲間です。
この「現実をプレイしている」という感覚を共有したくて、「Game」と名付けました。
どんな経験も、レベルアップのためだと思うと頑張れますね。
僕は、何ひとつわからないところから会社を作りました。会社を続けていくために徹底してやってきたのが、「何事も自分でやってみる」姿勢です。
失敗は、数えきれないほどあります。コミュニケーションがうまくいかなくて、チームが解散してしまったり、トラブルで納期に間に合わなかったり、プロジェクトが中止になってしまったり…でも、失敗しないと学べないことがたくさんあったと思うんです。
お金を出して誰かにお願いすることは簡単だけど、それでは自分は何も経験できないし、学べません。まずは自分でやってみる。トライアンドエラーの繰り返しです。
佐々木さんのお仕事のモチベーションは何でしょう?
たぶん昔からずっと、人と関わるのが好きなんですよね。今の仕事でも、お客さまとお話ししながら、理想をかたちにしていく作業が一番楽しいです。
僕たちは、新しいものを生み出す人たちをIT技術で応援する存在でありたいと思っています。皆さんが時間を取られている作業を効率化して、それぞれがやりたいことに没頭できる時間を生み出したい。そうしたらきっと、もっと色々なことが実現されていくと思います。
この社会に生まれてくる新しいものは、必ず「人」の手から作り出されています。その可能性を信じているからこそ、今の仕事にやりがいがあるのだと思っています。
取材日:2022年3月16日 ライター:土谷 真咲
株式会社Game
- 代表者名:佐々木 航
- 設立年月:2019年4月
- 資本金:100万円
- 事業内容:インターネットウェブサイトの企画・デザイン及び制作、ITコンサルティング、メディアの開発・運用、ゲームの開発・運営、電子機器やハードウェアの開発及び販売
- 所在地:〒567-0018 大阪府茨木市太田2丁目11番3号の6
- URL: https://gameagelayer.com