「人を動かすデザイン」を追求。制作会社の枠を超え、自分たちで商品を創り、魅力的なクリエイティブで送り出す!
「どんなに目立つデザインでも、結果的に人を動かすことができなければ何の意味もない」。ザンシンの代表取締役を務める青木洋一(あおき よういち)さんはそう話します。デザインに強みを持ち、ユーザーの行動心理を読むUX(User eXperience)を重視して企業ブランディングに貢献する同社。その歴史には「会社を存続するべきか悩んだ」時期もあったのだとか。青木さんが大切にするクリエイティブへの思いや経営者としての覚悟、そして未来の事業に対する思いを聞きました。
「会社を存続すべきなのか」。悩んだ末に決断した代表就任
青木さんがザンシンの経営を担うまでの、キャリアや仕事についてお聞かせください。
地元・新潟の高校を卒業し、東京の大学に進学しました。デザインの魅力を知ったのはこの大学時代です。専攻した学部はデザインとはまったく関係ありませんでしたが、たまたま学内のコンピュータに「Flash」(Adobe Flash:動画やゲームをはじめとするインタラクティブコンテンツを扱うアプリケーション。2020年12月に開発終了)が入っていて、触ってみたらとても面白かったんですね。当時普及し始めたデジタルカメラを使い、写真とFlashを組み合わせるなどして自分なりにデザインを楽しんでいました。
大学卒業後は、アルバイトをしながらデジタル系のスクールでWebデザインを学び、ご縁があって新潟のデザイン会社に就職しました。Webデザイン担当として約5年間勤務。HTMLのコーディングやPHPのプログラミングなど、技術系の仕事もたくさん経験しました。
ザンシンの創業に参画した経緯は?
仕事をするなかで「自分はこのままサラリーマンでいいんだろうか?」と考えるようになったんです。5年働いてもあまり給料が上がらなかったので、独立を目指したほうがいいんじゃないかと。ちょうどその頃、大学の同級生だった友人が新潟にいて、私と同じように独立を目指していました。そこで2人で起業し、友人が代表を、私が取締役を務めることになりました。
始まりは共同創業だったのですね。その後、青木さんが代表取締役に就任した背景には何があったのでしょうか。
代表を務めていた友人が病気になってしまい、経営を退くことになったんです。当時は大型案件のトラブルなどもあり、苦しい時期でした。会社を存続するかどうかさえ悩んだほど。
それでも、自分が再び会社員として働く姿はイメージできませんでした。独立・起業によって得たやりがいは大きかったし、収入にも満足していましたから。そこで2016年に私が代表を引き継ぎました。登記内容を自分の名前に変えるときには、起業時とは違うプレッシャーや不安があったのも事実です。それでも、「意志あるところに道は開ける」という言葉があるように、自分自身が腹をくくれば物事は良い方向に進んでいくはずだと信じていました。
アフィリエイトで得た「UX視点」をクリエイティブに反映
御社はデザインやWeb制作、システム構築といった個々の強みを持ちながらも、事業内容には「ブランド・コンサルティング」を掲げています。どのようなこだわりを持ってサービスを提供しているのでしょうか。
私たちが追求しているのは、クライアントの価値を一番に考え、「クライアントの良さ=ブランド」を引き出していくことです。クライアントの事業内容や商品・サービスについて詳しくヒアリングし、徹底的な市場リサーチを行って、クライアント自身も意識していなかったような「潜在的なターゲット層」へもアプローチすることを一つのゴールとしています。
潜在的なターゲットへ商品・サービスの魅力を伝える際には、制作会社としての強みを発揮。ターゲットに伝わるデザインや文章を考え、自分たちでクリエイティブをやりきる点が、PR会社やコンサルティング会社などの競合にはない部分だと自負しています。
クリエイティブ領域だけでなく、マーケティングやIT戦略など多岐にわたるコンサルティングを提供できる秘訣とは。
私自身の経験がベースにあります。ある時期から、「サイトを作ったのはいいんだけど問い合わせがないんだよね」という相談が多く寄せられるようになりました。デザインに頼るだけではなく、マーケティングなどの知見も取り入れていかなければならないと感じて、学び続けています。
また私は以前、事業の一環としてアフィリエイトに取り組んだことがあります。実際にモノを売る経験をしたことで、エンドユーザーの行動心理を読むUXの視点を持てるようになりました。売れる商品は何か、どんな時期に売れるのか、ボタンを変えたらどんなふうに売れ行きが変わるのか。そんな試行錯誤を続けたからこそ、実際に反応が得られるデザインにまで落とし込んだ提案ができるようになったのだと思います。
デザインだけではない。必要なら「ライブカメラ設置」も提案する
これまでの実績で、特に印象に残っているプロジェクトをお聞かせください。
単身者向けの賃貸アパートをメインに取り扱う不動産仲介業者さんのプロジェクトです。従来、その会社のサイトはシンプルに物件を紹介するだけの内容でした。しかし入居率はなかなか上がらず、繁忙期を過ぎても空室が目立つ状況だったのです。
リサーチを重ねた結果、その会社が仲介する物件は、某大学に通う学生さんをターゲットにして、より強力にアピールできるのではないかと考えました。そこでサイトを若者向けの明るいデザインにリニューアル。物件を動画で内覧できるようにしたり、問い合わせまでの使い勝手を改善したり、SEO対策を強化したりといった施策も実施しました。
さらにクライアントへは、「大学ライブカメラ」を設置することも提案。その大学には他県からも多くの学生さんが集まるので、引越し前に「大学周辺の様子を知りたい」と考える人が多いはずだとにらんだのです。クライアントのWebサイトでライブカメラの映像を見られるようにしたところ、若者からのアクセスが増加し物件もどんどん埋まっていきました。
デザインやシステムだけでなく、必要ならライブカメラのようなインフラも提案するのですね。こうしたアイデアはどこから生まれてくるのでしょうか。
ユーザー心理をさまざまな角度から考え抜くこと。新しいアイデアを得るために必要なのは、この姿勢に尽きると思っています。
クリエイターの心理としては、「良いものを作りたい」「目立つものを作りたい」という思いが先に立ってしまいがちかもしれません。私も前職では「Flashコンテンツが派手に動くサイト」など、目立つものばかりを作ろうとしていました。でも、結果的にそれで人を動かすことができなければ何の意味もないんですよね。
デザインもシステムも、人を動かすためのツールの一つでしかない。この原則に立ってユーザーが求めているものを考え、クライアントの課題解決と目標達成のために、クリエイティブとシステムをかけ合わせて提案することが大切だと考えています。
自分たちで商品を開発し、魅力的なクリエイティブで送り出す
今後に向けて、どのような展望を描いていますか。
これまでに磨いてきた制作会社としての強みを生かし、ブランド・コンサルティングの領域でより多くのクライアントに価値を提供していきたいと考えています。
さらに今後は、自社サービスの開発にも注力していきたいですね。現在検討しているのはペット関連のサービスです。ペットフード市場には固形・半生などさまざまなタイプの商品があるものの、きちんとした料理になっているものはないと思うんですよ。ワンちゃん用のバースデーケーキやおせちはありますが、普段から「ペットも飼い主さんも一緒に食べられる商品」はないですよね。ここに斬り込んで、新しい市場を作っていく計画をしています。
自社サービスといっても、そのアイデアはWebに限ったものではないのですね。
はい。ものづくりからスタートして新商品を生み出し、私たちが得意とするブランディングによって成長させていきたいと思っています。そのためにも、今後はクリエイターだけでなく、商品開発やマーケティングに取り組んでくれる人材も増やしていきたいですね。もちろん私のように、クリエイティブからスタートしてマーケティングやブランディングに携わるキャリアも描けるでしょう。これからザンシンに加わる人は、自分たちで商品を開発し、魅力的なクリエイティブで送り出していく面白い仕事を経験できるはずです。
取材日:2022年4月6日 ライター:多田 慎介
ザンシン株式会社
- 代表者名:青木 洋一
- 設立年月:2007年10月
- 資本金:400万円
- 事業内容:ブランディング支援事業
- 所在地:〒950-0914 新潟県新潟市中央区紫竹山1丁目8-6-204
- URL:http://www.zansin.co.jp/
- お問い合わせ先:上記コーポレートサイト内「お問い合わせ」より