職種その他2022.05.11

日本初のモーションアクト総合コンサルティングサービスで躍動する、モーションアクター集団「活劇座」

名古屋
株式会社 活劇座
Koga Wataru
古賀 亘

特撮ヒーロー番組の世界で活躍し、映画「イン・ザ・ヒーロー」のモデルにもなった古賀亘(こが わたる)さん。マーカーと呼ばれるセンサーを身体の57箇所に付けてさまざまな動作を撮影しデジタル処理することで、CGキャラクターに命を吹き込むモーションアクターとして活動しながら、日本初となるモーションアクト総合コンサルティングサービスを専門とする「活劇座」を立ち上げました。そんな古賀さんに起業のいきさつや名古屋で立ち上げたスタジオ・スクールのこと、今後のビジョンなどを伺いました。

ジャッキー・チェンに憧れて

子供時代の夢を教えてください。

小学4年生の時にテレビでジャッキー・チェンの映画「ドランクモンキー 酔拳」を見て衝撃を受けました。「ジャッキーみたいに正義感が強く、ユニークで強い大人になりたい!」そう思いました。しばらくしてアクション俳優という職業があることや名古屋にアクションクラブというチームがあることを知りました。
しかし、アクションクラブに入れるのは15歳から。まずはNHKの児童劇団に入ってお芝居の勉強をしました。

そこからアクション俳優の道へ進んだのでしょうか?

名古屋のアクションクラブはヒーローショーをメインに活動しているチームでした。当時のヒーローショーは今のように演技に厳しい制約がなく、ヒーローの動きを自由にアレンジして演じられました。自分のオリジナルなスタイルを試していくうちに、ヒーローショーの魅力にはまっていきました。
しかし、映画やテレビで活躍するアクション俳優の仕事は東京に集中していたため、東京の専門学校に進学して社会体育を学びながらアクション俳優への道を模索しました。

「活劇座」立ち上げまでの経緯を教えてください。

東京に出てしばらくすると仕事が入ってくるようになり、専門学校は1年ほどで辞めてしまいました。そこから自分たちでアクションチームを結成したのですが、イメージ通りの活躍はできませんでした。ただ、好きな仕事で食べているという喜びはありました。
一方で、私と同じタイミングで上京した先輩が特撮ヒーロー番組の主役に抜擢されるなど、成功を掴む人を間近で見ました。仲の良い先輩が急に脚光を浴びる存在になったのが嬉しい反面、複雑な気持ちも抱きました。
「活劇座」を名乗り始めたのは1999年ごろから。同じようにくすぶっていた仲間3人と活動を始めました。そして、モーションアクターの仕事に出会い、急成長につながります。

モーションアクターを始めたきっかけは何ですか?

ゲーム会社に知り合いがいるアクションクラブの先輩から、やってみないかと声をかけていただいたんです。モーションアクターの存在は前から知っていたので「やってみたいです!」と即答しました。
最初に手がけたタイトルはプロレスゲーム。10人ほどの外国人レスラーの動きを研究してモーション収録に臨んだところ、スタッフの方々から「すごい!古賀くんすごく向いているよ!」と絶賛いただいたんです。褒めていただいてとても嬉しかったのを覚えています。そこからたくさんのタイトルに呼んでいただけるようになりました。 当時からゲーム業界は人材の流動性が高かったので、仲の良い方々がゲーム会社や開発プロジェクトを移籍するたびに取引先が増えていきました。また、ゲームはヒットすると続編がどんどん作られるため、継続して仕事をいただけるようになっていったんです。
自分で演じるのはもちろん、アクターのコーディネイトやマネージメント、アクションの振付も行うようになって2009年に法人化しました。これまでに700を超えるゲームタイトルでモーションアクターを行なってきました。

モーションアクターの若手育成を目指す

 

 

「活劇座」の社名の由来を教えてください。

映画で緒形直人さんと共演させていただいたことがあるのですが、直人さんが芝居を磨いた「青年座」の“座”という言葉の雰囲気が好きでした。アクションや派手なスタントも演技の一部と捉えており、パフォーマンスに対する真摯な姿勢が伝わってくると感じたのです。また、アクションチームやスタントチームの名前は横文字やカタカナ表記が多いので、他との差別化をしたいという思いがあり。演技にもしっかりと力を入れていた為、格式のある劇団などで使われている「座」を用いて「活劇座」という名前にしました。

手掛けられている事業について教えていただけますか?

モーションアクターを中心としたパフォーマンスとマネジメントを行うメイン事業「活劇座」に加え、20台のモーションキャプチャー専用カメラを備えた「モーキャプスタジオ55」、若手を育成する「モーションアクタースクール」、空手やダンス、アクロバットなどの教室を一般にも開放する「55☆パーク」4つのビジネスを行なっています。モーションアクト総合コンサルティングサービスを専門に行う会社は、全国でも当社だけなんですよ。

名古屋にスタジオを作られたいきさつを教えてください。

まず、スタジオを設立した1番の理由は次の時代を担う若手の育成です。今、モーションアクターとして活躍している人材の中心は、40代~50代。そろそろ世代交代が必要になるのですが、通常の芝居や実写のアクションとは違って、モーションアクターはゲームの仕様に合わせたり、アニメーション映えする芝居が重要です。たとえば、日本有数のアクション俳優やスタントマンをキャスティングしても「モーションアクターとしては今ひとつ…」という状況が生まれてしまうのです。
モーションアクターとして成長するには、実際の撮影現場と同様に、自分のパフォーマンスをCGキャラクターに変換して俯瞰的にチェックすることが必要なので、それができるスタジオとスクールを立ち上げました。20台のモーションキャプチャー専用カメラが設置されている「モーキャプスタジオ55」では、アニメーション的な動きを生み出すための誇張やメリハリを実感しながらモーションアクターの技術を学ぶことができます。
名古屋に立ち上げたのは私が愛知県稲沢市出身というのもありますし、ご縁があってデジタルコンテンツ・クリエイティブ産業を盛り上げるための補助金を活用することができたので名古屋で立ち上げることにしました。名古屋にモーションアクターを育成し、さらに活躍できる場があれば、地域のコンテンツ産業の活性化にも貢献できると考えました。

世界に通用するモーションアクターの仕事

 

古賀さんが日々心掛けていることは何ですか?

毎回、お客さまの期待以上のパフォーマンスを出すために、ヒアリングを行うことを大切にしています。たとえば格闘ゲームの場合、私だけの引き出しでパフォーマンスを行うと、どうしても他に手掛けたタイトルと同じような動きになってしまいます。パンチひとつにしても「ドンドンパン!」なのか「ドン・ドパンッ!」なのかで印象が異なります。ヒアリングを通じてお客さまのイメージやエッセンスを吸収してから演じることでお客様の好みを充分に反映させた上、自分たちのオリジナリティーも盛り込み、期待を上回るパフォーマンスを提供し、「これからの編集作業が楽しみです!」と言っていただける仕事を心掛けています。

モーションアクターの仕事で忘れられないエピソードは?

海外で仕事をしたことがあるのですが、日本の実績を話してもピンと来ていない様子でした。そこで携わったゲームのタイトルを話したところ現地スタッフが大興奮。翌日には地元新聞社が取材に来るほどの反響で、世界に通用するゲームの凄さを知りました。
私が携わったゲームに多くの人が熱狂している様子を見るのもシンプルに嬉しいです。

今後の展望を教えてください。

「モーションアクターといえばNAGOYA」と言われるよう、既存産業と連携して業界の発展に貢献していきたいと思っています。またモーションアクターの存在そのものに光を当て、声優のように世の中から注目される職業にしていきたいですね。
モーションアクターとCGキャラクターのパフォーマンスを同時に見られる劇場や、モーションキャプチャーのメイキングシーンの発信など、開発現場のバックステージを積極的に見せていきたいです。また、メタバース(仮想世界)やNFTアートの世界でも何かができそうです。

最後に、クリエイターにメッセージやアドバイスをお願いします。

ゲームなどで活用される私たちの仕事は大きな枠組みではデジタル産業に入るのですが、演じているのは生身の人間です。その他のデジタル産業も、けっきょくは人の心や情熱が作品に反映されると思うので、人間力や人のつながりが大切なのだと思います。
私はジャッキー・チェンのようなアクションスターを志して成功はしませんでしたが、トライしたことが成長につながり、好きな仕事に誇りをもって取り組むことで日々幸せを感じています。アクションすれば、何かしらのリアクションが返ってきます。結果にこだわりすぎず、成功以上に成長を意識してチャレンジを続けてください!

 

取材日:2022年3月12日

株式会社 活劇座

  • 代表者名:古賀 亘
  • 設立年月:2009年3月
  • 資本金:650万円
  • 事業内容:モーション収録のためのモーションアクト総合コンサルティングサービス
    モーションアクターコーディネイト/アクションコーディネイト/ダンス振付/モーションアクトアドバイス&収録アドバイス・収録サポート/小道具(武器)、アクションギア、収録器具のレンタル/モーションアクター育成
  • 所在地:
    【名古屋本社&モーションキャプチャースタジオ】
    〒450-0003 愛知県名古屋市中村区名駅南三丁目3番35号駒屋ビル4階
    【横浜オフィス】
    〒231-0806 横浜市中区本牧町2丁目 404 バディーコーブ本牧102
  • 電話番号:045-228-9991
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